9/21/2021

俳句手帖 2020-05

俳句手帖 2020-05




5/1
初夏(しょか)
    中田島波とたわむる初夏の我
夏はじめ(なつはじめ)
    夏はじめ大きく開く窓で唄
夏(なつ)
    句投稿靴下はかぬ夏が来た
五月(ごがつ)
    葦が伸ぶ五月の光つぶつぶと
聖五月(せいごがつ)
    聖五月婚衣の二人足揃え
卯月(うづき)
    卯月なりかをりに満ちる煎餅屋
立夏(りっか)
    立夏の港豪華客船接岸す
今朝の夏(けさのなつ)
    着替えどもいやに汗ばむ今朝の夏
5/2
夏に入る(なつにいる)
    白頭も狭くなり富士夏に入る
夏来る(なつきたる)
    夏来る波打ち際をかける子ら
清和(せいわ)
    トンネルから見える青さも清和かな
夏浅し(なつあさし)
    夏浅し呼べども緋鯉向こう岸
夏めく(なつめく)
    大冒険夏めく築山昔ごと
夏きざす(なつきざす)
    夏きざす雨だれ如しペンキかな
薄暑(はくしょ)
    殿散歩木陰の欲しい薄暑かな
麦の秋(むぎのあき)
    空高し釜先光る麦の秋
5/3
小満(しょうまん)
    小満や小川も多く草流る
五月尽(ごがつじん)
    高し空あくまで高し五月尽
夏霞(なつがすみ)
    佐鳴湖に岸を隠すや夏霞
夏の空(なつのそら)
    バイク行くカーブの向こう夏の空
夏の星(なつのほし)
    名も知らぬ夜中にのぞむ夏の星
夏の風(なつのかぜ)
    洗濯や一纏めなり夏の風
木の芽流し(このめながし)
    木の芽流し気合を込めてカッパ着る
茅花流し(つばなながし)
    迎え行く茅花流しの傘を持ち
5/4
筍流し(たけのこながし)
    竹撓る筍流し急ぐ足
青嵐(あおあらし)
    葉擦れ音障子震わす青嵐
麦嵐(むぎあらし)
    空は澄み鳥押し戻す麦嵐
あいの風(あいのかぜ)
    航跡伸ぶ能登路を一人あいの風
だし
    だし強し足ごと滑り帆掛け舟
黄雀風(こうじゃくふう)
    まくりあがる黄雀風の吹く浜辺
卯の花腐し(うのはなくだし)
    小さき庭卯の花腐し敷き詰めて
走り梅雨(はしりづゆ)
    こうもりやこだわり込めて走り梅雨
5/5
前梅雨(まえづゆ)
    前梅雨や傘も新しけふも降る
卯月曇(うづきぐもり)
    練習日卯月曇が球白し
夏富士(なつふじ)
    白帽子脱いで夏富士赤くなり
夏山(なつやま)
    夏山の匂い新し草の息
青嶺(あおね)
    牛は啼く柵新しき遠青嶺
夏山路(なつやまじ)
    じりじりと背中の暑さ夏山路
卯月野(うづきの)
    卯月野や草を分け入り花を描き
夏の園(なつのその)
    心地よき朝の草触る夏の園
5/6
夏の庭(なつのにわ)
    主植ふ葉は憶えて夏の庭
夏の湖(なつのみずうみ)
    藻が増える夏の湖貸しボート
青岬(あおみさき)
    青岬ウィンドサーフィン帆先消ゆ
卯浪(うなみ)
    卯浪立つ運搬船は東へと
青葉潮(あおばじお)
    去年のごみ舳先に多し青葉潮
代田(しろた)
    明日を待つ代田に映る星の数
更衣(ころもがえ)
    電車内まばゆい白さ更衣
夏物(なつもの)
    夏物のポケット足りぬ停留所
5/7
袷(あわせ)
    箪笥の底去年にしまひし袷かな
セル
    日傘さすセルの袖抜く羽風かな
レース編む(れーすあむ)
    テーブルの上がさみしやレース編む
夏帽子(なつぼうし)
    陽が強しけふはお古の夏帽子
身欠鰊(みがきにしん)
    箱売りの身欠鰊に重なる手
豆飯(まめめし)
    豆飯の泡が噴き出る陶器釜
筍飯(たけのこめし)
    筍飯山盛りよそふ夕餉かな
粽(ちまき)
    河原の笹大きさ選び粽まく
5/8
柏餅(かしわもち)
    内祝大柏餅どんと来る
菖蒲酒(しょうぶざけ)
    風呂上りかをり嗜む菖蒲酒
新節(しんぶし)
    新節や未だ柔らかき削り初め
生節(なまぶし)
    頂き物生節握る思案顔
干河豚(ほしふぐ)
    干河豚や土産に配る味の良さ
伽羅蕗(きゃらぶき)
    伽羅蕗や我好まざる第一位
新茶(しんちゃ)
    新茶出来工場からのメールあり
古茶(こちゃ)
    畑の差かをり薄れし古茶の味
5/9
夏炉(なつろ)
    つぎ足さぬ夏炉の炭が点き具合
苗売(なえうり)
    苗売り屋今年もまよい辿り着く
麦刈(むぎかり)
    麦刈や一束かろし並ぶ畝
麦扱(むぎこき)
    麦扱や足踏む音が届く空
新麦(しんむぎ)
    新麦やなかは冷たき一斗升
麦藁(むぎわら)
    麦藁を今年もあまへ納めたり
麦藁籠(むぎわらかご)
    麦藁籠ねじれて上る虫もゐて
麦飯(むぎめし)
    麦飯に慣れた口には粘る米
5/10
袋掛(ふくろかけ)
    日に焼ける我もかけたし袋掛
溝浚(みぞさらえ)
    溝浚確かめ終わる流れかな
代掻(しろかき)
    代掻やもーと一声田に入りぬ
茄子植う(なすうう)
    汗ばみて行燈囲み茄子を植う
菜種刈(なたねがり)
    実がいりてそつと束ねる菜種刈
天草取(あまくさとり)
    盛り上がる天草取の海女が泡
上蔟(じょうぞく)
    桑刈も上蔟始めk
繭(まゆ)
    品評会遜色もなき繭の玉
5/11
糸取り(いととり)
    子をおぶい糸取り続け子らを待つ
夏スキー(なつすきー)
    日焼け止めまばらになりて夏スキー
憲法記念日(けんぽうきねんび)
    憲法記念日なかったことに捻じ曲げる
ゴールデンウィーク
    ゴールデンウィークコロナ色にと変わりけり
メーデー
    美しきまやかし言葉メーデーも
こどもの日(こどのひ)
    連休のしんがりに在りこどもの日
母の日(ははのひ)
    母の日も朝昼晩と飯を炊く
バードウィーク
    バードウィーク被害甚大無対策
5/12
端午(たんご)
    柱にも記念刻みし端午かな
鯉幟(こいのぼり)
    絡み合いポールを倒す鯉幟
矢車(やぐるま)
    矢車やゆつくりまわる闇の中
吹流し(ふきながし)
    吹き流し伸ばして測る吾子の丈
幟(のぼり)
    跡継ぎ喜びしらす幟たて
武者人形(むしゃにんぎょう)
    髭もじゃの武者人形は向こう向き
菖蒲湯(しょうぶゆ)
    菖蒲湯や肌にゆらりと柔らかき
夏場所(なつばしょ)
    夏場所や櫓の上のふれ太鼓
5/13
ダービー
    ダービーや拳に力賭けなくも
くらやみ祭(くらやみまつり)
    くらやみ祭山車が巡行吾子もひく
諏訪の御柱祭(すわのおんばしらまつり)
    諏訪の御柱祭囃子響くや崖の上
葵祭(あおいまつり)
    空は澄葵祭が陽射しかな
神田祭(かんだまつり)
    神田祭夜は静かに能舞台
三社祭(さんじゃまつり)
    三社祭大群衆に神輿渡御
練供養(ねりくよう)
    詠歌が列祖母もその中練供養
聖母月(せいぼづき)
    聖母月庭埋め尽くす白い薔薇
5/14
昇天祭(しょうてんさい)
    昇天祭森の男ら酒を浴び
義経忌(よしつねき)
    反対しますツイート多し義経忌
万太郎忌(まんたろうき)
    万太郎忌横に並びて蕎麦啜る
朔太郎忌(さくたろうき)
    ブラジルの友朔太郎忌にコーヒーを
多佳子忌(たかこき)
    多佳子忌や白いドレスが道の果て
袋角(ふくろづの)
    突き返す温き脈打つ袋角
蛇衣を脱ぐ(へびきぬをぬぐ)
    風に舞う街路樹の上蛇衣
雨蛙(あまがえる)
    玄関のサッシにピタリ雨蛙
5/15
青蛙(あおがえる)
    登り着く吸いて葉の色青蛙
枝蛙(えだかわず)
    枝蛙けふはガラスへ腹の柄
水鶏(みずとり)
    水鶏や茂る笹の間駆け抜けり
青鷺(あおさぎ)
    青鷺や頭上滑空風をきり
白鷺(しろさぎ)
    白鷺や田んぼの中でここにあり
葭五位(よしごい)
    過ぎ去りぬ葭五位のさき竿入れる
笹五位(ささごい)
    笹五位や終日立ちて木の如し
鯵刺(あじさし)
    鯵刺や飛び込む海の青さかな
5/16
夏燕(なつつばめ)
    群れ外れ宙返り見せ夏燕
大瑠璃(おおるり)
    大瑠璃や森に響くや庄屋跡
小瑠璃(こるり)
    口笛に梢の小瑠璃答え啼く
黄鶲(きびたき)
    せせらぎに黄鶲唄ふ山の家
野鶲(のびたき)
    揺れる枝野鶲が啼く野原ゆく
海酸漿(うみほうずき)
    海酸漿鳴らし唇閉じにけり
蝦蛄(しゃこ)
    すし飯や大ぶりの蝦蛄味の良さ
穴子(あなご)
    明石駅途中下車して穴子買ふ
5/17
鱚(きす)
    揚げたて天つゆ浴びる鱚の味
鯖(さば)
    幼き日近所の祝いしめた鯖
飛魚(とびうお)
    飛魚と聞いてとびつく夕ご飯
烏賊(いか)
    魚屋のおすすめレシピ烏賊を焼く
山女(やまめ)
    囲炉裏端山女を焼いてコップ酒
穀象(こくぞう)
    穀象を入れてはならぬ精米所
斑猫(はんみょう)
    斑猫にペース合わせて帰り道
蝉生る(せみうまる)
    蝉生る朝の釣瓶が重きかな
5/18
白蟻(しろあり)
    表面中はすかすか白蟻よ
羽蟻(はあり)
    羽蟻脱出証拠遺すや窓の下
蠅(はえ)
    打たないで蠅の訴え手をこする
家蠅(いえばえ)
    家蠅や動き素早く主に似
金蠅(きんばえ)
    金蠅の輝く羽色見とれけり
余花(よか)
    山頂が見える横にも余花があり
若葉の花(わかばのはな)
    目に優し若葉の花が庄屋跡
葉桜(はざくら)
    落ちてこぬ葉桜の下風抜けて
5/19
薔薇(ばら)
    ドイツから女主が自慢薔薇
牡丹(ぼたん)
    一ツ家や何もない庭牡丹咲く
白牡丹(しろぼたん)
    暗闇に咲く白牡丹我此処と
石南花(しゃくなげ)
    天城路や石南花と会ふ汗まみれ
繍毬花(てまりばな)
    手毬花手のひらに散る車椅子
金雀枝(えにしだ)
    金雀枝の彩りのぞく塀の上
泰山木の花(たいざんぼくのはな)
    高々と泰山木の花遠くあり
蜜柑の花(みかんのはな)
    実が残る早く食べろと蜜柑花
5/20
栗の花(くりのはな)
    雨降れどにほひ舞ひくる栗の花
新緑(しんりょく)
    新緑に囲まれ下る最上川
新樹(しんじゅ)
     車椅子新樹の森へ立入りて
夏木立(なつこだち)
    夏木立ドンの音なき古やしろ
若葉(わかば)
    赤レンガ若葉眩しく覆いけり
谷若葉(たにわかば)
    朝の鐘遙かに深き谷若葉
柿若葉(かきわかば)
    青い空一気に萌ゆる柿若葉
椎若葉(しいわかば)
    爽やかに風を返すや椎若葉
5/21
樫若葉(かしわかば)
    防犯灯塀の向こうの樫若葉
樟若葉(くすわかば)
    天空へ沸き上がりたり樟若葉
若楓(わかかえで)
    吾子に手や若楓より一回り
夏柳(なつやなぎ)
    夏柳弱き風吹く闇の中
常盤落葉(ときわおちば)
    雨降れば常盤落葉や地にぺたり
椎落葉(しいおちば)
    目覚めたるせわし降る音椎落葉
樫落葉(かしおちば)
    若者に押し落とされし樫落葉
檜落葉(ひのきおちば)
    檜落葉たなびく煙裏の山
5/22
樟落葉(くすおちば)
    古刹ぬけ掃いても積もる樟落葉
松落葉(まつおちば)
    搔き集め煙のぼるや松落葉
杉落葉(すぎおちば)
    風呂焚きや燃え立つかをり杉落葉
卯の花(うのはな)
    卯の花のにをふ垣根の闇夜かな
茨の花(いばらのはな)
    茨の花かをれど寄せぬ青い棘
桐の花(きりのはな)
    渓を行く車一台桐の花
朴の花(ほおのはな)
    ビルの窓眼下大きな朴の花
槐の花(えんじゅのはな)
    ランチタイム槐の花の並木道
5/23
栃の花(とちのはな)
    栃の花なお穂の高き巨木哉
マロニエの花(まろにえのはな)
    マロニエの花仰ぎて通りあの人も
アカシアの花(あかしあのはな)
    アカシアの花雨が似合うと古き盤
棕櫚の花(しゅろのはな)
    棕櫚の花遙か高くに招く如
水木の花(みずきのはな)
    水木の花誰ぞ名づけぬ悲しとは
山毛欅の花(ぶなのはな)
    山毛欅の花雄花雌花と葉を挟み
大山蓮華(おおやまれんげ)
    俯きて大山蓮華包む如
庭石菖(にわぜきしょう)
    庭石菖空き地あちこち咲き始む
5/24
著莪の花(しゃがのはな)
    築山を全山白し著莪の花
アイリス
    アイリスや肥料少なく花サイズ
ゼラニウム
    手を入れず絶える事無きアイリスよ
罌粟の花(けしのはな)
    罌粟の花これからですとお辞儀かな
雛罌粟(けしぐり)
    雛罌粟や終いのふりして咲き始め
カーネーション
    カーネーション咲き始まるか母の日に
マーガレット
    マーガレット遠き島より我が庵
カラー
    庭の隅カラーを染める日暮れ色 
5/25
擬宝珠の花(ぎぼしのはな)
    擬宝珠の花控えめに頭下ろしけり
げんのしょうこ
    戦場やげんのしょうこを干残し
都草(みやこぐさ)
    去年の庭妻と眺めし都草
朝顔の苗(あさがおのなえ)
    赤い鉢朝顔の苗吾子運ぶ
萱草(かんぞう)
    萱草や日暮れ間近と逢瀬かな
鉄線花(てっせんか)
    花壇奧塀に絡ます鉄線花
玉巻く芭蕉(たままくばしょう)
    築山や玉巻く芭蕉伸びる先
苺(いちご)
    二粒目酸っぱい苺歯は嫌ふ
5/26
苺畑(いちごばたけ)
    わくわくと苺畑が染める色
糸瓜苗(へちまなえ)
    ひょろ長い選べばそれは糸瓜苗
瓢苗(ひさごなえ)
    間引きして四枚葉へと瓢苗
茄子苗(なすなえ)
    灯さない茄子苗囲みしあんどん
瓜苗(うりなえ)
    朝露や伸びる瓜苗向き変えて
胡瓜苗(きゅうりなえ)
    花ひとつ曲がるな直に胡瓜苗
山椒の花(さんしょうのはな)
    母の名を思い出したる花山椒
山葵の花(わさびのはな)
    奥伊豆や山葵の花も咲き頃で
5/27
野蒜の花(のびるのはな)
    湾曲に野蒜の花占める畦
牛蒡の花(ごぼうのはな)
    ちりぢりに牛蒡の花を引き抜きぬ
藜(あかざ)
    杖示す草むらに立つ藜かな
豌豆(えんどう)
    豌豆や烏がジャンプ食べ頃を
莢豌豆(さやえんどう)
    実がぽろり莢豌豆や莢を割る
蚕豆(そらまめ)
    甲冑の如蚕豆纏う熱き莢
筍(たけのこ)
    筍や枯葉掻き分け空を見て
蕗(ふき)
    雨しのぐ下駄も濡れなく蕗の下
5/28
キャベツ
    キャベツ割黄色き花ぞ伸びにけり
夏大根(なつだいこん)
    夏大根中まで硬しおろし金
麦(むぎ)
    麦扱きやうをんうをんと空響く
5/29
麦の穂(むぎのほ)
    一本だけ黒い麦の穂指ではね
麦畑(むぎばたけ)
    刈り込めど未だ先見えぬ麦畑
烏麦(からすむぎ)
    丈高く雀ら呼ぶや烏麦
5/29
大麦(おおむぎ)
    柔らかき大麦畑穂のなびき
小麦(こむぎ)
    小麦刈る母のスピード追い越して
踊子草(おどりこそう)
    はにかみて踊子草は君の手に
5/30
捩花(ねじばな)
    捩花や問われ明かさず幾人ぞ
蛇苺(へびいちご)
    旨くとも名前で寄せぬ蛇苺
浦島草(うらしまそう)
    浦島草どこまで伸ばす崖の下

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