9/21/2021

俳句手帖 2020-06

俳句手帖 2020-06




6/1
夏の日(なつのひ)
    歌謡曲空と海ある夏の日よ
六月(ろくがつ)
    我誕生六月の雨降る日
皐月(さつき)
    校舎よりブラス揃いし皐月かな
芒種(ぼうしゅ)
    水盤へ芋を浸らす芒種かな
田植時(たうえどき)
    田植時自慢話の植える技
入梅(にゅうばい)
    入梅を知らせる如しどつと降り
梅雨寒(つゆさむ)
    梅雨寒や箪笥の中を入れ替えて
夏至(げし)
    着る着ない寒暖を知る夏至の朝
6/2
白夜(はくや)
    築山へてふの舞来る白夜かな
半夏生(はんげしょう)
    一枚だけ植え残りたり半夏生
短夜(みじかよ)
    短夜や雨戸を閉める暇もなく
明易し(あけやすし)
    太極拳声音は出さず明易し
暑し(あつし)
    暑し朝隣りも雨戸開け広げ
涼し(すずし)
    涼し朝歯磨きが音忙しけり
梅雨(つゆ)
    梅雨迎ゆコウモリ傘が修理屋
梅雨晴間(つゆはれま)
    水溜り挑む大きさ梅雨晴間
6/3
五月雨(さみだれ)
    スクランブル五月雨もなくまばらなり
五月闇(さつきやみ)
    ウォーキングリセットスタート五月闇
夏の雲(なつのくも)
    連なりてスカイツリーを夏の雲
夏の月(なつのつき)
    日は暮れど涼しさ呼ばぬ夏の月
南風(はえ・みなみ)
    過ぎたるや茣蓙巻き上げて入る南風
黒南風(くろはえ)
    黒南風や流れし雲へ隠れ鳥
嵐(あおあらし)
    自転車は野原を抜けり青嵐
やませ
    風知れどやませの寒き知らぬとは
6/4
五月晴(さつきばれ)
    深呼吸甍が上に五月晴
空梅雨(からつゆ)
    空梅雨やかうもり傘が忘れ棚
海霧(じり)
    海霧襖音が聞こえど見えぬ色
夏霧(なつぎり)
    夏霧や峠を越して落ちる滝
虹(にじ)
    虹に向き足は東に我が庵
雷(かみなり)
    雷や生まれたばかり湯気上り
五月富士(さつきふじ)
    次郎長もここから眺む五月富士
雪解富士(ゆきげふじ)
    雲もなく水吹上し雪解富士
6/5
夏野(なつの)
    丈高く行く道覆ふ夏野原
夏の水(なつのみず)
    崖っぷち道路突っ切る夏の水
出水(でみず)
    濁り水昨夜が出水苗が浮き
植田(うえだ)
    水鏡植田が模様富士写し
早苗田(さなえだ)
    静けさや早苗田に聞く水琴窟
五月田(さつきだ)
    五月の田水を磨きて逆さ富士
噴井(ふけい)
    故郷や噴井音なくこんこんと
井水増す(いむずます)
    手に届く井戸輪一枚井水増す
6/6
夏の川(なつのかわ)
    腰までの底が揺らめく夏の川
夏の海(なつのうみ)
    夏の海揺らめきながら運搬船
夏の浜(なつのはま)
    熱き水足首流る夏の浜
夏服(なつふく)
    夏服や団子並べし釦かな
単衣(ひとえ)
    庭の花眺めて母の縫ふ単衣
初浴衣(はつゆかた)
    てふ結びきりりと締めて初浴衣
夏シャツ(なつしゃつ)
    誂えし夏シャツ入れる窓の風
夏帯(なつおび)
    夏帯や金魚が泳ぐ水模様
6/7
白靴(しろぐつ)
    雨止めど白靴三足ショーウィンドウ
ハンカチ(はんかち)
    門先へハンカチ落とす男行く
梅干す(うめほす)
    漬け具合梅干すことも主婦初め
網戸(あみど)
    小き声網戸の目より小虫来て
青簾(あおすだれ)
    青簾まだ帰らぬか貸しボート
古簾(ふるすだれ)
    納屋の前しまい忘れた古簾
日除(ひよけ)
    風強しまくれる日除色抜けて
夏暖簾(なつのれん)
    夏暖簾はらいて息子いつ戻り
6/8
籐椅子(とういす)
    籐椅子や座り心地が今一つ
葦簀(よしず)
    夕暮れや残る温みの葦簀巻き
ハンモック
    ハンモックかわりばんこの横揺らし
蚊遣火(かやりび)
    蚊遣火やむせる主も蚊と出でり
風炉茶(ふろちゃ)
    若き日の脚のしびれが風炉茶かな
風炉手前(ふろてまえ)
    風炉手前若き主がしびれ脚
初風炉(はつふろ)
    初風炉や古き水指友気付き
夏茶碗(なつぢゃわん)
    夏茶碗広く浅きや点てやすし
6/9
苗取(なえとり)
    ぺちゃくちゃと苗取の声響き来て
田植(たうえ)
    晴れた日の田植がリズム邪魔もなき
早乙女(さおとめ)
    早乙女へ昼のサイレン届けたり
竹植う(たけうう)
    竹植うる鉢の重きにままならず
豆植う(まめうう)
    豆植うる畦の穴跡波打たず
粟蒔き(あわまき)
    雨は来ぬ畑ふわりに粟蒔きぬ
水中花(すいちゅうか)
    誰も見ぬ夜中満開水中花
蛍狩(ほたるがり)
    かごを持ち門を出ずれば蛍狩
6/10
草笛(くさぶえ)
    草笛や単音のみのつまらなさ
麦笛(むぎぶえ)
    茎抜きて麦笛作る帰り道
夜釣(よづり)
    忙し気に晩飯くらひ夜釣りかな
時の記念日(ときのきねんび)
    気忙しく時の記念日花時計
父の日(ちちのひ)
    父の日にけふ帰るぞと留守電話
薬狩(くすりがり)
    効能も草の名も失し薬狩
名越の祓(なごしのはらえ)
    汗たらし名越の祓去年のこと
夏祓(なつはらえ)
    若き祢宜アメリカ帰り夏祓
6/11
形代(かたしろ)
    形代や目肩胸とさする音
茅の輪(ちのわ)
    砂利乾くくぐる長靴茅の輪かな
さくらんぼ祭(さくらんぼまつり)
    さくらんぼ祭種を飛ばせば1パック
貴船祭(きぶねまつり)
    水占ひ紙の透け流る貴船祭
百万石祭(ひゃくまんごくまつり)
    百万石祭役になりきり門抜けて
御田植祭(おたうえまつり)
    御田植祭うつむく顔へ照り返し
ちゃぐちゃぐ馬こ(ちゃぐちゃぐうまこ)
    飾りつけちゃぐちゃぐ馬こうひうひし
6/12
安居(あんご)
    墨含み深く一息安居かな
夏行(げぎょう)
    人もゐぬ夏行始まり静まりぬ
夏籠(げごもり)
    読誦や夜の夏籠漏れてくる
夏断(げだち)
    硯石吾子も真似する夏断かな
夏書(げがき)
    開け放し夏書読誦合掌す
聖体祭(せいたいさい)
    敬虔な思い覚ますや聖体祭
鑑真忌(がんじんき)
    薄日さす唐招提寺鑑真忌
独歩忌(どっぽき)
    武蔵野はあまりに遠き独歩の忌
6/13
芙美子忌(ふみこき)
    連絡船島に隠れし芙美子の忌
鹿の子(しかのこ)
    鹿の子の足の長さやか細さや
親鹿(おやじか)
    親鹿や後ろ確かめ信号を
亀の子(かめのこ)
    亀の子やすることもなく甲羅干し
海亀(うみがめ)
    砂浜に海亀が跡長々と
蟇(ひきがえる)
    蟇濡れてゐるかの四つん這い
河鹿(かじか)
    夕暮れに水辺の散歩河鹿聞く
夕河鹿(ゆうかじか)
    夕河鹿暑さが残る川辺道
6/14
河鹿笛(かじかぶえ)
    せせらぎにリズムが狂う河鹿笛
山椒魚(さんしょううお)
    清流を山椒魚ぞ石に沿い
蚯蚓(みみず)
    一匹の蚯蚓何匹鮒を釣る
翡翠(かわせみ)
    翡翠やけふも川面に触れもせず
閑古鳥(かんこどり)
    草原に一人だけ聞く閑古鳥
筒鳥(つつどり)
    筒鳥や弾む声聞く谷向こう
仏法僧(ぶっぽうそう)
    仏法僧雨降る夜のラジオかな
燕の子(つばめのこ)
    燕の子所狭しと五羽育ち
6/15
鴉の子(からすのこ)
    羽ばたきて屋根まで飛べた鴉の子
鶉の子(うずらのこ)
    繕い物母の手止める鶉の子
水鳥の巣(みずとりのす)
    枯蘆や水鳥の巣へ編みこまれ
鳰の浮巣(におのうきす)
    潜り込み鳰の浮巣へ泡三つ
鷭の浮巣(ばんのうきす)
    飛び込めば鷭の浮巣も揺れ動く
夏の鴨(なつのかも)
    棲む場所に列なし帰る夏の鴨
通し鴨(とおしがも)
   人みてもおどおどしない通し鴨
子鴨(こがも)
    子鴨たち川の流れに乗り下り
6/16
軽鳧の子(かるのこ)
    急流に軽鳧の子揺れて列進み
濁り鮒(にごりぶな)
    釣り人を欺き遡上濁り鮒
源五郎鮒(げんごろうぶな)
    釣り人へ源五郎鮒浮勝負
鮎(あゆ)
    鮎解禁夜明けの岸辺騒がしき
鮎の宿(あゆのやど)
    連泊も海のものでぬ鮎の宿
囮鮎(おとりあゆ)
    トンネルを出れば大きく囮鮎
岩魚(いわな)
    梁煤け岩魚が囲む囲炉裏かな
目高(めだか)
    最後には目高三匹だけとなり
6/17
緋目高(ひめだか)
    上からも見えぬ緋目高苔の中
鰻(うなぎ)
    どくばりを仕掛けて鰻とれぬ朝
鯵(あじ)
    三枚におろして鯵は網の上
手長蝦(てながえび)
    水澄めど網に入らぬ手長蝦
蛍(ほたる)
    田に映る二匹の蛍我にのみ
平家蛍(へいけぼたる)
    放しても平家蛍は蚊帳の中
源氏蛍(げんじぼたる)
    葉の影の源氏蛍が明るさよ
夏蚕(なつご)
    忙し気に夏蚕が食みし桑の音
6/18
蚕蛾(さんが)
    飛べなくも羽化の証が蚕蛾かな
山繭(やままゆ)
    照らし出すゆるり山繭羽ばたきぬ
落し文(おとしぶみ)
    青年や門先にあり落し文
初蜩(はつひぐらし)
    初蜩ランプ灯れし控えめに
蜻蛉生まる(とんぼうまる)
    陽射し受け蜻蛉も生まる川面より
川蜻蛉(かわとんぼ)
    川蜻蛉岸辺の草に立ち寄りて
蟷螂生まる(とうろううまる)
    おびただし蟷螂生まる細き枝
孑孑(ぼうふら)
    孑孑や誰かが動く誰の番
6/19
蠛蠓(まくなぎ)
    門先へ蠛蠓の群れ待ち伏せし
蚊(か)
    暗闇の蚊が飛行先は我の耳
蛾(が)
    大きな蛾羽根ゆったりと灯る先
桜の実(さくらのみ)
    食べ頃と一羽啄ばむ桜の実
桜の実となる(さくらのみとなる)
    桜の実となれども捥ぐ人もなき
紫陽花(あじさい)
    紫陽花寺大きな房が覆ふ道
額の花(がくのはな)
    額の花一雨ごとの重さかな
花橘(はなたちばな)
    足音や花橘のかをる夜
6/20
百日紅(さるすべり)
    僧自慢名園に咲く百日紅
梔子の花(くちなしのはな)
    枝太く梔子の花咲き誇り
杜鵑花(さつき)
    盆栽の枝に針金杜鵑花から
繍線花(しもつけ)
    繍線花が一輪挿しへ文机
未央柳(びょうやなぎ)
    雄蕊雌蕊すべて黄色い未央柳
夾竹桃(きょうちくとう)
    排煙に負けて真っ黒夾竹桃
南天の花(なんてんのはな)
    背の高き南天の花切り揃へ
朱欒の花(ザボンのはな)
    秋の実より朱欒の花を愛しみ
6/21
橙の花(だいだいのはな)
    残り果や橙の花囲み咲き
柚子の花(ゆずのはな)
    柚子の花手伸ばせば棘が邪魔する柚子の花
オリーブの花
    オリーブの花院長植えし西の庭
柿の花(かきのはな)
    柿の花繁る葉の影雨宿り
石榴の花(ざくろのはな)
    石榴の花姉の友達長話
青梅(あおうめ)
    喰いたくも母が戒め青い梅
実梅(みうめ)
    木をたたき実梅ぼたぼた一筵
小梅(こうめ)
    ゴリゴリと好きになれない小梅かな
6/22
楊梅(やまもも)
    楊梅をぐるりと赤く染めにけり
さくらんぼ
    さくらんぼ花眺めども味知らず
山桜梅(ゆずらうめ)
    蝶誘ふ白き花弁山桜梅
李(すもも)
    風の先李あつまり香を放ち
巴旦杏(はたんきょう)
    遮断する山の村にも巴旦杏
杏子・杏()あんず
    新築を祝ふがごとし杏子咲く
枇杷(びわ)
    太き枇杷めがけて登り年一度
夏蜜柑(なつみかん)
    登り着く花と実も混じる夏蜜柑
6/23
青葉(あおば)
    トンネルぬけ輝く青葉月に着く
茂る(しげる)
    草茂る手入れ始めぬ我が庵
万緑(ばんりょく)
    万緑の野原突き抜け愛し人
椎の花(しいのはな)
    椎の花雨が絨毯汚しけり
木斛の花(もっこくのはな)
     雨上がりかをりに仰ぎ木斛の花
えごの花
    えごの花もみもみされてシャボン玉
桑の実(くわのみ)
    桑の実や洗えど消えぬ染まる色
夏桑(なつぐわ)
    夏桑や籠一杯の軽きこと
6/24
青桐(あおぎり)
    天仰ぐ青桐高し廃れ寺
竹の皮脱ぐ(たけのかわぬぐ)
    かぐや姫竹の皮脱ぐ朝仕事
竹の花(たけのはな)
    竹の花ただならぬ色胸騒ぎ
篠の子(すずのこ)
    篠の子や声かけありて山の裾
笹の子(ささのこ)
    笹の子や不味きも知らぬ採りもせず
杜若(かきつばた)
    杜若見分けがつかぬ学のなさ
渓蓀(あやめ)
    山頂の渓蓀畑に靴の跡
花菖蒲(はなしょうぶ)
    花菖蒲長じてどれも同じ色
6/25
菖蒲(しょうぶ)
    高々と一株菖蒲庭を見る
鳶尾草(いちはつ)
    茅葺屋根鳶尾草育つ棟高し
芍薬(しゃくやく)
    暗闇に芍薬ほのか咲くかいど
グラジオラス
    母が庭グラジオラスばかりなり
葵(あおい)
    陽を浴びて葵大きく庭で待つ
ガーベラ
    ガーベラや買ってやれない育て方
金魚草(きんぎょそう)
    金魚草花瓶満杯色いっぱい
アマリリス
    アマリリス縦笛上手く吹けなくて
6/26
鬼灯の花(ほおずきのはな)
    今朝知りて鬼灯の花白きこと
紅の花(べにのはな)
    紅の花揉む手も染めて戯れし
青芭蕉(あおばしょう)
    月明り大きく招く青芭蕉
芭蕉若葉(ばしょうわかば)
    雨間近芭蕉若葉が巻きを解き
馬鈴薯の花(ばれいしょのはな)
    濃紫馬鈴薯の花雨の下
茄子の花(なすのはな)
    茄子の花家庭菜園初物に
人参の花(にんじんのはな)
    泥のつく人参の花雨上がり
南瓜の花(かぼちゃのはな)
    交配す無駄に大きな南瓜花
6/27
早苗(さなえ)
    ぺちゃくちゃと女三人早苗取り
捨苗(すてなえ)
    水取り口役に立たせる捨苗も
余苗(あまりなえ)
    田の隅にいつしか消えて余苗
昼顔(ひるがお)
    中田島昼顔も咲く砂の道
水芭蕉(みずばしょう)
    植物園山の片隅水芭蕉
沢瀉(おもだか)
    沢瀉や矢じりの先の花白き
河骨(こうほね)
    河骨や硬き花弁鯉も来ぬ
萍(うきくさ)
    水よどみ占めし萍掻き分けて
6/28
菱の花(ひしのはな)
    名を聞かば飛ばしてみたし菱の花
十薬(じゅうやく)
    十薬や雑草抑え庭を占む
虎尾草(とらのお)
    虎尾草や風にならひて右左
敦盛草(あつもりそう)
    敦盛草音が出るはず唇を
烏柄杓(からすびしゃく)
    一輪挿し烏柄杓を投げ入れぬ
破れ傘(やぶれがさ)
    戯れど日除けになれぬ破れ傘
鴇草(ときそう)
    皆に見せたく鉢の鴇草けふは門
蛍袋(ほたるぶくろ)
    虫いぬか蛍袋を覗き見て
6/29
麒麟草(きりんそう)
    黄昏時故郷恋し麒麟草
鴨足草(ゆきのした)
    井戸端の管まく話鴨足草
黴(かび)
    道端に柔らかき飴黴覆ふ
6/30
梅雨茸(つゆだけ)
    梅雨茸や立ち止まらずに頂へ
木耳(きくらげ)
    しこしこと生木耳の生きの良さ
天草(てんぐさ)
    玉砂利に天草拡げ陽にまかせ

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