2/28/2021

新歳時記より2021-02

新歳時記より2021-02


春 三春・九春・春の旅・春の宮・春の寺・春の人・春の園・村の春・島の春・京の春
    診断の胸つぶらはし春の窓
立春(りつしゅん):春立つ
    聲聞こゆ春立つ朝の枝の上
二月(にぐわつ)
    準備済む待つや本番二月かな
寒明(かんあけ)
    寒明ていよいよ古希の祝いかな
初春(はつはる):しょしゅん
    初春や隣りの親父大欠伸
早春(そうしゅん)
    早春の草原の風温からず
春浅し(はるあさし):浅き春
    春浅し川面の鷺の佇めり
睦月(むつき):年端月
    年端月西日差しこむ納屋仕事
旧正月(きうしやうがつ)
    旧正の風邪拗らせてはや六日
二月禮者(にぐわつれいじや)
    靴でかし二月禮者の声でかし
二の替(にのかはり)
    花道の踏み音新し二の替
繪踏(ゑぶみ)
    繪踏耐え秘かに彫りて壁が傷
初午(はつうま):一の午・二の午
    初午の風渦巻きて面の揺れ
針供養(はりくやう):針祭る・針納め
    口を閉じけふは静寂針供養
奈良の山焼
    花火聞く奈良の山焼けふありし
雪解(ゆきどけ):雪解雫(ゆきげしづく)・雪解・雪解風・雪解水・雪解川・雪汁
    雪解のこんこんと湧く富士が裾
 
雪しろ(ゆきしろ):雪濁
    雪しろや坂の途中の消え去りぬ
雪崩(なだれ)
    ドツドツと雪崩の音の一人聞き
残雪(ざんせつ):残る雪・雪残る
    熊笹を倒してなおも残る雪
雪間(ゆきま):雪のひま
    熊笹の緑跳ね出て雪の隙(ひま)
凍解(いてどけ):凍ゆるむ・凍解くる
    凍解や水琴窟の音のあり
氷解(こおりどけ):解氷・氷解く・浮氷
    溜池や朝日返して浮氷
薄氷(うすらひ):残る氷・春の氷
    模様消え浮氷光る朝の池
冱返る(いてかえる):凍返る
    蛍光灯畳みしみし冱返る
冴返る(さえかえる)
    冴返るスポットライトの天守閣
春寒(はるさむ)
    春寒し梅園の道人まばら
餘寒(よかん)
    陽もささぬゴム靴痛き餘寒かな
春の風邪(はるのかぜ)
    鼻水と嚏連発春の風邪
春時雨(はるしぐれ)
    酔いまかせ傘は無くとも春時雨
猫の恋(ねこのこい):恋猫・うかれ猫・春の猫・猫の妻・孕み猫
    この声や川の向こうのうかれ猫
白魚(しろうを):白魚網・白魚舟
    夜明け前白魚網の跳ね踊り
公魚(わかさぎ):鰙・?魚編にハム
    公魚やくるりとルワー列をなし
 
鱵(さより)
    浜名湖のすれすれ鱵連射砲
魞挿す(えりさす)
    朝靄の魞挿す舟の櫓音かな
野焼く(のやく):草焼く・芝焼く・畦焼く
    風凪ぎて野焼く男の欠伸かな
焼野(やけの)
    見上ぐれば焼野終いの雨間近
山焼く(やまやく)
    男衆種火瞳に山を焼く
焼山(やけやま)
    焼山の臭いの沁みて昼の膳
末黒の芒(すぐろのすすき):焼野の芒・末黒野
    白鷺や末黒の芒下に見て
麥踏(むぎふみ):麥を踏む
    麥踏や俯き往復昼餉かな
木の實植う(きのみうう)
    木の實植ううんちくの木の一つ増え
猫柳(ねこやなぎ)
    チャンバラが刀に化けて猫柳
洎夫藍の花(さふらんのはな)
    洎夫藍の花化けて黄金色になり
片栗の花(かたくりのはな)
    風小僧片栗の花一撫でて
雛菊(ひなぎく)
    雛菊や最前列に並び出て
春菊(しゆんぎく):茼菊・しんぎく
    春菊やかきこの揺れてかけうどん
菠薐草(はうれんそう)
    菠薐草弁当箱を占めにけり
蕗の薹(ふきのたう)
    気がつけば何処に去りや蕗の薹
水菜(みづな):京菜
    無理矢理に嫌うボウルに水菜積む
海苔(のり):海苔粗朶・海苔簀・海苔掻・海苔採・海苔桶・海苔干す・海苔干場
    波しぶき眼鏡も曇り海苔を摘む
 
靑海苔(あおのり)
    靑海苔のかをる市場や気忙しく
獺の祭(をそのまつり):獺魚を祭る
    獺の祭提灯照らす魚の跡
鳴雪忌(めいせつき):老梅忌
    街灯や花弁散らし鳴雪忌
梅(うめ):野梅・梅林・梅の花・白梅・臥龍梅・梅園
    何気なく陽も強くなり梅の咲く
梅見(うめみ)
    ぶり返し梅見が連れの早き脚
盆梅(ぼんばい)
    違い棚盆梅が丈伸びすぎて
紅梅(こうばい)
    一重八重開く紅梅庄屋跡
黄梅(わうばい)
    黄梅や片隅にも一本咲き
 
鶯(うぐひす):春告鳥・鶯の谷渡・鶯笛・黄鳥
    谷底へ届く鶯枝揺れて
下萌(したもえ):草萌・草靑む
    かけっこの脚に優しき草靑む
いぬふぐり
    いぬふぐりどこぞが犬の鼻のさき
菜種御供(なたねごく):梅花御供
    手袋を脱いで合掌菜種御供
磯竃(いそかまど)
    磯竃老練たちの大笑い
若布(わかめ):若布刈舟(めかりぶね)・若布拾・若布干す・若布売
    待ちわびて若布催促鳴る電話
實朝忌(さねともき)
    垣根咲く通りに朝日實朝忌
立春(りつしゅん):春立つ
    聲聞こゆ春立つ朝の枝の上
二月(にぐわつ)
    準備済む待つや本番二月かな
寒明(かんあけ)
    寒明ていよいよ古希の祝いかな
初春(はつはる):しょしゅん
    初春や隣りの親父大欠伸
早春(そうしゅん)
    早春の草原の風温からず
春浅し(はるあさし):浅き春
    春浅し川面の鷺の佇めり
睦月(むつき):年端月
    年端月西日差しこむ納屋仕事
旧正月(きうしやうがつ)
    旧正の風邪拗らせてはや六日
二月禮者(にぐわつれいじや)
    靴でかし二月禮者の声でかし
二の替(にのかはり)
    花道の踏み音新し二の替
繪踏(ゑぶみ)
    繪踏耐え秘かに彫りて壁が傷
初午(はつうま):一の午・二の午
    初午の風渦巻きて面の揺れ
針供養(はりくやう):針祭る・針納め
    口を閉じけふは静寂針供養
奈良の山焼
    花火聞く奈良の山焼けふありし
雪解(ゆきどけ):雪解雫(ゆきげしづく)・雪解・雪解風・雪解水・雪解川・雪汁
    雪解のこんこんと湧く富士が裾
 
雪しろ(ゆきしろ):雪濁
    雪しろや坂の途中の消え去りぬ
雪崩(なだれ)
    ドツドツと雪崩の音の一人聞き
残雪(ざんせつ):残る雪・雪残る
    熊笹を倒してなおも残る雪
雪間(ゆきま):雪のひま
    熊笹の緑跳ね出て雪の隙(ひま)
凍解(いてどけ):凍ゆるむ・凍解くる
    凍解や水琴窟の音のあり
氷解(こおりどけ):解氷・氷解く・浮氷
    溜池や朝日返して浮氷
薄氷(うすらひ):残る氷・春の氷
    模様消え浮氷光る朝の池
冱返る(いてかえる):凍返る
    蛍光灯畳みしみし冱返る
冴返る(さえかえる)
    冴返るスポットライトの天守閣
春寒(はるさむ)
    春寒し梅園の道人まばら
餘寒(よかん)
    陽もささぬゴム靴痛き餘寒かな
春の風邪(はるのかぜ)
    鼻水と嚏連発春の風邪
春時雨(はるしぐれ)
    酔いまかせ傘は無くとも春時雨
猫の恋(ねこのこい):恋猫・うかれ猫・春の猫・猫の妻・孕み猫
    この声や川の向こうのうかれ猫
白魚(しろうを):白魚網・白魚舟
    夜明け前白魚網の跳ね踊り
公魚(わかさぎ):鰙・?魚編にハム
    公魚やくるりとルワー列をなし
 
鱵(さより)
    浜名湖のすれすれ鱵連射砲
魞挿す(えりさす)
    朝靄の魞挿す舟の櫓音かな
野焼く(のやく):草焼く・芝焼く・畦焼く
    風凪ぎて野焼く男の欠伸かな
焼野(やけの)
    見上ぐれば焼野終いの雨間近
山焼く(やまやく)
    男衆種火瞳に山を焼く
焼山(やけやま)
    焼山の臭いの沁みて昼の膳
末黒の芒(すぐろのすすき):焼野の芒・末黒野
    白鷺や末黒の芒下に見て
麥踏(むぎふみ):麥を踏む
    麥踏や俯き往復昼餉かな
木の實植う(きのみうう)
    木の實植ううんちくの木の一つ増え
猫柳(ねこやなぎ)
    チャンバラが刀に化けて猫柳
洎夫藍の花(さふらんのはな)
    洎夫藍の花化けて黄金色になり
片栗の花(かたくりのはな)
    風小僧片栗の花一撫でて
雛菊(ひなぎく)
    雛菊や最前列に並び出て
春菊(しゆんぎく):茼菊・しんぎく
    春菊やかきこの揺れてかけうどん
菠薐草(はうれんそう)
    菠薐草弁当箱を占めにけり
蕗の薹(ふきのたう)
    気がつけば何処に去りや蕗の薹
水菜(みづな):京菜
    無理矢理に嫌うボウルに水菜積む
海苔(のり):海苔粗朶・海苔簀・海苔掻・海苔採・海苔桶・海苔干す・海苔干場
    波しぶき眼鏡も曇り海苔を摘む
 
靑海苔(あおのり)
    靑海苔のかをる市場や気忙しく
獺の祭(をそのまつり):獺魚を祭る
    獺の祭提灯照らす魚の跡
鳴雪忌(めいせつき):老梅忌
    街灯や花弁散らし鳴雪忌
梅(うめ):野梅・梅林・梅の花・白梅・臥龍梅・梅園
    何気なく陽も強くなり梅の咲く
梅見(うめみ)
    ぶり返し梅見が連れの早き脚
盆梅(ぼんばい)
    違い棚盆梅が丈伸びすぎて
紅梅(こうばい)
    一重八重開く紅梅庄屋跡
黄梅(わうばい)
    黄梅や片隅にも一本咲き
 
鶯(うぐひす):春告鳥・鶯の谷渡・鶯笛・黄鳥
    谷底へ届く鶯枝揺れて
下萌(したもえ):草萌・草靑む
    かけっこの脚に優しき草靑む
いぬふぐり
    いぬふぐりどこぞが犬の鼻のさき
菜種御供(なたねごく):梅花御供
    手袋を脱いで合掌菜種御供
磯竃(いそかまど)
    磯竃老練たちの大笑い
若布(わかめ):若布刈舟(めかりぶね)・若布拾・若布干す・若布売
    待ちわびて若布催促鳴る電話
實朝忌(さねともき)
    垣根咲く通りに朝日實朝忌

2/23/2021

これまでの俳句

 これまでの俳句


俳句を始める

 2018年2月から俳句をはじめた。
それまでは方言を使って川柳を詠んでいたが、方言の説明を織り込まないと通じないと分かり2000句で止めることにした。その時に愛犬の句を575で詠んでいた句に季語を入れ直して詠み直したりしていた。
区役所の俳句の里づくり事業の俳句大会でプレバトでおなじみの夏井いつき先生の記念講演が福祉会館であった。満員の席にすき間を見つけ「俳句の種まき」の話を聞き、「一日一句詠みなさい」の教えをが身について会場を出るときは「詠める」と自信がついていた。浜松城の梅が見えて
「城の梅夏井が話妻は見ず」と一句詠んでみた。

 毎日一句を読み始めたが、勉強の必要性を感じて手始めに歳時記を買い求め、季語はじめいろいろな言葉と出会う機会が出来た。蟻の一歩の進み具合
(私にわからないから)です。
Twitterには「方言川柳」以前より呟いていて最初の一句もツイートしておいた。フォロワーさんは俳句に関心がない人たちで反応が何もなく毎日一句ツイートしていた。

俳句ポスト投稿

「俳句ポスト」の存在を知り一句投稿してみたら、最初の句が並選に掲載され、数回続いたところでNHKにも投稿してみた。
投稿を始めて雑誌に佳作で名前が掲載され、投稿サイトでも並選になり、NHKの俳句大会にもびびって投函した1句が佳作に名前が載り、(何も勉強しなくてもこんなもんだ)と、自己満足していた。

 ところがそれ以降は名前が出ない日が続き、俳句の道は山を登るが如しで最初は緩やかで、入口の看板から階段が始まり霧に包まれて今自分がどの高さまできたか上が見えません。言えることは人、地、天と上がはるか遠くにあることだった。

テレビで読まれる

泉が涸れるまで自分の持っているものを出し切った先に出て来るものが本物と信じて数多く詠むことにしていた。
朝ドラを見て吟行気分で四~五句を課して詠んでいたが投稿の成績が上がらない。季題の変換間違いをしたり、季重なりをおかしたりと自信を失いかけていた。
諦めかけていた2019年末に突然の電話!NHK俳句 さんからでした。
「NHKです。紫雲英さんご本人様ですか」
「はい!」
「【ぽくぽくと八幡様へゆく春着】オリジナルで未発表句ですね?」
「正月の放送です」と言われたような気がする。
こ踊りし舞い上がった句がこれです。
特選二席に選ばれた時の「NHK俳句」です。ご覧ください。



姉が施設で暮らしている。年越しの挨拶に行った折に自分が今年の最後だろうと、油断して
「お正月に入選して放送されるから見て」
と言ったらその後、妹に話したからLINEにおめでとうが正月前から一杯になった。

オノマトペの畳語を俳句に

   ぽくぽくと八幡様へゆく春着
   のこのことこの子ここのこきのこやま
   ぴょんぴょんと鮫の頭の橋渡し

2020年特選に選ばれた句も文芸選評で読まれた句なども、オノマトペは使わないと決めていたが使ってしまった句だった。
パソコンを触り始めた時から畳語を使った方言をホームページで発表していて、畳語から離れられなくなっていたようだ。
畳語を使うと軽薄に見えるが語彙力がない私には難語を連ねた句は詠めない事と、違う語彙を使って言い回しはできないかと考えてみるがリズム感は畳語が最適でやはり今後も使って詠んでいく。

2018年の入選句集です

2019年の入選句集です。



2020年前半の入選句集です。


2020年後半の入選句集です。


このページは半年ごとに改定していきます。
さてどうなることやら?





 

1/31/2021

新歳時記より 2021-01


新歳時記より 2021-01
 


1/1 
一月(いちぐわつ)
   一月やペダルの軽き湖畔道
去年今年(こぞことし):今年・去年・旧年
   資料の山机の狭き去年今年
元日(ぐわんじつ)
   元日やルーチンどおり事の済み
1/2
新年(しんねん):新玉の年・年改る・年立つ・新歳・年頭・初年・年迎ふ・御代の春・明の春・今朝の春
   新年の祝辞が長さ髭の人
元朝(ぐあんてう):歳旦
   元朝や親父も早く起きて待つ
初鶏(はつとり)
   初鶏が啼けど冷たき曇り空
1/3
初鴉(はつがらす)
   初鴉啼かず止まらず横切りて 
初雀(はつすずめ)
   鉄塔の身を寄せ合ひて初雀 
初明り(はつあかり)
   うつばりの影を映して初明り 
初日(はつひ):初日の出・初日影
   初日の出練り声高き迎え凧 
1/4 
初空(はつぞら):初御空・初東雲・初茜 波の上紺碧の濃き初御空 初富士(はつふじ)
   初富士を写す湖畔のタイヤ音 
初凪(はつなぎ)
   初凪や対岸回る観覧車 
御降(おさがり)
   御降やこたつの外の薄着かな 
1/5 
若水(わかみづ):若井(わかゐ)
   縮こまり釣瓶おとして若水よ 
初手水(はつてうづ)
   初手水頭も痺れそそくさと 
乗初(のりぞめ):初汽車・発電車
   乗り初めやいつもと変わらぬ駆け込み 
白朮詣(おけらまゐり):白朮火・火縄売
   くるくると白朮詣のすれ違い 
1/6 
初詣(はつまうで)
   冷えて頬記念写真が初詣 
破魔弓(はまゆみ):はま矢
   破魔弓や座らず遠く眺めけり 
歳徳神(としとくじん):歳徳・年神
   隙間風歳徳神も揺れにけり 
恵方詣(えほうまゐり):恵方
   初打も右に曲がりて恵方かな 
1/7 
七福神詣(しちふくじんまゐり):七福詣・福神詣
   七人おめかし七福神詣 
延壽祭(えんじゅさい)
   延壽祭拝受盃一献す 
四方拝(しほうはい)
   風とまり占みて青空四方拝 
朝賀(てうが):拝賀・参賀
   不自由もおして行きたし賀かな 
1/8 
年賀(ねんが):年始・年禮・廻禮
   黒お盆年賀のタオル赤刺繍 
御慶(ぎょけい)
   友達もいずまい正し御慶かな 
禮者(れいじゃ)
   細い道影を伸ばして禮者来る 
禮受(れいうけ)
    禮受や座布団もなく手をこすり 
名刺受(めいしうけ)
   丁寧に礼の相手や名刺受 
1/9 
禮帳(れいちやう)
   禮帳へ今年最初の筆で名 
年玉(としだま):年贄・お年玉 
   小遣いと変わらぬ額がお年玉 
賀状(がじやう):年賀状
   目に見えて高さが変わる年賀状 
初便(はつだより) 
   初便かなしきことの無き証 
1/10 
初暦(はつごよみ)
   新しきことがありそな初暦 
初刷(はつずり)
   初刷の未来予想図幼き日 
初竃(はつかまど):焚初
   杉の葉がかをり吹き出て初竃 
大服(おほふく):大福・福茶
   大服やかをり新し古茶碗 
屠蘇(とそ)
   あと幾つ鼻につく屠蘇味しるや 
1/11 
ごまめ:田作・小殿原
   まっすぐを探せど何処ごまめかな 
数の子(かずのこ)
   数の子や唯一食わぬ高きもの 
切山椒(きりざんせう)
   切山椒お茶とおしゃべり姉の友 
門松(かどまつ):松飾・竹飾
   松飾鼻を邪魔してマーキング 
1/12 
年酒(ねんしゅ)
   盃の波年酒に浮かぶ鶴亀よ 
雑煮(ざふに)
   大声で雑煮の餅が増えて朝 
太箸(ふとばし):柳箸・箸紙
   去年に逝く一膳余り祝い箸 
歯固(はがため)
   歯固や翁の顎に鹿の脛 
食積(くひつみ):重詰(ぢゆうづめ)
   食積や作り置く技味避けて 
1/13 
飾(かざり):お飾・輪飾・飾海老
   輪飾を焼きはせぬかと竈かな 
注連飾(しめかざり)
   締め付けて釘も新し注連飾 
飾臼(かざりうす):臼飾
   浮つかず微動だにせず飾臼 
鏡餅(かがみもち)
   大きさも父が収入鏡餅 
蓬莱(ほうらい):掛蓬莱
   蓬莱や今は聞こえぬ汽笛かな 
1/14 
歯朶(しだ):山草・穂長・裏白・諸向
   歯朶枯れて人の行き来も一休み 
楪(ゆづりは)
   楪や古希を迎えて孫に次ぐ 
野老(ところ):萆薢
   仰ぐ山髭取せはし野老掘る 
穂俵(ほだはら):なのりそ・ほんだはら
   穂俵や漂う住処小魚追ふ 
1/15 
福寿草(ふくじゆさう)
   砂利交じりぐぐと掻き分け福寿草 
福藁(ふくわら)
   福藁や乗るなさわるな福来れぬ 
春着(はるぎ)
   あげおろし春着艶やか立ち姿 
手毬(てまり):手毬つき・手毬唄
   母編みてケースに鎮座手毬かな 
1/16 
独楽(こま)
   馴染まない新しき紐独楽廻し 
追羽子(おひばね):遣羽子・揚羽子・逸羽子・懸羽子
   追羽子や数え続かず強き風 
羽子板(はごいた):胡鬼板・飾羽子板
   羽子板を母に抱かれて写しけり 
羽子(はね):つくばね・胡鬼の子
   こーんこん吾子ら続けて羽子の音 
1/17 
福引(ふくびき):寶引
   福引の紐の行く先隠す紙 
歌留多(かるた):歌かるた
   歌留多とり孫の手はやき丸覚え 
双六(すごろく)
   目が出ない終われ双六夕餉待つ 
絵双六(えすごろく):陞官双六・道中双六・役者双六
   絵双六出して従妹を迎えけり 
1/18 
十六むさし(じゅうろくむさし)
   負け続き十六むさし放り投げ 
投扇興(とうせんきょう)
   白扇や婿披露投扇興 
萬歳(まんざい):才蔵
   萬歳が言祝ぎ使ひ句を作り 
猿廻し(さるまわし):猿引
   猿廻し年々段の高さかな 
獅子舞(ししまひ):獅子頭・太神楽
   獅子舞や御幣追ひて見得を切り 
1/19 
傀儡師(くわいらいし):くぐつ廻し・でく廻し・夷廻し・傀儡女
   傀儡師ぞろりと出でて隣村 
笑初(わらひぞめ)
   忘れ物記憶発見笑初 
泣初(なきぞめ):初泣
   泣初や硬貨欲しいと札を見せ 
嫁が君(よめがきみ)
   膳揃ふうつばねの上嫁が君 
1/20 
二日(ふつか)
   鴨揺れて二日の伊目の強き風 
掃初(はきぞめ):初箒
   掃初門から玄関下駄の跡 
書初(かきぞめ):筆初・吉書
   書初めや去年より太き筆握り 
読初(よみぞめ)
   読初や行きつ戻りつ一頁 
1/21 
仕事始(しごとはじめ):事務始・鞴始・農始
   けふからと仕事始のパチンコ屋へ 
山始(やまはじめ):初山
   山始山は静かに迎えけり 
鍬始(くわはじめ):鋤始・農始
   乾ききり土固まりて鍬始 
織始(おりはじめ):機始・初機
   一礼のぱたんとひとつ織始 
1/22 
縫初(ぬひぞめ):初針
   縫い初めや立ててくけ台生地の艶 
初商(はつあきない)
   初商や算盤が気合入れ 
売初(うりぞめ):初売
   売初やシャッター街の下駄の音 
買初(かいぞめ):初買
   買初や赤い色したタッチペン 
1/23 
初荷(はつに):初荷馬・初荷船
   立てて旗墨痕太く初荷かな 
飾馬(かざりうま)
   風すさぶ幟が揺らし飾馬 
初湯(はつゆ):初風呂
   眠り落つ赤子浮かべて初湯かな 
梳初(すきぞめ)
   梳初や今宵の枕柔らかき 
結ひ初(ゆひぞめ):初結
   結ひ初し短き母のほつれ髪 
初髪(はつがみ)
   初髪を結うたばかりの風強し 
初鏡(はつかがみ)
   当たり年皺を数えて初鏡 
稽古始(けいこはじめ):初稽古
   身震いて稽古始が太鼓鳴り 
1/24 
謡初(うたひぞめ)
   息揃え障子のびびり謡初 
弾初(ひきぞめ):初弾・琴始
   宵闇へもれて弾初垣根越し 
舞初(まひぞめ)
   舞初のぱちんと白き扇かな 
初句会(はつくくわい)
   練りに練り初句会へ披露せど 
初芝居(はつしばゐ)
   紙吹雪めでためでたの初芝居 
宝船(たからぶね)
   吾子望むケーキのかをり宝船 
初夢(はつゆめ)
   初夢や追ひて届かず待つつづき 
三日(みっか)
   後家暮らしゲートボールへ三日かな 
松囃子(まつばやし)
   眠気除け祢宜が手拍子松囃子 
1/25 
福沸(ふくわかし)
   わが夫の歩みゆるやか福沸 
三ヶ日(さんがにち)
   新品のセーターを着て三ヶ日 
御用始(ごようはじめ)
   鍵開けて御用始へどっと来て 
帳綴(ちやうとぢ):帳書・帳始
   筆に墨開けば白し御帳綴 
女礼者(をんなれいじや)
   凪ぎて午後女礼者田んぼ道 
騎初(のりぞめ):騎馬始・馬場始・初騎
   騎初やまずは一勝馬場もよし 
弓始(ゆみはじめ):初弓・的始・射場始・弓矢始・射初
   弓始風おさまりて射場の音 
出初(でぞめ)
   街道の兄の顔あり出初式 
1/26 
寒の入(かんのいり):寒固
   閉め忘れ窓に隙あり寒の入り 
小寒(せうかん)
   小寒や雲一面の冷たさよ 
寒の内(かんのうち)
   日も差さず歩く速さや寒の内 
寒の水(かんのみづ)
   ごくごくと喉痛き程寒の水 
寒造(かんづくり) 
   寒造唄の響きや仕込み樽 
寒餅(かんもち)
   寒餅や父帰るや否や杵を上げ 
寒紅(かんべに):丑紅
   寒紅をひきて女の老けて様 
寒詣(かんまいり):裸参
   寒詣マスクに隠し紅省き 
寒垢離(かんごり):寒行
   寒垢離や槍の滝水肌に刺す 
寒念佛(かんねぶつ)
   細き道続きて長き寒念佛 
1/27 
寒施行(かんせぎょう):穴施行・野施行
   過疎化村猪も来るとは寒施行 
寒灸(かんきう)
   ロンドンへ寒灸をうつパックなり 
寒稽古(かんげいこ)
   滑る足水に打ち込み寒稽古 
寒復習(かんざらひ)
   鼓打つ姿勢凛々しや寒復習 
寒弾(かんびき)
   寒弾や肘から冷えて撥持つ手 
寒聲(かんごえ)
   寒聲や薬局にあり喉の飴 
寒見舞(かんみまひ)
   元気だと答えてみせる寒見舞 
寒卵(かんたまご)
   藁の蔭まだあた寒卵
 寒鯉(かんごひ)
   寒鯉や日長一日煮崩れて 
1/28 
寒鮒(かんぶな):寒鮒釣
   寒鮒や針避け舐めて温し底 
寒釣(かんづり)
   寒釣や日向にゐては釣れもせず 
七種(ななくさ)
   七種やフリーズドライ味付けて 
若菜(わかな):若菜摘
   風すさぶ堤防の影若菜摘 
薺(なづな):薺摘
   天竜川法面温き薺摘 
薺打つ(なづなうつ):七種打つ・七種はやす
   薺打つ唯一唄う母の聲 
人日(じんじつ)
   人日の襞スカートの寝押しかな 
七種粥(ななくさがゆ):薺粥
   朝寝坊七種粥の餅もとけ 
粥柱(かゆばしら)
   横カバン朝は行き舞ふ粥柱 
1/29 
寝正月(ねしやうがつ)
   おさんどん寝正月と決めつつも 
鷽替(うそかへ)
   鷽替や煙か湯気か人の波 
小松引(こまつびき):子の日の遊・初子の日
   息切らし富士を眺めて小松引 
初寅(はつとら):福寅・畚下し
   初寅や花は未だかと御社へ
 初卯(はつう):卯の札
   御神木青々として初卯かな 
初薬師(はつやくし)
   仁王様またくぐらせて初薬師 
初金毘羅(はつこんぴら)
   初金毘羅籠に揺られて海の色 
十日戎(とをかえびす):初恵比須・複笹・戎笹・吉兆
   十日戎前へ後ろへ二度拝み 
寶恵籠(ほゑかご):戎籠
   寶恵籠片袖垂れて踊る雪 
春場所(はるばしょ):一月場所・正月場所
   春場所や肩をすかして翠富士 
餅花(もちばな):繭玉
   餅花や街道に見せ色眩し 
土龍打(もぐらうち)
   風に揺れ声張り上げて土龍打 
綱曳(つなひき)
   月真上挑む綱曳街動く 
松の内(まつのうち)
   納期ある急かず焦らず松の内 
松納(まつをさめ)松取る・門松取る
   残業の日々の始まり松納 
飾納(かざりをさめ)飾取る・注連取る
   八幡様飾納の人まばら 
1/30 
注連貰(しめもらひ)
   家々へ吾子も声して注連貰 
左義長(さぎちやう)とんど・どんと・吉書揚・飾り焚く
   左義長や書初めの火は梢越し 
鳥總松(とぶさまつ)
   武蔵野や昔の住処鳥總松 
松過(まつすぎ)
   松過ぬ嫁ぐ日近し夜の琴 
小豆粥(あづきがゆ)
   窓の雪鍋ほんのりと小豆粥 
藪入(やぶいり)養父入り・里下り・宿下り
   藪入や下駄の音高しアーケード 
凍る(こほる)冱てる・凍土(いてつち)
   吐く息の鶴の嘴凍る夜 
冴ゆる(さゆる)風冴ゆる・鐘冴ゆる・月冴ゆる
   残る芯冴ゆる港の赤テープ 
三寒四温(さんかんしをん)
   蒲団剥ぐ三寒四温の温い日 
悴かむ(かじかむ)
   ハンドルを悴かむ片手ポケットへ 
胼(ひび)胼薬
   胼割れて白き指先紅滲み 
皸(あかぎれ)
   皸やかいがらむしの熱さかな 
霜焼(しもやけ)凍傷・霜腫
   色白な耳の霜焼け紅の色 
霰(あられ)玉霰
   ばらばらとトタンに霰奏でけり 
風花(かざはな)
   風花や吾子手をかざしポチの如 
雪見(ゆきみ)
   天気図や雪見誘ふスタッドレス 
雪掻き(ゆきかき)排雪車・ラッセル車・除雪夫
   音も無く左右へどかしラッセル車 
雪卸(ゆきおろし)
   後積もり降ろしても降ろし雪降ろし 
雪踏(ゆきふみ)
   雪踏みて母の迎えの帰り道 
雪まろげ(ゆきまろげ)
   大きくなれ共に転がり雪まろげ 
雪合戦(ゆきがつせん)雪遊
   校庭へ陣地造りも雪合戦 
雪礫(ゆきつぶて)
   陣地影お尻も出さじ雪礫 
雪達磨(ゆきだるま)雪兎・雪佛
   母ひ弱小さき頭雪達磨 
竹馬(たけうま)
   庇より高き竹馬のし歩き 
スキー
   操れぬスキー飛び込むリフト待ち 
雪車(そり)橇・雪舟・犬橇(のそ)・手橇
   しゃんしゃんと鈴ぶら下げて雪車の来て 
雪沓(ゆきぐつ)藁沓・深沓・爪籠
   夕焼けや雪沓きしむ帰り道 
かんじき 樏・橇(かんじき)
   かんじきや股上げ登り胸の丈 
しまき 雪しまき
   雪しまき赤いランプが消防車 
凍死(とうし)吹雪倒れ
   口々に凍死はおんな邨の口 
雪眼(ゆきめ)雪眼鏡
   雪眼鏡歯元美し指導員 
雪女郎(ゆきぢよらう)雪女
   雪女郎誰を待つやら邨の口 
雪折(ゆきをれ) 
   雪折の届き枕辺ひとり閨 
雪晴(ゆきばれ) 
   雪晴や棚田の畦に空の青 
氷(こほり)厚氷・氷面鏡(ひもかがみ)
   揺れもせず浮かぶ氷の行く流れ 
氷柱(つらら)垂氷(たるひ)
   尖がりし下の恐さや伸ぶ氷柱 
採氷(さいひよう)
   採氷や村の名前の懐かしき 
砕氷船(さいひようせん)
   昭和基地旗は日の丸砕氷船 
氷下魚(こまい)氷下魚釣る
   叩く数氷下魚炙るや男子寮 
スケート 氷滑り
   人流れスケート場のワルツかな 
避寒(ひかん)避寒宿
   開く窓鯨潮吹く避寒宿 
寒月(かんげつ)
   寒月や谺返してビルの谷 
寒の雨(かんのあめ)
   夕灯隙間拡げて寒の雨 
寒燈(かんとう)冬灯し
   揺れも無き村外れ建ち冬灯 
水餅(みづもち)
   顔写す水餅の甕皺もなく 
煮凝(にこごり)凝鮒
   プルプルと煮凝溶けて昼の飯 
氷豆腐(こほりどうふ)高野豆腐・寒豆腐
   鰹だし氷豆腐の滲み出で 
氷蒟蒻(こほりごんにやく)
   天に月氷蒟蒻照り返し 
寒天造る(かんてんつくる)
   つるつると寒天造るかじかむ手 
寒曝(がんざらし)寒晒
   高く撒く赤くて広く寒曝 
凍鶴(いてづる)
   天に啼き凍鶴が息いと白き 
寒鴉(かんがらす)
   空にゐて愉快コメント寒鴉 
寒雀(かんすすずめ)
   寒雀丸く膨らむ屋根の上 
1/31 
凍蝶(いててふ)
   凍蝶やしばらく見えて難治かな 
初観音(はつくわんおん)
   連れ立ちて初観音櫓の軋み 
千両(せんりやう)
   千両の溢して粒の水に映え 
萬両(まんりやう)
   築山や萬両が孫そこここに 
藪柑子(やぶかうじ)
   盆栽や実の二つ三つ藪柑子 
青木の實(あをきのみ)
   荒れる風靑葉隠して青木の實 
寒牡丹(かんぼたん)
   温きときこもから覘く寒牡丹 
葉牡丹(はぼたん)
   店じまい残る葉牡丹我を待つ 
寒菊(かんぎく)冬菊
   ふくむ筆寒菊囲む海静か 
冬薔薇(ふゆさうび)寒薔薇・冬ばら
   触れずとも凛と冷たき冬薔薇 
水仙(すゐせん)
   かぜ緩む水仙の咲く土手温し 
冬の草(ふゆのくさ)冬草
   無残なりフェンス工事が冬の草 
龍の玉(りゆうのたま)龍の髭の實
   細葉下冷たく光る龍の玉 
寒竹の子(かんちくのこ)
   寒竹の子出陣式が銃の先 
冬苺(ふゆいちご)
   陽光の一枚脱ぎて冬苺 
麥の芽(むぎのめ)
   麥の芽や一陣越して畝の列 
寒肥(かんごえ)
   身を縮め寒肥も舞ふ西の風 
石蓴(あをさ)あをさ汁
   朝餉には潮のかをりやあをさ汁 
初大師(はつだいし)初弘法
   初大師小走り渡り吾子の頬 
大寒(だいかん)
   しみじみと大寒の道小銭なる 
厳寒(げんかん)酷寒
   厳寒やフロントガラスお湯かけて 
初天神(はつてんじん)天神花・天神旗
   初天神凧もお面も並び待ち 
日脚伸びる(ひあすのびる)
   まめしなべ転がり止まり日脚伸ぶ 
早梅(さうばい)
   あの家の早梅未だか閨の妻 
臘梅(らふばい)唐梅
   臘梅とアルツハイマー教えし師 
寒梅(かんばい)冬の梅・寒紅梅
   寒梅を写してカメラこわばる手 
探梅(たんばい)探梅行
   探梅や愛でる暇なき風の冷え 
冬桜(ふゆざくら)寒桜
   咲き続け忘れて季節冬桜 
寒椿(かんつばき)
   空っ風早く太れと寒椿 
侘助(わびすけ)
   侘助や竹の切り口開く白 
寒木瓜(かんぼけ)
   寒木瓜や指で弾くや幼稚園 
室咲(むろざき)室の花・室の梅
   喫茶店ドアー開ければ室の花 
春待つ(はるまつ)
   さいはての春待つ岬風やまず 
春隣(はるとなり)
   反り返り犬の背伸びや春隣 
節分(せつぶん)
   節分の一日早き今年かな 
柊挿す(ひひらぎさす)
   柊挿す硬くて母や鬼の顔 
追儺(つゐな)なやらひ・鬼やらひ
   父先頭紋付き袴追儺かな 
豆撒(まめまき)年男・年の豆
   豆撒や畳打つ豆みかん飛ぶ 
厄落(やくおとし)
   饒舌なあにき素通り厄落 
厄拂(やくはらひ)
   煌々と上弦の月約拂 
厄塚(やくづか)
   積み上げて雪の厄塚白けむり 
和布刈神事(めかりしんじ)和布刈禰宜・和布刈桶
   海に入る奥歯ガチガチ和布刈禰宜

虚子編新歳時記より各季語で一句詠んでみました。

12/31/2020

新歳時記より 2020-12

新歳時記より 2020-12

 


十二月(じゅうにがつ)
     切り揃え鉈振り下ろし十二月 
霜月(しもつき)
     霜月や篠刈り人の歩む如 
短日(たんじつ):日短(ひみじか)暮早し(くれはやし)
     短日や鎮守の森の長き影 
冬の日(ふゆのひ):冬日(ふゆひ)冬日向(ふゆひなた)
     街道の人を眺めて冬日向 
冬の朝(ふゆのあさ)
     冬の朝蒲団の中の着替えかな 
冬の雲(ふゆのくも):凍雲(いてぐも)
     風運ぶ数えきれなき冬の雲 
冬霞(ふゆがすみ)
     裏の畑大根扱ぎの冬霞 
顔見世(かほみせ):歌舞伎顔見世(かぶきかほみせ)
     顔見世や幟が立ちて始まりぬ 
12/2 
冬の空(ふゆのそら):寒天(かんてん)寒空(さむぞら)
     冬の空待つ人のいて向こう岸 
冬の鳥(ふゆのとり):寒禽(かんきん)
     固まりて押し競饅頭冬の鳥 
冬の雁(ふゆのかり)
     田の向こう見張り役いて冬の雁 
梟(ふくろふ)
     長閑な夜梟鳴くや屋敷の木 
木兎(みみづく):「づく」
     声聞けど木兎の耳未だ見ず 
冬田(ふゆだ)
     空稲架の鳴く声淋し冬田かな 
水鳥(みずとり)
     水鳥や湖上の風に委ね揺れ 
浮寐鳥(うきねどり)
     ジーゼルの鉄橋響く浮寐鳥 
鴨(かも)
     河骨が葉を敷く池に鴨の寝る 
12/3 
鴛鴦(をしどり):「をし」
     鳥小屋へ鴛鴦浮かぶ掃除番 
鳰(かいつぶり):「にほ・にほどり」
     鳰遥か向こうで首を振り 
初雪(はつゆき)
     初雪や証拠残らぬ下駄の跡 
初氷(はつごおり)
     掬い出す薄きガラスや初氷 
寒さ(さむさ)
     教室や遠い太陽寒さかな 
冷たし(つめたし):「底冷え」
     下校済む冷たし廊下暗くなり 
息白し(いきしろし)
     推進機後ろ向き行く息白し 
冬木(ふゆき)
     木道や樵の休む大冬木 
冬木立(ふゆこだち)
     冬木立武蔵野にて従妹逝き 
12/4 
枯木(かれき):「枯木宿」
     たい付けを忘れず入れて負う枯木 
枯木立(かれこだち):「寒林」
     枯木立煙の登り開墾地 
枯柳(かれやなぎ)
     この道は柳通や枯柳 
枯山吹(かれやまぶき)
     しなやかに枯山吹の揺れる枝 
枯桑(かれくわ):「桑括り」
     風攫う縛る枯桑ヨガポーズ 
枯萩(かれはぎ)
     枯萩のトンネル淋し誘導路 
枯芙蓉(かれふよう)
     枯芙蓉毛深い実割れ現る実 
枯茨(かれいばら)
     枯茨衰えぬ棘風に振れ 
冬枯(ふゆがれ)
     冬枯や釣瓶の廻る家ありし 
霜枯(しもがれ)
     霜枯の教習場のバイクかな 
12/5 
冬ざれ(ふゆざれ)
     冬ざれの三方原より富士望む 
枯草(かれくさ):「草枯」
     鎌光る枯草囲む墓参り 
枯蔓(かれづる)
     枯蔓や廃屋被ふ年月よ 
枯蔦(かれつた)
     白壁や枯蔦つたう赤き色 
枯葎(かれむぐら)
     河原へと行方阻むや枯葎 
枯尾花(かれおばな):「枯芒・彼萱」
     街道へ邪魔する長き枯尾花 
枯蘆(かれあし)
     頬に風揺れる枯蘆鳥の鳴き 
枯蓮(かれはす)
     枯蓮や鉄さび色が写す田面 
枯芝(かれしば)
     枯芝やボールが跳ねてライン割り 
枯菊(かれぎく)
     枯菊や束ねる束が匂いたち 
12/6 
枯芭蕉(かればせう)
     枯芭蕉いよいよ寒く見えてきて 
苗代茱萸の花(なはしろぐみのはな):たはらぐみの花
     夕暮れや苗代茱萸の花の咲く 
枇杷の花(びわのはな)
     枇杷の花井戸端会議のらぬ朝 
臘八會(らふはちゑ):「成道會(じゃうだうゑ)」
     臘八や警策響く座禅堂 
大根焚(だいこたき):「鳴瀧の大根焚」
     気新た外の竃で大根焚 
風呂吹(ふろふき)
     風呂吹や度肝を抜かす竹の爆ぜ 
雑炊(ざふすゐ)
     時間とは言わず雑炊勧めけり 
葱(ねぎ):ひともじ
     捻じりあげひともじのあり夕餉かな 
12/7 
根深汁(ねぶかじる):葱汁
     大鍋も縮み沈みて根深汁 
冬菜(ふゆな):冬菜畑(ふゆなばたけ)
     真っ直ぐな畝連なりて冬菜かな 
白菜(はくさい)
     止まる手や縛る白菜帽子跳ぶ 
干菜(ほしな):懸菜・吊菜
     陽を浴びせ風が揺さぶる干菜かな 
干菜汁(ほしなじる)
     浸し水かをる朝餉や干菜汁 
干菜湯(ほしなゆ)
     干菜湯や家中かをり温み来る 
胡蘿蔔(にんじん):人参
     スライサー人参サラダいと早し 
蕪(かぶら):かぶ・緋蕪
     十八番蕪の漬物薄く切り 
蕪汁(かぶじる)
     蕪汁や味噌と争うそのかをり 
12/8 
納豆汁(なっとうじる)
     糸引かぬ納豆汁になじめなく 
粕汁(かすじる):酒の粕
     大吟醸甘さもかをり酒の粕 
闇汁(やみじる)
     闇汁や霜降り牛を忍ばせて 
のっぺい汁
     のっぺい汁けふは来ないか黒い梁 
寄鍋(よせなべ)
     長男の寄せ鍋仕切る夕餉かな 
鍋焼(なべやき):芹焼・鍋焼饂飩
     風邪ひけば鍋焼饂飩母の味 
おでん:おでん屋
     白い湯気かきこの踊るおでんかな 
焼藷(やきいも)
     夕暮れの焼藷の笛切れ切れに 
湯豆腐(ゆどうふ)
     電灯や湯豆腐浮かぶ赤い椀 
12/9 
夜鷹蕎麦(よたかそば):夜鳴饂飩
     覗くマンガ「早く寝なさい」夜鳴饂飩 
蕎麦掻(そばがき)
     何も無い昼は蕎麦掻妻の技 
蕎麦湯(そばゆ)
     啜り終え店の味知る蕎麦湯かな 
葛湯(くずゆ)
     腹チクチク母が差し出す葛湯かな 
熱燗(あつかん)
     ちんちんの熱燗の飛ぶアルコール 
玉子酒(たまござけ)
     小ジョッキ飲む玉子酒下がる熱 
生姜酒(しょうがざけ)
     コロナ禍や今宵は一人生姜酒 
事始(ことはじめ)
     新しき製図用紙や事始 
貞徳忌(ていとくき)
     太鼓橋松友として貞徳忌 
12/10 
神楽(かぐら)
     獅子鼻の中の恐さや神楽かな 
里神楽(さとかぐら)
     頭とり隣りの親父里神楽 
冬の山(ふゆのやま):冬山・冬山家(ふゆやまが)
     葉も落としじっと静かに冬の山 
山眠る(やまねむる):眠る山
     画面や頭上PCの山眠る 
冬野(ふゆの)
     石跳ねる冬野を一人漕ぐペダル 
枯野(かれの)
     静かなる枯野はじっと風を待ち 
熊穴に入る(くまあなにいる):熊
     まんぷくの熊穴に入る野菜畑 
熊突(くまつき)
     熊突やへっぴり腰の竹の先 
熊祭(くままつり)
     神様に汁の熱さや熊祭 
12/11 
狩(かり):猟犬(れふけん)・猪狩(ししがり)・鹿狩
     満面の獲物担ぎて狩自慢 
猟人(かりうど):猟夫(さつを)
     赤いベスト被る狩人黄色かな 
狩の宿(かりのやど)
     熊打や猟銃光る狩の宿 
薬喰(くすりぐひ):鹿売(ろくうり)
     大物を隣も誘いて薬喰 
山鯨(やまくぢら)
     山鯨囲炉裏が宿に鍋の湯気 
狼(おほかみ)
     風止みて狼聞こゆ山の宿 
狐(きつね)
     自転車と狐の招き藪の中 
狐罠(きつねわな)
     化かせぬか知恵絞りあひ狐罠 
狸(たぬき)
     ふわふわとヘッドライトの狸かな 
12/12 
狸罠(たぬきわな)
     この餌喰ふ閉まるシャッター狸罠 
狸汁(たぬきじる)
     白はんぺん浮かべて今宵狸汁 
兎(うさぎ):兎汁
     耳赤き兎の餌と土手の草 
兎狩(うさぎがり)
     柴犬やにほひ一杯兎狩 
鼬罠(いたちわな)
     鼬罠暴れる眺む通る人 
笹鳴(ささなき):冬鶯(ふゆうぐいす)・鶯の子・笹子
     笹鳴や修行の後変声期 
鶲(ひたき)
     果物やぺこぺこお辞儀鶲かな 
鷦鷯(みそさざい):三十三才(みそさざい)
     人絶えて分校の屋根三十三才 
都鳥(みやこどり)
     都鳥等間隔の二人達 
12/13 千鳥(ちどり):鵆(ちどり)・磯千鳥・濱千鳥・川千鳥・夕千鳥・小夜千鳥・群 千鳥・友千鳥・遠千鳥
     汐汲や天秤棒の千鳥越え 冬の海(ふゆのうみ)     本当に誰もいないと冬の海 鯨(くぢら)
     桂浜潮吹き鯨行脚かな 
捕鯨(ほげい):捕鯨船
     轟音や白波高く捕鯨船 
鯨汁(くぢらじる):鯨鍋
     柔らかき野菜歯たたぬ鯨汁 
河豚(ふぐ):ふぐと・河豚汁・ふぐと汁・河豚鍋・河豚ちり・鰭酒・河豚の宿
     近畿路で店を梯子の河豚の味 
鮟鱇(あんかう):鮟鱇鍋(あんかうなべ)
     パック詰め鮟鱇鍋がとろみかな 
12/14 (12/1 ツイート) 
鮪(まぐろ):鮪船
     大将の鮪の解凍店の味 
鱈(たら)
     たらちねの母の鱈ちり去りし味 
鰤(ぶり):寒鰤・鰤起し
     寒鰤や一本で売る安売り店 
鰤網(ぶりあみ)
     立山のゆれて鰤網あぐ重さ 
魦(いさざ)
     粉まみれ揚げて魦の塩加減 
杜父魚(かくぶつ):霰魚(あられうお)
     杜父魚や下る九頭竜霰あり 
潤目鰯(うるめいわし)
     嫁入りて潤目鰯の指剥き 
塩鮭(しほざけ):あらまき・しほひき
     あらまきや吊られ電球末近し 
乾鮭(からざけ)
     乾鮭や酒の肴の喰いちぎり 
12/15 
マスク
     コロナ禍やマスク美人が距離を置く 
襟巻(えりまき):首巻 
    襟巻や指で絡めて顔隠し 
ショール:肩掛
     昼高し絹がショールの照り返し 
手袋(てぶくろ):皮手袋
     指開き皮手袋を見びらかし 
マッフ
     古行李祖母のマッフが褪せて色 
股引(ももひき):もんぺ・ぱっち
     股引を履かぬ男の脛の色 
足袋(たび)
     物干し台別珍の足袋色ごとに 
外套(ぐわいたう)
     外套を引きはがしたき帰る人 
12/16 
海鼠(なまこ):海鼠突(なまこつき)
     げて姿味知る者が海鼠なり 
海鼠腸(このわた)
     海鼠腸や父の箸先僅かなり 
牡蠣(かき):牡蠣打(かきうち)
     心込め選び出し詰め牡蠣フライ 
牡蠣むく(かきむく)
     殻の山牡蠣むき女眺む午後 
牡蠣船(かきぶね)
     牡蠣船や豊量祝ふ重き音 
牡蠣飯(かきめし)
     レモン汁牡蠣飯かをり夕餉かな 
味噌搗(みそつき):味噌作る
     石臼や躍り出ぬよう味噌搗きぬ 
根木打(ねつきうち)
     根木打分捕り棒が丸い山 迫る夕闇火花散り 
12/17 
冬の蝶(ふゆのてふ)
     冬蝶の枯れて花の香舞ひおりぬ 
冬の蜂(ふゆのはち)
     弱弱し寝ぼけ眼が冬の蜂 
冬の蠅(ふゆのはへ)
     日の当たる赤い座布団冬の蠅 
冬籠(ふゆごもり)
     都落ち丸太のこ挽く冬籠 
冬座敷(ふゆざしき)
     ガラス越し障子明るし冬座敷 
屏風(びやうぶ):金屏風・銀屏風・銀屏・檜屏風(ゑびやうぶ)
     白屏風誘惑に負け太き文字 
障子(しやうじ)
     姉が友障子向こうの内緒かな 
炭(すみ):木炭・堅炭
     膨らまし炭火育てて頬の色 
消炭(けしずみ)
     消炭や天井を這ふ白煙(しろけむり) 
12/18 
炭団(たどん):練炭
     練炭の沸かす鉄瓶ちんちんと 
炭火(すみび):炭頭・燻炭・跳炭
     消壺に納めて炭火けふ終い 
埋火(うづみび)
     夕まぐれ掘りて埋火もみじの手 
炭斗(すみとり):炭取・炭籠・十能
     炭斗と火箸が行き来早き朝  
12/8 (この日より) 
炭竃(すみがま)
     炭竃の煙にむせて熊の去り 
炭焼(すみやき)
     炭焼が煙を頼り愛し人 
炭俵(すみだわら)
     炭俵けふは軽きと運び上げ 
炭売(すみうり)
     炭売や髭は書かまい痒くとも 
焚火(たきび)
     焚き火の香子ら探し当て焼けて芋 
 榾(ほだ):榾の宿・榾の主
     榾の火や梁の黒さと艶やかさ 
爐(ろ):爐明・爐話
     爐話の続きを語る夜の鳥 
囲爐裏(ゐろり)
     天井の囲爐裏の煙帰り来て 
暖房(だんぼう)
     暖房や戸の開け閉めのしつけ方 
12/9 
ストーヴ:暖爐
     ストーヴの横妹座らして起立礼 
スチーム
     スチームやカチンとバルブ開く朝 
ぺーチカ
     ぺーチカの埃の積もり薪かな 
炬燵(こたつ):切炬燵・炬燵布団
     炬燵人顎であれこれ指図かな 
置炬燵(おきごたつ)
     姉の友一人独占置炬燵 
助炭(じょたん)
     おもむろに母貼替えて助炭かな 
火鉢(ひばち)
     一部屋に一つの火鉢人の息 
火桶(ひおけ)
     白き灰朱塗りの火桶青炎 
12/10 
手焙(てあぶり):手爐(しゅろ)
     父配り手焙九谷鉢に化け 
行火(あんくわ)
     日が暮れど行火が温き足抜けず 
懐爐(くわいろ):懐爐灰
     柔肌や懐爐で火傷やせ男 
温石(おんじゃく)
     温石と決めて取り出し焚火かな 
 湯婆(たんぽ)
     蒲団剥ぐ湯婆のまえの冷気かな 
足温め(あしぬくめ):足焙・足爐 
    靴下に丸い穴あり足温め 
湯気立(ゆげだて)
     湯気立の焼鏝あてて折目つけ 
湯ざめ(ゆざめ)
     クライマックス湯ざめ忘れて見入りけり 
12/11 
風邪(かぜ):風邪薬(かざぐすり)
     うんちくを並べ父だけ風邪薬 
咳(せき)
     気圧配置咳の苦しく課長席 
嚏(くさめ)(くしゃみ)
     爆破力自転変えんや我が嚏 
水洟(みづばな)
     水洟や今宵邪魔するプロポーズ 
 吸入器(きふにふき)
     泡音や空いて冷たく吸入器 
竈猫(かまどねこ)
     火をいれどまだまだ居れる竈猫 
綿(わた):綿打
     裏返す紅き花柄真綿張り 
蒲団(ふとん):干蒲団・羽根蒲団・絹蒲団 
    老女見ゆ似合わぬ色が干蒲団 
12/12 
背蒲団(せなぶとん):負真綿
     老い楽やダサい気にせず背蒲団 
肩蒲団(かたぶとん)
     肩蒲団丸い窓より湖眺む 
腰蒲団(こしぶとん)
     腰蒲団あてて漁師や舵を切り 
衾(ふすま)蒲団のこと:紙衾
     母抑えおなら漏らさぬ衾哉 
毛布(まうふ)
     温暖化毛布が出番減りにけり 
夜着(よぎ)
     耳元のラヂオはひとり夜着の外 
褞袍(どてら)
     サナトリューム褞袍を父が迎えけり 
綿入(わたいれ):布子・綿子
     おしくらべ綿入厚く体当たり 
12/13 
紙衣(かみこ):紙子
     如何着す柳行李へ紙衣かな 
ちゃんちゃんこ:袖無
     ちゃんちゃんこ上げを外してもう二年 
ねんねこ
     ねんねこや髪を抑えてゆらゆらと 
厚司(あつし)
     網を挽く厚司が列のリズムかな 
胴着(どうぎ)
     粋極む見えぬ胴着や紅裏地 
毛衣(けごろも)
     毛衣の下のTシャツ緋色なり 
毛皮(けがは):毛皮売
     小口瓶スルリ出し入れ毛皮売 
皮羽織(かはばおり)
     火事もなくえこうで待つや皮羽織 
12/14 
重ね着(かさねぎ)
     気にかかり重ね着が色下着にも 
着ぶくれ(きぶくれ)
     肥えたねと痩せに嬉しや着ぶくれて 
冬服(ふゆふく)
      小開きて冬服を縫ふ昼下り 
冬帽(ふゆばう):防寒帽・毛帽子
     北支より冬帽の父温き顔 
 頭巾(づきん)
     念願のとんがり頭巾飛びまわり 
綿帽子(わたぼうし)
     厳寒や老婆も被り綿帽子 
頬被(ほほかむり)
     頬被むこうの畑父のいて 
耳袋(みみぶくろ):耳掛
     しもやけや羨ましくて耳袋 
12/15 
マスク
     コロナ禍やマスク美人が距離を置く 
襟巻(えりまき):首巻
     襟巻や指で絡めて顔隠し 
ショール:肩掛
     昼高し絹がショールの照り返し 
手袋(てぶくろ):皮手袋
     指開き皮手袋を見びらかし 
 マッフ
     古行李祖母のマッフが褪せて色 
股引(ももひき):もんぺ・ぱっち
     股引を履かぬ男の脛の色 
足袋(たび)
     物干し台別珍の足袋色ごとに 
外套(ぐわいたう)
     外套を引きはがしたき帰る人 
12/16
コート:東コート(あづまこーと)
     果物籠東コートの叔母が来て 
被布(ひふ)
     叔母来訪良きなき話被布を着て 
懐手(ふところで)
     玄関へ父立ち待ちて懐手 
日向ぼこり(ひなたぼこり):日向ぼっこ・日向ぼこ
     背が伸びて裾も寒かろ日向ぼこ 
毛糸編む(けいとあむ)
     呼びかけど毛糸編む妻目数よむ 
 飯櫃入(おはちいれ):ふご
     占有権唱えて猫が飯櫃入 
藁仕事(わらしごと)
     がしゃがしゃと夕日差し込む藁仕事 
楮蒸す(かうぞむす)
     煙立つ隣りの庵楮蒸す 
紙漉(かみすき)
     ぱしゃぱしゃとリズム崩さず紙漉きぬ 
12/17 
藺植う(ゐうう)
     あと僅か手足の凍みて藺を植うる 
甘蔗刈(かんしょかり)
     甘蔗刈夕映の見ゆこの畑も 
薪能(たきぎのう):若宮能・後宴の能
     薪能萬斎と遭ふ方広寺 
一茶忌(いっさき)
     一茶忌や雀と遊ぶ馬もゐて 
北風(きたかぜ):寒風
     北風に押され登校足軽ろき 
空風(からかぜ)
     空風に向けて小便服の濡れ 
隙間風(すきまかぜ)
     線香の煙も早し隙間風 
虎落笛(もがりぶえ)
     虎落笛ハモる調子が合わぬ朝 
12/18 
鎌鼬(かまいたち):鎌風
     鎌鼬秘伝披露と回す腕 
冬凪(ふゆなぎ)
     冬凪げてサーファーが座防波堤 
霜(しも):霜柱・大霜・深霜・朝霜・夜の霜・霜の聲・霜凪・霜雫
     冷える朝白いベールが霜を知り 
霜夜(しもよ)
     切干が旨さも増して霜夜かな 
霜柱(しもばしら)
     ザクザクと砕けぬけふの霜柱 
霜除(しもよけ)
     霜除の白さも増して陽も低し 
敷松葉(しきまつば)
     ところどこ芝の青さや敷松葉 
雪圍(ゆきがこい):雪垣・雪除・雪構
     老骨と縄竹揃え雪圍 
雪吊(ゆきつり)
     雪吊が舞い拡がりて兼六園 
12/19 
藪巻(やぶまき)
     藪巻の千本松原暮ゆき 
雁木(がんぎ)
     雪止みて声の飛び交う雁木市 
フレーム:温床
     フレームの温し空気の鼻をつき 
潤目鰯(うるめいわし)
     嫁入りて潤目鰯の指剥き 
塩鮭(しほざけ):あらまき・しほひき
     あらまきや吊られ電球末近し 
乾鮭(からざけ)
     乾鮭や酒の肴の喰いちぎり 
冬の雨(ふゆのあめ)
     冷え具合今に変わるか冬の雨 
12/20 
霙(みぞれ)
     ハンドルとポケット交互霙かな 
霧氷(むひょう)
     ヘッドライト地平線まで霧氷林 
雨氷(うひょう)
     朝日受け雨氷名残の庭の池 
 冬の水(ふゆのみず)
     冬の水逆さの富士の雪の色 
水涸る(みづかる):川涸る・沼涸る・瀧涸る
     凧高し水涸る田圃見下ろして 
冬の川(ふゆのかわ):冬川原
     冬の川さざ波も無く流れけり 
12/21 
池普請(いけぶしん):川普請
     池普請打つ数増えて鋼矢板 
狐火(きつねび)
     狐火と火球行く先同じとは 
火事(くわじ):船火事・大火・小火(ぼや)・半焼・類焼・近火・遠火事・火事見舞
     暗闇の煙真っ直ぐ照らす火事 
 火の番(ひのばん):夜番小屋・夜廻り・夜警・夜番・火の見櫓
     エンジンの夜警の響きパトライト 
冬の夜(ふゆのよ):夜半の冬・寒夜
     冬の夜蝋燭の影ながながし 
柚湯(ゆずゆ):柚風呂
     効能は浮かぶ楽しさ柚湯かな 
12/22 
近松忌(ちかまつき):巣林子忌
     道行や手を引き引かれ近松忌 
大師講(だいしかう):大師粥
     飾りつけ我が家当番大師講 
蕪村忌(ぶそんき):春星忌
     蕪村忌やおもひは遠き大江山 
クリスマス:降誕祭・生誕祭
     4インチ父が昔のクリスマス 
 社会鍋(しゃくわいなべ):慈善鍋
     社会鍋夕暮れ喇叭旗の揺れ 
師走(しはす)
     急かされて師走はいつも風の吹き 
極月(ごくげつ)
     極月や日々変わりなくひきこもり 
暦売(こよみうり)
     祝日や一日増えて暦売 
12/23 
古暦(ふるごよみ)
     物入れにそっと重ねて古暦 
日記買ふ(にっきかふ)
     初志貫徹と五年日記買ふ 
ボーナス
     ボーナスやなくなり暮らし楽もなく 
年用意(としようい)
     新しき道具揃えて年用意 
 春仕度(はるじたく)
     奥の部屋箪笥のにほふ春支度 
春着縫ふ(はるぎぬふ)
     うきうきと明るき色の春着縫ふ 
年木樵(としきこり):年木・年木積む
     同じ山何故か気忙し年木樵 
歯朶刈(しだかり)
     歯朶刈やポエムに遠き鎌の音 
12/24 
注連作(しめつくり)
     忙しさへ遠くのぼやと注連作 
年の市(としのいち)
     母の後欲しいものなき年の市 
羽子板市(はごいたいち)
     羽子板市いつも同じの顔ばかり 
飾売(かざりうり) 
    声もなく人集まりて飾売 
 角松立つ(かどまつたつ)
     角松立つ「ひっくり返す」子らの歌 
注連飾る(しめかざる)
     掃除終へ神に拝礼注連飾る 
煤拂ひ(すすはらひ):煤掃・煤竹
     梁の上積もり積もった煤拂ひ 
煤籠(すすごもり)
     煤籠ふりして二人珈琲と 
12/25 
煤湯(すすゆ)
     安堵顔さもいもこじの煤湯かな 
畳替(たたみがへ)
     へそくりや出ては来ぬかと畳替 
冬休(ふゆやすみ)
     慌ただし寝転べぬ部屋冬休 
歳暮(せいぼ)
     歳暮着く都の母の弾む声 
12/26 
札納(ふだおさめ)
     分類を規則厳しく札納 
御用納(ごようおさめ)
     大行列御用納に中廊下 
年忘(としわすれ):忘年会
     小さくてたった一度の忘年会 
餅米洗ふ(もちごめあらふ)
     幾臼も餅米洗ふ腕太き 
12/27 
餅搗(もちつき)
     餅搗や杵の重さの気にならぬ 
餅(もち):鏡餅・切餅・熨斗餅
     子の育ち大きさ変り鏡餅 
餅筵(もちむしろ)
     光り受け餅筵の香部屋に満つ 
餅配(もちくばり)
     門先に人の気配や餅配 
12/28 
年の暮(としのくれ):歳末・歳晩
     突然の他人行儀に年の暮 
節季(せっき)
     二学期の封筒を待ち大節季 
年の内(としのうち):年内
     年内が提出期限焦るかな 
行年(ゆくとし):年惜む
     行年や惜しむことだけ残りけり 
12/29 
大年(おほどし)
     大年や水道局の蛇口から 
大晦日(おほみそか)
     大晦日書家の半紙が煙い顔 
掛乞(かけごひ)
     掛乞に設定温度高くして 
掃納(はきおさめ)
     玄関から門先向かふ掃納 
12/30 
晦日蕎麦(みそかそば):年越蕎麦
     中学生一玉増えて晦日蕎麦 
年の夜(としのよ)
     静かなる妻の湯浴み年の夜 
年越(としこし)
     年越や湯舟に届く鐘を聞き 
年取(としとり)
     年取の膳が並びて紅白を 
12/31 
年守る(としまもる):としもる
     年守る遠くに鐘が聞きながら 
年籠(としごもり)
     年籠大樹が隠す星の舞 
除夜(じょや)
     暗闇や除夜の銀杏が隠れ星 
除夜の鐘(じょやのかね)
     シャンプーが泡も流して除夜の鐘

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11/30/2020

新歳時記より 2020-11

新歳時記より 2020-11



冬(ふゆ):冬の宿(ふゆのやど)冬の庭(ふゆのには)冬の町(ふゆのまち)冬沼(ふゆぬま)冬の濱(ふゆのはま)
   逆立ちて野良犬が毛並み冬の町
文化の日(ぶんかのひ)
   通販で国旗揃えし文化の日

立冬(りつとう)
   立冬や新しマスクてふの柄
十一月(じふいちぐわつ)
   息見えて十一月の連休
初冬(はつふゆ)
   初冬やカメラ構えてフルムーン

神無月(かんなづき)
   人不足神主募集神無月
神の旅(かみのたび)
   八百万空路開通神の旅
神送(かみおくり)
   紙送り神事の後に神送

神渡(かみわたし)
   神渡地の神さまが社揺れ
神の留守(かみのるす)
   鎮守様宮司の守り神の留守
初時雨(はつしぐれ)
   身震いが雀あわてて初時雨

初霜(はつしも)
   初霜や袖口に受く陽の温み
冬めく(ふゆめく)
   剥ぐ蒲団冬めく朝の奪い合い
爐開(ろびらき)
   爐開や去年がかをりの舞い上がり

口切(くちきり)
   口切や正客眺む竹垣根
亥の子(ゐのこ)
   父残業猪の子餅搗く母と僕
御取越(おとりこし)
   山の上檀家少しの御取越

達磨忌(だるまき)
   達磨忌や僧の仕度の早さかな
十夜(じゅうや):「十夜粥・ごこく粥」
   提灯の招く参道十夜かな
酉の市(とりのいち):「一の酉・二の酉・三の酉」
   手拍子があちこち響く酉の市

熊手(くまで)
   皆が目を背なの熊手の引き寄せて
箕祭(みまつり):「箕納(みをさめ)」
   箕納を母の行事とはるか前
鞴祭(ふいごまつり)
   盆にのせ鞴祭の温き餅

茶の花(ちゃのはな)
    屋敷裏茶の花風に揺れもせず
山茶花(さざんか)
   のど自慢山茶花の唄鐘一つ
柊の花(ひいらぎのはな)
   文机柊の花かをりけり

八手の花(やつでのはな)
   竹鉄砲八手の花が咲く前に
石蕗の花(つはのはな)
   雨音を下から聴けり石蕗の花
芭蕉忌(ばせをき)
   芭蕉忌や森林を行く人の列

蘭雪忌(らんせつき)
   線香や菊の香被ふ蘭雪忌
空也忌(くうやき):「空也念佛」
   空也忌や奥州の空雪待てり
鉢叩(はちたたき)
   川越えて鉦のリズムや鉢叩

冬安居(ふゆあんご):「雪安居(せつあんご」)
   山寺や夕日の浮かび冬安居
七五三(しちごさん)
   七五三妻の着物も様になり
帯解(おびとき)
   帯解きて簪ゆれて氏神へ

袴著(はかまぎ)
   袴著や氏神様の石段を
髪置(かみおき)
   髪置や洗髪が指つんつんと
新海苔(しんのり)
   新海苔と墨痕太く乾物屋

棕櫚剥ぐ(しゅろはぐ)
   梯子持ち棕櫚剥ぐ父を見上げたり
蕎麦刈(そばかり)
   蕎麦刈て庵の裾も見えにけり
麥蒔(むぎまき)
   麥蒔やふわふわの畝紅葉の手

大根(だいこん)
   土出でて白き大根なまめかし
大根引(だいこんひき)
   真っ直ぐと大根引の極意聞き
大根洗ふ(だいこんあらふ)
   そそくさと大根洗ふ寒さかな

大根干す(だいこんほす):「懸大根・干大根(ほしだいこ)
   空稲架や大根を干す三方ヶ原
切干(きりぼし)
   切干や強風に耐えしがみつき
淺漬(あさづけ)
   浅漬やけふは固いが文句なき

澤庵漬く(たくわんつく):大根漬ける
   桶の中澤庵を漬くあがる息
茎漬(くきづけ):茎の桶・茎の石・菜漬
   茎漬や味すっきりと鷹の爪
酢茎(すぐき)
   名店へタクシー廻り酢茎かな

蒟蒻掘る(こんにゃくほる):蒟蒻干す
   風強し蒟蒻を掘る裏の畑
蓮根掘る(はすねほる):蓮掘
   泥水やホースくねくね蓮根掘る
泥鰌掘る(どぢやうほる)
   羊羹を切るが如しに泥鰌掘る

鷲(わし)
   一筋に棚田が煙鷲の飛び
鷹(たか):鷹渡る:「鵟(のすり)・沢鵟(ちゅうひ)・大鷹(おほたか)・蒼鷹(もろがへり)・八角鷹(はちくま)・鶚(みさご)・熊鷹(くまたか)」
   駅の木や椋鳥散らすにほふ鷹

隼(はやぶさ)
   隼や眼光赤く睨みつけ
鷹狩(たかがり):放鷹(はうよう)・鷹野
   鷹狩や殿が休みの屋敷跡
鷹匠(たかじやう)
   鷹匠や鳥打帽をゆがめたり

小春(こはる):小春日和・小春日
   縁側の小春日和のカフェテラス
冬日和(ふゆびより):冬晴
   冬日和冷えた焼き芋歯に沁みて
冬暖(ふゆあたたか):冬ぬくし
   手探りて脱いだ靴下冬ぬくし
 
靑寫眞(あをじやしん)
   曇り空けふは出るかな靑寫眞
帰り花(かへりばな):返り咲(かへりざき)忘れ咲(わすれざき)狂ひ花(くるひばな)狂ひ咲(くるひざき)
   突然の濃くて口紅狂い咲き
冬紅葉(ふゆもみぢ)残る紅葉(のこるもみぢ)
   仲間ゆく取り残されて冬紅葉
 
紅葉散る(もみぢちる):散紅葉(ちりもみぢ)
   公園のベンチに一人紅葉散る
落葉(おちば):落葉掻(おちばかき)・落葉籠(おちばかご)・落葉焚(おちばたき)
   しんしんと庭の西にて落葉焚
 
銀杏落葉(いてふおちば)
   コーン立て銀杏落葉の終の色
柿落葉(かきおちば)
   柿落葉蜘蛛糸結びチークダンス
枯葉(かれは)
   枯葉散る夕暮れ時の露天風呂
木の葉(このは):木の葉雨(このはあめ)木の葉散る(このはちる)
   木の葉散る猿ゐる梢風の吹き
木の葉髪(このはがみ)
   木の葉髪けふは多いか新聞紙
凩(こがらし):木枯
   凩に負けてなるかとランドセル
 
時雨(しぐれ):朝時雨・夕時雨・小夜時雨・片時雨
   傘がない止むこともなき夕時雨
冬構(ふゆがまへ)
   築山や縄の広がり冬構
北窓塞ぐ(きたまどふさぐ)
   鉤閉めて北窓塞ぐ心地なり
 
目貼(めばり):隙間張る(すきまはる)
   一筋の光も消して目貼かな
風除(かぜよけ)
   風除や一段毎の増す温さ
新嘗祭(にひなめさい):勤労感謝の日
   新嘗祭祢宜捧げし鏡餅
 
お火焚(おほたき)
   お火焚や幣舞い上がり火を連れて
神農祭(しんのうさい)
   神農祭張り子の虎の首を振り
几董忌(きとうき)
   鳴瀧へ几董忌酌み交わす銘酒
 
報恩講(ほうおんかう):御正忌(ごしやうき)御七夜(おしちや)御講(おかう)親鸞忌(しんらんき)お講凪(おかうなぎ)
   山寺の告知板書く報恩講
網代(あじろ)
   波もなく上弦照らす網代守
柴漬(ふしづけ)
   柴漬や小魚跳ねて光る朝
 
竹瓮(たつぺ)
   寝ぼけ顔竹瓮が見えて凍てし朝
神迎(かみむかへ):神還(かみかへり)
   白鷺や屋根に並びて神迎

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10/31/2020

新歳時記より 2020-10

新歳時記より 2020-10




十月(じゅうがつ)
   十月の廃屋の草音さやぐ
長月(ながつき)  
   長月のいへぢ照る月おとがひへ
菊月(きくづき)  
   菊月の父読みし本病床に
秋の日(あきのひ) 
   秋の日や光到来開く厨子
秋の入日(あきのいりひ)
   石けりや秋の入日に燃ゆる庭
秋晴(あきばれ)  
   秋晴や浜名大橋渡りけり
秋日和(あきびより)
   秋日和籠屋は竹を運び入れ
秋高し(あきたかし) 
   秋高し赤石山脈見晴るかす
天高し(てんたかし)
   天高し頂上目ざし秋葉山
馬肥ゆる(うまこゆる)
   肥ゆる馬と戦ふ適正体重

秋の空(あきのそら)
   秋の空雲の行方は我知らず
秋空(あきぞら) 
   秋空に突き刺し伸びるムサシかな
秋天(しゅうてん) 
   秋天を隠して見せぬ悪茄
秋の雲(あきのくも)
   雨上がり田んぼに写す秋の雲
秋の山(あきのやま) 
   秋の山声の塊切れ切れに
山装ふ(やまよそふ)
   山装ふ乙女恥じらふごと染めて
秋山(あきやま) 
   秋山や人家が見えて足軽く
秋の峰(あきのみね)
   青空へ上に雲添え秋の峰
秋の野(あきのの) 
   行商人背の荷も軽き秋野かな
秋郊(しうかう) 
   秋郊や遠くの家にたつ煙

秋風(あきかぜ) 
   秋風や森の公園葉音かな
秋の風(あきのかぜ)
   秋の風さざ波抜いて鯉のいて
金風(きんぷう)
   金風や揺れて楠木騒がしく
秋の聲(あきのこえ)
   秋の聲湖上が橋の潮早し
秋聲(しうせい) 
   秋聲や水音消して手を洗ふ
秋の暮(あきのくれ)
   にわか雨傘を渡して秋の暮
秋の夕(あきのゆうべ)
   帰り道秋の夕の灯る窓
秋の雨(あきのあめ)
   秋の雨濡れて帰るか傘がない
秋雨(あきさめ) 
   秋雨や下に伸ばして万国旗
秋霖(しゅうりん)
   秋霖やこうもり廻し晴れを待つ

秋黴雨(あきついり)
   五重塔乾く間もなく秋黴雨
初紅葉(はつもみじ)
   薄暗き山の階段初紅葉
薄紅葉(うすもみじ)
   鐘楼へ向かふ細道薄紅葉
桜紅葉(さくらもみじ)
   風吹けば桜紅葉の庭の色
菌(きのこ) 
   倒木や菌一本伸びにけり
茸(きのこ) 
   そこここに色鮮やかに茸生ゑ
たけ   
    松葉陰のけて現るたけのしろ
羊肚菜(いくち) 
     ?句が詠めない宿題とす
毒茸(どくだけ)
   そこここに毒々し色毒茸よ
茸山(たけやま) 
   茸山に登ればぺたり松の脂

茸番(きのこばん)
   茸番今夜は何時泥動く
茸飯(きのこめし)
   夏の具も刻みていれて茸飯
初茸(はつだけ)
   初茸や袂揺らしてしたり顔
濕地(しめじ) 
   登り着く濕地がしろは荒らされて
松茸(まつたけ)
   松茸を縦列駐車隙間なく
椎茸(しいたけ) 
   ポンと打つ椎茸の種山麓に
茸狩(たけがり)
   茸狩に人溢れ逃げる猪
茸とり(たけとり)
   茸とりや天女は招くかをるしろ
松茸飯(まつたけめし)
   ほかほかの松茸飯をよそふ小夜
新米(しんまい)
   新米のかをる朝飯電車来る

今年米(ことしまい)
   30㎏どさり玄関今年米
焼米(やきごめ)
   焼米や籾が邪魔する食べさせぬ
新酒(しんしゅ)
   来る友新酒栓抜き酔い加減
今年酒(ことしざけ)
   ショーケース我先前へ今年酒
新走(あらばしり)
   美と云う名待ちわび手にす新走
古酒(こしゅ)
   かび泳ぐ我が家の酒は古酒になり
濁酒(にごりざけ)
   濁り酒こどんだ米が格別で
どびろく
     どびろくや父は秘かに挑む壜
醪酒(もろみ)  
   杜氏述ぶ熟成度合醪酒が音

酢造る(すつくる)
   酢を造る甍に風の寒くなり
秋の田(あきのた) 
   秋の田に囲まれ白き鳥居立ち
稻(いね) 
   稲実る刈り取り進む棚田かな
稻筵(いなむしろ) 
   稻筵さすりて風の吹き渡り
初穂(はつほ) 
   展望台初穂の揺るる棚田道
稻穂(いなほ) 
   豊作と今年の稻穂手にとりぬ
稻の秋(いねのあき)
   棚田道上まで続き稻の秋
稻田(いなだ) 
   雀除けきらきら光る稻田かな
陸稻(おかぼ) 
   陸稻刈る母のリズムに追いつけず

中稻(なかで)
   中稻刈る隣りの田圃色づきて
浮塵子(うんか) 
   道見えぬヘッドライトへ浮塵子舞ふ
ぬかばえ  
    ぬかばえやチリチリ落ちて誘蛾灯
蝗(いなご) 
   偵察や蝗見つけて袋出す
蝗捕り(いなごとり)
   捕るよりも入口狭し蝗捕り
螽(いなご)   
   稲束を提げて蝗の振るひ落ち
蝗串(いなごぐし) 
   昼飯のおかずはけふも蝗串
ばった   
    自慢話しながらばった追ひ払ひ
きちきちばった 
    田んぼ道きちきちばった露払い

蟿螽(はたはた) 
   蟿螽やおしろが跡野面積み
稻雀(いなすずめ)
   豊作も追い払われて稻雀
案山子(かかし) 
   雀の子案山子が頭一休み
鳴子(なるこ) 
   雀来る鳴子忙しく鳴りもせず
引板(ひた) 
   豊作へ備えてけふは引板作り
ひきいた 
     雀来た遠くひきいた鳴りにけり
落し水(おとしみず)
   落し水集めて太き滝になり
秋の川(あきのかわ)
   ぎいぎいと櫓音のんびり秋の川
下り簗(くだりやな)
   水泡の弾ける音や下り簗

落鮎(おちあゆ)
   赤き炭落鮎落とす油の香
錆鮎(さびあゆ) 
   水底を朱く錆鮎染にけり
渋鮎(しぶあゆ) 
   渋鮎や囲炉裏の炭のはじく音
下り鮎(くだりあゆ)
   枝拾ひ焚き火に炙る下り鮎
秋の鮎(あきのあゆ)
   見納めと水面を下り秋の鮎
落鰻(おちうなぎ)
   長旅へ太くて肥えて落鰻
渡り鳥(わたりどり)
   渡り鳥あいつ何処からここの池
鳥渡る(とりわたる)
   広がりてまた寄り添いて鳥渡る
色鳥(いろどり) 
   棚田にも色鳥来たり晴れる朝

小鳥(ことり)  
   風消えて苅田喧し鳴く小鳥
小鳥来る(ことりくる)
   柿の木に林檎吊るして小鳥来る
鵯(ひよどり) 
   ばたばたと音がしそうな鵯よ
ひよ     
    ぴーぴーと羽搏き止まりひよは鳴き
鵙(もず)     
   鵙の雛押し落とされて巣は高し
百舌鳥(もず)   
   楠木に百舌鳥現れて風変り
鵙の聲(もずのこえ)
   強風を押して大きな鵙の聲
鵙の贄(もずのにえ)
   玄関を出ればその木鵙の贄
鶉(うづら)  
   煙立つ墓苑にわたる鶉聲

鴫(しぎ)   
   砂浜や波を受けつつ鴫が群れ
懸巣(かけす)  
   瑠璃色の羽根を納めて来る懸巣
かし鳥(かしどり)
   声音真似かし鳥にやる実はひとつ
椋鳥(むくどり)
   椋鳥や戸袋に蓋場所探し
むく    
    むくの群れ選挙かき消す騒がしさ
白頭翁(はくとうをう)
   土手を掃く白頭翁の群れ進み
鶫(つぐみ)   
   渡り来る風を横切り群れ鶫
鶫網(つぐみあみ)
   追い立てて一斉に飛び鶫網
頬白(ほほじろ) 
   頬白や旅の途中が枯れ野原

蒿雀(あをじ)  
   一ツ家の庭へ賑やか蒿雀かな
鶸(ひわ)    
   棚田へと群れ立つ鶸が聲たかし
金雀(きんじゃく・カナリヤ) カナリヤ色金雀が聲美しき
まひわ     
   最果ての句碑に舞い降りまひわ鳴く
眼白(めじろ)  
   眼白飛ぶ縦横上下籠の中
眼白押(めじろおし)
   十五羽も枝も折れぬか眼白押
眼白とり(めじろとり)
   木の実付け鳥もちべたり眼白とり
山雀(やまがら) 
   お神籤を山雀の引く百貨店
山雀芝居(やまがらしばい)
   人に媚び山雀芝居餌を得て

四十雀(しじふがら)
   また来たわ窓辺の枝へ四十雀
小雀(こがら)  
   小雀飛ぶ翼の速さ留まらず
こがらめ   
    こがらめや甲高き声今朝の庭
連雀(れんじゃく)
    連雀や森に舞ひ込み囀りぬ
緋連雀(ひれんじゃく)
   緋連雀一斉に尾羽見せにけり
菊戴(きくいただき)
   菊戴公園の木々渡り鳴く
瑠璃色(るり)
   街道に瑠璃色(るり)鳴きやめば森暮れる
鶺鴒(せきれい)
   鶺鴒の石から石へ軽快に
石たたき(いしたたき)
   石たたき長い尾を振り虫を追ひ

庭たたき(にはたたき)
   庭たたき苔の間の虫探し
啄木鳥(きつつき)
   啄木鳥や遠くへ聞こゆドラミング
木の實(このみ) 
   暗闇にぽとり一粒木の實かな
木の實(きのみ) 
   こうもりへ雨と木の實のぽとぽとと
桃(もも)   
   食べ頃が桃は梢に脚立立つ
毛桃(けもも) 
   棘恐れ毛桃の皮の柔らかき
林檎(りんご)  
   宅配の林檎待ちかね持つナイフ
石榴(ざくろ) 
   誰も見ぬ庭の石榴が寂しくて
梨(なし)    
   空臨む袋破くか梨の尻

青梨(あおなし)
   青梨や肘まで濡らし喰らう午後
梨子(なし)    
   街道に青い旗立て梨子稔る
ありのみ    
   さくさくとありのみを噛む妻の剥く
梨賣(なしうり) 
   街道や梨賣旗の連なりて
榠樝(くわりん) 
   葉を下ろし榠樝の素肌見せにけり
唐梨(からなし) 
   色づきて唐梨の実ただ一つ
海棠木瓜(かいだうぼけ)
   どの枝も海棠木瓜が垂れ下がり
きぼけ   
    細き枝折れても持つときぼけの実
柿(かき)   
    見上げれば空より熟れて柿の色

渋柿(しぶがき) 
   渋柿や熟れても甘く成りきれず
甘柿(あまがき) 
   甘柿や緊張もなく皮を剥く
豆柿(まめがき) 
   豆柿や垂らし豊作鐘の音
柿の秋(かきのあき)
   色付きて空仰ぐ日々柿の秋
柿店(かきみせ)  
   柿店に山盛りずらり並べ見せ
吊し柿(つるしがき)
   吊し柿甲で開いて気になる子
干柿(ほしがき) 
   干柿やつついて揉んで待ちきれぬ
串柿(くしがき)
   串柿や残りあるかと年の順
甘干(あまぼし) 
   甘干を吊るす母ゐぬ母を見て

熟柿(じゅくし)  
   大叔母や掌(てのひら)に載す熟柿かな 
無花果(いちじく)
   無花果や体験の手が柔らかき
枸杞の實(くこのみ)
   枸杞の實やところどころに道標
茱萸(ぐみ)    
   茱萸群るる植物園が奥へ行き
あきぐみ    
    あきぐみの酸っぱき甘さ歯に残り
榎の實(えのみ)  
   鳥騒ぎ梢の榎の實何急ぐ
椋の實(むくのみ)
   鳥が鳴き椋の實拾ふ子らが聲
葡萄(ぶだう)   
   皮ごとに種無し葡萄食ぶ勇気
葡萄園(ぶだうゑん)
   葡萄園谷の向こうの停留所

葡萄棚(ぶだうだな)
   たわわなり光り遮り葡萄棚
山葡萄(やまぶだう)
   蔓続く導く如し山葡萄
蘡薁(えびづる)  
   崖が上蘡薁稔り鳥招き
通草(あけび)   
   言い難し通草たべてた帰り道
郁子(むべ)    
   郁子ひとつばばが供えし地蔵様
荔枝(れいし)   
   苦瓜や人気上昇温暖化
蔓荔枝(つるれいし)
   掻っ捌き腸えぐり蔓荔枝
苦瓜(にがうり)  
   眼もやらず母が作らぬ苦瓜よ
錦荔枝(きんれいし)
   錦荔枝食べられぬ味その苦さ

冬瓜(とうぐわ)  
   冬瓜の皮の硬さと実の透けて
かもうり     
     生垣や登りかもうり受け止めて
桐の實(きりのみ)
   桐の實や朝日の中へ種の舞
椿の實つばきのみ)
   海鼠塀ぽんと落として椿の實
五倍子(ふし)  
   枯れ枝や素手に染み付き五倍子が色
五倍子(ごばいし) 
   折る枝や干して五倍子寒くなり
ふし干す(ふしほす)
   ふし干して中身をかぞえ置き薬
瓢の實(ひょんのみ)
   鳴らしたしたたく瓢の實未だ出ない
柞の實(いすのみ) 
   柞の實や花芽が見える横に着き

蚊母樹の實(いすのきのみ)
   蚊母樹の實優しく息を吹きてみて
猿瓢(さるへう) 
   猿瓢や破れてならぬそつと剥ぎ
山梔子(くちなし) 
   山梔子や大木となり細き苗
新松子(しんちぢり)
   浜松の殿通る道新松子
靑松かさ(あをまつかさ)
   街道や靑松かさが太る朝
杉の實(すぎのみ)
   忌み嫌ふ花粉患者の杉の實よ
山椒の實(さんしょうのみ)
   鰻屋の山椒の實のかをる部屋
臭木の實(くさぎのみ)
   臭木の實変わりてまさか浅黄色

藤の實(ふじのみ) 
   公園に藤の實垂るる棚に雨
皀角子(さいかち) 
   皀角子や古壺を磨く日長かな
烏瓜(からすうり) 
   夕焼けを毒々し色跳ね返し
朝顔の實(あさがおのみ)
   潰し見て朝顔の實が白きこと
數珠玉(じゅずだま)
   揺さぶれど數珠玉土手の上
ずずだま    
     ずずだまを集めすぎたる大きな輪
松手入(まつていれ)
   もみ上げて下をすっきり松手入
秋祭(あきまつり)
   豊作に囲まれ祝ふ秋祭
里祭(さとまつり)
   流鏑馬や農馬むち打ち里祭

浦祭(うらまつり) 
   子ら混ぜて浜の太鼓や浦祭
村祭(むらまつり) 
   村祭小さな神輿子らの聲
在祭(ざいまつり) 
   勝ち相撲大きなにぎり在祭
重陽(ちょうよう) 
   重陽や漆の土産夫婦椀
重九(ちょうく)  
   黒板に選びて黄色重九の日
後の雛(のちのひな)
   飾る花芒桔梗と後の雛
菊の宴(きくのえん)
   懸崖を床の間に据え菊の宴
菊の節句(きくのせっく)
   障子開け菊の節句が揃ふ庭
重陽の宴(ちょうようのえん)
   杯を干す重陽の宴かをる菊

菊の酒(きくのさけ)
   菊の酒なみなみ注いで良き宴
今日の菊(けふのきく)
   雨あがる色が引き立つ今日の菊
高きに登る(たかきにのぼる)
   連れ立ちて高きに登る病み上がり
菊(きく)    
   菊一輪姉の挿し方文机
百菊(ひゃくぎく)
   百菊を花瓶に溢れ写生前
初菊(はつぎく) 
   初菊や心地よき香と噛み心地
白菊(しらぎく)  
   白菊や開花寸前増す白さ
黄菊(きぎく)   
   祖父の刈る黄菊活けたる壺の口
一重菊(ひとへぎく)
   一重菊一輪挿しに凛とたち

八重菊(やえぎく) 
   八重菊を育て仕立てて懸崖へ
大菊(おおぎく)   
   大菊や母が目指すや金リボン
小菊(こぎく)   
   踏みゐれば小菊はらはら散り始め
菊日和(きくびより)
   大鉢へ藁敷く母に菊日和
菊畑(きくばたけ) 
   田舎道闇でも嗅げて菊畑
菊の宿(きくのやど)
   大輪を並べ玄関菊の宿
作り菊(つくりぎく)
   咲き始む互い鑑賞作り菊
菊作り(きくづくり)
   腰伸ばし半年余り菊作り
菊供養(きくくよう)
   菊供養供えもらいて晴れる空

菊膾(きくなます) 
   晩酌や白磁の皿に菊膾
野菊(のぎく)  
   昆虫を埋めて土盛野菊かな
野路菊(のじぎく)
   野路菊を手刀で切る帰り道
菊枕(きくまくら) 
   作り上ぐ真っ赤な柄の菊枕
温め酒(あたためざけ)
   けふからと杯の指温め酒
海蠃廻し(ばいまはし)
   ぶつかり合う樽に響くや海蠃廻し
ばい独楽(ばいごま)
   ばい独楽や浜を歩きて巻貝を
海蠃打ち(ばいうち) 
   まぜてよと海蠃打ちが技染み付きて
去来忌(きょらいき)
   去来忌やここにも住めぬ仮の宿

牛祭(うしまつり) 
   牛祭あまりに軽き面の僧
太秦牛祭(うづまさうしまつり)
   尻痛し太秦牛祭乗る背
御命講(ごめいかう) 
   御命講遊ぶ場所ない鳩が群れ
後の月(のちのつき)
   解散と仰ぐ玄関後の月
十三夜(じふさんや)
   晴美たつ連絡船の十三夜
栗名月(くりめいげつ)
   名刹や栗名月が写る庭
豆名月(まめめいげつ)
   山寺や豆名月が影伸びて
砧(きぬた)   
   砧打つうろつく犬の尾をしまう
藁砧(わらぎぬた)
   ようなべや藁砧打つ母が音

衣打つ(ころもうつ)
   集団の子供見送り衣打つ
しで打つ(しでうつ)
   枕辺にしで打つ音の届きたり
檮衣(たうい)  
   檮衣してふわりと肩へなじみけり
夕砧(ゆうぎぬた) 
   暗くなり夕餉も済まし夕砧
小夜砧(さよぎぬた)
   音弱し隣の嫁の小夜砧
遠砧(とおきぬた) 
   街道に土間の親父が遠砧
砧盤(きぬたばん) 
   砧盤腰伸ばし電灯の下
初猟(はつれふ)  
   初猟や鉄砲の音聞こゆ朝
小鳥網(ことりあみ)
   小鳥網遠くに見えて林前

霞網(かすみあみ)
   逃げられぬ慌てて抑え霞網
鳥屋師(とりやし) 
   目を逸らし鳥屋師右手捻りたり
小鳥狩(ことりがり)
   息殺しどっと声出し小鳥狩
高擌(たかはご)  
   高擌の優し鳴き声聞きて来て
囮(おとり)    
   囮鳴く救いたく着く籠の上
囮守(おとりもり) 
   日は高しけふはこれにて囮守
やや寒(ややさむ) 
   井戸端ややや寒の朝皆早き
秋寒(あきさむ)  
   痒きとこ手が届かなく秋寒し
うそ寒(うそさむ) 
   うそ寒や切れた電球窓の月

肌寒(はださむ) 
   肌寒や探し靴下穴のあり
朝寒(あささむ)  
   朝寒やおはようの息影となり
夜寒(よさむ)   
   見送りて玄関までの夜寒かな
冷まじ(すさまじ) 
   冷まじや歩きも早き夜が道
そぞろ寒(そぞろさむ)
   最果てのプラットホームそぞろ寒
身に入む(みにしむ)
   身に入むや最古の標右に見て
露寒(つゆさむ) 
   露寒の渚が砂の黒きかな
神嘗祭(かんなめさい)
   陣取りて神嘗祭の餅の舞ふ
べったら市(べったらいち)
   ベったら市大根が白麹も白

浅漬市(あさづけいち)
   なまめかし浅漬市に並びけり
誓文拂(せいもんばらひ)
   駆け出して誓文拂大売りだし
夷布(えびすぎれ) 
   蝦夷育ち噛みて味知る夷布
夷講(えびすかう) 
   鮒泳ぎ鯛のはんぺん夷講
牛蒡引く(ごぼうひく)
   長靴の土にめり込み牛蒡引く
牛蒡(ごぼう)   
   ごんぼうや鉛筆削り技生かし
牛蒡の實(ごぼうのみ)
   生け花へ棘に守られ牛蒡の實
牛蒡掘る(ごぼうほる)
   牛蒡掘るまだまだ深き鍬の先
落花生(らくくわせい)
   土払ふ落花生ぞもがれけり

南京豆(なんきんまめ)
   すかっぺや南京豆の証なり
馬鈴薯(ばれいしょ)
   馬鈴薯やコンテナに詰む北の畑
ばれいしょ    
   ばれいしょをレンジにかけるおやつかな
じゃがたらいも  
   母出さぬじゃがたらいもの蒸したもの
甘蔗(かんしょ) 
   霜避けて慌ててむろへ甘蔗かな
さつまいも    
   冷蔵庫入れてはならじさつまいも
りうきういも  
   りうきういも栽培法や古書のあり
からいも    
   肴にすからいも揚げて焼酎を

自然薯(やまのいも)
   登る蔓下へ辿りて自然薯
やまいも    
   やまいもや皮ごと擂りてとろろ汁
じねんじょ   
   杉燃やしじねんじょが髭焼き切りて
つくねいも
   手繰り寄せ蔓の長さやつくねいも
薯蕷(ながいも) 
   つるはしを寄せぬ所へ薯蕷よ
長薯(ながいも)  
   縦並び育て長薯長パイプ
可首烏芋(かしゅういも)
   掌の濃く長い髭可首烏芋
黄獨(けいも)  
   髭の濃き根塊に着く黄獨かな
零餘子(ぬかご)  
   スペードに隠れ連なり零餘子かな

むかご    
   猿の如するする登り採るむかご
零餘子飯(ぬかごめし)
   籠溢る夕餉のお膳零餘子飯
むかご飯(むかごめし)
   昨日山けふの昼めしむかご飯
薬掘る(くすりほる)
   つるはしや土方道具が薬掘る
薬草採(やくそうとり)
   枯れぬ間に薬草採や山々へ
茜掘る(あかねほる)
   眼は赤を凝らしスコップ茜掘る
千振引く(せんぶりひく)
   晴れてる間千振引くと引き出され
當薬引く(たうやくひく)
   芽がしのまま當薬引かず来年に
葛掘る(くずほる)
   山日和鍬と鎌持ち葛を掘る

野老掘る(ところほる)
   野老掘り茂る叢蔓探し
草棉(わた)   
   静電気おびてる如し草棉逃れ
桃吹く(ももふく) 
   桃吹くと触れる指さき跳ね返し
木綿(きわた)   
   いつ見てもはじけて木綿雨の中
綿取(わたとり)  
   綿取や籠一杯の軽きこと
棉摘(わたつみ)   
   篭出せど棉摘出来ぬけふの雨
新綿(しんわた)  
   種弾き新綿ふわり山となり
今年綿(ことしわた) 
   今年綿遠州縞の粋な色
古綿(ふるわた) 
   古綿や陽を吸い込みて脹れたり

蕎麦(そば) 
   アーケード蕎麦啜りたく暖簾なり
新蕎麦(しんそば)
   新蕎麦の暖簾新しサラメシよ
走り蕎麦(はしりそば)
   お喋りの沈黙時間走り蕎麦
秋耕(しうこう) 
   秋耕や牛が足取り水もなく
紫雲英蒔く(げんげまく)
   薄曇り風に逆らい紫雲英蒔く
蘆(あし) 
   蘆の奥釣りのポイント指定席
蘆原(あしはら) 
   蘆原に隠れた歴史ありもせず
蘆の花(あしのはな) 
   四車線空き家の目立ち蘆の花
蘆の穂(あしのほ)
   蘆の穂の舞い散る土手を軽トラが

蘆の穂絮(あしのほわた)
   敵討蘆の穂絮の切りちぎれ
蒲の穂絮(がまのほわた)
   ニュータウン蒲の穂絮の届く先
蘆刈(あしかり) 
   大人数蘆刈進む歩の如し
刈蘆(かりあし)  
   葺き替えて刈蘆の山消えた小屋
蘆火(あしび)  
   朝河原蘆火が煙立ち昇り
荻(をぎ)   
   釣り人や通うポイント荻の道
荻の風(をぎのかぜ)
   一斉に右に左に荻の風
荻の聲(をぎのこえ) 
   土手道や軽トラ阻む荻の聲
荻原(をぎはら)
   天竜川荻原の先黒コート

萱(かや) 
   風もなくうとうとしてて萱の中
萱刈る(かやかる) 
   河原の色と空の色萱を刈る
木賊刈る(とくさかる)
   庭の隅少し多すぎ木賊刈る
砥草刈る(とくさかる)
   長靴を抜かれぬように砥草刈る
萩刈(はぎかり) 
   トンネルの上まで届け萩を刈る
破芭蕉(やればせう)
   山門を潜れば迎え破芭蕉
敗荷(やれはす)  
   敗荷や風と別れる手が如し
破れ蓮(やぶれはす)
   足元をだんだんと見せ破れ蓮
敗荷(はいか)  
   風浚ふ茎だけ残り敗荷たち

蓮の實飛ぶ(はすのみとぶ)
   参禅や蓮の實の飛ぶ音聞こゆ
蓮の實(はすのみ) 
   風吹けば蓮の實が鳴りあちこちと
火祭(ひまつり)  
   火祭りやのの字を描く闇屏風
鞍馬火祭(くらまのひまつり)
   忙しくて鞍馬火祭けふのこと
逆髪祭(さかがみまつり)
   逆髪祭髪整えて境内へ
木の實落つ(このみおつ)
   木の實落ついよいよ寒くなりにけり
木の實降る(このみふる)
   音もなく木の葉の上や木の實降る
木の實雨(このみあめ) 
   袋が口拡げてみたし木の實雨
木の實時雨(このみしぐれ)
   傘もなく木の實時雨の山の道

木の實拾ふ(このみひろう)
   電気柵木の實拾ふか熊も出て
猿酒(さるざけ)
   猿酒や木道揺れて樵の目
樫の實(かしのみ) 
   樫の實や羽搏く風の落とすとは
椎の實(しひのみ) 
   椎の實を拾ふ根元に風強き
落椎(おちしひ) 
   落椎を袋片手にたずね行く
椎の秋(しひのあき)
   炒り鍋や音とかをりの椎の秋
椎拾ふ(しひひろふ)
   おとがいを入れず屋敷へ椎拾ふ
まてばじひ   
   まてばじひ回す長さのうまき兄
まてがし 
    實一つまてがしらしき木もありて

栗(くり)     
   栗の旗何本もあり露店あり
丹波栗(たんばぐり)
   丹波栗今年も親父フレッシュ便
山栗(やまぐり) 
   山栗のありか知られてとき競ふ
柴栗(しばぐり)  
   柴栗の届くころなり落ちる音
ささ栗(ささぐり)
   ささ栗や籠一杯の剥く無口
毬栗(いがぐり)  
   毬栗を返し開いて中身なし
落栗(おちぐり)  
   木漏れ日や落栗拾ふ我一人
栗拾ひ(くりひろひ)
   珈琲とブルーシートの栗拾ひ
焼栗(やきぐり)  
   焼栗やポンとはぜるか音だけか

栗山(くりやま)  
   ころころと坂を集まり栗の山
栗林(くりばやし) 
   栗林見知らぬ人の現れて
栗飯(くりめし) 
   籠重し夕餉栗飯母の味
団栗(どんぐり)  
   境内に団栗拾ふ子らの聲
櫟の實(くぬぎのみ)
   音のせぬ茅葺屋根が櫟の實
橡の實(とちのみ)
   一休み橡の實餅の蒸せるまで
胡桃(くるみ)   
   新聞紙力をこめて胡桃割る
榧の實(かやのみ) 
   榧の實や裂けて紫踏みし音
銀杏(ぎんなん)  
   銀杏や雨降る夜の傘に打つ

銀杏の實(いてふのみ)
   銀杏の實下から照らすレフのごと
棗(なつめ)   
   同窓会あの二粒が棗とは
棗の實(なつめのみ)
   棗の實一粒噛みし記憶あり
無患子(むくろじ)
   無患子を山門に置く子らの礼
菩提子(ぼだいし) 
   菩提子を糸を通して数珠の音
菩提樹の實(ぼだいじゅのみ)
   数珠作り菩提樹の實を集めた日
柾の實(まさきのみ)
   柾の實夕日が卵映しけり
檀の實(まゆみのみ)
   しなる幹引き寄せて採り檀の實
真弓の實(まゆみのみ)
   バックスイング遠く飛び行く真弓の實

衝羽根(つくばね)
   衝羽根や袋が中の当たりあい
一位の實(いちいのみ)
   一位の實毒女が如き赤の色
草の實(くさのみ)
   分け入れば待つは草の實ニッカズボン
いのこづち
   控えめで日当たり避けていのこづち
駒の爪(こまのつめ)
   ぶららこの柱のもとに駒の爪
藪虱(やぶじらみ)
   革靴や紐だけにつき藪虱
草じらみ(くさじらみ)
   野の掃除手甲にまつく草じらみ
稲刈(いねかり) 
   稲刈りや体験授業笛を待ち
田刈(たかり)
   幼子も田刈の人の数の内

収穫(とりいれ) 
   日曜日収穫が朝そぞろなり
刈稲(かりいね) 
   刈稲や家族総出が空の如
稲舟(いなぶね) 
   使われぬ稲舟はりに括られて
稲馬(いねうま) 
   稲馬の脚の伸びゆく夕の影
稲車(いねぐるま) 
   稲車短き距離を母が曳き
刈田(かりた)  
   植えた後下手な具合が刈田かな
刈田道(かりたみち)
   刈田道稲わら舞ひて風の道
落穂(おちぼ)  
   そこここに落穂を拾ふ風の中
落穂拾(おちぼひろひ)
   籠腰に落穂拾の一人かな

稲架(はざ)  
   通学路吐く息白さ稲架写し
稲掛(いねかけ)  
   稲掛や田んぼに屏風建ちにけり
掛稲(かけいね)  
   棚田にもちさき掛稲小さい田
稲扱(いねこき)  
   ど真ん中風に追われて稲扱ぬ
籾(もみ)    
   一斗升籾の重さや笑みこぼれ
籾干(もみほし)  
   雨もなき風のやさしき籾干ぬ
籾筵(もみむしろ) 
   取りこぼし一粒拾ふ籾筵
籾磨(もみすり)  
   夕まぐれ終わり終いと籾磨機
籾摺り唄(もみすりうた)
   高々と籾摺り唄の谷わたり

新藁(しんわら) 
    梯子掛け新藁収むあまの中
今年藁(ことしわら)
   屋根裏や太陽にをふ今年藁
藁塚(わらづか)
    マスゲーム距離を保ちて藁の塚
晩稲(おくて)  
   田面見え刈り終え晩稲伸びる畦
秋時雨(あきしぐれ) 
   秋時雨田んぼに誰もゐない朝
露霜(つゆじも) 
   生垣を揺すれば落ちて露が霜
水霜(みずじも) 
   水霜や落ち葉が色の濃さ増して
秋の霜(あきのしも)
   陽を受けて解けるに早き秋の霜
冬支度(ふゆじたく)
   冬支度斧音終い薪を積み

障子洗ふ(しやうじあらふ)
   突き破り障子洗ふおてつだい
障子貼る(しゃうじはる)
   障子貼る部屋の温度の上がりけり
七竃の實(ななかまどのみ)
   風吹けば七竃の實芝生埋め
栴檀の實(せんだんのみ)
   樹形なす栴檀の實の輝けり
あふちの實(あふちのみ)
   葉は舞えどしがみつき枝あふちの實
金鈴子(きんれいし)
   蒼天にちりばめて粒金鈴子
櫨の實(はぜのみ)・はじの實
   一陣の櫨の實の雨吹き付けり
櫨ちぎり(はぜちぎり) 
   櫨ちぎりブルーシートの変わる色
櫨買(はぜかひ)
   櫨買や空籠運び空模様

南天の實(なんてんのみ)・南天(みなんてん)
   いち早く紅きや増して實南天
梅擬(うめもどき)・梅嫌・落霜紅
   裸枝赤き連なり梅擬
茨の實(いばらのみ)
   茨の實花瓶が向こう日本地図
美男蔓(びなんかづら)・南五味子(きねかづら)・眞葛(さねかづら) 
   美男蔓ぴしりと決めて髪の艶
橘(たちばな)  
   橘や棘を見せつけ黄色の実
柑子(かうじ)
   風避けてひとつづつ分け柑子かな
蜜柑(みかん)・靑蜜柑(あおみかん)・蜜柑山(みかんやま) 
   昼花火下から聞こゆ蜜柑山
橙(だいだい) 
   靑まじり採る人もなく橙ぞ
朱欒(ざぼん)・うちむらさき
   でっかさに実の小ささや朱欒かな

佛手柑(ぶしゅかん)
   手招けど味の悪さや佛手柑
九年母(くねんぼ)
   垣根越し九年母垂るる通学路
金柑(きんかん)
   金柑を一つだけ喰ふ祖母の前
柚子(ゆず) 
   柚子を植ゑ米寿食すと意気高し
柚味噌(ゆみそ)・ゆずみそ・柚釜(ゆがま)
   油落つ登るかをりが柚味噌かな
萬年靑の實(おもとのみ)
   遠慮して庭の隅なる萬年靑の實
種瓢(たねふくべ) 
   三々七拍子叩き種瓢
種茄子(たねなす) 
   種茄子や畑の隅に残りおり
種採(たねとり)   
   シート敷鶏頭叩き種採りぬ

宗鑑忌(そうかんき)
   出会わして橋の真ん中宗鑑忌
秋深し(あきふかし)
   秋深し隣りがおならそっと出し
秋さぶ(あきさぶ)
   秋さぶやこむら返りの目覚めかな
深秋(しんしゅう) 
   深秋やトレッキングの友は来ず
冬近し(ふゆちかし)
   冬近し障子の穴が増えていて
紅葉(もみぢ)   
   風なくも紅葉舞い散る今朝の庭
夕紅葉(ゆうもみぢ)・むら紅葉(むらみみぢ)・下紅葉(したもみぢ)・紅葉川(もみぢがわ)・紅葉山(もみぢやま) 
   公園の散歩急ぐや夕紅葉
紅葉狩(もみぢがり)・紅葉見(もみぢみ)・観楓(くわんぷう)
   毛氈を敷けどそぞろな紅葉狩
紅葉鮒(もみぢぶな)
   底の見ゆ白き絹網紅葉鮒

黄葉(もみぢ)  
   黄葉包む外人墓地の染めて髪
照葉(てりは)・照紅葉(てりもみぢ)
   照紅葉殿立ち寄りし庄屋跡
雑木紅葉(ざふきもみぢ)
   寺出でて雑木紅葉の囲む道
柿紅葉(かきもみぢ)
   髪からむ二三孔あり柿紅葉
漆紅葉(うるしもみぢ)
   かぶれまい漆紅葉を避ける藪
櫨紅葉(はぜもみぢ)
   石段を染めて招くや櫨紅葉
銀杏黄葉(いてふもみぢ)
   黄葉して廟を示すや大銀杏
櫟黄葉(くぬぎもみぢ)
   櫟黄葉足跡隠し丸木橋
白膠木紅葉(ぬるでもみぢ)
   紅葉して散りかかり堂白膠木かな

錦木(にしきぎ)錦木紅葉(にしきぎもみぢ)
   我が庵錦木紅葉見頃なり
柞(ははそ)柞紅葉(ははそもみぢ)
   風に乗り柞紅葉の遊びかな
蔦(つた)・錦蔦(にしきづた)・蔦蘿(つたかづら) 
   白壁や波打つ蔦の染まりけり
蔦紅葉(つたもみぢ)
   蔦紅葉古刹の塀を飾りけり
草紅葉(くさもみじ)草の紅葉・草の錦・蓼紅葉
   三方原戦が跡へ草紅葉
野山の錦(のやまのにしき)
   病み伏せど野山の錦練るコース
紅葉且散る(もみぢかつちる)
   せせらぎや紅葉且散る岩水寺
鹿(しか):男鹿(をじか)・小鹿・さ男鹿・鹿の聲・妻恋ふ鹿・鹿笛
   鹿の聲本読み終えて枕元
猪(ゐのしし):野猪(やちょ)
   山の尾根走らず野猪が掘りて穴

崩れ簗(くづれやな)
   崩れ簗上流の過去せき止めず
残菊(ざんぎく):残りの菊・十日の菊
   気の早く残菊を刈る粋のなさ
末枯(うらがれ) 
   末枯や一つだけ揺れ烏瓜
柳散る(やなぎちる):散る柳
   区役所の句碑にかかるや散る柳
穭(ひつぢ)
   風ならい穭一斉お辞儀して
穭田(ひつぢだ) 
   一雨に穭田青くなりにけり
鶴来る(つるきたる) 
   雲途切れ陣形なして鶴来る
行秋(ゆくあき) 
   行秋や隣りの今宵ラーメンぞ
暮の秋(くれのあき)
   鐘一つ赤い実の揺れ暮の秋

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2/25/2020

美しい花の季語で 2月を詠む

 


枯蘆(かれあし)
    枯蘆飛ぶ凸凹道の軽トラよ
ブロッコリー
    ブロッコリー花芽を覆う油虫
枯葎(かれむぐら)
    枯葎去年の形ぞ残しけり
梅(うめ)
    暗闇や朧に浮かぶ梅がちる
満作(まんさく)
    満作を求めドライブ春を観る
菠薐草(ほうれんそう)
    菠薐草ポパイになれると肩の肉
紅梅(こうばい)
    紅梅や白梅のなき庭歩き
節分草(せつぶんそう)
    節分草落葉かき分け時来たり
黄梅(おうばい)
    黄梅や咲けども来ない御用聞き
春菊(しゅんぎく)
    春菊を入れていいかと問われしが
薺の花(なずなのはな)
    薺の花萎れてしまう文机
蕗の薹(ふきのとう)
    積む枯葉庭の隅出る蕗の薹
クロッカス(くろっかす)
    サフラン柄姉がミシンをワンピース
雪割草(ゆきわりそう)
    雪割草昔も咲くやこの土手に
椿(つばき)
     一本を囲む絨毯散り椿
クレソン(くれそん)
    堤下クレソンを摘む冷たき手
繁縷(はこべ)
    摘み草や鶏にもと繁縷かな
芹(せり)
    飛び越して芽吹く小川の芹を摘み
牡丹の芽(ぼたんのめ)
    菰かぶり待つは出る時牡丹の芽
海苔(のり)
    波しぶき海苔摘む舟や父と我
防風(ぼうふう)
    花粉散る防風林の風の色
榛の花(はんのはな)
    榛の花風にも負けず紅紫
山茱萸の花(さんしゅのはな)
    丸一本春黄金花光りけり
菫(すみれ)
    歌声や春野の郷に菫咲く
    (春野:タカラジェンヌゆかりの地)
犬ふぐり(いぬふぐり)
    踏まれても可憐に咲くや犬ふぐり
蒲公英(たんぽぽ)
    アメリカより咲くや蒲公英士幌へと
ミモザ(みもざ)
    アウターを一枚とらぬミモザ咲く
蓬(よもぎ)
    杵つけば草から餅へ蓬色
シクラメン(しくらめん)
    真夜中や真綿色するシクラメン

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6/14/2019

今日はチョンチョンだった

今日はチョンチョンだった

方言は知らぬが仏の話である。
恥ずかしく口に出せぬ言葉を平気ではないた時の話。

「お父さん何処へいらっしゃったんですか」
と、新婚ほやほやの息子の嫁が聞くので靴を脱ぎながら
「やまへ行ってきたが、チョンチョンだった。」
「そんな薄着で」
「その革靴で」
「ガラス張りんとこからみてたもんでなんにも寒くないよ」
「ガラスの張ってある山は何処にあります」
と、矢継ぎ早に質問してきた。
「あー、オートのこん、いやオートレースのこんだよ。あそこで取ってりゃあなあ、まあチョンチョンだでいいか。」
「なにがチョンチョンなんですか」
「チョンチョンって何ですか」
と又も問い掛ける。
「勝ち負けなし、プラマイゼロ、おあいこのこんだよ。」
と、応えながらチョンチョンに関わる若い頃のおもしろい話を思い出した。
 
紙を貼り合わせてはみ出した部分を鋏で切っている時の話である。
「ここんとこ鋏でチョンチョンと切ってけっこくしといて、俺ん こっち やっとくで」
「おー、チョンチョンとだな」
「そーだ、チョンチョンとな」
二人はすぐ隣に佐賀出身の課長がいたことと、チョンチョンがなにを意味するかを知っていた。
「おー、チョンチョンとぞ」
「そー、チョンチョンとな」
と、
「チョンチョン」を何度も繰り返していたら
「お前らいつまで下らんことを大きな声で話してる」
と、大きな怒鳴り声がする。
振り返ると顔を赤くした課長が恥ずかしそうな顔をして睨んでいた。
同様な言葉を浜松の方言で言えないしまして書くことなど恥ずかしくて出来ない。持つ意味も知らないため恥ずかしいことを平然と口に出してしまう方言が持つ地域性を意識したできごとだった。


 

6/13/2019

ちっともいごかんベンチ

ちっともいごかんベンチ 

方言が外国語以上に通じない話である。
北海道へ仕事で行った時丸太で作ったベンチが邪魔になり現地の人と運んだ時の大笑いした話。
 
浜松の人:しょうがないなあ、ふたりで運ばまいか。
兄ちゃん:うん。
浜松の人:ちょっと重そうだがいいか、はこべるか?
兄ちゃん:うん。
浜松の人:おれんこっちさげるでそっちもてよ。
兄ちゃん:-----。
浜松の人:さあさげるか。そっちさげよよー。せえーの。
兄ちゃん:-----。
浜松の人:なにやってるだあ。さげにゃあだめじゃんか。
兄ちゃん:-----。
浜松の人:さあさげるぞ。せえーのー。
兄ちゃん:-----。
     
持って上げようとするが直ぐ降ろしてしまう。
浜松の人:なにやってるだあ。力ん無いのか?そんないい体してるだに。
     もたもたしてちゃかんで、はやくやるか。
浜松の人:さあさげるぞ。せえーのー。
兄ちゃん:-----。
     
又も降ろしてしまう兄ちゃんにむかって
浜松の人:そっちをさげにゃあもってけんだで。
     
と、言いながらはっと気がついた。
浜松の人:なんだあ、さげるってゆってるもんで、降ろいたんだなあ。あっはははは。
     
わるかった。さげるっちゅうのは上げるちゅうこんさ。さあ、あげるぞ。
浜松の人:せえーのー。
兄ちゃん:せえの。
 
 
やっとのこんでベンチを運べたっちゅう話。
 

苦しい思い出

苦しい思い出
小学1~2年生の頃作文が苦手だった僕が特に、
「誰かさんが言った言葉を書く時は「かぎ括弧」をつけて「と テン いいました マル」と書くのよ」
と、教えられてからはどう書けばいいのか苦しんだものだった。

例:朝先生に「おはよう」と、いいました。
と、書くところを

例:あさせんせいに「おはよう」と、ゆいました。
と、常用している言葉が頭の中を占拠して『ゆいました』とついつい書いてしまい消しゴムを出して『いいました』と、書き直していた。

『ゆった』『ゆわん』『ゆやあいい』『ゆいな』『ゆう』『ゆえ』『ゆをう』などという言葉が作文の時間に大いに悩ました。
辞典を使い始めてからはますます混乱が深まり『ゆう』とか『ゆい』を調べても出てこないので仕方なく『云う』を『言う』の替わりに使っていた。手書きで書いていたので『言う』を行書で書いている気分で『云う』と書いて満足していた。
口語文と文語文の違いを知り、『ゆう』は口語で、『言う』は文語と大きな勘違いに満足して納得していた。

浜松の方言を調べはじめてから小学校での作文の時間にいつも苦しい思いをさせていたのは方言であったのが解かった。

6/12/2019

あらいあげ

あらいあげ  

浜松では食後に奥さん達がする食器洗いをして片付けをすることを
『あらいあげ』と言うが共通語ではなんと言うのだろうか?

調べたところ「食器を洗う」とか「後片付け」と、言い
「後で食器洗っておいて~」とか「片付け頼むね~」
と、言うようで、けっして
「あらいあげしといて」とは言わないようだ

推理小説の警察が出てきて
「洗い終える」とか調べて暴くときに
「洗い上げる」と使うらしいが、
”食後の食器洗いから後片付け”までをひっくるめて
『あらいあげ』と言うのは浜松の方言だ。
「あらいあげしちゃってからいくでちーっとまってて」とか、
「なんにもしやへんだであらいあげくらいしっせえ」などと、
『あらいあげ』は現在も使われている。


 昔は洗濯も盥と洗濯板で冷たい水に手を突っ込んでしていたのが現代では衣類をいれ蓋をして特に注意しなくて良いものはスタート釦を押すだけで済み盥や洗濯板がほとんどの家に無くどんなものかも知らぬ子供も多い。

食器洗い器が多くの家庭に設置され、洗剤を含んだスポンジでする食器洗いをさす『あらいあげ』と言う言葉も盥や洗濯板と同じように死語になるのだろうか?

とんで来い

とんで来い
デパートの屋上に回転飛行機や汽車ぽっぽがある頃の東京に住んでるいとこの話である。子供を連れて来たので唯一の遊園地のデパートの屋上へ行き子供達を遊ばせている時に友達が隣のビルの屋上に母親らしき人と連れ立って来ているのを見つけ大きな声で呼び合っていた。
「○○ちゃーん。ちゃっととんで来なー」
「わかったー」
と言い後ろに下がった。
「えー。あのここの間をとぶの」
と、思っていたら、暫くして向うのビルにいた髪の長い少女が後ろから額に汗を流しながらやって来た。
「おまちどうさま。」と。

6/11/2019

とんでる生徒たち

とんでる生徒たち
研修に来た学生がスリッパに替えてこの学校はとキョロキョロすると、板壁に注意書が貼ってある何処にでもあるがその文章を読んでびっくりした。
「ローカでとんではいけません」と、大書きしてある。
「この学校はスーパーマン育成スクールか、それともパーマンが通ってる」と、疑問を抱きながら歩いていると、生徒が横をバタバタと新しい先生の顔を窺いながら走り抜けて行く。
「コラー、ローカをとんじゃいかんちゅうのがわからんかー」
と、迎えに出た先生が怒鳴りつけていた。
2005/09/28 15:09