9/21/2021

俳句手帖 2020-01

 


1/1
一月(いちがつ)
   一月や予定埋まらぬカレンダー
正月(しょうがつ)
   正月や二人しずかに迎えけり
新年(しんねん)
   新年の挨拶長し新社長
年明くる(としあくる)
   行事終え年明くる朝迎えけり
1/2
年立つ(としたつ)
   年立つやエンジン始動とびら音
初春(はつはる)
   初春や開扉に祢宜がうなり声
新春(しんしゅん)
   新春やウィーンの音届け物
明の春(あけのはる)
   甘酒を参拝すみて明の春
今年(ことし)
   鐘の音この一発は今年なり
去年(こぞ)
   鐘の音去年の別れは消え終わる
去年今年(こぞことし)
   最終回終えて新たな去年今年
初昔(はつむかし)
   陽を拝み鐘の音忘る初昔
元日(がんじつ)
   元日が松の痛みや新しき
鶏日(けいじつ)
   鶏日や人日待たず句を作り
1/3
元旦(がんたん)
   文句ある元旦だけは飲み込みて
元朝(がんちょう)
   元朝の影を連ねて宮参り
大旦(おおあした)
   蝋燭を灯し迎える大旦
二日(ふつか)
   胃もたれる二日の夜は芋をする
三日(みっか)
   行事なく小遣い握り三日かな
三が日(さんがにち)
   酒くらい駅伝を観る三が日
寒の入り(かんのいり)
   風凪げど凍る夜空も寒の入り
小寒(しょうかん)
   小寒や父の形見は窮屈で
人日(じんじつ)
   人日や未踏の道を探し行く
1/4
七日正月(なぬかしょうがつ)
   七日正月遠い親戚訪ひて
松の内(まつのうち)
   松の内残業せぬとパチンコへ
松過ぎ(まつすぎ)
   松過ぎて仕事が動く電話とる
小正月(こしょうがつ)
   小正月一臼餅を搗きにけり
女正月(めしょうがつ)
   女正月姉の友達手を火鉢
大寒(だいかん)
   大寒や芯まで冷たき顔洗う
寒の内(かんのうち)
   寒の内豊作願ひ田をおこし
寒気(かんき)
   傾きて柱に隙間入る寒気
冴ゆ(さゆ)
   Uターン赤きランプが冴え続く
厳寒(げんかん)
   厳寒を火鉢一つへ集う部屋
1/5
しばれる
   故郷はしばれる言わぬ寒くなく
冬深し(ふゆふかし)
   冬深し石臼回し豆を挽く
三寒四温(さんかんしおん)
   陽の角度三寒四温と高くなり
日脚伸ぶ(ひあしのぶ)
   風吹けど手袋いらぬ日脚伸ぶ
春待つ(はるまつ)
   打ち明ける春待つ心ゆめごこち
春近し(はるちかし)
   隣り部屋引っ越し準備春近し
冬尽く(ふゆつく)
   待ちわびる障子が鳴らぬ冬尽く日
初茜(はつあかね)
   今切れ橋伸び浮きし弧の伸び初茜
初東雲(はつしののめ)
   ははは前初東雲の髪の色
初明り(はつあかり)
   初明り雨戸の節穴知らせけり
1/6
初日の出(はつひので)
   初日の出手袋外しシャッター音
初空(はつぞら)
   初空へ黄金色染むネールかな
初御空(はつみそら)
   どこまでも青澄みわたる初御空
初霞(はつかすみ)
   手も温い山の裾には初霞
初東風(はつごち)
   ウィンドサーフィン初東風受けてすべりだす
初松籟(はつしょうらい)
   中田島初松籟に葉が舞ひて
初凪(はつなぎ)
   初凪や貝殻投げる浜名湖に
御降(おさがり)
   御降やおうどが湿り下駄の跡
淑気(しゅくき)
   淑気満つ墨の黒さを八つ切りへ
1/7
冬天(とうてん)
   冬天へ八本あり飛行機雲
凍雲(いてぐも)
   凍雲の影来るグランド
寒月(かんげつ)
   寒月を真上に仰ぐ帰り道
寒の雨(かんのあめ)
   止めば来る願いて帰る寒の雨
霧氷(むひょう)
   陽を受けて満開霧氷舞い散りて
樹氷(じゅひょう)
   スキーゆく大きなループ樹氷林
雨氷(うひょう)
   手袋をものとせずに雨氷かな
風花(かざはな)
   風花や舞えば雪だと大騒ぎ
1/8
吹雪(ふぶき)
   落ちつけぬ外は吹雪と影動く
雪晴れ(ゆきばれ)
   雪晴れや畝の目見えぬ棚田かな
雪しまき(ゆきしまく)
   雪しまくドアーばたりと閉めりけり
雪時雨(ゆきしぐれ)
   雪時雨かじかむ指でハンドルを
雪女郎(ゆきじょろう)
   かきわけてまみれ姿の雪女郎
雪女(ゆきおんな)
   雪女けふはどこまで舞いゆきぬ
しづり雪(しづりゆき)
   しづり雪横切りわたる棚田かな
寒雷(かんらい)
   寒雷や光吸われしとどく音
雪起こし(ゆきおこし)
   黒雲や腹にこたえる雪起こし
寒茜(かんあかね)
   道具箱担ぎてそとは寒茜
1/9
初景色(はつげしき)
   新築増え見通し変わる初景色
初富士(はつふじ)
   陽は横へ初富士拝む宮へ道
初筑波(はつつくば)
   新築の影に隠れし初筑波
初比叡(はつひえい)
   琵琶湖より今年も拝む初比叡
初浅間(はつあさま)
   凍みる手を強く合わせて初浅間
若菜野(わかなの)
   厚着して若菜野へ行く母を追い
寒の水(かんのみず)
   井戸覗く釣瓶避けるか寒の水
氷(こおり)
   チャンバラや氷の刀光散る
氷点下(ひょうてんか)
   氷点下ニュース知らせる羽根蒲団
凍る(こおる)
   歯磨きや凍る釣瓶の水しみる
1/10
氷柱(つらら)
   水車小屋けふは休みと氷柱かな
冬滝(ふゆだき)
   刻一刻明けの冬滝色かわり
滝凍る(たきこおる)
   滝凍るニュース頼りに車繰る
凍滝(いてだき)
   凍滝や命を繋ぐ水流る
氷壁(ひょうへき)
   氷壁の強さに耐える綱ありや
氷江(ひょうこう)
   氷江へ沈む夕日が揺らぎなく
氷湖(ひょうこ)
   氷湖掃く我先コース滑り出す
御神渡(おみわたり)
   御神渡り神官はゆく滑る足
氷海(ひょうかい)
   氷海をかき分け進む巡視艇
波の花(なみのはな)
   白くなし水の汚れか波の花(
1/11
春着(はるぎ)
   ぽくぽくと八幡様へ春着かな
喰積(くいつみ)
   喰積や紅白交互詰めにけり
草石蚕(ちょろぎ)
   小さくも紅い草石蚕やここにいて
数の子(かずのこ)
   高価なり数の子残る歯の間
結昆布(むすびこんぶ)
   重箱へ結昆布を詰め〆る
ごまめ
   一摘みごまめが香る台所
切山椒(きりざんしょう)
   切山椒この味出来ぬ妻の腕
屠蘇(とそ)
   父注ぐ鼻つく屠蘇を飲み干さぬ
年酒(ねんしゅ)
   二軒目が年酒が味を遠のかせ
大服(おおぶく)
   大服や今年の茶碗見事なり
1/12
福沸(ふくわかし)
   肩すくめ水を運びて福沸
初炊ぎ(はつかしぎ)
   俎へ一尾鯛あり初炊ぎ
年の餅(としのもち)
   明後日と杵振り下ろす年の餅
雑煮(ぞうに)
   水菜入れ彩りとりて雑煮炊く
雑煮餅(ぞうにもち)
   中学生一つ増やして雑煮餅
俎始(まないたはじめ)
   俎始一人だいどこ一礼す
太箸(ふとばし)
   新妻の太箸ごとし指をして
門松(かどまつ)
   門松へ済まして宮へマーキング
注連飾(しめかざり)
   注連飾省きたいけど外せない 1/13
蓬莱飾(ほうらいかざり)
   蓬莱や酒はまだかと眺めいる
鏡餅(かがみもち) 
   細き腕叩けど割れぬ鏡餅
松納(まつおさめ)
   定め年あふれる袋松納
飾納(かざりおさめ)
   風強し飾納が人の列
鳥総松(とぶそうまつ)
   朝日待つ緑仄かに鳥総松

鏡開き(かがみびらき)
   鏡開き気もそぞろなりこの年も
餅花(もちばな)
   気を付けど揺れる餅花奥の間へ
繭玉(まゆだま)
   風もない長押に揺れる繭玉よ
年木(としぎ)
   風抜ける一人暮らしが年木積む 1/14
掃初(はきぞめ) 
   掃初や門から家へ掃き目かな
初暦(はつこよみ)
   病院へ予定を埋める初暦
初風呂(はつぶろ)
   炬燵だけ汚れを見せぬ初風呂よ
初灯(はつともし) 
   気をしめて向かう神棚初灯
初電話(はつでんわ)
   おれおれと九日にかかる初電話
笑初(わらいぞめ)
   年近い叔母もまぜてと笑初
初髪(はつがみ)
   初髪の新妻嬉々と里帰り
初夢(はつゆめ)
   初夢は見るべし茄子と富士に鷹
宝船(たからぶね)
   喜寿の夢極楽へ行く宝船
獏枕(ばくまくら)
   新妻の障子震わす獏枕
1/15
初寝覚(はつねざめ)
   初寝覚父とドライブ弟もいて
寝正月(ねしょうがつ)
   あれこれと諸事雑事あり寝正月
年賀(ねんが)
   水かける吾子が奥津城年賀かな
賀状(がじょう)
   賀状こぬ思うあれこれ友のこと
女礼者(おんなれいじゃ)
   大戸開く女礼者は傘を持ち
年玉(としだま)
   年玉や行儀よろしくもらうまで
初便り(はつだより)
   初便りいいことばかり書けぬ我
書初(かきぞめ)
   書初や貼る場所決める三学期
1/16
読初(よみぞめ)
   読初め今や離せぬ句入門
初旅(はつたび)
   初旅や現れ待てど富士かすか
乗初(のりぞめ)
   乗り鉄の迎える朝が乗初よ
初日記(はつにっき)
   初日記今年の目標書き記し 
ひめ始め(ひめはじめ)
   ひめ始め箪笥のとって鳴りにけり
初稽古(はつげいこ) 
   汗の湯気ライバル相手初稽古
舞初(まいぞめ)
   舞初の舞台に上がる心地よく
謡初(うたいぞめ)
   見台を掴みて声は謡初
初釜(はつがま)
   初釜や使い慣れたる茶筅かな
新年会(しんねんかい)
   あらためて荒れることなき新年会
1/17
初句会(はつくかい)
   俳句手帖買い替えのぞむ初句会
仕事始(しごとはじめ)
   手帳出す仕事始の電話受く
縫初(ぬいぞめ)
   絎台をたてて縫初冷える朝
初市(はついち)
   初市へ向かう荷車白き旗
初荷(はつに)
   連なりて初荷の車出陣す
買初(かいぞめ)
   買初やマウスを繰りてシャットダウン
歌留多(かるた)
   丸暗記吾子とたたかう歌留多とり
双六(すごろく)
   双六や行きつ戻りつ人模様
福笑ひ(ふくわらい)
   目を隠すくるりと廻し福笑ひ
1/18
羽子板(はごいた)
   羽子板のリズム続かぬ子らの声
手毬(てまり)
   かじかむ手こすりこすりて手毬巻く
破魔弓(はまゆみ)
   破魔弓や突然ぽんとはじく音
福引(ふくびき)
   福引を当てんと子らは抽選所
獅子舞(ししまい)
   獅子舞を見下ろす丈となりにけり
寒餅(かんもち)
   寒餅や甘い醤油を浴びにけり
水餅(みずもち)
   水餅や澄たる甕の深き底
氷餅作る(こおりもちつくる)
   氷餅作る太陽透けて見え
1/19
寒晒(かんざらし)
   風揺らす手延べそうめん寒晒
寒造(かんづくり)
   豆つぶす杵の重さや寒造
凍豆腐(しみどうふ)
   編む如し藁で縛りて凍豆腐
寒卵(かんたまご)
   寒卵風吹き抜ける抜け羽舞う
寒天造る(かんてんつくる)
   突っ突きて寒天造る冷える足
寒厨(かんくりや)
   白々と背の紐縛る寒厨
葛晒(くずさらし)
   三度目の水が澄めるや葛晒
1/20
砕氷船(さいひょうせん)
   砕氷船けふはどこまで進むやら
寒紅(かんべに)
   寒紅をさして鏡を閉じにけり
寒見舞(かんみまい)
   ネーブルを一箱かかえ寒見舞
雪見(ゆきみ)
   雪見へと四駆を用意山へ行く
探梅(たんばい)
   探梅や上る汗かきらしからず
寒釣(かんづり)
 寒釣や静かな流れ櫓がきしむ
1/21
雪投げ(ゆきなげ)
   身を守り雪投げ準備様変わり
   ゴーグル、ヘルメット
雪達磨(ゆきだるま)
   小さくも雪達磨作る雪無き地
雪像(せつぞう)
   雪像を汗かき作る自衛隊
スキー
   天気予報明日はスキーで出勤
スケート
   初スケート手摺磨いて一回り
寒稽古(かんげいこ)
   湯気上がるはだしの足で寒稽古
寒中水泳(かんちゅうすいえい)
   寒中水泳熱き甘酒舌の上
1/22
若水(わかみず)
   若水や溢さぬ様天秤棒
初詣(はつもうで)
   初詣おさる人なく人ながる
恵方詣(えほうもうで)
   空見つめ恵方詣へ行くと言ふ
歌会始(うたかいはじめ)
   テレビ前歌会始身を正し
成人の日(せいじんのひ)
   探せどない成人の日の銀狐
七種(ななくさ)
   七種や思い出したるぼけた父
1/23
若菜摘(わかなつみ)
   野はなきて堤の法面若菜摘
なまはげ
   なまはげの面のしたから髭男
かまくら
   かまくらへ供え物あげ父と母
左義長(さぎちょう)
   遠くから左義長けむる丈高し
どんど
   どんど焚く火と昇り去るつみけがれ 
鷽替(うそかえ)
   鷽替の祢宜の祝詞や長き事
1/24
初天神(はつてんじん)
   初天神今年こそはと父と行く
初場所(はつばしょ)
   初場所や小兵にぎわす大取組
蕪村忌(ぶそんき)
   蕪村忌やまだ白梅は芽もあらず
久女忌(くめき)
   さかくれを毟りて痛し久女の忌
初雀(はつすずめ)
   陽の当たる求めて群れる初雀
初鴉(はつがらす)
   川むこう一羽さびしく初鴉
1/25
初鶏(はつどり)
   初鶏の声整いて鳴きにけり
嫁が君(よめがきみ)
   全員が着席したか嫁が君
寒禽(かんきん)
   寒禽と会いたく林檎吊るしけり
笹鳴(ささなき)
   細葉垣笹鳴の影見え隠れ
寒雀(かんすずめ)
   寄り添って風で膨らむ寒雀
寒鴉(かんがらす)
   寒鴉急いでわたる縞の道
1/26
凍鶴(いてづる)
   凍鶴や獲物隠れる細き足
寒鯉(かんごい)
   寒鯉や背鰭を立てる浅き川
寒鮒(かんぶな)
   寒鯉や寄る絹網夢の中
寒蜆(かんしじみ)
   寒蜆波立つ川のむこう行く
歯朶(しだ)
   枯原に歯朶の緑が鮮やかに
楪(ゆずりは)
   垣根越し色は楪橙ぞ
1/27
福寿草(ふくじゅそう)
   つつまし気福寿草持つ毒見せず
薺(なずな)
   花よりもぺんぺんの種薺かな
早梅(そうばい)
   早梅を横目でちらり試験前
1/28
寒梅(かんばい)
   枝を打ち寒梅の紅咲く描く
蠟梅(ろうばい)
   惚けし彼蠟梅咲くを感ずるか
冬桜(ふゆざくら)
   冬桜花先週も咲くこの堤
1/29
冬牡丹(ふゆぼたん)
   いざ咲けと騙され咲くや冬牡丹
寒椿(かんつばき)
   寒椿曲がる生垣灯る家
寒木瓜(かんぼけ)
   寒木瓜や通りに面し咲きにけり
1/30
水仙(すいせん)
   法面を風と登るや水仙花
葉牡丹(はぼたん)
   葉牡丹を並べ午前は陽にあたる
冬菜(ふゆな)
   柔らかき膝の寒さや冬菜摘む
冬菫(ふゆすみれ)
   山路行く風にこまかく冬菫
1/31
寒芹(かんぜり)
   寒芹や葉茎根っこと鍋の香と
冬萌(ふゆもえ)
   杉木立根元に群れて冬萌る
寒海苔(かんのり)
   寒海苔や今朝の浜名湖塩しぶき

一日には、鶏(とり)を占っていたので、『鶏日(けいじつ)』、
     その朝を『鶏旦(けいたん)』と呼ぶようになりました。 ちなみに…
二日は狗(いぬ)を占うので『狗日(くじつ)』
三日は猪(いのしし)で『猪日(ちょじつ)』
四日は羊(ひつじ)で『羊日(ようじつ)』
五日は牛(うし)で『牛日(ぎゅうじつ)』
六日は馬(うま)で『馬日(ばじつ)』。
七日になり、やっと人を占い『人日(じんじつ)』と言います。

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