9/21/2021

俳句手帖 2019-11


11/1
冬(ふゆ)
    火鉢には冬と言うのに五徳だけ
立冬(りっとう)
    立冬や影長並ぶ朝の道
冬に入る(ふゆにいる)
    冬に入るポケットが好き僕の手ぞ
冬来る(ふゆきたる)
    新品の手袋出番冬来る
今朝の冬(けさのふゆ)
    息白し影に映るや今朝の冬
初冬(はつふゆ)
    初冬やボイラーバルブ鳴りて来る
十一月(じゅういちがつ)
    布団からあまりの寒さ十一月
神無月(かんなづき)
    神無月裏の神様ひっそりと
神去り月(かみさりづき)
    宝くじ誰を頼るか神去り月
神有月(かみありづき)
    神有月西風と来し寒さかな
11/2
初霜月(はつしもづき)
    手もみして便りを待や初霜月
水始めて氷る(みずはじめてこおる)
    水始めて氷る右から左吾子握る
小雪(しょうせつ)
    小雪や浴衣を払い露天風呂
小春(こはる)
    通らない静けさだけの小春かな
小六月(ころくがつ)
    縁側に眠るじいじが小六月
小春空(こはるぞら)
    小春空鍬を漉き込む芋があと
小春凪(こはるなぎ)
    吾子の凧走れど落ちる小春凪
冬浅し(ふゆあさし)
    冬浅し隣りの家は湯めぐりへ
冬めく(ふゆめく)
    信楽焼冬めく朝も火鉢干す
冬日(ふゆび)
    枯れ花や煙が昇る冬日かな
11/3
冬の朝(ふゆのあさ)
    遅刻する母に怒鳴られ冬の朝
冬曙(ふゆあけぼの)
    冬曙三度目覚める暗き部屋
日短(ひみじか)
    テラス席日短な午後持つ仕草
暮早し(くれはやし)
    売り出しやテレビが煽る暮早し
夜半の月(よわのつき)
    夜半の月鋲が打てりアスファルト
霜夜(しもよ)
    一ツ家へ霜夜が原に灯り見ゆ 
冷し(つめたし)
    冷し手リコーダーテスト五時間目
寒し(さむし)
    朝寒し母の力が蒲団剥ぐ
冬暖か(ふゆあたたか)
    醤油絞り冬暖かし雫の音
冬晴(ふゆばれ)
    冬晴の人影見えぬ棚田道
11/4
冬日和(ふゆびより)
    冬日和右から左おうど掃く
冬青空(ふゆあおぞら)
    冬青空葺き替え屋根草を剥ぎ
冬銀河(ふゆぎんが)
    冬銀河靴音高く田舎道
冬の星(ふゆのほし)
    名を知らぬここの場所から冬の星
御講凪(おこうなぎ)
    提灯が街並みへ子ら御講凪
凩(こがらし)
    凩や軽き体ぞ流されし
朔風(さくふう)
    朔風や早くあたりたく竈の火
神渡し(かみわたし)
    陽がかげる藪が騒ぐや神渡し
初時雨(はつしぐれ)
    ぽつぽつと多くなる点初時雨
時雨(しぐれ)
    楠木の葉より静かに時雨かな
11/5
朝時雨(あさしぐれ)
    傘ささず走りいけるか朝時雨
北時雨(きたしぐれ)
    暖簾揺れあてない客に北時雨
小夜時雨(さよしぐれ)
    小夜時雨父は何時に帰るかと
片時雨(かたしぐれ)
    虹かかる傘は開かず片時雨
初霰(はつあられ)
    初霰音に誘われ窓辺より
初霜(はつしも)
    初霜やおりた朝が寒さなり
露凝る(つゆこる)
    透き通る露凝る朝の井戸の水
冬霞(ふゆがすみ)
    我が町も隅々見せぬ冬霞
冬の霧(ふゆのきり)
    冬の霧静かに街へ流れなり
冬の靄(ふゆのもや)
    冬の靄突然現る帆掛け船
11/6
寒靄(かんあい)
    寒の靄田んぼアートが株の址
冬の虹(ふゆのにじ)
    青空の棚田を包む冬の虹
冬夕焼(ふゆゆうやけ)
    障子が色冬夕焼が染にけり
冬茜(ふゆあかね)
    辞表出すここの席にも冬茜
枯野(かれの)
    サナトリューム目指して一人枯野ゆく
冬田(ふゆた)
    にぎやかに穭も靡く冬田かな
冬田道(ふゆたみち)
    風が押すマフラーとける冬田道
冬の庭(ふゆのにわ)
    つむじ風枯葉舞い上げ冬の庭
庭枯る(にわかる)
    静かなる庭枯る夜の葉の騒ぎ
枯園(かれその)
    枯園やビニール袋迷い込み
11/7
冬の園(ふゆのその)
    松の下大き岩石冬の園
渇水期(かっすいき)
    蓮田にも渇水期一本立ち守る
水涸る(みずかる)
    雲低し藁舞い上がる水涸る田
冬の色(ふゆのいろ)
    鳥も居ぬ誰も居ぬ先冬の色
冬の水(ふゆのみず)
    動かない底まで見える冬の水
冬渚(ふゆなぎさ)
    濡れまいと波を右目に冬渚
冬の浜(ふゆのはま)
    風紋を崩さず流す冬の浜
霜柱(しもばしら)
    霜柱踏み砕く音寒くとも
狐火(きつねび)
    狐火や出ぬこと願ひ祠横
冬服(ふゆふく)
    鼻水や冬服の袖かあばりて
11/8
冬着(ふゆぎ)
    風吹けば寒がり坊ちゃん冬着着る
セーター
    誕生祝セーター編めと毛糸かな
毛糸(けいと)
    腕出せば腕はおろすな毛糸巻く
酢茎(すぐき)
    年を経て味わうこと知る酢茎かな
千枚漬(せんまいづけ)
    出張中千枚漬に寄り道を
沢庵漬(たくわんづけ)
    空のはず沢庵漬へ風さらす
納豆(なっとう)
    納豆に混ぜ訝しがられヨーグルト
味噌作る(みそつくる)
    味噌作る道具は一つスマッシャー
生姜味噌(しょうがみそ)
    豊作とぱくぱく食えぬ生姜味噌
雲腸(くもわた)
    大海から我が胃へたどる雲腸
11/9
海鼠腸(このわた)
    窘める海鼠腸が皿なめる癖
酢海鼠(すなまこ)
    酢海鼠を隣りへ渡すさり気なく
甲羅煮(こうらに)
    甲羅煮や椀からはみ出夕餉かな
蒸鮓(むしずし)
    御馳走と蒸鮓仕度祭の夜
蕪鮓(かぶらずし)
    作れない母が手際の蕪鮓
蕪汁(かぶらじる)
    皮厚くへたそに見えし蕪汁
蒸饅頭(むしまんじゅう)
    湯気話す蒸饅頭が旨いぞと
今川焼(いまがわやき)
    行列が今川焼も今はなし
鯛焼(たいやき)
    鯛焼や餡子かころも味左右
熱燗(あつかん)
    熱燗を母へ教えし父の年
11/10
鰭酒(ひれざけ)
    鰭酒や暖簾が香る宵の口
玉子酒(たまござけ)
    玉子酒熱燗の汗冷める熱
生姜酒(しょうがざけ)
    生姜酒喉に染み入る枕元
寝酒(ねざけ)
    煙草もて寝酒ももてと酔うた父
葛湯(くずゆ)
    口すぼめ母が差し出す葛湯かな
生姜湯(しょうがゆ)
    生姜湯や喉元過ぎて香るかな
蕎麦湯(そばゆ)
    判り出す蕎麦湯が味この店で
蕎麦掻(そばがき)
    よく練れば蕎麦掻香る椀持つ手
夜鷹蕎麦(よたかそば)
    発車ベル敢て立ち寄る夜鷹蕎麦
鍋焼(なべやき)
    鍋焼うどん艶やかな色鍋つかみ
11/11
釜揚饂飩(かまあげうどん)
    テーブルへ載らぬ大きく釜揚饂飩
河豚汁(ふぐじる)
    河豚汁は妻持つ疑問しびれない
葱鮪(ねぎま)
    けふ知りて葱鮪の肉は鮪とは
三平汁(さんぺいじる)
    いれればいい三平汁を得意とす
薩摩汁(さつまじる)
    湯気立つ鍋負けられぬ鶏薩摩汁
粕汁(かすじる) 
    純米吟醸旨味とコクが粕汁ぞ
けんちん汁(けんちんじる)
    蒟蒻や細かく刻みけんちん汁
闇汁(やみじる)
    若き日や白ネギだけが闇汁ぞ
鋤焼(すきやき)
    鋤焼や牛肉を出す父の顔
桜鍋(さくらなべ)
    妻ねだる手に入らぬが桜鍋
11/12
牡丹鍋(ぼたんなべ)
    豚肉や猪より旨い牡丹鍋
成吉思汗鍋(じんぎすかんなべ)
    成吉思汗鍋士幌の町の旨さかな
寄鍋(よせなべ)
    寄せ鍋と具味変わらず水炊きと
ちり鍋(ちりなべ)
    ちり鍋や長ネギたっぷり鱈の味
鮟鱇鍋(あんこうなべ)
    鮟鱇鍋つるりと少し腹八分
石狩鍋(いしかりなべ)
    腕自慢鮭が入れば石狩鍋
薬喰(くすりぐい)
    薬喰言わず食べたし肉の味
おでん
    大根や見ればメニューぞおでんなり
湯豆腐(ゆどうふ)
    湯豆腐や年取り判る苦汁加減
冬構(ふゆがまえ)
    風が吹く急かされ縛る冬構
11/13
北窓塞ぐ(きたまどふさぐ)
    この景色北窓塞ぐ味気なき
目貼(めばり)
    目貼せど隙間ぞ多き我が庵
霜除(しもよけ)
    このあたり霜除はがし芋を掘り
風除(かぜよけ)
    風除や新聞押さえ昼下がり
藪巻(やぶまき)
    藪巻や未だ新しき縄の色
雪吊(ゆきつり)
    雪吊や広がり渡る縄投げる
炬燵(こたつ)
    炬燵より出る気が湧かぬテレビかな
火鉢(ひばち)
    股火鉢信楽焼が鼻を曲げ
湯湯婆(ゆたんぽ)
    湯湯婆湯や母は温もりそっと入れ
炉開(ろびらき)
    炉開や去年が匂いにはやる気よ
11/14
囲炉裏開く(いろりひらく)
    囲炉裏開くお昼が前に一仕事
敷松葉(しきまつば)
    石灯籠強き葉香り敷松葉
口切(くちきり)
    お茶壷道中口切役へ渡し終え
口切茶事(くちきりちゃじ)
     口切茶事先ずは拝見床の壺
橇(そり)
    暦より遅れてけふは橇おろす
冬耕(とうこう)
    冬耕や父振り上げる四本鍬
蕎麦刈(そばかり)
    静けさや蕎麦刈る音が切れ切れに
大根引(だいこんひき)
    北風に追われる如く大根引
大根干す(だいこんほす)
    大根干す笛を鳴らすや稲架の竹
切干(きりぼし)
    切干や母が味する銀杏切り
11/15
蕪引(かぶひき)
    長靴や孫の手伝い蕪引き
干菜(ほしな)
    漬け終りほどかず吊るす干菜かな
蓮根掘る(はすねほる)
    蓮根掘る水の冷たきポンプかな
麦蒔(むぎまき)
    ふわふわの畝に麦蒔き暮れゆけり
フレーム
    胡蝶蘭フレーム占めて連なりぬ
狩(かり)
    猪狩や草に纏われ声も出ず
猟期(りょうき)
    鉄砲と派手なベストが猟期なり
猟夫(さつお)
    夕暮れや鋭眼もどす猟夫かな
猟犬(りょうけん)
    猟犬をほーいとほーい木霊呼ぶ
網代(あじろ)
    さざ波とながれ任せる網代かな
11/16
竹瓮(たっぺ)
    竹瓮浮く大石探す砂利が底
泥鰌掘る(どじょうほる)
    逃さぬと羊羹の如泥鰌掘る
棕櫚剥ぐ(しゅろはぐ)
    背が伸びた棕櫚剥ぐ力生かしけり
馬下げる(うまさげる)
    馬下げる厩が温度馬の息
紙漉き(かみすき)
    ちゃぷちゃぷとけふの音聴き紙漉きぬ
紙干場(かみほしば)
    陽に当たる白さ冴えたり紙干場
紙漉女(かみすきめ)
    華奢な腕リズム崩さず紙漉女
楮晒す(こうぞさらす)
    楮晒す冷たき風の棘の如
焚火(たきび)
    温もりは手のひらよりと焚火かな
落葉焚(おちばたき)
    白い煙だんだん黄なる落葉焚
11/17
木の葉髪(このはがみ)
    仕事より恋を邪魔せし木の葉髪
文化の日(ぶんかのひ)
    憲法より勲章が記事文化の日
勤労感謝の日(きんろうかんしゃのひ)
    勤労感謝の日我働きて誰の日ぞ
十日夜(おおかんや)
    十日夜我が家の神は酔いつぶれ
七五三(しちごさん)
    子の丈や糸をほじきて七五三
千歳飴(ちとせあめ)
    ぶら下げる膝の高さに千歳飴
牡丹焚火(ぼたんたきび)
    炭の山牡丹焚火が香る宵
神の旅(かみのたび)
    寒そうとフリース詰めて神の旅
神迎へ(かみむかえ)
    鴨居の上供え甲斐あり神迎へ
恵比須講(えびすこう)
    絹網ですくいし鮒や恵比須講
11/18
酉の市(とりのいち)
    縁のない遠くの神社酉の市
一の酉(いちのとり)
    熊手持ち通り賑やか一の酉
二の酉(にのとり)
    二の酉や熊手にビニール夜の雨
三の酉(さんのとり)
    餃子屋が二階に集う三の酉
熊手(くまで)
    枯葉舞う熊手担いで婿が庭
十夜(じゅうや)
    僧の嫁幾度も運ぶ十夜粥
芭蕉忌(ばしょうき)
    桜庭や紅く染まりて蛤塚忌
白秋忌(はくしゅうき)
    あの歌を口ずさみたき白秋忌
波郷忌(はきょうき)
    波郷忌や悩み持つ友訪ね来る
一葉忌(いちようき)
    詠み終えて焼くやステーキ一葉忌
11/19
冬眠(とうみん)
    冬眠の熊がゐるぞと山にいる
熊穴に入る(くまあなにいる)
    熊打ちや熊穴に入る山に入る
隼(はやぶさ)
    隼や影と競ひて江戸に着く
鷲(わし)
    音もなく鷲が羽搏き飛びたてり
木菟(みみずく)
    木菟や今宵の茶の間に入り込み
柳葉魚(ししゃも)
    炭弱火あれこれ云ひて柳葉魚焼
蟷螂枯る(とうろうかる)
    蟷螂枯る景色になじむ色になり
冬の虫(ふゆのむし)
    冬の虫何処に潜む鳴きてみよ
帰り花(かえりばな)
    帰り花おぼしき花が多き森
11/20
侘助(わびすけ)
    妻の母床壺に活く侘助ぞ
山茶花(さざんか)
    刈り込まれ山茶花縮み咲く垣根
八手の花(やつでのはな)
    天狗持つ八手の花が白きなり
柊の花(ひいらぎのはな)
    刺々し柊の花寄せつけぬ
茶の花(ちゃのはな)
    見つけるは寒き夕方お茶の花
枯芙蓉(かれふよう)
    枯芙蓉風のリズムがからからと
青木の実(あおきのみ)
    青木の実紅がほんのり夕間暮れ
蜜柑(みかん)
    寒さ増し蜜柑の甘さ増しにけり
仏手柑(ぶしゅかん)
    仏手柑や幸運招く黄色かな
橙(だいだい)
    橙や新旧まぜて生りにけり
11/21
朱欒(ザボン) 
    厚い皮いと剥き易き朱欒かな
冬紅葉(ふゆもみじ)
    息切らす階段半ば冬紅葉
紅葉散る(もみじちる)
    紅葉散る瞬間狙い待つ時間
落葉松散る(からまつちる)
    落葉松散る下駄で階段下る朝
木の葉(このは)
    木の葉舞う風の下より掃けぬ暮
落葉(おちば)
    落葉より木の実を探す子供栗鼠
朴落葉(ほおおちば)
    朴落葉筆をしたため切手貼る
銀杏落葉(いちょうおちば)
    フィナーレと銀杏落葉舞い散りて
冬枯(ふゆがれ)
    冬枯れやサナトリウムへ道一人
冬苺(ふゆいちご)
    冬苺供えさびしや吾子の墓
11/22
冬葵(ふゆあおい)
    冬葵母が躾の糸を切り
カトレア
    カトレアと撮りて鏡を磨きけり
11/23
枯菊(かれぎく)
     枯菊や匂ひ放ちて焚き終えぬ
枯蓮(かれはす)
     枯蓮や茎の鋭き水に伏す
11/24
枯芭蕉(かればしょう)
     草を食む首を垂らして枯芭蕉
白菜(はくさい)
     白菜が上赤鮮やかな鳳来肉
11/25 
芽キャベツ(めきゃべつ)
     店頭へ芽キャベツ見つけ苗を買え
葱(ねぎ)
     葱ぱらり彩大事みそ汁へ
11/26
大根(だいこん)
     大根や夜の寒さに白々と
蕪(かぶ)
     味噌汁へ煮たてずさつと香る蕪
11/27
セロリ
     年ととも慣れか失せたかセロリの香
カリフラワー
     カリフラワーブロッコリーとは異なるぞ
11/28
ブロッコリー
     ブロッコリーあれにはなれぬ色失せど
寒竹の子(かんちくのこ)
     寒竹の子末は釣り竿傘の柄か
11/29
麦の芽(むぎのめ)
     谷挟み丘へと続く麦の芽よ
石蕗の花(つわのはな)
     荒れ草や主なき屋敷石蕗の花
11/30
新海苔(しんのり)
     新海苔や舟に一杯飛沫あぶ
榎茸(えのきだけ)
     繊維質今朝の味噌汁榎茸




俳句手帖 2019-10



10/1
白秋(はくしゅう)
   静けさや白秋の夜聞く汽笛
錦秋(きんしゅう)
   音もなく錦秋の苑葉ぞ光り
晩秋(ばんしゅう)
   晩秋の一つ家集う筆自慢
十月(じゅうがつ)
   十月や我が身に授く世の重き
長月(ながつき) 
   長月の半纏の裾ほつれけり
寒露(かんろ)  
   水鳥の潜りて食みし寒露の日
10/2
秋の暮れ(あきのくれ)
   道ひかる草の実飛ばす秋の暮れ
秋の夜(あきのよる)
   戸を閉めて一部屋集う秋の夜
身に入む(みにしむ)
   父居ぬと夕餉身に入む席ひとつ
秋寒(あきさむ) 
   秋寒や雨戸を閉めるせわし音
そぞろ寒(そぞろさむ)
   云わずとも布団がせかすそぞろ寒
10/3
漸寒(ややさむ)
   漸寒しつるり滑るはだし下駄
うそ寒(うそさむ)
   祭り間近床屋へ後がうそ寒し
肌寒(はださむ)
   肌寒し十時の光よこになり
朝寒(あささむ)
   朝寒や車の息も白くなり
夜寒(よさむ) 
   狭き部屋夜寒は火鉢各々が
霜降(そうこう) 
   息白し霜降る朝の固き砂利
10/4
秋の暮れ(あきのくれ)
   道ひかる草の実飛ばす秋の暮れ
秋の夜(あきのよる)
   戸を閉めて一部屋集う秋の夜
身に入む(みにしむ)
   父居ぬと夕餉身に入む席はあり
秋寒(あきさむ)
   秋寒や雨戸を閉めるせわし音
そぞろ寒(そぞろさむ)
   云わずとも布団がせかすそぞろ寒
10/5
冷まじ(すさまじ)
   冷まじきごいさぎが立つ水なき田
秋深し(あきふかし)
   秋深し隣りの家が動く夜
行く秋(ゆくあき)
   行く秋を追うが如くの落ちる柿
秋惜しむ(あきおしむ)
   紅い花囲むスタジアム秋惜しむ
冬隣(ふゆどなり)
   温暖化雲のかたさま冬隣
10/6
秋晴(あきはれ)
   秋晴や運動会があと黙す
秋日和(あきびより)
   秋日和子犬腹ばい庭を占め
秋の声(あきのこえ)
   風静かくぐる草むら秋の声
秋の空(あきのそら)
   声響く万国旗揺る秋の空
秋の雲(あきのくも)
   いつ見ても明日を思わす秋の雲
10/7
鰯雲(いわしぐも)
   豊漁の予感も空し鰯雲
後の月(のちのつき)
   約束を果たしてくれぬ後の月
十三夜(じゅうさんや)
   明日よりと輝き上り十三夜
秋風(あきかぜ)
   秋風や草の波立ち絮の舞う
色無き風(いろなきかぜ)
   浜名湖や色無き風がわたる朝
10/8
爽籟(そうらい)
   爽籟やウッドカーテンを上に揚げ
秋霖しゅうりん
   秋霖や関所が跡で砂利の音
秋時雨(あきしぐれ)
   秋時雨社映した水溜り
秋雪(秋雪)
   不作にも秋雪の白青き嶺
露時雨(つゆしぐれ)
   急ぐ足裾を濡らすか露時雨
露寒(つゆさむ)
   露寒やカバン揺らして早歩き
10/9
露霜(つゆじも)
   露霜を避けて通れぬ裏の道
秋の霜(あきのしも)
   身震ひて微かに白し秋の霜
釣瓶落し(つるべおとし)
   戯れて釣瓶落して水を汲む
秋の山(あきのやま)
   収穫を見せびらかして秋の山
山装ふ(やまよそおふ)
   温暖化山装ふ日バスは来ず
10/10
秋の野(あきのの)
   忙し世としばし訪ぬ秋の野へ
秋園(しゅうえん)
   秋園や鳥囀りぬ日笠さし
落とし水(おとしみず)
   静けさや水琴如し落とし水
刈田(かりた)
   待ちわびた刈田がベースホームラン
穭田(ひつじだ)
   穭田や風に追われし靡きけり
10/11
秋の川(あきのかわ)
   絹網をさして鮒待つ秋の川
秋の海(あきのうみ)
   輸送船左へ静か秋の海
浅漬大根(あさづけだいこん)
   浅漬大根つれあいが味懐かしき
菊膾(きくなます)
   父が好き母残す味菊膾
氷頭膾(ひずなます)
   氷頭膾色鮮やかも酸いと知り
10/12
柚餅子(ゆべし)
   土産にはふるさとの味柚餅子あり
柚味噌(ゆみそ)
   食欲を誘ふ香りが柚味噌かな
新蕎麦(しんそば)
   新蕎麦や打つと招きし客二人
新米(しんまい)
   新米を載せて自転車重きけり
新麹(しんこうじ)
   切り溜めや花咲く香り新麹
10/13
夜食(やしょく)
   夜食にも息子はマンガ読みふけり
零余子飯(むかごめし)
   零余子飯語るふるさと家もなし
栗飯(くりめし)
   行事とす栗飯の栗買いに行く
橡餅(とちもち)
   橡餅を搗く石臼の重きこと
干柿(ほしがき)
   待ちきれぬ甘き干し柿歯の裏へ
10/14
新酒(しんしゅ)
   新酒でき知らす杉玉つるす朝
古酒(こしゅ)
   古酒には古酒の趣き有ると知る
温め酒(ぬくめざけ)
   野暮抜けぬ息子嗜む温め酒
菊枕(きくまくら)
   野に摘みぬ母にもおくる菊枕
火恋し(ひこいし)
   火恋しや鞄持つ手の冷たさよ
10/15
秋の炉(あきのろ)
   きみしじま秋の炉囲む茶の香り
風炉名残(ふろなごり)
   短冊の軸に替えたる風炉名残
冬支度(ふゆじたく)
   父建てることり垣根や冬支度
松手入(まつていれ)
   五之三と枝を払えと松手入
案山子(かかし)
   稲のない田んぼに残る案山子かな
10/16
鳴子(なるこ)
   鳴子鳴ろ俺が頭と紐引く童
鳥威(とりおどし)
   作れども雀遊ぶや鳥威
脅し銃(おどしづつ)
   目覚ましやけふは不要と威し銃
鹿火屋(かびや)
   鹿火屋にて便りを書かぬ江戸の友
鹿垣(ししがき)
   山の枝鹿垣作り刈り集め
10/17
稲刈り(いねかり)
   稲刈りの三時に口へパンの味
稲架(はざ)
   稲架作り藁より重き丸太かな
新藁(しんわら)
   新藁に残れるぬくみ山と積む
藁塚(わらづか)
   藁塚をラガー配置に積み上げて
夜なべ(よなべ)
   オールナイト落すボリユーム夜なべかな
10/18
砧(きぬた)
   力なく姉は振り上げ砧打つ
新煙草(しんたばこ)
   棚の束光遮り新煙草
新綿(しんわた)
   種ぽろり新綿ふわり母が繰る
新絹(しんきぬ)
   あつあつと新絹の糸繰り出して
種採(たねとり)
   種採りぬ根元に残り次の春
菜種蒔(なたねまく)
   柔肌の如き畑地へ菜種蒔く
萩刈る(はぎかる)
   萩刈りて見上げる山に雲もなく
菱取る(ひしとる)
   波静か菱取り舟が跡伸びる
蘆刈(あしかり)
   蘆刈を追いかけ鳥のせわしこと
葦火(あしび)
   むこうにも葦火の煙立ち昇り
10/19
桑括る(くわくくる)
   皮採りと桑括る束軽きかな
秋繭(あきまゆ)
   農業祭秋繭を選り並ぶ卓
初猟(はつりょう)
   初猟や散弾銃屋根を打つ
崩れ簗(くずれやな)
   台風や時期を早めて崩れ簗
鮭打(さけうち)
   鮭打の極意極めていくら食う
鮭番屋(さけばんや)
   温し石あと少しなり鮭番屋
菊花展(きくかてん)
   菊花展すぐに見つかる母の作
菊人形(きくにんぎょう)
   菊人形顔に似合わぬ色使い
茸狩(きのこがり)
   去年採りし根元荒らされ茸狩
紅葉狩(もみじがり)
   紅葉狩せわしく歩き上を見ず
10/20
芋煮会(いもにかい)
   庄内へ匂いかぎたし芋煮会
重陽(ちょうよう)
   重陽の風母の自慢を倒しけり
登高(とうこう)
   登高す汗の元なる水ぐびり
赤い羽根(あかいはね)
   赤い羽根季節替わりを胸につけ
体育の日(たいいくのひ)
   特異日を体育の日と決め五輪
鹿の角切(しかのつのきり)
   麻酔銃鹿の角切静かなり
べったら市(べったらいち)
   麹の香べったら市の帰りかな
鞍馬の火祭(くらまのひまつり)
   火祭や汗照らしだす松明よ
時代祭(じだいまつり)
   時代祭侍烏帽子傾きて
菊供養(きくくよう) 
   くらがりに紛れゆきたく菊供養
10/21
去来忌(きょらいき)
   去来忌や未だ渋柿ぞ混じりたり
ハロウィン 
   ハローウィン昼の仮装や厚化粧
猪(いのしし)
   軽トラックのびた猪触りたし
馬肥ゆる(うまこゆる)
   馬肥ゆる流鏑馬神事かりだされ
渡り鳥(わたりどり)
   屋根覆ふ今年も来たか渡り鳥
鷹渡る(たかわたる)
   鷹渡る門の木とまる鋭き目
坂鳥(さかどり)
   坂鳥が来たと騙され朝仕度
稲雀(いなすずめ)
   稲雀飛竜がごとし飛びまわり
鵯(ひよどり) 
   鵯や窓辺が枝へけふは来ず
鶫(つぐみ)
   鶫鳴く霞網を張る林なり
10/22
連雀(れんじゃく)
   冠毛やせわしく揺らし連雀よ
獦子鳥(あとり)
   風揺らす獦子鳥さえずり葦の中 
頭高(かしらだか)
   武蔵野へ林を越して頭高
鴿(しめ) 
   鴿狙う空気銃は空を打つ
鶲(ひたき) 
   かちかちと鴿は何処屋敷跡
田雲雀(たひばり)
   田雲雀や葦の河原も風強し
鵲(かささぎ) 
   鵲橋横風に耐え渡り切り
鴇(とき) 
   昼下り刈田に鴇ぞ舞降りぬ
雁(かり) 
   雨あいの月に入る雁一羽づつ
雁行(がんこう)
   ドローン撮る雁行型にある我が家
10/23
初鴨(はつがも)
   初鴨や湖の波たゆく眼を閉じぬ
鴨来る(かもきたる)
   鴨来る水上に立ち羽ばたきぬ
鶴来る(つるきたる)
   双眼鏡山のは彼方鶴来る
落鮒(おちぶな)
   笹舟や落鮒すくう川下る
紅葉鮒(もみじぶな)
   味噌にあうことこと煮込む紅葉鮒
木の葉山女(このはやめ)
   浮かぶ葉をかき分け背鰭木の葉山女
落鰻(おちうなぎ)
   すだれ屋根ベンチに埃落鰻
江鮭(あめのうお)
   瀬田の堰満水染めし江鮭
江鮭(あきがつお)
   江鮭夕日と染める浮御堂
秋鯖(あきさば)
   酢にしめて秋鯖食わす里帰り
10/24
鰯(いわし)
   料理下手鰯が刺身捌けなく
秋刀魚(さんま)
   秋刀魚焼く味が左右塩加減
花咲蟹(はなさきがに)
   閉じられぬ花咲蟹が子持ち腹
残る虫(のこるむし)
   皆去れど余韻に浸る残る虫
蝗(いなご)
   蝗捕るげてもの喰えず塵場行
浮塵子(うんか)
   浮塵子よぶ灯りも絶えて田も暗く
蓑虫(みのむし)
   絶命危惧種すでに蓑虫仲間入り
栗虫(くりむし)
   栗の虫毬鬼渋に守られし
秋の蜂(あきのはち)
   巣近し羽音さびしく秋の蜂
木犀(もくせい)
   木犀の香障子むこう控え待ち
10/25
金木犀(きんもくせい)
   金木犀の林七十七里むせかえる
銀木犀(ぎんもくせい)
   銀木犀財布にしたし犀の肌
洎夫藍(サフラン)
   洎夫藍や瓶に栓して売られおり
芙蓉の実(ふようのみ)
   芙蓉の実咲し謳歌の面影よ
木瓜の実(ほけのみ)
   木瓜の実や転がる先の坂きびし
水木の実(みずきのみ)
   水木の実熟女が襟ほくろあり
椿の実(つばきのみ)
   熟せどもけして落ちまい椿の実
枳橘の実(からたちのみ)
   枳橘の実目立たぬように匂いけし
梔子の実(くちなしのみ)
   梔子の実やまい癒して黄膨れて
藤の実(ふじのみ)
   藤の実や棚から上が透かし彫り
10/26
秋果(しゅうか) 
   ただいまに留守番電話秋果あり
柿(かき)
   柿食えど鐘は聞こえぬパチンコ屋
渋柿(しぶがき)
   渋柿や季節が終り目出番なり
熟柿(じゅくし)
   指先や熟女食らう熟柿かな
林檎(りんご)
   籾探る林檎の色を指でみる
紅玉(こうぎょく)
   紅玉や味の歴史に燦然と
無花果(いちじく)
   フォーク染む無花果ケーキ喉をこし
胡桃(くるみ)
   胡桃パン試食の残りバイト先
鬼胡桃(おにぐるみ)
   細動に耐え握りしめ鬼胡桃
沢胡桃(さわぐるみ)
   登り着く食べられぬとは沢胡桃
10/27
酢橘(すだち)
   薬指昨日刺されし酢橘棘
柚子(ゆず) 
   豊作と柚子の隙間にはいる風呂
柑子蜜柑(こうじみかん)
   久々の照日一杯柑子摘む
金柑(きんかん)
   金柑の皮の旨さが年ごとに
オリーブの実(オリーブのみ)
   オリーブの実あれどこの木は何の木か
檸檬(レモン)
   みかん畑片隅一本檸檬かな
榲桲(マルメロ)
   葉が落ちて榲桲並木丸い影
榠樝の実(かりんのみ)
   流行の風邪を止めるか榠樝の実
茘枝(れいし)
   中華料理冷凍茘枝がじゃりじゃりと
冬瓜(とうがん)
   種まかぬうちの冬瓜木を登り
10/28
紅葉(もみじ)
   ひとはみな紅葉背にしてはいポーズ
照葉(てりは)
   照葉染め紅いセーター色増して
照紅葉(てりもみじ)
   築山と石橋染める照紅葉
紅葉かつ散る(もみじかつちる)
   夕並木紅葉かつ散るボンネット
黄落(こうらく)
   黄落や五十路迎えた友が逝く
雑木紅葉(ぞうきもみじ)
   森林公園雑木紅葉を踏み散歩
楓紅葉(かえでもみじ)
   古寺まもる楓紅葉が鐘の脇
漆紅葉(うるしもみじ)
   かぶれると漆紅葉が毒々し
櫨紅葉(はぜもみじ)
   櫨紅葉疲れ目休め轆轤繰る
10/29
銀杏黄葉(いちょうもみじ)
   銀杏黄葉麓いきたし窓をこし
柞紅葉(ははそもみじ)
   柞紅葉ハンドルは向く仕事すて
柿紅葉(かきもみじ)
   柿紅葉永久の別れあから顔
七竈(ななかまど)
   七竈葉を脱ぎ全て赤を見せ
銀杏散る(いちょうちる)
   銀杏散る車も速度上げ抜けぬ
名の木散る(なのきちる)
   抗へど押し寄せる年名の木散る
色変えぬまつ(いろかえぬまつ)
   色変えぬまつ私も変えず来るをまつ
新松子(しんちぢり)
   主なき庭にも青く新松子
五倍子(ふし)
   大雨と崖崩れあと木五倍子咲く
木の実(このみ)
   真夜中や寝間の庇に木の実落つ
10/30
団栗(どんぐり)
   団栗や袴をやにわ外す昼
椎の実(しいのみ)
   誰見せる缶の椎の実一人っ子
菩提子(ぼだいし)
   菩提子の実翼に載りて遠き地へ
榧の実(かやのみ)
   榧の実や将棋勝負駒の音
無患子(むくろじ)
   声かける無患子が音羽根と飛び
銀杏(ぎんなん) 
   境内の自販機の下銀杏あり
紫式部(むらさきしきぶ)
   上品に紫式部実を熟し
破芭蕉(やればしょう)
   廃寺へ誰ぞ植えしか破芭蕉
残菊(ざんぎく)
   皆枯れど色度いよいよ残菊
落穂(おちぼ)
   誰も居ぬ落穂拾いが風に負け
10/31
落花生(らっかせい)
   振り落とす土に混じらぬ落花生
敗荷(やれはす)
   敗荷や曲がり葉先は地につかず
末枯(うらがれ)
   末枯の野一つ家があり歩く先
萱(かや) 
   萱をさす趣きも無き我が庵
郁子(むべ) 
   郁子みつけ身をほぐしつつ登る山
美男葛(びなんかずら)
   美男葛雌花雄花が出合い待つ
牛膝(いのこずち)
   野原ゆく足を離さじ牛膝
草虱(くさじらみ)
   草虱赤い手甲にハート型
吾亦紅(われもこう)
   想い出す顔も忘れし吾亦紅
烏瓜(からすうり)
   照らし出す夕日が紅く烏瓜
茸(きのこ)
   五種まぜてけふは特別茸飯
松茸(まつたけ )
   松茸や杉の葉の上寝そべりし
湿地(しめじ)
   ばらばらと湿地ほぐして鍋の湯気
椎茸(しいたけ)
   こんこんと椎茸菌が打ち込まれ




今日の季語 2021-4





「万愚節」
     あちこちで恋の伝達万愚節
鐘霞(かねかす)む
    つなぐ手や二つの寺が鐘霞む
「新社員」
    挨拶や偏差値露わ新社員
木の芽時(このめどき)
    静寂な生垣通り木の芽時
「清明(せいめい)」二十四節季
    清明や淡路の橋の潮流れ
花曇(はなぐもり):「養花天」
    花曇連続ドラマテーマ曲
「春荒(はるあれ)」
    春荒やどちらで送る一句二句
若鮎(わかあゆ):「稚鮎(ちあゆ)・上り鮎」
    きらきらと花びらが影上り鮎
「牧開(まきびら)き」
    牧開き一目散にあのブース
海女(あま):「海女の笛」
    てんてんと桶の揺れ音海女の笛
「山独活(やまうど)」
    山独活を判別出来ぬソロキャンプ
桜草(さくらそう):「乙女桜・雛桜」
    歓迎と法面染めて桜草
「別れ霜(わかれじも)」
    くるくると扇風機今朝別れ霜
蜃気楼(しんきろう):「海市(かいし)・喜見城(きけんじょう)」
    海の城あの人もゐぬ蜃気楼
「花水木(はなみずき)」
    向こう岸今年も咲いて花水木
伊勢参(いせまいり):「抜参(ぬけまいり)」
    追い抜かる白い航跡伊勢参 
八重桜(やえざくら):「牡丹桜」
    遅れ人八重の歓待八重桜
蜂(はち):「女王蜂・雄蜂・働蜂」「蜜蜂・熊蜂・足長蜂」
     蜜の満つタンク交換蜂の飛ぶ
「春濤(しゅんとう)」
    春濤の砕けて続く白い浜
穀雨(こくう):二十四節気
    放棄田も紫雲英田も撒く穀雨かな
残る鴨(のこるかも)
    ブラジルへ千切れてテープ残る鴨
磯開(いそびらき):「海下(うみおり)・磯の口開(いそのくちあけ)」
    焼け野原一艘も出ぬ磯開
「猫の子(ねこのこ)」
    行列へ猫の子譲る声密か
薊(あざみ):「野薊・花薊・眉はき・眉つくり」
    薊咲く野原電話ボックスへ知らせ
「春時雨」
    傘がない飛び込む先の春時雨 
炬燵塞ぐ(こたつふさぐ)
    炬燵塞ぐ四畳半テレビ体操
「豆の花(まめのはな)」
    豆の花最後のひとり村はずれ
竹秋(ちくしゅう):「竹の秋」
    人目避けはらはらと舞ふ竹の秋
「河豚供養(ふぐくよう)」
    空に舞ふぶつぶつ唱え河豚供養
勿忘草(わすれなぐさ)
    勿忘草名前と花の結びつき

今日の季語 2021-3

今日の季語 2021-03
 

ミモザ:「銀葉アカシア」
    庭園の大樹真ん中ミモザ咲く
春動く(はるうごく):「春萌す」
    空っぽのかたい鞄の春動く
雛(ひな/ひいな)
    縁ありて奇遇な出逢い吾子と雛
春の夕(はるのゆうべ/はるのゆう):「春夕(しゅんせき/はるゆうべ)」
    御膳だぞ春の夕の父の呼ぶ
啓蟄(けいちつ)
    啓蟄や虫殺させぬこの日本
観梅(かんばい)
    観梅や去年が製品並べ売り
白鳥帰る(はくちょうかえる):「白鳥引く」
    群舞して白鳥帰り点と化す
雛納(ひなおさめ):「雛しまふ」
    柔らかき和紙の年輪雛納
ものの芽(め):「芽」
    ものの芽や静かなり撮影開始
凍(いて)ゆるむ
    じわじわと万物に色凍てゆるむ
東日本震災忌(ひがしにほんしんさいき):震災忌
    白波や晴れど冷え込み震災忌
春景色(はるげしき):「春色・春景」
    染めあがる靡き手拭春景色
柳の芽(やなぎのめ):「芽柳」
    隣脱ぐ愚図愚図出来ぬ柳の芽
春嵐(はるあらし):「春荒(はるあれ)」
    ポリ袋どこまで見えて春嵐
進級(しんきゅう)
    進級や万年筆の届け物
落椿(おちつばき):「椿落つ」
    丘の上ぐるり囲みて落椿か
春北風(はるきた・はるならひ)
    ざらざらと黄色雲ゆく春ならひ
紫雲英(げんげ):「蓮華草(れんげそう)」
    伸ばして手ゴロゴロゴロと紫雲英かな
星朧(ほしおぼろ):「春星」
    ウナギパイ分けてふたつに星朧
残る雪(のこるゆき):「残雪・去年(こぞ)の雪・雪形」
    登山帽丸いアーチが残る雪
霾(つちふる)
    ふんわりと霾朝の鏡肌
春の蝿
    咲き乱る誘惑の外春の蠅
朧夜(おぼろよ)
    我が家は近し朧夜の遠吠えよ
「春の雷」
    名跡や閉ざして蕾春の雷
物種蒔(ものだねま)く:「○○蒔く」
    種を蒔く振るわれ土やふわふわと
「春服」
    春服や立ち回り見せ仕付糸
蒜(にんにく・ひる):「大蒜(おほびる)」
    就活やウーバーが箱匂う蒜
春分
    春分や禰宜ギシギシと御霊様
卒業
    卒業や忘れ去られて通信簿
沈丁花(じんちょうげ)
    防臭剤あがりはな占む沈丁花
桜雨:「花の雨」
    四ツ池や観る人もなく桜雨
    ぽつぽつと染めてや水面花の雨
    ふわりふわ作り始めて花筏

今日の季語 2021-2

今日の季語 2021-02



寒木瓜(かんぼけ):「冬木瓜」
    今朝弾く赤き寒木瓜庭の口
冬の果(ふゆのはて):「果つ・去る・送る」
    キックオフ音柔らかき冬の果て
立春(りっしゅん):「春立つ・春来る」
    春立つや未だ音も無き三時半
垂氷(たるひ):「立氷(たちひ)・銀竹」
    夜もすがらわずかに伸びて垂氷かな
二月(にがつ):「にんがつ」
    しわ寄せて予定一杯二月メモ
初午(はつうま):「一の午・午祭・三の午」
    初午やけふは賑やか煙たつ
残る寒さ(のこるさむさ):「余寒」
    盆石に残る寒さや白き形
雪割草(ゆきわりそう)
    けふは閉ず雪割草や待つ晴日
岩海苔(いわのり):「海苔」
    乱る調べ岩海苔を掻く波の息
薄氷(うすごおり):「春の氷」
    捕まえど消えて指より薄氷
春(はる)スキー
    花弁に押され登るや春スキー
踏絵(ふみえ)
    足袋の跡破れ始めて踏絵かな
芝火(しばび):「芝焼」
    煙色変えて去りゆく芝火かな
春遅(はるおそ)し:「遅き春」
    春遅し胃カメラはみず去年の跡
浅蜊汁(あさりじる):「浅蜊飯・酒蒸し浅蜊」
    初めての一人の夕餉浅蜊汁
草萌(くさもえ):「草萌ゆ・萌ゆ」
    草萌や赤き杭打ち道路際
春の雨(はるのあめ):「暖雨」
    春の雨傘もち出待ち親が群
雨水(うすい)
    舞ふような未だ柔らかき雨水かな
獺祭(だっさい:おそまつり):「獺(かわうそ)魚を祭る」
    獺祭の眺めてみたく熊村へ
白梅(はくばい):「梅白し・梅真白」
    もう遅い寺の白梅散り始む
春(はる)ショール:「春マフラー」
    シヨーウィンド歩き軽やか春ショール
寄居虫(やどかり):「がうな(>ごうな)」・ヤドカリ(宿借)
    やどかりやあらず安住殻探し
蕗の芽(ふきのめ):「蕗の薹(とう)」
    ニョキニョキと蕗の芽の伸びて受く朝日
浅春(せんしゅん):「浅き春」
    弁当や色いろいろなり浅春
菜種御供(なたねごく):「梅花祭」
    波打つ幕今朝晴れ上がり菜種御供
焼山(やけやま)
    つんつんと残り焼山道標
木の芽田楽(きのめでんがく):「田楽・田楽豆腐」
    木の芽田楽山椒の香部屋にみつ
二月逝く(にがつゆく):「逝く・果つ・尽く・過ぐ」
    人並みに動く日多く二月逝く

今日の季語 2021-01

今日の季語 2021-01



年迎(としむか)ふ:「新年・年立つ・年明くる・年越ゆ・来る年・新しき年」 
   白頁一句詠みこみ年迎ふ
初東風(はつごち)
   初東風やくるりと回り凧揚げぬ
三が日(さんがにち):「三ヶ日」
   改まり挨拶交わし三が日
破魔矢(はまや):「破魔弓」の傍題
   電車揺れ和服が胸に破魔矢かな
小寒(しょうかん)
   小寒や小波たてず池の鯉
冬障子(ふゆしょうじ):「障子」だけでも三冬の季語
   娘らが声聞こえぬか冬障子
人日(じんじつ):正月七日
   人日や母の刻みし粥かをる
松明(まつあけ):「注連(しめ)明」
   松明や釘の間隔広めたり
歯固(はがため)
   歯固に外し金冠治して歯
猿曳・猿引(さるひき)
   猿引や指でくるりと宙返り
鏡割(かがみわり)
   女子社員才槌効かぬ鏡割
初句会(はつくかい):「句会始・初運座」
   電子辞書変えて臨むや初句会
白鳥(はくちょう):「スワン・黒鳥」
   白鳥や波もたてずと湖上ゆく
餅の花(もちのはな):「花餅・餅木」
   しなる枝障子に映り餅の花
小正月(こしょうがつ)
   七並べ叔母もかたせて小正月
雪掻(ゆきかき):「雪掻く・雪除け」
   後ろから追ひて雪掻き降り積もり
阪神忌(はんしんき):「阪神淡路震災忌・関西震災忌」
   ダンプ通る揺れの記憶や阪神忌
霜焼(しもやけ)
   霜焼や翳して火鉢熱き足
薬喰(くすりぐい):「寒喰(かんぐい)」
   天井に湯気をあげるや薬喰
大寒(だいかん)
   大寒や耳鳴り在庫総披露
冬凪(ふゆなぎ):「寒凪・凍(いて)凪」
   冬凪や時々ぴょんと兎島
雪礫(ゆきつぶて):「雪丸(まろ)げ・雪ころばし」
   こきこきと鳴るや大きく雪礫
寒烏・寒鴉(かんがらす):「冬鴉」
   夕日染む羽の疲れて寒鴉 
天狼(てんろう):「青星(あおぼし)・狼星(ろうせい)」「シリウス」の青白い光
   天狼や群れず野原の立ち別れ
寒泳(かんえい):「寒泳ぎ」
   寒泳や消て水滴手をかざし
寒椿(かんつばき)
   棚田へとひとつ咲かせて寒椿
   寒椿ひとつだけあり棚田道
採氷(さいひょう):「氷切る・氷挽く」
   氷切るよしの一声響く湖
裸木(はだかぎ):「枯枝・枯木立」
   裸木や峠は遥か道標
冬安居(ふゆあんご):「雪安居」
   灯明の揺れぬ静寂冬安吾
寒卵・寒玉子(かんたまご)
   産みたてや温み消えゆく寒卵
滝凍(たきい)つる:「凍滝(いてだき)・冬の滝・氷瀑」
   通学路坂の真ん中滝凍つる

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9/20/2021

index

今日の季語 2020-12

今日の季語 2020-12




寄せ鍋
    寄せ鍋や妻の手の出ぬ奉行が手
冬の波(ふゆのなみ):「寒濤(かんとう)」
    低き雲高々飛沫冬の波
手袋(てぶくろ):「手套(しゅとう)」
    手袋を見せて太陽指の間に
冬木立(ふゆこだち):「寒林」
    透けて空星散りばめて冬木立
炬燵(こたつ)
    のぼせ顔吾子かくれんぼ炬燵かな
麦の芽(むぎのめ):「芽麦(めむぎ)」
    枯れ畑に麦の芽清し誘ふ触れ
大雪(たいせつ)
    大雪や厚手靴下なくて穴
十二月八日(じゅうにがつようか):「開戦日」
    防波堤波立つ十二月八日
鱈・雪魚(たら):「真鱈・本鱈・鱈場・鱈網・鱈汁」
    夕餉にと鱈の切身を籠に入れ
風邪(かぜ):「感冒・鼻風邪・風邪声(かざごえ)・流感」
    夢壊れスマホが具合風邪の声
鮟鱇鍋(あんこうなべ):「鮟鱇汁・きも和え・七つ道具」
    鮟鱇鍋大吟醸も燗で添え
猟犬(りょうけん):「狩の犬」
    猟犬や本領発揮何を追ふ
枯茨(かれいばら):「茨枯る」
    棘開くジーパンをひく枯茨
凍空(いてぞら):「寒空・冬天」
    凍空やガラスにありて赤い星
膝掛(ひざかけ):「膝毛布」
    膝掛や今朝の冷え込み温き柄
人参(にんじん)
    人参のにほひ未の世はびこりか
冷(つめた)し:「底冷え」
    弱けれど風の冷しシーパップ
年の内(としのうち):「年内」
    締切とせねばならぬが年の内
寒禽(かんきん):「かじけ鳥」
    寒禽の群やいずこと鳴き渡り
煤掃(すすはき):「煤払」
    風の止み障子外して煤掃きぬ
冬至(とうじ)
    皮硬き冬至の南瓜色づけり
飾売(かざりうり):仲冬の生活季語で「注連(しめ)売」
    定点の決め場所にゐぬ飾売
風呂吹(ふろふき):「風呂吹大根」
    風呂吹や口紅沁みておもひ当て
荒星(あらぼし):「寒星・凍て星・星冴ゆ」
    赤き荒星梢が中へひと休み
聖樹(せいじゅ):「クリスマスツリー」
    出窓にも小さき聖樹や灯りたり
息白(いきしろ)し:「白息(しらいき)」
    先頭の小さき白息汽車ごっこ
室咲(むろざき):「室の花」
    室咲や部屋の景色の華やかさ
歳晩(さいばん):「年の暮・年の瀬・年の名残・年尽く」
    歳晩や左に電話押す判子
仕事納(しごとおさめ):「御用納・御用終(ごようじまい)」
    餅供え仕事納もしまいなり
暦果(こよみは)つ:「古暦・暦古る・暦の末」
    人生訓破り棄てられ暦果つ
年の夜(としのよ):「除夜」
    耳鳴りも年の夜何処先に去り


今日の季語2020/11月  今日の季語2021/1月

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今日の季語 2020-11

今日の季語 2020-11


秋寂(あきさ)び:「秋寂ぶ」
    秋寂ぶや葉の減り徐々に先の見え
漸寒(ややさむ):「やや寒し」
    漸寒し布団を手繰る夢の中
酢橘(すだち):晩秋の植物季語「木酢(きず)」
    熱豆腐酢橘のかをる湯気のなか
冬近(ふゆちか)し:「冬隣(ふゆどなり)・冬を待つ」
    蜘蛛糸に枯葉やまわる冬近し
晩菊(ばんぎく):晩秋の植物季語
    晩菊や数多の敵を倒したり
行く秋(ゆくあき):「秋の別れ・秋の果て・秋の名残」
    行く秋や荒野に人の影もなく 
立冬(りっとう):「冬立つ・冬来る・今朝の冬」
    生垣の蔓も枯れ切れ今朝の冬
枯柳(かれやなぎ):「柳枯る・冬柳」
    カラフルな看板見えて枯柳
虫老(むしお)ゆ:「冬の虫・虫絶ゆ」
    虫老ゆも今朝の耳鳴り多彩なり
跳(なわとび):「綱跳・ゴム縄飛び」
    縄跳やだんだん増える記録帳
毛布(もうふ):「電気毛布」
    ヒーローに毛布広げて飛び下りて
帰り花(かえりばな):「返り咲き・忘れ花」
    ふたつみつ隠れるように帰り花
焼鳥(やきとり)
    焼鳥や恋も煙も過去も消ゑ
酉の市(とりのいち):「熊手・一の酉・二の酉・三の酉」
    宵闇に響く下駄音酉の市
毛糸編(けいとあ)む:「毛糸・毛糸玉」
    目は我が子母はぺちゃくちゃ毛糸編む
暮早(くれはや)し:「短日・暮易(くれやす)し・短景」
    暮早し押してシャッター夕景色
水鳥(みずとり):「浮寝鳥」
    水鳥や朝の鳴き声過疎地にも
木の葉髪(このはがみ)
    新聞紙梳く柘植とまり木の葉髪
蕎麦湯(そばゆ)
    ひびの入る自作の湯呑蕎麦湯飲む
夜咄・夜話(よばなし):「炉辺咄(ろへんばなし)・夜咄茶事(ちゃじ)」
    夜咄やねずみ聴き来て梁の上
焼芋・焼藷(やきいも):「石焼芋・栗(九里)・八里半」
    サンダルや石焼き芋が笛を追ひ
小雪(しょうせつ)
    小雪や闇夜白々干す野菜
凩・木枯(こがらし)
    白波や木枯らしは行く湖の上
冬の暮(ふゆのくれ):「寒暮(かんぼ)」
    煮えたろか炭は足さなく冬の暮
冬木の芽(ふゆきのめ)
    辿り着き街の外れに冬木の芽
芭蕉忌(ばしょうき):「桃青忌・翁忌・時雨忌」
    芭蕉忌や荒れ野さまよふ今朝の夢
神無月(かんなづき):「時雨月・初霜月」
    けふ試験誰に頼むか神無月
千鳥・鵆(ちどり):「浜千鳥・小夜千鳥」
    大波を細かき運び千鳥逃ぐ
切干(きりぼし):「切干作る・切干大根」
    母鼻歌切干作り白き山
毛皮(けがわ)
    毛皮コート質屋の出窓艶やかに

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今日の季語 2020-10

今日の季語 2020-10



良夜(りょうや):「良宵・佳宵」
   歩きたき早くゆっくり良夜かな
秋の七草(あきのななくさ)
   土手整備秋の七草なくなりて
障子洗(しょうじあら)ふ  
   破りて良い障子洗ふが楽しみで
秋冷(しゅうれい):「冷やか・冷ゆ・ひえびえ」
   秋冷や豚の背中をぺたぺたと
木賊(とくさ):「木賊刈る」
   公民館一株隅へ木賊植ふ
氷頭膾(ひずなます):「氷頭」
   氷頭膾酢加減のよく噛み心地
豊年(ほうねん):「豊作・豊(とよ)の秋・出来秋」
   豊年や黄金の波押し寄せり
寒露(かんろ)
   ウオーキングクローゼット悩まず着替寒露かな
新松子(しんちぢり):「青松笠」
   遊び飽き泥をかぶりし新松子
うそ寒(さむ):「薄寒・うすら寒」
   うそ寒や先月号が見当たらず
林檎(りんご):「紅玉」など
   寒さ添え林檎一箱送り着く
草紅葉(くさもみじ):「草の錦・色づく草」
   三方原いくさが跡の草紅葉
今年酒(ことしざけ):「新酒」傍題「新走・利酒」
   酒蔵を並べ六本今年酒
茱萸(ぐみ):「夏茱萸・秋茱萸・茱萸酒」
   食わぬ母茱萸が味知り四十歳
鵙の贄(もずのにえ):「鵙の早贄・鵙の草茎(くさぐき)」
   手の届きすぐに見つかり鵙の贄
梅擬・梅嫌(うめもどき):白梅擬
   夕日受くますます紅く梅擬
相撲草・角力草(すもうぐさ・すまいぐさ):「相撲取草・力草」
   手刀に負けぬ強さや相撲草
きりたんぽ:「たんぽ餅」
   あがる湯気串の突き出てきりたんぽ
秋果・秋菓(しゅうか):「秋の果物」
   風届く遺影の前に秋果上げ
囮(おとり):「囮番・囮籠」
   もちが枝紅い実の待つ囮籠
野山の錦(のやまのにしき):「秋の錦・野山の色」
   額におさめたき野山の錦かな
秋気(しゅうき):「秋の気」
   種々の膨らみ始め秋気かな
霜降(そうこう):二十四節気季語
   霜降に帽子屋展示変えてみて
火恋(ひこい)し:「炉火恋し」
   障子閉め座るに座れず火の恋し
登高(とうこう)
   登高へ健脚参加卒寿かな
崩れ簗(くずれやな)
   清流も洪水の積む崩れ簗
金柑(きんかん):「金橘(きんきつ)・姫橘」
   鈴なりも金柑喰えず腹すけど
爽籟(そうらい):「秋風」の傍題の一つ
   爽籟や対岸灯る観覧車
柿(かき):晩秋の植物季語「渋柿・甘柿・百目柿・次郎柿」
   猿落とし狸が化かし甘し柿
   落とす猿化かして狸甘き柿 
松茸(まつたけ):「土瓶蒸し」
   はらり松葉待つは松茸我を待つ
ハロウィーン・ハロウイン:「万鬼(ばんき)祭・万妖祭」
   ハロウィーン便乗開くスキー場

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今日の季語 2020-09

今日の季語 2020-09



休暇明(きゅうかあけ):「休暇果つ・冬休・春休・明ける」
    うつすらと机に埃休暇明
秋の蝉(あきのせみ):「秋蝉(しゅうせん)・残る蝉」
    耐えられぬ猛暑に負けて秋の蝉
稲雀(いなすずめ):「秋雀」
    天竜の河原見下ろし稲雀
馬鈴薯(ばれいしょ・じゃがいも)
    馬鈴薯やごろごろでかきカレーかな
地虫鳴(じむしな)く:「地虫・すくもむし・蚯蚓鳴く」
    地虫鳴く高音で鳴く仲間ゐて
茗荷の花(みょうがのはな)
    茗荷の花白く短き畑の隅
白露(はくろ)
    女医と会ふ術後検診白露かな
玉蜀黍(とうもろこし):「もろこし・唐黍(とうきび)・南蛮黍・なんばん」
    玉蜀黍皮剥かずままレンジチン
秋遍路(あきへんろ)
     ごろごろ石足に冷たき秋遍路
ピーマン:「唐辛子」の傍題
    おもひだすピーマン丸煮あのにほひ
風船蔓(ふうせんかずら)
    棚田道風船蔓虫招き
秋簾(あきすだれ・あきす):「簾納む・簾外す」などとも
    新築やそぐわぬ秋簾未だ立てり
秋場所(あきばしょ):「九月場所・相撲」
    秋場所や大物喰ひの小兵達
碇星(いかりぼし):「カシオペア・山形星」
    湖写すきみのイニシャル碇星
竹伐(たけき)る
    竹伐りて籠屋一人で山と積み
鮭(さけ・しゃけ):「秋味」
    網が待つ千代田えん堤鮭が群れ
思草(おもいぐさ)
    うなだれてこの手離さじ思草
添水(そうず)「ばったんこ」
    庭の石叩き一鳴添水かな
子規忌(しきき):「糸瓜忌(へちまき)・獺祭忌(だっさいき)」
    降り立ちぬ蛇口ジュースや子規忌かな
杜鵑草・時鳥草(ほととぎす):「油点草」
    つるくさに絡み付かれて杜鵑草
虫籠(むしかご・むしこ)
    虫籠や草むらやたらかき分けて
秋分(しゅうぶん)
    禰宜来たり秋分の祝詞高らかに
秋興(しゅうきょう):秋の遊び (あきのあそび)
    秋興や浜辺の町で鹿踊り
紫苑(しおん)
    皆召され誰も居ぬ庭紫苑咲く
不知火(しらぬい):「龍燈」
    不知火の元にいた舟父は見ず
鮞(はららご):「筋子・イクラ」
    函館や腹いっぱいにイクラ丼
秋の雨(あきのあめ):「秋雨(あきさめ)・秋霖(しゅうりん)」
    秋雨や短冊雑に読まれけり
鮭颪(さけおろし)
    堰堤やひかる銀鱗鮭颪
海猫帰(ごめかえ)る
    鳴き声の聞こゆ遠くへ海猫帰る
生姜(しょうが)
    Aランチこの店かをる生姜焼き

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今日の季語 2020-08

今日の季語 2020-08



涼(すず)み「涼む」 
    じっとせず川辺に求む夕涼み
登山(とざん):「山小屋・登山杖・ザイル」
    参千米越してはじめて登山口
日盛(ひざかり)「日の盛り」
    日の盛り頬に墨塗る一塁手
夏の月(なつのつき)
    明日も会ふ靴音高き夏の月
熱帯夜(ねったいや)
    ポンプの音水滴流る熱帯夜
炎(も)ゆ
    炎ゆる地や抱える資料打合せ
立秋(りっしゅう)
    立秋の田白鷺家族舞い降りぬ
藪虱(やぶじらみ)「草虱」
    トレッキングシューズきのふ山から藪虱
鯊釣(はぜつり)
    鯊釣や素人相手が忙しく 
鬼灯・酸漿(ほおずき)
    酸漿の種取だけが上手くなり
赤蜻蛉(あかとんぼ)「秋茜・のしめ」
    返す翅七色やわき赤蜻蛉
阿波踊り(あわおどり)
    踊りたく踊り心の阿波踊
盆休み(ぼんやすみ)
    風わたる人居ぬ田圃盆休み
蟿螽・飛蝗(はたはた):「ばった」「きちきち」
    分け入ればばった一斉散り散りぬ
色なき風(いろなきかぜ):「風の色・素風(そふう)」
    絶えられぬ突っ張り消えて風の色
精霊舟(しょうりょうぶね)「盆舟・灯籠舟」
    哀しみも精霊舟と流しましょ
秋海棠(しゅうかいどう):「断腸花・断腸亭」
    秋海棠昔より咲き殿の庭
放屁虫(へひりむし):「へっぴり虫・へこき虫・亀虫」
    わかりながらもへっぴり虫の臭い嗅ぎ
狗尾草(えのころぐさ・えのこぐさ):「ゑのころ・猫じゃらし」
    戯れて犬がくしゃみか猫じゃらし
初秋はつあき・しょしゅう):「新秋・秋浅し」
    初秋や口笛を吹く隣りの子
星月夜(ほしづきよ・ほしづくよ):「星明り」
    きれいねと貴女が言った星月夜
藪枯(やぶから)し:「貧乏葛」
    くるくるとまわるあげはや藪枯し
処暑(しょしょ)
    グリーンカーテン伸びきらず終わり処暑かな
虫(むし):「虫の声・虫時雨」
    足音に合わせてぱたり虫の声
星合(ほしあい):「星逢ふ夜・別れ星」
    小夜更けて星合眺めきみ想ふ
秋の浜(あきのはま):「秋渚(あきなぎさ)・秋汀(しゅうてい)」
    何もない砂だけ続き秋の浜
今日の季語 爽(さわ)やか:「さやか・さやけし・爽やぐ」
    わだかまり爽やかな朝消え去りぬ
秋団扇(あきうちわ):「団扇置く・捨団扇・秋扇」
    来年の出番備えて秋団扇
ホップ:「唐花草・ホップ摘む」
    旅行鞄僅かに残りホップの香
浮塵子(うんか):「糠蝿(ぬかばえ)・雲霞のごとき」
    ヘッドライト光軸の先浮塵子占む
青瓢(あおふくべ):「瓢箪・ひさご」
    棚一番幾つも出来て青瓢

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今日の季語 2020-07

今日の季語 2020-07



辣韮(らっきょう)
    デミジョンボトル漬けし辣韮一個ずつ
魚簗・簗(やな)
    銀輪をなりて子供に簗の上
吊忍・釣忍 (つりしのぶ)
    吊忍外から観たく止むを待ち
簾(すだれ)
    沈む日や巻き揚ぐ簾紐重し
南瓜の花(かぼちゃのはな)
    露踏みて南瓜の花を探す朝
梅雨空(つゆぞら)
    ジェットコースター今梅雨空のてっぺんに
小暑(しょうしょ)
    寝覚め床汗もかかずに小暑かな
団扇・団(うちわ)
    風を切るあおぐ団扇ぞ闇の中
青田(あおた)
    父を追ふペダルの重き青田道
辱暑(じょくしょ)
    なにもかも洪水奪ふ辱暑かな 
汗拭ひ(あせぬぐい)
    手をのばし風に乗りゆく汗拭ひ
送り梅雨(おくりづゆ)
    東京タワー赤よみがえり送り梅雨
冷酒(ひやざけ・れいしゅ)
    海の青けふが釣果や冷酒つぐ
烏賊釣(いかつり)
    こうこうと海なめらかに烏賊釣火
熱帯魚(ねったいぎょ)
    泡弾き静寂のなき熱帯魚
冷麦(ひやむぎ)
    冷麦や父がこだわり茹で加減
紙魚・衣魚(しみ)
    現行犯糊の食み跡紙魚がいて
睡蓮(すいれん)
    睡蓮の葉も焼け熱き池の水
白鷺(しらさぎ)
    じっといて白鷺一羽岸辺にて
月下美人(げっかびじん)
    月下美人視線逸らせば開ききり
雲海(うんかい)
    雨上がり雲海が上友と逢ふ
天瓜粉・天花粉(てんかふん)
    あやし声まだら模様が天花粉
海水浴(かいすいよく)
    水着が闊歩海水浴が見える街
端居(はしい)
    照らす庭柱背にして端居かな
夕焼(ゆうやけ・ゆやけ)
    自販機や新発売誘う夕焼
キャンプ:「キャンプファイヤー・キャンプ村・テント・オートキャンプ」
    不機嫌めくキャンプの朝のむくれ顔
大暑(たいしょ)
    一枚減り大暑の午前葉書書き
日焼け(ひやけ)
    歯が白き鏡が中の日焼け顔
蚊遣火(かやりび)
    蚊遣火や伸びる一筋夕静か
跣足・裸足(はだし):「はだ(肌)あし(足)」「素足」
    熱き砂丘裸足で登る中田島
夜釣(よづり)「夜釣火・夜釣舟」
    大物としびれる竿と夜釣かな
涼(すず)み「涼む」
    じっとせず川辺に求む夕涼み

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