4/29/2021

新歳時記より 2021-4



四月(しぐあつ)
    四月や消しゴム替えて消して過去
彌生(やよひ)
    ピカピカの彌生の朝の眩しさよ
春の日(はるのひ):春日・春日・春日影・春の朝日・春の夕日・春の入日
    春日や遠くに見えて輸送船
日永(ひなが)永き日・遅日・暮遅し・暮かぬる
    空わたる浜名バイパス暮かぬる
春の空(はるのそら)
    北国へゴビのちりまふ春の空
麗らか(うららか)
    犬欠伸麗らかにたちて茶柱
長閑(のどか)
    のどかさやはるかに聞こゆ草刈り機
初桜(はつざくら)
    初桜ブルーシートを日に曝し
入学(にゅうがく):入学試験・入学式
    入学式小さな声で門に立つ
出代(でがはり):新参・御目見得
    出代や振り返らずに消えにけり
山葵(わさび):山葵漬
    辛さ秘む山葵それぞれ産地味
芥菜(からしな)
    風の止み芥菜を蒔く土を撒く
三月菜(さんぐわつな)
    谷底の緑増す摘む三月菜
春大根(はるだいこん):三月大根・野大根
    箸少し春大根の辛さかな
草餅(くさもち):蓬餅・母子餅
    陽光に誘ふ餡子や蓬餅
蕨餅(わらびもち)
    旗めきて暖簾の招き蕨餅
鶯餅(うぐいすもち)
    鶯餅きな粉に潜りいざ飛びぬ
桜餅(さくらもち)
    草原のケアハウスへと桜餅
椿餅(つばきもち)
    銘々皿蓋の緑や椿餅
東踊(あづまをどり)
    三密や東踊もひそやかに
蘆邊踊(あしべをどり)
    宵闇へ蘆邊踊の三味の音
都踊(みやこをどり)
    都踊姉は速足走る僕
浪花踊(なにはをどり)
    レコードや浪花踊をプツプツと
義士祭(ぎしさい)
    義士祭や槍の重たい孫衣装
種痘(しゅとう):植疱瘡
    種痘日や潮吹く針の長きかな
湯治舟(たうぢぶね)
    百軒の湯場の壁画や湯治舟
桃の花(もものはな):白桃・緋桃・源平桃・桃畑・桃林・桃園・桃の村
    ふっくらと地面に垂れて桃の花
梨の花(なしのはな)
    特急と並びて走り梨の花
杏の花(あんずのはな)
    あばら家は杏の花の咲く隣り
李の花(すもものはな)
    柴垣向こう李の花ざかり
林檎の花(りんごのはな)
    ジーゼルカー林檎の花を汚し去り
郁李の花(にはうめのはな):庭梅の花
    郁李へ早き流れやてふの影
  
山櫻桃の花(ゆずらのはな):庭梅の花(ゆずらうめのはな)
    ひとひらの山櫻桃の花の髪飾り
沈丁花(ぢんちやうげ):丁字・沈丁
    沈丁花にほひたどれば我が庵
辛夷(こぶし)
    彼方より屋根より高し辛夷咲く
木蓮(もくれん):白木蓮・紫木蓮・木蘭
    ディスクジョッキーこの木蓮が由来述ぶ
連翹(れんげう)
    連翹や違法駐車の列長し
樝の花(しどみのはな):草木瓜
    見るだけと樝の花の硬き棘
木瓜の花(ぼけのはな):更紗木瓜・蜀木瓜・広東木瓜・緋木瓜・白木瓜
    父植ゑし父と消えゆく木瓜の花
紫荊(はなずはう)
    空黄色ふわりと薄く紫荊
黄楊の花(つげのはな)
    鶴の呼ぶ樹形崩さず黄楊の花
枸橘の花(からたちのはな)
    枸橘の棘を避けつつセールスマン
山椒の花(さんせうのはな):花山椒
    分け入れば山椒の花どっと散り
接骨木の花(にはとこのはな)
    一塊接骨木の花庭にあり
杉の花(すぎのはな)
    杉の花陽光浴びて風に舞ふ
春暁(しゆんげう):春の曙・春あかつき・春の暁
    春暁や始発列車を起こしけり
春晝(しゆんちう)
    春晝おうどの虫や顔を出し
春の暮(はるのくれ)
    なにもかも霞んで見えて春の暮
春の宵(はるのよい):春宵・宵の春
    月なくも歩調緩やか春の宵
春の夜(はるのよ):夜半の春・春夜
    短冊を一枚ずつを夜半の春
春燈(しゅんとう):春の燈・春灯
    春燈や万年筆と祖母の文
春の月(はるのつき):春月
    気の沈む水平線の春の月
朧月(おぼろづき):月朧
    うろ覚え並べ名句や朧月
朧(おぼろ):草朧・鐘朧・朧影・朧夜は朧月夜の略
    久々の吾子の小走り鐘朧
龜鳴く(かめなく)
    杭の上群れ遠ざかり龜の鳴く
蝌蚪(くわと):お玉杓子・蛙の子
    孵れども藻に絡まれて蛙の子
柳(やなぎ):絲柳・靑柳・遠柳・川柳・門柳
    風通すまばらに垂れて絲柳
花(はな):花の雲・花吹雪・落花・花屑・花埃・花の塵・花の雨・花冷・花の山・花便・花守
    誘われて飛ばす車や花の夜
櫻(さくら):山櫻・八重櫻・遅櫻・朝櫻・夕櫻・夜櫻
    夜櫻や提灯揺れず続きけり
花見(はなみ):桜狩・観桜・花巡り・花の宴・花の茶屋・花の宿・花の幕・花筵・花人・花衣・花疲れ
    風流をあえて拒みて花見かな
花篝(はなかがり):花雪洞
    雨の夜ひと時は今花篝
花曇(はなぐもり)
    花曇バイクの先は咲き満ちて
桜漬(さくらづけ):花漬
    開きだす有田の湯吞桜漬
花見虱(はなみじらみ)
    のそのそと花見虱と行く名所
櫻鯎(さくらうぐひ)
    一網に櫻鯎や掬いとり
桜鯛(さくらだひ):花見鯛
    舳先から吊り糸光り桜鯛
花烏賊(はないか):櫻烏賊
    良き鮮度花烏賊が足動きけり
蛍烏賊(ほたるいか):まついか
    きらきらと網の丸さや蛍烏賊
春の海(はるのうみ)
    下る坂カーブ曲がれば春の海
春潮(しゆんてう):春の潮
    春潮や帆船軋む泡はじき
観潮(かんてう)
    観潮船橋の観客仰ぎ見て
磯遊(いそあそび):磯菜摘
    汐が満つバケツ空っぽ磯遊
汐干(しほひ):干潟・汐干狩・汐干潟
    汐干狩浜辺の松の風すがし
蛤(はまぐり):はまなべ・焼蛤
    蛤や縄文の高き貝塚
浅蜊(あさり)
    月曜日酒の開いて浅蜊かな
馬刀(まて):馬刀突・馬刀堀
    根競べしばしの時間馬刀の出て
櫻貝(さくらがひ)
    日記帳上に閉じ置く櫻貝
栄螺(さざえ)
    灯台の向こうはソ連栄螺焼く
壺焼(つぼやき)
    壺焼やだみ声遠く日焼け顔
鮑(あはび):鮑取
    富士山や一気に潜りとる鮑
常節(とこぶし)
    常節や溢れる小笊高笑ひ
細螺(ささご):きしやご
    お土産やぱちぱち細螺弾く音
寄居蟲(やどかり):がうな
    寄居蟲や宿を抜け出て恥ずかしく
汐まねき(しおまねき)
    マスゲーム汐退く浜の汐まねき
いそぎんちやく
    噛まれぬかいそぎんちやく指遊び
海膽(うに):雲丹
    透き通る裸足の拒む海膽の浜
搗布(かぢめ):搗布刈・搗布焚く
    波静か揺らぐ搗布や鎌光り
角又(つのまた)
    玉砂利や角又の干す温さかな
鹿尾菜(ひじき)
    耳で見る波の高さや鹿尾菜刈る
海雲(もづく):水雲・海蘊
    巣の海やパックに泳ぐ海雲かな
海髪(うご)
    防波堤熱きコンクリ海髪乾き
松露(しょうろ)
    うねうねと松露探して中田島
一人静(ひとりしづか)
    万葉園一人静の開く晝
金鳳華(きんぽうげ):うまのあしがた
    新品の眼鏡眩しく金鳳華
桜草(さくらさう)
    母逝きて庭をぐるりと桜草
チューリップ:鬱金香
    だんだんと短く咲けりチューリップ
ヒヤシンス:風信子
    捨てられて根っこの白きヒヤシンス
シクラメン
    ひと時の表舞台やシクラメン
スヰートピー
    スヰートピー思い出させてあのカット
シネラリヤ:サイネリヤ
    撥ね飛ばす如雨露の虹やシネラリヤ
アネモネ
    アネモネや花と名前の覚えたり
フリージア
    部屋を占む鼻一杯にフリージア
灌佛(くわんぶつ):佛生會
    灌佛の日トンビの声のありし空
甘茶(あまちや)
    背中押す並ぶ楽しさ甘茶の日
花祭(はなまつり)
    熱々と缶コーヒーが花祭
釋奠(せきてん):おきまつり
    この齢縁なきことよ釋奠よ
安良居祭(やすらゐまつり)
    掴まんややすらゐの花背中の子
百千鳥(ももちどり)
    庄屋森入り乱れてや百千鳥
囀(さえづり)
    囀や森林公園の句会
鳥交る(とりさかる)
    昼下り誰もゐぬ園鳥交る
鳥の巣(とりのす):巣籠・巣鳥
    秘密基地鳥の巣のてふ羽根のあり
古巣(ふるす)
    ふわふわと羽舞い上がり古巣かな
鷲の巣(わしのす)
    積年の鷲の巣太く雛の見え
鷹の巣(たかのす)
    急降下鷹の巣戻り卵抱く
鶴の巣(つるのす):鶴の巣籠
    必殺と鶴の巣籠誘い込み
鷺の巣(さぎのす)
    山枯らす鷺の巣の下糞まみれ
雉の巣(きじのす)
    分け入れば空の雉の巣雄の飛び
烏の巣(からすのす)
    烏の巣今年選ばれし電柱
鵲の巣(かささぎのす)
    一本道鵲の巣の見つけられ
鳩の巣(はとのす)
    パーキング鳩の巣のあり空の場所
燕の巣(つばめのす):巣燕
    幸を呼ぶ玄関の上燕の巣
千鳥の巣(ちどりのす)
    丸石と見紛うばかり千鳥の巣
雲雀の巣(ひばりのす)
    彼方よりぴょんぴょん歩き雲雀の巣
雀の巣(すずめのす)
    軒先の瓦の隙間雀の巣
孕雀(はらみすずめ):子持雀
    温き陽に孕雀の飛び立てり
孕鹿(はらみしか)
    煎餅を押し退け前へ孕鹿
仔馬(こうま):孕馬
    いつみても仔馬の足の長さかな
春の草(はるのくさ):春草・芳草・草芳し
    丸い円山羊が食み跡春の草
若草(わかくさ):嫩草・新草
    若草の牧場あちこち糞のあり
古草(ふるくさ)
    古草や轍の消えて古屋敷
若芝(わかしば)
    若芝の初々しさや若夫婦
蘖(ひこばえ)
    階段の蘖高く参拝者
竹の秋(たけのあき)
    ふかふかな誰も入れなく竹の秋
嵯峨念佛(さがねんぶつ)
    嵯峨念佛蜘蛛糸戻るすがし風
十三詣(じゅうさんまゐり):知恵貰・知恵詣
    連れ立ちて十三詣今年まで
山王祭(さんわうまつり)
    山王祭穴掘り進む馬のしと
梅若忌(うめわかき):木母寺大念佛
    飛び石や窓に一点梅若忌
臘名残(れふなごり)
    空に打つ弾の響きや猟名残
羊の毛剪る(ひつじのけきる)
    毛を刈りし羊身震い大きな目
春光(しゅんくわう):春の色・春色
    春光や潮見坂へと続く浜
靑麥(あをむぎ):麥靑む
    掌に靑麥やさしつんつんと
麥鶉(むぎうづら)
    蛍光灯ちかちかとして麥鶉
菜の花(なのはな):菜種の花・花菜
    菜の花のおひたしや母の枕辺
花菜漬(はななづけ)
    おてしおや春の色増す花菜漬
菜種河豚(なたねふぐ)
    古女房今宵は静か菜種河豚
大根の花(だいこんのはな):花大根・種大根
    陽光に大根の花伸びにけり
豆の花(まめのはな):蠶豆の花・豌豆の花
    緑葉の隠れてしまう豆の花
蝶(てふ):紋白蝶・紋黄蝶・胡蝶・蝶々・初蝶・揚羽蝶
    新芽伸ぶ生垣などり蝶の舞ふ 
春風(はるかぜ):春の風
    スカート翻し春の風の巻く
凧(たこ):長崎の凧揚・紙蔦・鳳巾・いかのぼり・いか・はた・奴凧
    風を追ひ息あがらして子らの凧
風車(かざぐるま):風車賣
    色紙と大豆割らずと風車
石鹸玉(しやぼんだま):たまや・水圏賣
    ベランダへ石鹸玉の訪ね来て
鞦撰(しうせん):秋千・ふららこ・ぶらんこ・半仙戯
    補助輪とれぶらんこ一人土曜午後
ボートレース:競漕
    声合わせボートレースや舳先競り
運動会(うんどうくわい)
    母も来ぬ運動会ビリ保ち
遠足(ゑんそく)
    遠足や鯉の御馳走咽る黄身
遍路(へんろ):遍路宿
    杖を置きスマホに記録遍路宿
春日傘(はるひがさ):春の日傘
    曲がる塀ゆるり近づき春日傘
朝寝(あさね)
    六時だよ夢の中起き朝寝かな
春眠(しゆんみん)
    寝落ち前教科書立てて春眠
春愁(しゆんしう)
    バスの無いさすらいの旅春愁
蠅生る(はえうまる)
    手洗い励行蠅生る場所の無き
春の蠅(はるのはえ)
    逞しく鳴らして羽音春の蠅
春の蚊(はるのか):春蚊
    目覚めたる網戸を攻めて春の蚊よ
虻(あぶ)
    ぶんぶんと針の太さや虻の舞ふ
蜂(はち):蜜蜂・熊蜂・足長蜂・穴蜂・土蜂
    ホバリング蜂の縄張り攻め姿勢
人丸忌(ひとまるき):人麿忌
    人丸忌石見の国へ行きたくて
花供養(はなくよう)
    空けぶる君いる横の花供養
御身拭(おみぬぐひ)
    御身拭マスクの他人連なりて
御忌(ぎよき):法然忌・御忌詣・御忌の鐘
    緑なす法然院に御忌の音
蜃気楼(しんきろう):海市・喜見城
    自慢げな君の話も蜃気楼
御影供(みえいく)
    御影供や奏でし祖母が持鈴の音
壬生念佛(みびねんぶつ):壬生狂言・壬生踊
    壬生念佛電車の音も鉦リズム
島原太夫道中(しまばらたいふのどうちゆう)
    誘われて島原太夫道中
先帝祭(せんていさい)
    先帝祭朱き蛇の目が白化粧
鮒膾(ふななます):山吹膾・叩き膾・子守膾
    鮒膾湖北の風も贈り着く
山吹(やまぶき):濃山吹・葉山吹
    山吹や豪華な庭へ咲き乱れ
海棠(かいだう)
    手入れせぬ父が海棠やせ細り
馬酔木の花(あせびのはな)
    散り散りに馬酔木の花の白き庭
ライラック
    ライラックにをひラーメン食べ歩き
小米花(こごめばな):雪柳・小米桜
    サイドミラー小米花散りねむの木村
小粉團の花(こでまりのはな)
    右カーブ小粉團の花故郷よ
楓の花(かへでのはな)
    森林や楓の花のひっそりと
松の花(まつのはな)
    年一度松の花摘む庭師真似
柃の花(ひさかきのはな)
    誘ひて柃の花神の域
樒の花(しきみのはな)
    この年で樒の花が見分け方
木苺の花(きいちごのはな)
    草陰に木苺の花三つ咲き
苺の花(いちごのはな)
    温室の外咲き乱れ苺の花
通草の花(あけびのはな)
    淡紫通草の花が通学路
郁子の花(むべのはな)
    夕空へ孫を背負いて郁子の花
宗因忌(そういんき)
    暗闇に罅入り音や宗因忌
天皇誕生の日(てんわうたんじやうのひ)
    日の丸小さめ天皇誕生の日
靖国祭(やすくにまつり):招魂祭
    標準木祝詞を聞きて招魂祭
どんたく
    車停めドンタク囃子見え始め
葱坊主(ねぎばうず):葱の花・葱の擬寶
    抜く手形一刀の切り葱坊主
萵苣(ちさ):ちさ缺く
    じゃりじゃりとはね上がり砂萵苣洗ふ
みづ菜(みづな):うはばみさう
    はりはりと敵とおぼしきみず菜刈る
鶯菜(うぐひすな)
    緑なす畑の一隅鶯菜
茗荷竹(めうがたけ)
    畏きや間隔揃え茗荷竹
杉菜(すぎな)
    築山を占めて杉菜の緑かな
東菊(あづまぎく):吾妻菊
    荒れ放題一際目立ち東菊
金盞花(きんせんくわ)
    大昔初見で憶え金盞花
勿忘草(わすれなぐさ)
    勿忘草忘れないでね花束に
種俵(たねだわら)
    納屋の奥出番近しと種俵
種井(たねゐ):種浸し
    頑丈な縛りで降ろし種井かな
種選(たねえらみ)
    心地よき水掻きまわし種選
種蒔(たねまき)
    種蒔や嚏も出さず均等に
苗代(なはしろ):苗田・苗代田・苗代時
    木綿糸ぺけの際立ち苗代田
水口祭(みなくちまつり)
    御幣立ち水口の祭かな
種案山子(たねかがし)
    月も出て蛙も唄ふ種案山子
苗代茱萸(なはしろぐみ):胡頽子
    声高し苗代茱萸にくだをまく
朝顔蒔く(あさがほまく)
    三日坊主朝顔蒔くと日記帳
藍植う(あゐうう)
    裸田や藍植う畝の少しずつ
蒟蒻植う(こんにやくうう)
    柔らかき蒟蒻植うや鍬の音
蓮植う(はすうう)
    富士の雪蓮植う泥の生ぬるき
八十八夜(はちじゅうはちや)
    漂える八十八夜茶のかをり
別れ霜(わかれじも):霜の名残・忘れ霜・別れ霜
    プロペラや闇夜の別れ霜
霜くすべ(しもくすべ):霜害
    扇風機まわれまわれば霜くすべ
茶摘(ちゃつみ):茶摘女・茶摘唄・茶摘笠・茶山・茶園
    やわき指一葉一葉の茶摘かな
製茶(せいちゃ):焙爐
    蒸せかえる製茶工場の香の残り
鯛網(たひあみ)
    揺れ筏鯛網回り切れぬ群れ
魚島(うをじま)
    魚島や松山城はビルの影
鯥(むつ):鯥五郎
    泥のけてめんくり玉や鯥五郎
蠶(かひこ):蠶卵紙・蠶飼・蠶飼ふ・たねがみ・掃立・飼屋・蠶棚・捨蠶・蠶時
    枕辺へ蠶休まず食むリズム
山繭(やままゆ)
    悠然と山繭灯り求め来て
桑摘(くはつみ):桑籠・桑車
    小柄女や桑籠を置く大きな音
桑(くは)
    見えぬほど大きく伸びて桑畑
桑の花(くはのはな)
    桑の花藁屋の我が家隠しけり
畦塗(あぜぬり)
    水満ちて父ぺたぺたと畦を塗り
蔦若葉(つたわかば)
    甲子園上へ上へと蔦若葉
萩若葉(はぎわかば)
    風呂敷の習字道具や萩若葉
草若葉(くさわかば)
    ペダル踏むサナトリュームへ草若葉
葎若葉(むぐらわかば)
    新築祝葎若葉の道を行く
罌粟若葉(けしわかば):芥子若葉
    廃屋へ外から覘き罌粟若葉
菊若葉(きくわかば)
    菊若葉刺して鹿沼の水含み
若蘆(わかあし):蘆若葉
    敵陣の一時止まり蘆若葉
荻若葉(をぎわかば)
    風に揺る輪中をぐるり荻若葉
若菰(わかごも)
    若菰をかき分けて出で鴨家族
髢草(かもじぐさ)
    雲流る仰ぎ見にほふ髢草
水芭蕉(みづばせう)
    木道の靴音続き水芭蕉
残花(ざんくわ)
    緑おす最後の残花急ぎ散り
春深し(はるふかし):春闌・春闌く
    春深し隣りは窓を開け広げ
夏近し(なつちかし):春隣る
    夏近し今年の暖簾誂えて
蛙(かはづ):初蛙・鳴蛙・遠蛙・晝蛙
    初蛙飛び込む水の流れかな
躑躅(つつじ):やまつつじ・きりしま
    赤染まりグリーンベルト躑躅咲く
満天星の花(どうだんのはな)
    浜名湖を満天星の花隠しけり
石南花(しやくなげ):石楠花
    惑わさる石楠花の咲く昼下り
柳絮(りうじよ)
    坂の上柳絮は行く東へと
若緑(わかみどり):松の緑・緑立つ・若松・松の蕊
    とげとげを優しく隠し若緑
緑摘む(みどりつむ)
    脚立立つ足おぼつかず緑摘む
松毟鳥(まつむしり):まつくぐり
    枝揺れてさかしまに食む松毟鳥
ねぢあやめ
    水溜り公園の隅ねぢあやめ
薊の花(あざみのはな):花薊・薊
    放棄地の真ん中に立つ花薊
山歸來の花(さんきらいのはな):さるとりいばらの花・さるとりの花
    採り集めリースに山歸來の花
藤(ふじ):藤の花・山藤・白藤・藤波・藤棚
    絨毯を敷いて藤棚開門と
行春(ゆくはる)
    行春や弁当不味い日はけふ
暮の春(くれのはる):暮春
    暮の春家庭訪問始まりぬ
春惜む(はるおしむ):惜春
    牛の引く土を反して春惜む

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