新歳時記より 2020-11
冬(ふゆ):冬の宿(ふゆのやど)冬の庭(ふゆのには)冬の町(ふゆのまち)冬沼(ふゆぬま)冬の濱(ふゆのはま)
逆立ちて野良犬が毛並み冬の町
文化の日(ぶんかのひ)
通販で国旗揃えし文化の日
立冬(りつとう)
立冬や新しマスクてふの柄
十一月(じふいちぐわつ)
息見えて十一月の連休
初冬(はつふゆ)
初冬やカメラ構えてフルムーン
神無月(かんなづき)
人不足神主募集神無月
神の旅(かみのたび)
八百万空路開通神の旅
神送(かみおくり)
紙送り神事の後に神送
神渡(かみわたし)
神渡地の神さまが社揺れ
神の留守(かみのるす)
鎮守様宮司の守り神の留守
初時雨(はつしぐれ)
身震いが雀あわてて初時雨
初霜(はつしも)
初霜や袖口に受く陽の温み
冬めく(ふゆめく)
剥ぐ蒲団冬めく朝の奪い合い
爐開(ろびらき)
爐開や去年がかをりの舞い上がり
口切(くちきり)
口切や正客眺む竹垣根
亥の子(ゐのこ)
父残業猪の子餅搗く母と僕
御取越(おとりこし)
山の上檀家少しの御取越
達磨忌(だるまき)
達磨忌や僧の仕度の早さかな
十夜(じゅうや):「十夜粥・ごこく粥」
提灯の招く参道十夜かな
酉の市(とりのいち):「一の酉・二の酉・三の酉」
手拍子があちこち響く酉の市
熊手(くまで)
皆が目を背なの熊手の引き寄せて
箕祭(みまつり):「箕納(みをさめ)」
箕納を母の行事とはるか前
鞴祭(ふいごまつり)
盆にのせ鞴祭の温き餅
茶の花(ちゃのはな)
屋敷裏茶の花風に揺れもせず
山茶花(さざんか)
のど自慢山茶花の唄鐘一つ
柊の花(ひいらぎのはな)
文机柊の花かをりけり
八手の花(やつでのはな)
竹鉄砲八手の花が咲く前に
石蕗の花(つはのはな)
雨音を下から聴けり石蕗の花
芭蕉忌(ばせをき)
芭蕉忌や森林を行く人の列
蘭雪忌(らんせつき)
線香や菊の香被ふ蘭雪忌
空也忌(くうやき):「空也念佛」
空也忌や奥州の空雪待てり
鉢叩(はちたたき)
川越えて鉦のリズムや鉢叩
冬安居(ふゆあんご):「雪安居(せつあんご」)
山寺や夕日の浮かび冬安居
七五三(しちごさん)
七五三妻の着物も様になり
帯解(おびとき)
帯解きて簪ゆれて氏神へ
袴著(はかまぎ)
袴著や氏神様の石段を
髪置(かみおき)
髪置や洗髪が指つんつんと
新海苔(しんのり)
新海苔と墨痕太く乾物屋
棕櫚剥ぐ(しゅろはぐ)
梯子持ち棕櫚剥ぐ父を見上げたり
蕎麦刈(そばかり)
蕎麦刈て庵の裾も見えにけり
麥蒔(むぎまき)
麥蒔やふわふわの畝紅葉の手
大根(だいこん)
土出でて白き大根なまめかし
大根引(だいこんひき)
真っ直ぐと大根引の極意聞き
大根洗ふ(だいこんあらふ)
そそくさと大根洗ふ寒さかな
大根干す(だいこんほす):「懸大根・干大根(ほしだいこ)
空稲架や大根を干す三方ヶ原
切干(きりぼし)
切干や強風に耐えしがみつき
淺漬(あさづけ)
浅漬やけふは固いが文句なき
澤庵漬く(たくわんつく):大根漬ける
桶の中澤庵を漬くあがる息
茎漬(くきづけ):茎の桶・茎の石・菜漬
茎漬や味すっきりと鷹の爪
酢茎(すぐき)
名店へタクシー廻り酢茎かな
蒟蒻掘る(こんにゃくほる):蒟蒻干す
風強し蒟蒻を掘る裏の畑
蓮根掘る(はすねほる):蓮掘
泥水やホースくねくね蓮根掘る
泥鰌掘る(どぢやうほる)
羊羹を切るが如しに泥鰌掘る
鷲(わし)
一筋に棚田が煙鷲の飛び
鷹(たか):鷹渡る:「鵟(のすり)・沢鵟(ちゅうひ)・大鷹(おほたか)・蒼鷹(もろがへり)・八角鷹(はちくま)・鶚(みさご)・熊鷹(くまたか)」
駅の木や椋鳥散らすにほふ鷹
隼(はやぶさ)
隼や眼光赤く睨みつけ
鷹狩(たかがり):放鷹(はうよう)・鷹野
鷹狩や殿が休みの屋敷跡
鷹匠(たかじやう)
鷹匠や鳥打帽をゆがめたり
小春(こはる):小春日和・小春日
縁側の小春日和のカフェテラス
冬日和(ふゆびより):冬晴
冬日和冷えた焼き芋歯に沁みて
冬暖(ふゆあたたか):冬ぬくし
手探りて脱いだ靴下冬ぬくし
靑寫眞(あをじやしん)
曇り空けふは出るかな靑寫眞
帰り花(かへりばな):返り咲(かへりざき)忘れ咲(わすれざき)狂ひ花(くるひばな)狂ひ咲(くるひざき)
突然の濃くて口紅狂い咲き
冬紅葉(ふゆもみぢ)残る紅葉(のこるもみぢ)
仲間ゆく取り残されて冬紅葉
紅葉散る(もみぢちる):散紅葉(ちりもみぢ)
公園のベンチに一人紅葉散る
落葉(おちば):落葉掻(おちばかき)・落葉籠(おちばかご)・落葉焚(おちばたき)
しんしんと庭の西にて落葉焚
銀杏落葉(いてふおちば)
コーン立て銀杏落葉の終の色
柿落葉(かきおちば)
柿落葉蜘蛛糸結びチークダンス
枯葉(かれは)
枯葉散る夕暮れ時の露天風呂
木の葉(このは):木の葉雨(このはあめ)木の葉散る(このはちる)
木の葉散る猿ゐる梢風の吹き
木の葉髪(このはがみ)
木の葉髪けふは多いか新聞紙
凩(こがらし):木枯
凩に負けてなるかとランドセル
時雨(しぐれ):朝時雨・夕時雨・小夜時雨・片時雨
傘がない止むこともなき夕時雨
冬構(ふゆがまへ)
築山や縄の広がり冬構
北窓塞ぐ(きたまどふさぐ)
鉤閉めて北窓塞ぐ心地なり
目貼(めばり):隙間張る(すきまはる)
一筋の光も消して目貼かな
風除(かぜよけ)
風除や一段毎の増す温さ
新嘗祭(にひなめさい):勤労感謝の日
新嘗祭祢宜捧げし鏡餅
お火焚(おほたき)
お火焚や幣舞い上がり火を連れて
神農祭(しんのうさい)
神農祭張り子の虎の首を振り
几董忌(きとうき)
鳴瀧へ几董忌酌み交わす銘酒
報恩講(ほうおんかう):御正忌(ごしやうき)御七夜(おしちや)御講(おかう)親鸞忌(しんらんき)お講凪(おかうなぎ)
山寺の告知板書く報恩講
網代(あじろ)
波もなく上弦照らす網代守
柴漬(ふしづけ)
柴漬や小魚跳ねて光る朝
竹瓮(たつぺ)
寝ぼけ顔竹瓮が見えて凍てし朝
神迎(かみむかへ):神還(かみかへり)
白鷺や屋根に並びて神迎
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