9/20/2021

今日の季語 2018-12

今日の季語 2018-12



冬鴎(ふゆかもめ) 
  波打ち際二人が上の冬鴎 
蟷螂枯(とうろうか)る 
   蟷螂枯る吾残りけりと緑葉よ 
八手の花(やつでのはな) 
  八手の花実るを待ちて竹鉄砲 
蕪(かぶ)
  蕪香る妻が味噌汁葉もありし 
湯豆腐(ゆどうふ)
  湯豆腐や大人の味の柚木を知り 
神迎(かみむかえ) 
   神迎枕ぞ高しいのこ様 
大雪(たいせつ) 
  大雪や下駄音高くひとり行く 
火事(かじ) 
  防音窓火事は遠くになりにけり 
漱石忌(そうせきき) 
  先生と葉笛が聞こゆ漱石忌 
冬日和(ふゆびより) 
  紙飛行機ハズより飛ばす冬日和 
マスク
  顔半分マスクが効果美女度あげ 
鯨(くじら) 
  目を凝らす水平線に鯨の尾 隙間風(
すきまかぜ)
   隙間風老け壁白しコーキング 
鋤焼(すきやき) 
  七輪を囲む八人鋤焼す 
落葉(おちば・らくよう) 
  ジャンプして落葉集めしさつま床 
障子(しょうじ) 
  通信簿障子むこう開く父 
羽子板市(はごいたいち) 
  羽子板市飛び上がり吾子顔真似す 
年忘れ(としわすれ) 
  餃子屋へ下戸が年忘れなんとなく 
湯婆(たんぽ) 
  妹から一つの湯婆待つ足ぞ 
鮃(ひらめ) 
  舌鮃レシピにそいて揚げどもが 
短日(たんじつ) 
  短日やカラスも急ぐ子の元へ 
冬至(とうじ) 
  質問は冬至何回迎えたか 
着脹(きぶく)れ 
  着脹れか見分けが出来ぬ肥満体 
古暦(ふるごよみ) 
  古暦裏白刻みくだくや句 
クリスマス 
  クリスマス覚ゆ讃美歌カード得し 
年用意(としようい) 
  サッシ窓まるく拭いたる年用意 
日記買ふ(にっきかう) 
  来年は書き尽くすぞと日記買ふ 
御用納(ごようおさめ) 
  御用納一課全員ぞろぞろと 
行く年(ゆくとし) 
  行く年やすることもなく忙しき 
年の暮(としのくれ) 
  忙しさマッハ20の年の暮 
晦日蕎麦(みそかそば) 
  晦日蕎麦母が湯切りの光る跡






今日の季語 2018-11

今日の季語 2018-11



落花生(らっかせい) 
    落花生殻と皮あり読書なり 
楓(かえで) 
    森林公園楓のいろと気にせども 
冬隣(ふゆとなり)
    冬隣穴の靴下繕わず 
銀杏(ぎんなん)「銀杏(いちょう)の実」
    銀杏があるかどうかと茶碗蒸し 
山粧ふ(やまよそう) 
    天井板山粧ふころ観れぬとは 
行く秋(ゆくあき) 
    行く秋や線路の光り山麓へ  
立冬(りっとう)
    立冬ながらおしゃれ着まようこの温さ 
海鼠(なまこ) 
    通学路朝日を返す海鼠壁 
木の葉(このは) 
    木の葉積むフワフワ弾むさつま床 
冬の虫(ふゆのむし)
    冬の虫小さく跳びて葉の陰へ 
山茶花(さざんか)
    山茶花を眺めた庭も跡になり 
神の旅(かみのたび)
     神の旅ひとり鎮座す竹藪に 
冬(ふゆ)めく「冬兆(きざ)す」
    冬めくや鍛冶屋の親父汗もなく 
兎(うさぎ)
     故郷のみやげ兎の味噌漬と 
七五三(しちごさん)「千歳飴」
    千歳飴なかみ少なし大袋 
鮟鱇(あんこう)
    鮟鱇鍋味わう残り野菜だけ 
冬紅葉(ふゆもみじ) 
    辻のさき思いもよらぬ冬紅葉 
焼藷(やきいも) 
    籾火鉢焼藷探るやけ火箸 
小春(こはる)「小六月」「小春日」
    小春日や障子をはずし大掃除  
鴨(かも)「鴨打ち」「鴨鍋」
    ゲン担ぎ部屋の料理は鴨鍋と 
葱(ねぎ)「根深(ねぶか)」
    寝かせ植え根深が手入れ数多き 
小雪(しょうせつ) 
    小雪や大根照らす夜中道 
木守(きまもり/こもり) 
    木守や峠で夕日受け光り 
滑子(なめこ)
    料理下手味噌ネギだしで滑子汁 
蒲団(ふとん)
    効果ない蒲団たたきが〆であり 
おでん
    夕ご飯伝授の味おでんなり 
熱燗(あつかん) 
    チャイム鳴り熱燗ぞ待つ赤暖簾 
石蕗の花(つわぶき)
     石蕗の花咲きし岩陰かの家も 
竈猫(かまどねこ)
    どこから来た母より早き竈猫 
南天の実(なんてんのみ) 
    寄せ植えから大きくなりて南天の実



今日の季語 2018-10

今日の季語 2018-10



夜長(よなが)
     佐伯読破予定たてたし夜長かな  
唐辛子(とうがらし) 
    技術革命香り奪いし南蛮も   
溢蚊(あぶれか)
     溢蚊や破れ障子にしがみつき 
貝割菜(かひわりな) 
    シート剥ぐ黒土びっしり貝割菜 
金木犀(きんもくせい)
     金木犀倒され負けじ香出す 
灯火親(とうかした)しむ「読書の秋」 「灯火の秋」
     灯火の秋山脈となる未読本 
秋高(あきたか)し 
    秋高し赤松の山狩りにゆく 
寒露(かんろ) 
    足の裏滑りて知るは寒露の日 
秋渇(あきがわき) 
    秋渇かしこみて見せ釜の底 
秋思(しゅうし)「秋懐」「秋さびし」
    秋さびし障子に映る虫喰い葉 
新酒(しんしゅ) 
    酵母かえ飲み心地よき新酒うり 
石榴(ざくろ)
    赤らめど我が家の石榴落ちにけり 
敗荷(やれはす)破れ蓮(やれはちす)
    破れ蓮水抜けし端二~三本 
稲刈(いねかり) 
    担ぎあげ切り口香る稲束を 
瓢の実(ひょんのみ) 
    瓢の実合図まだかと子らの耳 
茸狩(たけがり)「茸取」「茸山」
    杉の葉をしきしかご手に茸山へ 
重陽(ちょうよう) 
    重陽やご馳走と出すまぜごはん 
団栗(どんぐり)
    団栗坂行商人が足太し 
青蜜柑(あおみかん)
    盗み入る酸っぱく後悔青蜜柑 
そぞろ寒(さむ)
    襟足の刈り上げ美人そぞろ寒 
後の月(のちのつき)「十三夜」
    十三夜別れ惜しんで綺麗ねと 
秋草(あきくさ) 
    活けられし懸崖があう秋の草 
霜降(そうこう) 
    霜降の日繕い忘れ足袋を出し 
熊の架(くまのたな)
    尾瀬ケ原遠くむさぼる熊の架 
紫式部(むらさきしきぶ)「実紫(みむらさき)」
    牛乳瓶誰が挿したか実紫 
秋刀魚(さんま) 
    味貧乏秋刀魚の苦さ根の辛さ 
藤の実(ふじのみ)
     藤の実や一つ残され棚高し 
新蕎麦(しんそば)
     父蒔きし新蕎麦挽きてお供えに 
暮の秋(くれのあき)
     暮の秋火のない火鉢すみありて 
残菊(ざんぎく)
     残菊や色は変われど変わらぬ香 
渡り鳥(わたりどり) 
    渡り鳥旭が画面立見席






今日の季語 2018-9

今日の季語 2018-9



二百十日(にひゃくとおか) 
    二百十日謎の足跡飛び飛びに 
赤(あか)まんま
     赤まんま手入れ怠る庭占拠  
案山子(かかし)
     案山子より烏の格好効果あり 
桐一葉(きりひとは)
     桐一葉芝生の青き公園で 
蚯蚓鳴(みみずな)く
     耳鳴りと思い紛いし蚯蚓鳴く 
花野(はなの) 
    ブラ歩き曲がればそこに花野あり 
相撲(すもう) 
    相撲授業柔道室で雨の日の 
白露(はくろ) 
    白露なり莫々歩く堤道(つつみみち)
 野分(のわき) 
    稔る田を一筋通す野分あと 
竹の春(たけのはる) 
    竹の春おつかいの道さやか音 
蟋蟀(こおろぎ) 
    藁の下蟋蟀の群れひそみ居り 
秋色(しゅうしょく)
     秋色の四谷棚田にもや流る 
野菊(のぎく)
     花束に野菊集めに高原に 
秋の田(あきのた)
     晩稲田や一枚青し真ん中に 
芋(いも)    
    芋の露転がり消える小宇宙 
弓張月(ゆみはりづき)
     弓張月向こうの花火の上にあり 
敬老の日(けいろうのひ)
     敬老の日会いたくもない義理のなか 
秋の潮(あきのしお)
     誰もいない海唄う気にする秋の潮 
秋鯖(あきさば)
     秋鯖で芋の味まし底になり 
コスモス
     カメラどこコスモス一本背を伸ばし 
蛇穴に入る(へびあなにいる)
     蛇穴に入るボール手探り草の奥  
曼珠沙華(まんじゅしゃげ)
     郷のみち夕日に匂う曼珠沙華 
秋彼岸(あきひがん)
     秋彼岸同窓会化郷の墓地  
今日の月(きょうのつき)
     綺麗ねと別れしな云う今日の月  
冷(ひや)やか 秋冷
     冷(ひや)やかと素足は知らずスリッパ履き 
釣瓶落(つるべおと)し
     釣瓶落しきみの瞳を染めにけり  
燕帰(つばめかえ)る「秋燕」「帰燕」
     屋根の下群れて鳴きあう秋燕 
秋曇(あきぐもり)
     秋曇滑る下駄脱ぎ足袋を履き 
紫蘇の実(しそのみ)
     紫蘇の実や愛妻弁当隅を占め  
鶏頭(けいとう)
     風吹くな鶏頭は明日残したし







今日の季語 2018-8

今日の季語 2018-8



振舞水
    振舞水コンコンと湧く錆鉄管
夏暖簾
    里帰り風呂敷が引く夏暖簾 
天牛  
    かみきりむし闇の草むらジジと聞き  
朝焼[あさやけ]
    朝焼や見えた我が家雲谷に建つ 
風死(かぜし)す
    バケツ水かぜしす庭の砂埃 
砂日傘[すなひがさ]
    たつてない影なき昼の砂日傘 
夏菊(なつぎく)
    コバルトブルー占めて夏菊たち揃い 
梅干(うめぼし)
    喰うものは梅干と飯あとは白湯
    梅干や干してピークを越すを知り
    手造りと味噌と梅干挑む腕 
蚊(か) 
    飛んでいる姿は見える聞こえぬ蚊 
打水(うちみず) 
    日は西へ打水の痕跳び渡り 
原爆忌(げんばくき)原爆の日 
    原爆の日冷え冷え響く鐘の音 
立秋(りっしゅう)「今朝の秋」
    エアコンフィルター表示が示す今朝の秋 
西瓜(すいか)
    投げ入れるバケツ水でも西瓜の音 
別烏(わかれがらす)「烏の子別れ」
    振り向かぬ烏の子別れしばし追い 
鳳仙花(ほうせんか) 
    紅色で庭を覆いし鳳仙花 
流れ星(ながれぼし) 
    仰ぎ見る空占め長し流れ星
    歩く先流れ星落ち何あらむ 
糸瓜(へちま)
    どぶ創る美女肌磨く糸瓜かな 
新涼(しんりょう)
     新涼の旅帰るいえには未だ来ぬ 
新生姜(しんしょうが) 
     新生姜砂を噛まぬか目を皿に 
終戦記念日(しゅうせんきねんび)「終戦日」「敗戦忌」
     終戦記念日知らぬ世代知るサイレン 
灯籠流(とうろうながし)
     灯籠流し風に流れに行く末を 
残暑(ざんしょ)
     立舞の梵天揺れど残暑あり 
朝顔(あさがお) 
     朝顔も見る事できた今朝の足 
蟷螂(かまきり)
    地に落ちた蟷螂が振る斧虚し
    蟷螂山青空似合ふ斧が色 
鰯(いわし)
    わた抜けぬ鰯の刺身知らぬ味
    味貧乏鰯捌けず長し爪  
自然薯(じねんじょ) 
    自然薯擂れ鯖だしとれと蘊蓄を 
踊(おどり)
    青竹を立てた踊り場夜を待ち 
処暑(しょしょ)
     処暑の庭耳曲げ子犬迷い込み 
盆の月(ぼんのつき) 
    病癒え亜子抱き上げし盆の月
    過ぎた渦雲間に覗く盆の月 
    手を握る君の瞳に盆の月 
    仰け反った喉元照らす盆の月 
木槿(むくげ)
    父植しでかい木姿木槿咲き 
蓑虫(みのむし) 
    絶滅危惧種いにし蓑虫今いずこ 
枝豆(えだまめ)
    枝豆に虫はいないか舌探り
    枝豆から大豆に育つこの季節 
秋の雷(あきのらい) 
    蚊帳がない何処へ隠れる秋の雷 
蛁蟟(つくつくぼうし)
     蛁蟟数を減らして何急ぐ 
梨(なし)
    パンパンの袋の梨が垂れ並ぶ 
    梨狩りや袋の中を手探りし




5/04/2021

美しい花の季語で 五月を詠む

 


薊(あざみ) 
    立ち入れぬ野原すつくと薊咲く
勿忘草(わすれなぐさ)
    勿忘草瑠璃色いかす鉢選び
金盞花(きんせんか)
    果てしどもその色果てぬ金盞花
都忘れ(みやこわすれ)
    愛しくも都忘れの時がきて 
リラ   
      リラが舞う香り拡がる大通り 
牡丹(ぼたん)
    闇夜にも色淡く咲く牡丹かな
矢車草(やぐるまそう)
    矢車草誰が植えたか築山に
葉桜(はざくら)
    葉桜や毛虫も寄せぬ強し香
桐の花(きりのはな)
    高貴なり降りくる香り桐の花 
雛罌粟(ひなげし)
    雛罌粟を押花にして試合前 
石楠花(しゃくなげ)
 ウェディングドレス石楠花色へ出窓かな 
若楓(わかかえで)
    里帰り若楓捥ぎ負ぶさる子
渓蓀(あやめ)
    優雅なりあやめが覆う櫛形山
筍(たけのこ)
    立ち昇るふしでも美味し淡竹の子
鈴蘭(すずらん)
    入笠山鈴蘭もとめ夜明け道
栃の花(とちのはな)
    蜜蜂や香りも運ぶ栃の花
薔薇(ばら)
    階段を昇ればかをり薔薇の園
アカシアの花(あかしあのはな)
    アカシアの雨にうたれど死ぬ気なし
山法師の花(やまぼうしのはな)
    手をいれぬ山法師の花ちらほらと
柿若葉(かきわかば)
    柿若葉雨宿りする広さなり
忍冬の花(すいかずらのはな)
    つり橋を渡る勇気を吸葛
金雀花(えにしだ)
    金雀花や黄色がたわむフェンス越し
蜜柑の花(みかんのはな)
    暗闇や蜜柑の花が招く路
棕櫚の花(しゅろのはな)
    傾きて酒屋の裏に棕櫚の花
罌粟の花(けしのはな)
    赤白と僅か一日罌粟の花
朴の花(ほおのはな)
    腰伸ばす田植えが昼に朴の花
茨の花(いばらのはな)
    初デート丘へと続く花いばら
麦(むぎ)
    陽を上に廻す音よく麦をこく
卯の花(うのはな)
    卯の花や一房のぞく垣根より
てっせんか(鉄線花)
    集め植う妻の実家にクレマチス
アマリリス(あまりりす)
    たて笛やさいしょの曲はアマリリス



4/29/2021

新歳時記より 2021-4



四月(しぐあつ)
    四月や消しゴム替えて消して過去
彌生(やよひ)
    ピカピカの彌生の朝の眩しさよ
春の日(はるのひ):春日・春日・春日影・春の朝日・春の夕日・春の入日
    春日や遠くに見えて輸送船
日永(ひなが)永き日・遅日・暮遅し・暮かぬる
    空わたる浜名バイパス暮かぬる
春の空(はるのそら)
    北国へゴビのちりまふ春の空
麗らか(うららか)
    犬欠伸麗らかにたちて茶柱
長閑(のどか)
    のどかさやはるかに聞こゆ草刈り機
初桜(はつざくら)
    初桜ブルーシートを日に曝し
入学(にゅうがく):入学試験・入学式
    入学式小さな声で門に立つ
出代(でがはり):新参・御目見得
    出代や振り返らずに消えにけり
山葵(わさび):山葵漬
    辛さ秘む山葵それぞれ産地味
芥菜(からしな)
    風の止み芥菜を蒔く土を撒く
三月菜(さんぐわつな)
    谷底の緑増す摘む三月菜
春大根(はるだいこん):三月大根・野大根
    箸少し春大根の辛さかな
草餅(くさもち):蓬餅・母子餅
    陽光に誘ふ餡子や蓬餅
蕨餅(わらびもち)
    旗めきて暖簾の招き蕨餅
鶯餅(うぐいすもち)
    鶯餅きな粉に潜りいざ飛びぬ
桜餅(さくらもち)
    草原のケアハウスへと桜餅
椿餅(つばきもち)
    銘々皿蓋の緑や椿餅
東踊(あづまをどり)
    三密や東踊もひそやかに
蘆邊踊(あしべをどり)
    宵闇へ蘆邊踊の三味の音
都踊(みやこをどり)
    都踊姉は速足走る僕
浪花踊(なにはをどり)
    レコードや浪花踊をプツプツと
義士祭(ぎしさい)
    義士祭や槍の重たい孫衣装
種痘(しゅとう):植疱瘡
    種痘日や潮吹く針の長きかな
湯治舟(たうぢぶね)
    百軒の湯場の壁画や湯治舟
桃の花(もものはな):白桃・緋桃・源平桃・桃畑・桃林・桃園・桃の村
    ふっくらと地面に垂れて桃の花
梨の花(なしのはな)
    特急と並びて走り梨の花
杏の花(あんずのはな)
    あばら家は杏の花の咲く隣り
李の花(すもものはな)
    柴垣向こう李の花ざかり
林檎の花(りんごのはな)
    ジーゼルカー林檎の花を汚し去り
郁李の花(にはうめのはな):庭梅の花
    郁李へ早き流れやてふの影
  
山櫻桃の花(ゆずらのはな):庭梅の花(ゆずらうめのはな)
    ひとひらの山櫻桃の花の髪飾り
沈丁花(ぢんちやうげ):丁字・沈丁
    沈丁花にほひたどれば我が庵
辛夷(こぶし)
    彼方より屋根より高し辛夷咲く
木蓮(もくれん):白木蓮・紫木蓮・木蘭
    ディスクジョッキーこの木蓮が由来述ぶ
連翹(れんげう)
    連翹や違法駐車の列長し
樝の花(しどみのはな):草木瓜
    見るだけと樝の花の硬き棘
木瓜の花(ぼけのはな):更紗木瓜・蜀木瓜・広東木瓜・緋木瓜・白木瓜
    父植ゑし父と消えゆく木瓜の花
紫荊(はなずはう)
    空黄色ふわりと薄く紫荊
黄楊の花(つげのはな)
    鶴の呼ぶ樹形崩さず黄楊の花
枸橘の花(からたちのはな)
    枸橘の棘を避けつつセールスマン
山椒の花(さんせうのはな):花山椒
    分け入れば山椒の花どっと散り
接骨木の花(にはとこのはな)
    一塊接骨木の花庭にあり
杉の花(すぎのはな)
    杉の花陽光浴びて風に舞ふ
春暁(しゆんげう):春の曙・春あかつき・春の暁
    春暁や始発列車を起こしけり
春晝(しゆんちう)
    春晝おうどの虫や顔を出し
春の暮(はるのくれ)
    なにもかも霞んで見えて春の暮
春の宵(はるのよい):春宵・宵の春
    月なくも歩調緩やか春の宵
春の夜(はるのよ):夜半の春・春夜
    短冊を一枚ずつを夜半の春
春燈(しゅんとう):春の燈・春灯
    春燈や万年筆と祖母の文
春の月(はるのつき):春月
    気の沈む水平線の春の月
朧月(おぼろづき):月朧
    うろ覚え並べ名句や朧月
朧(おぼろ):草朧・鐘朧・朧影・朧夜は朧月夜の略
    久々の吾子の小走り鐘朧
龜鳴く(かめなく)
    杭の上群れ遠ざかり龜の鳴く
蝌蚪(くわと):お玉杓子・蛙の子
    孵れども藻に絡まれて蛙の子
柳(やなぎ):絲柳・靑柳・遠柳・川柳・門柳
    風通すまばらに垂れて絲柳
花(はな):花の雲・花吹雪・落花・花屑・花埃・花の塵・花の雨・花冷・花の山・花便・花守
    誘われて飛ばす車や花の夜
櫻(さくら):山櫻・八重櫻・遅櫻・朝櫻・夕櫻・夜櫻
    夜櫻や提灯揺れず続きけり
花見(はなみ):桜狩・観桜・花巡り・花の宴・花の茶屋・花の宿・花の幕・花筵・花人・花衣・花疲れ
    風流をあえて拒みて花見かな
花篝(はなかがり):花雪洞
    雨の夜ひと時は今花篝
花曇(はなぐもり)
    花曇バイクの先は咲き満ちて
桜漬(さくらづけ):花漬
    開きだす有田の湯吞桜漬
花見虱(はなみじらみ)
    のそのそと花見虱と行く名所
櫻鯎(さくらうぐひ)
    一網に櫻鯎や掬いとり
桜鯛(さくらだひ):花見鯛
    舳先から吊り糸光り桜鯛
花烏賊(はないか):櫻烏賊
    良き鮮度花烏賊が足動きけり
蛍烏賊(ほたるいか):まついか
    きらきらと網の丸さや蛍烏賊
春の海(はるのうみ)
    下る坂カーブ曲がれば春の海
春潮(しゆんてう):春の潮
    春潮や帆船軋む泡はじき
観潮(かんてう)
    観潮船橋の観客仰ぎ見て
磯遊(いそあそび):磯菜摘
    汐が満つバケツ空っぽ磯遊
汐干(しほひ):干潟・汐干狩・汐干潟
    汐干狩浜辺の松の風すがし
蛤(はまぐり):はまなべ・焼蛤
    蛤や縄文の高き貝塚
浅蜊(あさり)
    月曜日酒の開いて浅蜊かな
馬刀(まて):馬刀突・馬刀堀
    根競べしばしの時間馬刀の出て
櫻貝(さくらがひ)
    日記帳上に閉じ置く櫻貝
栄螺(さざえ)
    灯台の向こうはソ連栄螺焼く
壺焼(つぼやき)
    壺焼やだみ声遠く日焼け顔
鮑(あはび):鮑取
    富士山や一気に潜りとる鮑
常節(とこぶし)
    常節や溢れる小笊高笑ひ
細螺(ささご):きしやご
    お土産やぱちぱち細螺弾く音
寄居蟲(やどかり):がうな
    寄居蟲や宿を抜け出て恥ずかしく
汐まねき(しおまねき)
    マスゲーム汐退く浜の汐まねき
いそぎんちやく
    噛まれぬかいそぎんちやく指遊び
海膽(うに):雲丹
    透き通る裸足の拒む海膽の浜
搗布(かぢめ):搗布刈・搗布焚く
    波静か揺らぐ搗布や鎌光り
角又(つのまた)
    玉砂利や角又の干す温さかな
鹿尾菜(ひじき)
    耳で見る波の高さや鹿尾菜刈る
海雲(もづく):水雲・海蘊
    巣の海やパックに泳ぐ海雲かな
海髪(うご)
    防波堤熱きコンクリ海髪乾き
松露(しょうろ)
    うねうねと松露探して中田島
一人静(ひとりしづか)
    万葉園一人静の開く晝
金鳳華(きんぽうげ):うまのあしがた
    新品の眼鏡眩しく金鳳華
桜草(さくらさう)
    母逝きて庭をぐるりと桜草
チューリップ:鬱金香
    だんだんと短く咲けりチューリップ
ヒヤシンス:風信子
    捨てられて根っこの白きヒヤシンス
シクラメン
    ひと時の表舞台やシクラメン
スヰートピー
    スヰートピー思い出させてあのカット
シネラリヤ:サイネリヤ
    撥ね飛ばす如雨露の虹やシネラリヤ
アネモネ
    アネモネや花と名前の覚えたり
フリージア
    部屋を占む鼻一杯にフリージア
灌佛(くわんぶつ):佛生會
    灌佛の日トンビの声のありし空
甘茶(あまちや)
    背中押す並ぶ楽しさ甘茶の日
花祭(はなまつり)
    熱々と缶コーヒーが花祭
釋奠(せきてん):おきまつり
    この齢縁なきことよ釋奠よ
安良居祭(やすらゐまつり)
    掴まんややすらゐの花背中の子
百千鳥(ももちどり)
    庄屋森入り乱れてや百千鳥
囀(さえづり)
    囀や森林公園の句会
鳥交る(とりさかる)
    昼下り誰もゐぬ園鳥交る
鳥の巣(とりのす):巣籠・巣鳥
    秘密基地鳥の巣のてふ羽根のあり
古巣(ふるす)
    ふわふわと羽舞い上がり古巣かな
鷲の巣(わしのす)
    積年の鷲の巣太く雛の見え
鷹の巣(たかのす)
    急降下鷹の巣戻り卵抱く
鶴の巣(つるのす):鶴の巣籠
    必殺と鶴の巣籠誘い込み
鷺の巣(さぎのす)
    山枯らす鷺の巣の下糞まみれ
雉の巣(きじのす)
    分け入れば空の雉の巣雄の飛び
烏の巣(からすのす)
    烏の巣今年選ばれし電柱
鵲の巣(かささぎのす)
    一本道鵲の巣の見つけられ
鳩の巣(はとのす)
    パーキング鳩の巣のあり空の場所
燕の巣(つばめのす):巣燕
    幸を呼ぶ玄関の上燕の巣
千鳥の巣(ちどりのす)
    丸石と見紛うばかり千鳥の巣
雲雀の巣(ひばりのす)
    彼方よりぴょんぴょん歩き雲雀の巣
雀の巣(すずめのす)
    軒先の瓦の隙間雀の巣
孕雀(はらみすずめ):子持雀
    温き陽に孕雀の飛び立てり
孕鹿(はらみしか)
    煎餅を押し退け前へ孕鹿
仔馬(こうま):孕馬
    いつみても仔馬の足の長さかな
春の草(はるのくさ):春草・芳草・草芳し
    丸い円山羊が食み跡春の草
若草(わかくさ):嫩草・新草
    若草の牧場あちこち糞のあり
古草(ふるくさ)
    古草や轍の消えて古屋敷
若芝(わかしば)
    若芝の初々しさや若夫婦
蘖(ひこばえ)
    階段の蘖高く参拝者
竹の秋(たけのあき)
    ふかふかな誰も入れなく竹の秋
嵯峨念佛(さがねんぶつ)
    嵯峨念佛蜘蛛糸戻るすがし風
十三詣(じゅうさんまゐり):知恵貰・知恵詣
    連れ立ちて十三詣今年まで
山王祭(さんわうまつり)
    山王祭穴掘り進む馬のしと
梅若忌(うめわかき):木母寺大念佛
    飛び石や窓に一点梅若忌
臘名残(れふなごり)
    空に打つ弾の響きや猟名残
羊の毛剪る(ひつじのけきる)
    毛を刈りし羊身震い大きな目
春光(しゅんくわう):春の色・春色
    春光や潮見坂へと続く浜
靑麥(あをむぎ):麥靑む
    掌に靑麥やさしつんつんと
麥鶉(むぎうづら)
    蛍光灯ちかちかとして麥鶉
菜の花(なのはな):菜種の花・花菜
    菜の花のおひたしや母の枕辺
花菜漬(はななづけ)
    おてしおや春の色増す花菜漬
菜種河豚(なたねふぐ)
    古女房今宵は静か菜種河豚
大根の花(だいこんのはな):花大根・種大根
    陽光に大根の花伸びにけり
豆の花(まめのはな):蠶豆の花・豌豆の花
    緑葉の隠れてしまう豆の花
蝶(てふ):紋白蝶・紋黄蝶・胡蝶・蝶々・初蝶・揚羽蝶
    新芽伸ぶ生垣などり蝶の舞ふ 
春風(はるかぜ):春の風
    スカート翻し春の風の巻く
凧(たこ):長崎の凧揚・紙蔦・鳳巾・いかのぼり・いか・はた・奴凧
    風を追ひ息あがらして子らの凧
風車(かざぐるま):風車賣
    色紙と大豆割らずと風車
石鹸玉(しやぼんだま):たまや・水圏賣
    ベランダへ石鹸玉の訪ね来て
鞦撰(しうせん):秋千・ふららこ・ぶらんこ・半仙戯
    補助輪とれぶらんこ一人土曜午後
ボートレース:競漕
    声合わせボートレースや舳先競り
運動会(うんどうくわい)
    母も来ぬ運動会ビリ保ち
遠足(ゑんそく)
    遠足や鯉の御馳走咽る黄身
遍路(へんろ):遍路宿
    杖を置きスマホに記録遍路宿
春日傘(はるひがさ):春の日傘
    曲がる塀ゆるり近づき春日傘
朝寝(あさね)
    六時だよ夢の中起き朝寝かな
春眠(しゆんみん)
    寝落ち前教科書立てて春眠
春愁(しゆんしう)
    バスの無いさすらいの旅春愁
蠅生る(はえうまる)
    手洗い励行蠅生る場所の無き
春の蠅(はるのはえ)
    逞しく鳴らして羽音春の蠅
春の蚊(はるのか):春蚊
    目覚めたる網戸を攻めて春の蚊よ
虻(あぶ)
    ぶんぶんと針の太さや虻の舞ふ
蜂(はち):蜜蜂・熊蜂・足長蜂・穴蜂・土蜂
    ホバリング蜂の縄張り攻め姿勢
人丸忌(ひとまるき):人麿忌
    人丸忌石見の国へ行きたくて
花供養(はなくよう)
    空けぶる君いる横の花供養
御身拭(おみぬぐひ)
    御身拭マスクの他人連なりて
御忌(ぎよき):法然忌・御忌詣・御忌の鐘
    緑なす法然院に御忌の音
蜃気楼(しんきろう):海市・喜見城
    自慢げな君の話も蜃気楼
御影供(みえいく)
    御影供や奏でし祖母が持鈴の音
壬生念佛(みびねんぶつ):壬生狂言・壬生踊
    壬生念佛電車の音も鉦リズム
島原太夫道中(しまばらたいふのどうちゆう)
    誘われて島原太夫道中
先帝祭(せんていさい)
    先帝祭朱き蛇の目が白化粧
鮒膾(ふななます):山吹膾・叩き膾・子守膾
    鮒膾湖北の風も贈り着く
山吹(やまぶき):濃山吹・葉山吹
    山吹や豪華な庭へ咲き乱れ
海棠(かいだう)
    手入れせぬ父が海棠やせ細り
馬酔木の花(あせびのはな)
    散り散りに馬酔木の花の白き庭
ライラック
    ライラックにをひラーメン食べ歩き
小米花(こごめばな):雪柳・小米桜
    サイドミラー小米花散りねむの木村
小粉團の花(こでまりのはな)
    右カーブ小粉團の花故郷よ
楓の花(かへでのはな)
    森林や楓の花のひっそりと
松の花(まつのはな)
    年一度松の花摘む庭師真似
柃の花(ひさかきのはな)
    誘ひて柃の花神の域
樒の花(しきみのはな)
    この年で樒の花が見分け方
木苺の花(きいちごのはな)
    草陰に木苺の花三つ咲き
苺の花(いちごのはな)
    温室の外咲き乱れ苺の花
通草の花(あけびのはな)
    淡紫通草の花が通学路
郁子の花(むべのはな)
    夕空へ孫を背負いて郁子の花
宗因忌(そういんき)
    暗闇に罅入り音や宗因忌
天皇誕生の日(てんわうたんじやうのひ)
    日の丸小さめ天皇誕生の日
靖国祭(やすくにまつり):招魂祭
    標準木祝詞を聞きて招魂祭
どんたく
    車停めドンタク囃子見え始め
葱坊主(ねぎばうず):葱の花・葱の擬寶
    抜く手形一刀の切り葱坊主
萵苣(ちさ):ちさ缺く
    じゃりじゃりとはね上がり砂萵苣洗ふ
みづ菜(みづな):うはばみさう
    はりはりと敵とおぼしきみず菜刈る
鶯菜(うぐひすな)
    緑なす畑の一隅鶯菜
茗荷竹(めうがたけ)
    畏きや間隔揃え茗荷竹
杉菜(すぎな)
    築山を占めて杉菜の緑かな
東菊(あづまぎく):吾妻菊
    荒れ放題一際目立ち東菊
金盞花(きんせんくわ)
    大昔初見で憶え金盞花
勿忘草(わすれなぐさ)
    勿忘草忘れないでね花束に
種俵(たねだわら)
    納屋の奥出番近しと種俵
種井(たねゐ):種浸し
    頑丈な縛りで降ろし種井かな
種選(たねえらみ)
    心地よき水掻きまわし種選
種蒔(たねまき)
    種蒔や嚏も出さず均等に
苗代(なはしろ):苗田・苗代田・苗代時
    木綿糸ぺけの際立ち苗代田
水口祭(みなくちまつり)
    御幣立ち水口の祭かな
種案山子(たねかがし)
    月も出て蛙も唄ふ種案山子
苗代茱萸(なはしろぐみ):胡頽子
    声高し苗代茱萸にくだをまく
朝顔蒔く(あさがほまく)
    三日坊主朝顔蒔くと日記帳
藍植う(あゐうう)
    裸田や藍植う畝の少しずつ
蒟蒻植う(こんにやくうう)
    柔らかき蒟蒻植うや鍬の音
蓮植う(はすうう)
    富士の雪蓮植う泥の生ぬるき
八十八夜(はちじゅうはちや)
    漂える八十八夜茶のかをり
別れ霜(わかれじも):霜の名残・忘れ霜・別れ霜
    プロペラや闇夜の別れ霜
霜くすべ(しもくすべ):霜害
    扇風機まわれまわれば霜くすべ
茶摘(ちゃつみ):茶摘女・茶摘唄・茶摘笠・茶山・茶園
    やわき指一葉一葉の茶摘かな
製茶(せいちゃ):焙爐
    蒸せかえる製茶工場の香の残り
鯛網(たひあみ)
    揺れ筏鯛網回り切れぬ群れ
魚島(うをじま)
    魚島や松山城はビルの影
鯥(むつ):鯥五郎
    泥のけてめんくり玉や鯥五郎
蠶(かひこ):蠶卵紙・蠶飼・蠶飼ふ・たねがみ・掃立・飼屋・蠶棚・捨蠶・蠶時
    枕辺へ蠶休まず食むリズム
山繭(やままゆ)
    悠然と山繭灯り求め来て
桑摘(くはつみ):桑籠・桑車
    小柄女や桑籠を置く大きな音
桑(くは)
    見えぬほど大きく伸びて桑畑
桑の花(くはのはな)
    桑の花藁屋の我が家隠しけり
畦塗(あぜぬり)
    水満ちて父ぺたぺたと畦を塗り
蔦若葉(つたわかば)
    甲子園上へ上へと蔦若葉
萩若葉(はぎわかば)
    風呂敷の習字道具や萩若葉
草若葉(くさわかば)
    ペダル踏むサナトリュームへ草若葉
葎若葉(むぐらわかば)
    新築祝葎若葉の道を行く
罌粟若葉(けしわかば):芥子若葉
    廃屋へ外から覘き罌粟若葉
菊若葉(きくわかば)
    菊若葉刺して鹿沼の水含み
若蘆(わかあし):蘆若葉
    敵陣の一時止まり蘆若葉
荻若葉(をぎわかば)
    風に揺る輪中をぐるり荻若葉
若菰(わかごも)
    若菰をかき分けて出で鴨家族
髢草(かもじぐさ)
    雲流る仰ぎ見にほふ髢草
水芭蕉(みづばせう)
    木道の靴音続き水芭蕉
残花(ざんくわ)
    緑おす最後の残花急ぎ散り
春深し(はるふかし):春闌・春闌く
    春深し隣りは窓を開け広げ
夏近し(なつちかし):春隣る
    夏近し今年の暖簾誂えて
蛙(かはづ):初蛙・鳴蛙・遠蛙・晝蛙
    初蛙飛び込む水の流れかな
躑躅(つつじ):やまつつじ・きりしま
    赤染まりグリーンベルト躑躅咲く
満天星の花(どうだんのはな)
    浜名湖を満天星の花隠しけり
石南花(しやくなげ):石楠花
    惑わさる石楠花の咲く昼下り
柳絮(りうじよ)
    坂の上柳絮は行く東へと
若緑(わかみどり):松の緑・緑立つ・若松・松の蕊
    とげとげを優しく隠し若緑
緑摘む(みどりつむ)
    脚立立つ足おぼつかず緑摘む
松毟鳥(まつむしり):まつくぐり
    枝揺れてさかしまに食む松毟鳥
ねぢあやめ
    水溜り公園の隅ねぢあやめ
薊の花(あざみのはな):花薊・薊
    放棄地の真ん中に立つ花薊
山歸來の花(さんきらいのはな):さるとりいばらの花・さるとりの花
    採り集めリースに山歸來の花
藤(ふじ):藤の花・山藤・白藤・藤波・藤棚
    絨毯を敷いて藤棚開門と
行春(ゆくはる)
    行春や弁当不味い日はけふ
暮の春(くれのはる):暮春
    暮の春家庭訪問始まりぬ
春惜む(はるおしむ):惜春
    牛の引く土を反して春惜む

4/02/2021

美しい花の季語で 四月を詠む

 


菜の花(なのはな)
    月の下菜の花畑開き初め
座禅草(ざぜんそう)
    尾瀬に咲く木道さける座禅草
雪柳(ゆきやなぎ)
    一振りて千の花びら雪柳
パンジー
    パンジーやあの子教えし色多し
桜(さくら)
    父と行く桜ひとひらランドセル 
柳(やなぎ)
    背伸びする吾子の手するり柳かな
山桜(やまざくら)
    山桜反っ歯な君を思い出し
桃の花(もものはな)
    手折れては花器まで行けぬ桃の花
和布(わかめ)
    和布売り産地直送潮香添え
木瓜の花(ぼけのはな)
    木瓜の花赤く誘ふも拒む棘
アネモネ
    アネモネや花壇が色香地中海
海棠(かいどう)
    父植えし海棠なれと庭の口
馬酔木の花(あしびのはな)
    馬酔木の花振れなば鳴らん白小ぶり
チューリップ
    宵の町わたし売ってたチューリップ
二人静(ふたりしずか)
     招くみち二人静が能楽堂
八重桜(やえざくら)
    めでたき日ひきしめ塩気八重桜
芝桜(しばざくら)
    絨毯の上がこひしき芝桜
花荊(はなずおう)
    一軒家まだ咲いてるか花荊
満点星の花(どうだんのはな)
    名刹やどうだんの花星に植え
躑躅(つつじ)
    躑躅咲く石橋怖く築山へ
紫雲英(げんげ)
    腹冷える紫雲英にうまる子犬撮る
山吹(やまぶき)
    山吹の名歌におわす茅の屋根
スイートピー
    スイートピー飾る一輪カラオケ店
霞草(かすみそう)
    生け花を上手くまとめる霞草
柳絮(りゅうじょ)
    雲が切れ柳絮吹雪舞う棚田
藤(ふじ) 
    藤落ちてかほる道ゆく熊野御前
林檎の花(りんごのはな)
    林檎の花つづく受粉ポンポンと
苧環の花(おだまきのはな)
    苧環の花咲く庭の手入れ跡
桜草(さくらそう)
    桜草ブロックの上鉢並ぶ 
花水木(はなみずき)
    吾子想ふ今年も眺む花水木


3/31/2021

新歳時記より 2021-03

 



三月(さんぐわつ) 
    庭掃除釦外そか三月
如月(きさらぎ) 
    如月のショーケースや和菓子色
此花踊(このはなをどり) 
    捲る暦此花踊始まりぬ
二日灸(ふつかきう):ふつかやいと 
    連れあいて煙る寺へと二日灸  
雛市(ひないち):雛店 
    迷わずに孫にこれをと雛の市
桃の節句(もものせつく):上巳・上巳(じやうみ)・桃の日 
    毛氈へ桃の節句の光かな
雛(ひな):ひひな・雛遊・雛飾る・初雛・古雛・内裏雛・土雛・紙雛・雛壇・雛箱・雛の宴・雛の客・雛の宿・雛流し・雛納め 
    華やかな雛を待たずに吾子のゆく
白酒(しろざけ):桃の酒 
    育ちたり白酒を注ぐ孫娘
菱餅(ひしもち) 
    菱餅に美味し幻想かたくなに
曲水(きょくすゐ):曲水の宴・流觴・盃流し・巴字盞 
    万葉の森曲水の水をはり
鶏合(とりあはせ):闘鶏 
    籠の揺れ眼ランラン鶏合
闘牛(とうぎう) 
    闘牛へモウと一声川辺道
春の雪(はるのゆき):淡雪・春雪(しゆんせつ) 
    黒電話東京はまだ春の雪
初雷(はつらい):蟲出 
    初雷や蚊帳は納戸の奥の奥
春雷(しゅんらい):春の雷 
    逃げ込んで待て度来ぬ人春の雷
啓蟄(けいちつ):地蟲穴を出づ・地蟲出づ・蟻穴を出づ・地蟲 
    啓蟄や丸くなり絵葉書の角
蛇穴を出づ(へびあなをいづ) 
    おりて許可蛇穴を出づ造成地
東風(こち):強東風・朝東風・夕東風 
    東風吹けば太宰府むかふ密の道
春めく(はるめく) 
    春めくや待つ人もなく喫茶店
伊勢参(いせまゐり):おかげまゐり・脱参 
    自治会の役目果たして伊勢参
春の山(はるのやま) 
    追わずとも誘われ獣春の山
山笑ふ(やまわらふ) 
    発破音ダンプが通り山笑ふ
水温む(みずぬるむ):温む水 
    水温む蛙の卵揺らめきて
春の水(はるのみず):水の春・春水 
    水草や底まで透す春の水
蜷(にな):蜷の道・みな 
    二本線誰を辿るか蜷の道
田螺(たにし):田螺鳴く・田螺取 
    つぼ取や長靴履こか履かまいか
田螺和(たなしあえ):田螺汁 
    白黒と鴉と競ひ田螺和
蜆(しじみ):蜆採・蜆搔・蜆舟・蜆売・蜆汁 
    朝靄や声が届くか蜆売
烏貝(からすがひ) 
    一個だけ底まで澄みて烏貝
大試験(だいしけん) 
    配られて早鐘を打つ大試験
蒪生ふ(ぬなはおふ) 
    二俣を眺めて句碑の蒪生ふ
水草生ふ(みずくさおふ):みくさ生ふ・萍生ふ 
    小川にも水草生ひて隠れ場所
春田(はるた) 
    SLの警笛遠く春田かな
春の川(はるのかわ):春江 
    春の川光の粒を鏤めて
諸子(もろこ):はつもろこ 
    狢川餌をつけれて釣る諸子
柳鮠(やなぎはえ) 
    光る粒うきが動きや柳鮠
子持鯊(こもちはぜ) 
    佃煮や味格別と子持鯊
若鮎(わかあゆ):小鮎・鮎の子 
    水光る若鮎遡上堰の道
鮎汲(あゆくみ) 
    鮎汲や跳ねる響きに指しびれ
上り簗(のぼりやな) 
    上り簗下してあげぬ鮎が群
春日祭(かすがまつり) 
    温き風春日祭が神輿ゆく
御水取(おみずとり):水取 
    輻射熱受けて今年も御水取
御松明(おたいまつ) 
    梢越火の粉が見えて御松明
西行忌(さいぎょうき) 
    奥山の雪の残りの西行忌
涅槃(ねはん):涅槃會・涅槃図・寝釈迦・涅槃の日・常楽會 
    感嘆や境内かかげて涅槃かな
涅槃西風(ねはんにし) 
    甘酒のかをり誘われ涅槃西風
雪の果(ゆきのはて):名残の雪・雪の別れ・忘れ雪 
    窓越しに別れ告げゆく雪の果
鳥帰る(とりかへる):鳥雲に入る・鳥曇・帰る鳥・小鳥引く 
    スカイツリー陣形V字鳥帰る
引鶴(ひきづる):帰る鶴・鶴帰る・残る鶴 
    引鶴や山上に消え北の窓
引鴨(ひきがも):鴨帰る・帰る鴨・行く鴨・残る鴨 
    潜る場所けふも変わらず残る鴨
帰る雁(かへるかり):帰雁・雁帰る・行く雁・雁の別れ・春の雁 
    雨あがり月の中行く帰る雁
雁風呂(がんぶろ):雁供養 
    雁風呂や北の山にも月の照り
治聾酒(がろうしゅ) 
    治聾酒や直会直後声の良さ
彼岸(ひがん) 
    神主の家々巡り彼岸かな
彼岸詣(ひがんまゐり):彼岸会・彼岸団子 
    祖父を追ひ彼岸詣が蕎麦の味
彼岸桜(ひがんざくら):枝垂桜・絲桜  
    校庭に彼岸桜の残りけり
開帳(かいちやう):出開帳 
    山の上三々五々に御開帳
大石忌(おおいしき) 
    提灯のかけずに灯り大石忌
貝寄風(かひよせ):貝寄 
    貝寄風や波打ち際の泡はじく
暖か(あたたか):ぬくし 
    ぬくし昼イーゼル立てて握り飯
目貼剥ぐ(めばりはぐ) 
    ご苦労の一言もなく目貼剥ぐ
北窓開く(きたまどひらく) 
    誘う声北窓開く昼下り
爐塞(ろふさぎ):爐の名残・春の爐 
    煤積もる鯛の横木や爐の名残
炬燵塞ぐ(こたつふさぐ) 
    天気図や炬燵塞ぐは未だ寒き
春炬燵(はるごたつ) 
    スマホ見る足の置き場所春炬燵
捨頭巾(すてづきん) 
    お気に入り柄はこれから捨頭巾
雉(きじ):雉子・きぎす・雉笛 
    帽子へと舞い降りてきて雉の羽根
駒鳥(こまどり):こま・知更鳥 
    駒鳥が声の横切り棚田かな
鷽(うそ) 
    鷽啼きて調整池の光りだし
雲雀(ひばり):雲雀笛・揚雲雀・落雲雀・夕雲雀・雲雀野・雲雀籠 
    鳴く雲雀PA(パーキングエリア)気忙しく
燕(つばめ):乙鳥・つばくろ・つばくら・つばくらめ・燕来る 
    つばくろや彩り傘のすれすれに
春雨(はるさめ):春霖・春の雨 
    春雨や濡れどいとわぬ儀仗兵
春泥(しゆんでい):春の泥・春の土 
    水溜り避けて柔らか春の泥
ものの芽(もののめ) 
    ものの芽の伸びて野原のひとつ色
草の芽(くさのめ):名草の芽、菊、朝顔、萩、桔梗、菖蒲、芍薬、百合等 
    百合の芽か土押しのける勇ましさ
牡丹の芽(ぼたんのめ) 
    牡丹の芽今年も咲くと愛でし父
芍薬の芽(しゃくやくのめ):目芍薬 
    ぐんぐんと芍薬の芽の膨らみぬ
菖蒲の芽(しやうぶのめ) 
    枯草を引き連れひとつ菖蒲の芽
蘆の角(あしのつの):蘆の芽・角ぐむ蘆 
    にょきにょきと陣形見せて蘆の角
角組む萩(つのぐむはぎ) 
    踏み入れぬ角組む萩の河原かな
菰の芽(こものめ):芽張るかつみ 
    にょきにょきと芽張るかつみがやわきとは
耕(たがやし):耕人・耕馬・耕牛(かうぎう) 
    耕牛や長閑に聞こゆ日曜日
田打(たうち):田を鋤く 
    父田打子ら並びて土手の上
畑打(はたうち) 
    畑打や鍬に貼りつく土黒し
種物(たねもの):種物屋・種売・花種・物種 
    うんちくを並べ売ろうか種物屋
苗床(なへどこ):種床 
    ふわふわへそろり苗床並ぶ穴
花種蒔く(はなたねまく) 
    小石取花種を蒔く窓の下
鶏頭蒔く(けいとう)まく 
    此処は密鶏頭を蒔く場所探し
夕顔蒔く(ゆふがほ)まく 
    種仕入れ夕顔蒔けば日が暮れて
糸瓜蒔く(へちま)まく 
    孔点々長々し床糸瓜蒔く
胡瓜蒔く(きうり)まく 
    もめごとや上か横かと胡瓜蒔く
南瓜蒔く(かぼちゃ)まく 
    大幅に位置を定めて南瓜蒔く
茄子蒔く(なす)まく 
    この味を嫁に教えず茄子を蒔く
牛蒡蒔く(ごぼう)まく 
    深耕や曲がらぬ願い牛蒡蒔く
麻蒔く(あさ)まく 
    午前から麻蒔く指の監視され
芋植う(いもいうう) 
    灰を撒き芋植う手が早き事
種芋(たねいも):芋の芽 
    種芋よ大きくなれよ土かをる
菊根分(きくねわけ):菊植う・菊分つ 
    展覧会目指し金賞菊根分
菊の苗(きくのなえ) 
    パレットや水たっぷりと菊の苗
萩根分(はぎねわけ) 
    生い茂り覆ふトンネル萩根分
菖蒲根分(しやうぶねわけ) 
    絶えて消ゆ菖蒲根分怠りぬ
苗札(なえふだ) 
    見る人なく苗札を刺す意味ありや
木の芽(このめ):芽立ち・木の芽時・木の芽風・木の芽吹く 
    突然の忙しと動き木の芽時
芽柳(めやなぎ):芽ばり柳・柳の芽 
    芽柳やぽっくり響き朝稽古
接骨木の芽(にはとこのめ) 
    二つだけ接骨木の芽の美味きこと
楓の芽(かえでのめ) 
    紅が我先と出で楓の芽
桑の芽(くわのめ) 
    桑の芽や風を通して無双窓
薔薇の芽(ばらのめ):茨の芽 
    薔薇の芽や色を隠して膨らみぬ
蔦の芽(つたのめ) 
    漆喰塀やわき蔦の芽開き初む
楤の芽(たらのめ):多羅の芽 
    楤の芽とおそるおそるがキャンプ飯
山椒の芽(さんせうのめ):さんしょのめ 
    冷奴山椒の芽の伸びて庭
田楽(でんがく):木の芽田楽 
    田楽へ青竹に刺す蒟蒻屋
木の芽和(きのめあへ) 
    陶磁器に装いてみたり木の芽和
靑饅(あおぬた) 
    酢味噌の香靑饅を盛る夕餉かな
枸杞(くこ):枸杞摘む 
    枸杞を摘む遠き口笛犬の息
五加木(うこぎ):五加木摘む・五加木飯 
    揃いたり囲む卓袱台五加木飯
菜飯(なめし) 
    ぶらり旅海辺の席の菜飯哉
目刺(めざし) 
    ありつきて涙の滲みて目刺かな
白子干(しらすぼし) 
    海辺へと夫思い出し白子干
干鱈(ひだら):棒鱈・ほしだら 
    木槌の音干鱈が皮しょっぱくて
鰆(さはら) 
    潮に乗り警笛遠き鰆船
鯡(にしん):鰊雲・鰊・鰊群来(にしんくき) 
    大漁の唄今聞けず鰊宿
鱒(ます) 
    古ピアノメロディーは鱒駅の中
鮊子(いかなご):かますご 
    鮊子や甘き佃煮照り返す
飯蛸(いひだこ) 
    飯蛸や砕けぬ皮が噛めば噛め
椿(つばき):山椿・藪椿・白椿・乙女椿・八重椿・つらつら椿・落椿 
    丘の上人待ち顔の椿かな
莖立(くくたち) 
    葱坊主のけて葉物の莖立てり
独活(うど):芽独活・山独活 
    高く伸ぶキャンプはグルメ摘む芽独活
松葉独活(まつばうど):アスパラガス 
    生い茂るアスパラガスが畑のくろ(隅)
慈姑(くわゐ):壬生慈姑・慈姑掘る 
    黒い土ずらりと並び慈姑かな
胡葱(あさつき):絲葱・千本分葱 
    胡葱や洗ふ水道カルキけり
野蒜(のびる) 
    赤味噌と白き野蒜の青い茎
韮(にら) 
    韮買えばレバーゾーンを捜しけり
蒜(にんにく):葫・忍辱 
    蒜の匂い溢れて餃子詰
接木(つぎき):接穂・砧木 
    老木やたわわ夢見て接木かな
取木(とりき) 
    ぐるぐると遥か高くに取木かな
挿木(さしき):挿穂 
    鹿沼土水たっぷりと挿木かな
苗木植う(なえぎうう) 
    この年の想いでもなく苗木植う
桑植う(くわうう) 
    桑植う子の枝秋は子に喰わせ
流氷(りうひょう) 
    流氷や果てまで白きオホーツク
木流し(きながし) 
    木流しや泡立てやわき音落ちて
厩出し(うまやだし) 
    朝日中土の光りの厩出し
垣繕ふ(かきつくろふ) 
    父の髪ぼさぼさの垣を繕ふ
屋根替(やねがへ):葺替 
    葺替やまず朝食で始まりぬ
大掃除(おほさうぢ) 
    外して戸裏まで見ぬけ大掃除
卒業(そつげふ):卒業式・卒業生 
    祝卒業赤い判子が通信簿
蓮如忌(れんにょき) 
    蓮如忌や竹の撓りて風の道
春の野(はるのの):春郊 
    春郊や来る人のあり他人なり
霞(かすみ):朝霞・昼霞・夕霞・遠霞・薄霞・棚霞・鐘霞む・草霞む 
    横並び電柱支え棚霞
陽炎(かげろふ):絲遊 
    陽炎や置いていきたしランドセル
踏靑(たふせい):靑きを踏む・あをきふむ 
    はあはあとたるまぬ鎖青木踏む
野遊(のあそび) 
    野遊やちょこちょこ歩き鎖解き
摘草(つみくさ):草摘む 
    摘草や雲の払われ我先と
嫁菜摘む(よめなつむ) 
    端っこへ挨拶もなく嫁菜摘み
蓬(よもぎ):蓬摘・艾草・餅草・蓬摘む 
    摘む指の色と匂いの蓬かな
母子草(ははこぐさ):はうこぐさ 
    小麦粉をまぶして如き母子草
土筆(つくし):つくづくし・つくし摘む 
    築山へ石橋を吾子つくし摘む
蕨(わらび):早蕨・蕨狩・干蕨 
    消え去りぬ家建ち並び蕨摘み
薇(ぜんまい) 
    薇や坂の途中の競い合い
芹(せり):芹摘 
    水温し追ひて小魚芹摘ぬ
三葉芹(みつばぜり):みつば 
    茶碗蒸し母の慌ててみつば摘む
防風(ばうふう):防風採・防風掘る 
    防風や洗ひ洗へど砂のあり
小水葱摘む(こなぎつむ):細水葱(ささなぎ) 
虚子編新歳時記
「小水葱摘む(こなぎつむ):細水葱(ささなぎ)羮などにし供御などにも奉ったもので今は無い」とあり例句もなくお手上げ状態。今回はパスにするか
菫(すみれ):菫草・花菫・菫野 
    アスファルト裂け目掻き分け菫咲く
蒲公英(たんぽぽ):鼓草 
    蒲公英のグリーンベルト北の道
紫雲英(げんげ):五形花(げげばな)・げんげん・蓮花草 
    牛の啼く紫雲英田圃の吾子の呼ぶ
苜蓿(うまごやし):クローバ 
    唄い立つグラバー邸の苜蓿
蘩寠(はこべ):はこべら 
    蘩寠持つからの鳥籠羽根黄色
薺の花(なづなのはな):三味線草・ぺんぺん草 
    遊ぶ吾子ぺんぺん草をくるくると
酸葉(すいば):酸模(すいば)・すかんぽ・あかぎしぎし 
    すかんぽや手刀で切る帰り道
虎杖(いたどり) 
    戯れに食わせ虎杖目鼻寄せ
茅花(つばな) 
    水辺へと茅花流しが誘う園
春蘭(しゅんらん) 
    春蘭や下駄箱の上かをり待つ
黄水仙(きずゐせん) 
    こちら向き風に抗ふ黄水仙
磯開(いそびらき) 
    老骨と見せかけ走り磯開
其角忌(きかくき) 
    其角忌や薄汚れたり聯五枚
 

3/14/2021

美しい花の季語で 三月を詠む

美しい花の季語で 3月


青麦(あおむぎ)
    さわさわと青麦撫でる指の間に
猫柳(ねこやなぎ)
    毛艶やか触りなさいと猫柳
ヒヤシンス
    ひび割れたガレが花瓶へヒヤシンス
杉の花(すぎのはな)
    万人が散るを好まぬ杉の花
沈丁花(じんちょうげ)
    沈丁花香りが告げる夜更け道
山椒の芽(さんしょうのめ)
    山椒の芽摘むや庭先ひつまぶし
蘆の角(あしのつの)
    にょきにょきと河を守るか蘆の角
一人静(ひとりしずか)
    line閉じ一人静に目をやりぬ
虎杖(いたどり)
    切株や紅虎杖ぞ囲み咲き
諸葛菜(しょかつさい)
    紫へ畑一面諸葛菜
野蒜(のびる)
    炙り網噛めば香るや野蒜かな
茅花(つばな)
    手のひらを毛先が撫でる茅花噛む
春蘭(しゅんらん)
    根を切りてかをる春蘭唐津焼
フリージア
    豚小屋をフリージア覆ふ香ぞ強き
土佐水木(とさみずき)
    淡黄の小花揺らして土佐水木
土筆(つくし)
    にはもせに雑草となる土筆占む
木五倍子の花(きぶしのはな)
    淋し庭木五倍子の花が咲きし朝
貝母の花(ばいもものはな)
    笠を編む貝母の花咲きにけり
三椏の花(みつまたのはな)
    咲き始む三椏の花ほのかなり
片栗の花(かたくりのはな)
    木漏れ日を片栗の花透かしけり
蕨(わらび)
    崖のぼる蕨いつぱい友は摘み
薇(ぜんまい)
    薇をのばしてみたり帰り道
黄水仙(きずいせん)
    堤下黄水仙咲く花壇かな
枸杞(くこ)
    緑いろ夕餉のごはん枸杞芽摘む
喇叭水仙(らっぱすいせん)
    風受けて喇叭水仙頷きて
枝垂桜(しだれざくら)
    照り出だす枝垂桜を撮る夕べ
辛夷(こぶし)
    藪の中主も見ない辛夷咲く
楤の芽(たらのめ)
    楤の芽の天ぷら揚げるソロキャンプ
白木蓮(はくもくれん)
    白木蓮隣りの庭も咲きにけり
連翹(れんぎょう)
    築山へ渡る連翹はねる鯉
君子蘭(くんしらん)
    妻は逝く手入れ届いた君子蘭

2/28/2021

新歳時記より2021-02

新歳時記より2021-02


春 三春・九春・春の旅・春の宮・春の寺・春の人・春の園・村の春・島の春・京の春
    診断の胸つぶらはし春の窓
立春(りつしゅん):春立つ
    聲聞こゆ春立つ朝の枝の上
二月(にぐわつ)
    準備済む待つや本番二月かな
寒明(かんあけ)
    寒明ていよいよ古希の祝いかな
初春(はつはる):しょしゅん
    初春や隣りの親父大欠伸
早春(そうしゅん)
    早春の草原の風温からず
春浅し(はるあさし):浅き春
    春浅し川面の鷺の佇めり
睦月(むつき):年端月
    年端月西日差しこむ納屋仕事
旧正月(きうしやうがつ)
    旧正の風邪拗らせてはや六日
二月禮者(にぐわつれいじや)
    靴でかし二月禮者の声でかし
二の替(にのかはり)
    花道の踏み音新し二の替
繪踏(ゑぶみ)
    繪踏耐え秘かに彫りて壁が傷
初午(はつうま):一の午・二の午
    初午の風渦巻きて面の揺れ
針供養(はりくやう):針祭る・針納め
    口を閉じけふは静寂針供養
奈良の山焼
    花火聞く奈良の山焼けふありし
雪解(ゆきどけ):雪解雫(ゆきげしづく)・雪解・雪解風・雪解水・雪解川・雪汁
    雪解のこんこんと湧く富士が裾
 
雪しろ(ゆきしろ):雪濁
    雪しろや坂の途中の消え去りぬ
雪崩(なだれ)
    ドツドツと雪崩の音の一人聞き
残雪(ざんせつ):残る雪・雪残る
    熊笹を倒してなおも残る雪
雪間(ゆきま):雪のひま
    熊笹の緑跳ね出て雪の隙(ひま)
凍解(いてどけ):凍ゆるむ・凍解くる
    凍解や水琴窟の音のあり
氷解(こおりどけ):解氷・氷解く・浮氷
    溜池や朝日返して浮氷
薄氷(うすらひ):残る氷・春の氷
    模様消え浮氷光る朝の池
冱返る(いてかえる):凍返る
    蛍光灯畳みしみし冱返る
冴返る(さえかえる)
    冴返るスポットライトの天守閣
春寒(はるさむ)
    春寒し梅園の道人まばら
餘寒(よかん)
    陽もささぬゴム靴痛き餘寒かな
春の風邪(はるのかぜ)
    鼻水と嚏連発春の風邪
春時雨(はるしぐれ)
    酔いまかせ傘は無くとも春時雨
猫の恋(ねこのこい):恋猫・うかれ猫・春の猫・猫の妻・孕み猫
    この声や川の向こうのうかれ猫
白魚(しろうを):白魚網・白魚舟
    夜明け前白魚網の跳ね踊り
公魚(わかさぎ):鰙・?魚編にハム
    公魚やくるりとルワー列をなし
 
鱵(さより)
    浜名湖のすれすれ鱵連射砲
魞挿す(えりさす)
    朝靄の魞挿す舟の櫓音かな
野焼く(のやく):草焼く・芝焼く・畦焼く
    風凪ぎて野焼く男の欠伸かな
焼野(やけの)
    見上ぐれば焼野終いの雨間近
山焼く(やまやく)
    男衆種火瞳に山を焼く
焼山(やけやま)
    焼山の臭いの沁みて昼の膳
末黒の芒(すぐろのすすき):焼野の芒・末黒野
    白鷺や末黒の芒下に見て
麥踏(むぎふみ):麥を踏む
    麥踏や俯き往復昼餉かな
木の實植う(きのみうう)
    木の實植ううんちくの木の一つ増え
猫柳(ねこやなぎ)
    チャンバラが刀に化けて猫柳
洎夫藍の花(さふらんのはな)
    洎夫藍の花化けて黄金色になり
片栗の花(かたくりのはな)
    風小僧片栗の花一撫でて
雛菊(ひなぎく)
    雛菊や最前列に並び出て
春菊(しゆんぎく):茼菊・しんぎく
    春菊やかきこの揺れてかけうどん
菠薐草(はうれんそう)
    菠薐草弁当箱を占めにけり
蕗の薹(ふきのたう)
    気がつけば何処に去りや蕗の薹
水菜(みづな):京菜
    無理矢理に嫌うボウルに水菜積む
海苔(のり):海苔粗朶・海苔簀・海苔掻・海苔採・海苔桶・海苔干す・海苔干場
    波しぶき眼鏡も曇り海苔を摘む
 
靑海苔(あおのり)
    靑海苔のかをる市場や気忙しく
獺の祭(をそのまつり):獺魚を祭る
    獺の祭提灯照らす魚の跡
鳴雪忌(めいせつき):老梅忌
    街灯や花弁散らし鳴雪忌
梅(うめ):野梅・梅林・梅の花・白梅・臥龍梅・梅園
    何気なく陽も強くなり梅の咲く
梅見(うめみ)
    ぶり返し梅見が連れの早き脚
盆梅(ぼんばい)
    違い棚盆梅が丈伸びすぎて
紅梅(こうばい)
    一重八重開く紅梅庄屋跡
黄梅(わうばい)
    黄梅や片隅にも一本咲き
 
鶯(うぐひす):春告鳥・鶯の谷渡・鶯笛・黄鳥
    谷底へ届く鶯枝揺れて
下萌(したもえ):草萌・草靑む
    かけっこの脚に優しき草靑む
いぬふぐり
    いぬふぐりどこぞが犬の鼻のさき
菜種御供(なたねごく):梅花御供
    手袋を脱いで合掌菜種御供
磯竃(いそかまど)
    磯竃老練たちの大笑い
若布(わかめ):若布刈舟(めかりぶね)・若布拾・若布干す・若布売
    待ちわびて若布催促鳴る電話
實朝忌(さねともき)
    垣根咲く通りに朝日實朝忌
立春(りつしゅん):春立つ
    聲聞こゆ春立つ朝の枝の上
二月(にぐわつ)
    準備済む待つや本番二月かな
寒明(かんあけ)
    寒明ていよいよ古希の祝いかな
初春(はつはる):しょしゅん
    初春や隣りの親父大欠伸
早春(そうしゅん)
    早春の草原の風温からず
春浅し(はるあさし):浅き春
    春浅し川面の鷺の佇めり
睦月(むつき):年端月
    年端月西日差しこむ納屋仕事
旧正月(きうしやうがつ)
    旧正の風邪拗らせてはや六日
二月禮者(にぐわつれいじや)
    靴でかし二月禮者の声でかし
二の替(にのかはり)
    花道の踏み音新し二の替
繪踏(ゑぶみ)
    繪踏耐え秘かに彫りて壁が傷
初午(はつうま):一の午・二の午
    初午の風渦巻きて面の揺れ
針供養(はりくやう):針祭る・針納め
    口を閉じけふは静寂針供養
奈良の山焼
    花火聞く奈良の山焼けふありし
雪解(ゆきどけ):雪解雫(ゆきげしづく)・雪解・雪解風・雪解水・雪解川・雪汁
    雪解のこんこんと湧く富士が裾
 
雪しろ(ゆきしろ):雪濁
    雪しろや坂の途中の消え去りぬ
雪崩(なだれ)
    ドツドツと雪崩の音の一人聞き
残雪(ざんせつ):残る雪・雪残る
    熊笹を倒してなおも残る雪
雪間(ゆきま):雪のひま
    熊笹の緑跳ね出て雪の隙(ひま)
凍解(いてどけ):凍ゆるむ・凍解くる
    凍解や水琴窟の音のあり
氷解(こおりどけ):解氷・氷解く・浮氷
    溜池や朝日返して浮氷
薄氷(うすらひ):残る氷・春の氷
    模様消え浮氷光る朝の池
冱返る(いてかえる):凍返る
    蛍光灯畳みしみし冱返る
冴返る(さえかえる)
    冴返るスポットライトの天守閣
春寒(はるさむ)
    春寒し梅園の道人まばら
餘寒(よかん)
    陽もささぬゴム靴痛き餘寒かな
春の風邪(はるのかぜ)
    鼻水と嚏連発春の風邪
春時雨(はるしぐれ)
    酔いまかせ傘は無くとも春時雨
猫の恋(ねこのこい):恋猫・うかれ猫・春の猫・猫の妻・孕み猫
    この声や川の向こうのうかれ猫
白魚(しろうを):白魚網・白魚舟
    夜明け前白魚網の跳ね踊り
公魚(わかさぎ):鰙・?魚編にハム
    公魚やくるりとルワー列をなし
 
鱵(さより)
    浜名湖のすれすれ鱵連射砲
魞挿す(えりさす)
    朝靄の魞挿す舟の櫓音かな
野焼く(のやく):草焼く・芝焼く・畦焼く
    風凪ぎて野焼く男の欠伸かな
焼野(やけの)
    見上ぐれば焼野終いの雨間近
山焼く(やまやく)
    男衆種火瞳に山を焼く
焼山(やけやま)
    焼山の臭いの沁みて昼の膳
末黒の芒(すぐろのすすき):焼野の芒・末黒野
    白鷺や末黒の芒下に見て
麥踏(むぎふみ):麥を踏む
    麥踏や俯き往復昼餉かな
木の實植う(きのみうう)
    木の實植ううんちくの木の一つ増え
猫柳(ねこやなぎ)
    チャンバラが刀に化けて猫柳
洎夫藍の花(さふらんのはな)
    洎夫藍の花化けて黄金色になり
片栗の花(かたくりのはな)
    風小僧片栗の花一撫でて
雛菊(ひなぎく)
    雛菊や最前列に並び出て
春菊(しゆんぎく):茼菊・しんぎく
    春菊やかきこの揺れてかけうどん
菠薐草(はうれんそう)
    菠薐草弁当箱を占めにけり
蕗の薹(ふきのたう)
    気がつけば何処に去りや蕗の薹
水菜(みづな):京菜
    無理矢理に嫌うボウルに水菜積む
海苔(のり):海苔粗朶・海苔簀・海苔掻・海苔採・海苔桶・海苔干す・海苔干場
    波しぶき眼鏡も曇り海苔を摘む
 
靑海苔(あおのり)
    靑海苔のかをる市場や気忙しく
獺の祭(をそのまつり):獺魚を祭る
    獺の祭提灯照らす魚の跡
鳴雪忌(めいせつき):老梅忌
    街灯や花弁散らし鳴雪忌
梅(うめ):野梅・梅林・梅の花・白梅・臥龍梅・梅園
    何気なく陽も強くなり梅の咲く
梅見(うめみ)
    ぶり返し梅見が連れの早き脚
盆梅(ぼんばい)
    違い棚盆梅が丈伸びすぎて
紅梅(こうばい)
    一重八重開く紅梅庄屋跡
黄梅(わうばい)
    黄梅や片隅にも一本咲き
 
鶯(うぐひす):春告鳥・鶯の谷渡・鶯笛・黄鳥
    谷底へ届く鶯枝揺れて
下萌(したもえ):草萌・草靑む
    かけっこの脚に優しき草靑む
いぬふぐり
    いぬふぐりどこぞが犬の鼻のさき
菜種御供(なたねごく):梅花御供
    手袋を脱いで合掌菜種御供
磯竃(いそかまど)
    磯竃老練たちの大笑い
若布(わかめ):若布刈舟(めかりぶね)・若布拾・若布干す・若布売
    待ちわびて若布催促鳴る電話
實朝忌(さねともき)
    垣根咲く通りに朝日實朝忌

2/23/2021

これまでの俳句

 これまでの俳句


俳句を始める

 2018年2月から俳句をはじめた。
それまでは方言を使って川柳を詠んでいたが、方言の説明を織り込まないと通じないと分かり2000句で止めることにした。その時に愛犬の句を575で詠んでいた句に季語を入れ直して詠み直したりしていた。
区役所の俳句の里づくり事業の俳句大会でプレバトでおなじみの夏井いつき先生の記念講演が福祉会館であった。満員の席にすき間を見つけ「俳句の種まき」の話を聞き、「一日一句詠みなさい」の教えをが身について会場を出るときは「詠める」と自信がついていた。浜松城の梅が見えて
「城の梅夏井が話妻は見ず」と一句詠んでみた。

 毎日一句を読み始めたが、勉強の必要性を感じて手始めに歳時記を買い求め、季語はじめいろいろな言葉と出会う機会が出来た。蟻の一歩の進み具合
(私にわからないから)です。
Twitterには「方言川柳」以前より呟いていて最初の一句もツイートしておいた。フォロワーさんは俳句に関心がない人たちで反応が何もなく毎日一句ツイートしていた。

俳句ポスト投稿

「俳句ポスト」の存在を知り一句投稿してみたら、最初の句が並選に掲載され、数回続いたところでNHKにも投稿してみた。
投稿を始めて雑誌に佳作で名前が掲載され、投稿サイトでも並選になり、NHKの俳句大会にもびびって投函した1句が佳作に名前が載り、(何も勉強しなくてもこんなもんだ)と、自己満足していた。

 ところがそれ以降は名前が出ない日が続き、俳句の道は山を登るが如しで最初は緩やかで、入口の看板から階段が始まり霧に包まれて今自分がどの高さまできたか上が見えません。言えることは人、地、天と上がはるか遠くにあることだった。

テレビで読まれる

泉が涸れるまで自分の持っているものを出し切った先に出て来るものが本物と信じて数多く詠むことにしていた。
朝ドラを見て吟行気分で四~五句を課して詠んでいたが投稿の成績が上がらない。季題の変換間違いをしたり、季重なりをおかしたりと自信を失いかけていた。
諦めかけていた2019年末に突然の電話!NHK俳句 さんからでした。
「NHKです。紫雲英さんご本人様ですか」
「はい!」
「【ぽくぽくと八幡様へゆく春着】オリジナルで未発表句ですね?」
「正月の放送です」と言われたような気がする。
こ踊りし舞い上がった句がこれです。
特選二席に選ばれた時の「NHK俳句」です。ご覧ください。



姉が施設で暮らしている。年越しの挨拶に行った折に自分が今年の最後だろうと、油断して
「お正月に入選して放送されるから見て」
と言ったらその後、妹に話したからLINEにおめでとうが正月前から一杯になった。

オノマトペの畳語を俳句に

   ぽくぽくと八幡様へゆく春着
   のこのことこの子ここのこきのこやま
   ぴょんぴょんと鮫の頭の橋渡し

2020年特選に選ばれた句も文芸選評で読まれた句なども、オノマトペは使わないと決めていたが使ってしまった句だった。
パソコンを触り始めた時から畳語を使った方言をホームページで発表していて、畳語から離れられなくなっていたようだ。
畳語を使うと軽薄に見えるが語彙力がない私には難語を連ねた句は詠めない事と、違う語彙を使って言い回しはできないかと考えてみるがリズム感は畳語が最適でやはり今後も使って詠んでいく。

2018年の入選句集です

2019年の入選句集です。



2020年前半の入選句集です。


2020年後半の入選句集です。


このページは半年ごとに改定していきます。
さてどうなることやら?





 

1/31/2021

新歳時記より 2021-01


新歳時記より 2021-01
 


1/1 
一月(いちぐわつ)
   一月やペダルの軽き湖畔道
去年今年(こぞことし):今年・去年・旧年
   資料の山机の狭き去年今年
元日(ぐわんじつ)
   元日やルーチンどおり事の済み
1/2
新年(しんねん):新玉の年・年改る・年立つ・新歳・年頭・初年・年迎ふ・御代の春・明の春・今朝の春
   新年の祝辞が長さ髭の人
元朝(ぐあんてう):歳旦
   元朝や親父も早く起きて待つ
初鶏(はつとり)
   初鶏が啼けど冷たき曇り空
1/3
初鴉(はつがらす)
   初鴉啼かず止まらず横切りて 
初雀(はつすずめ)
   鉄塔の身を寄せ合ひて初雀 
初明り(はつあかり)
   うつばりの影を映して初明り 
初日(はつひ):初日の出・初日影
   初日の出練り声高き迎え凧 
1/4 
初空(はつぞら):初御空・初東雲・初茜 波の上紺碧の濃き初御空 初富士(はつふじ)
   初富士を写す湖畔のタイヤ音 
初凪(はつなぎ)
   初凪や対岸回る観覧車 
御降(おさがり)
   御降やこたつの外の薄着かな 
1/5 
若水(わかみづ):若井(わかゐ)
   縮こまり釣瓶おとして若水よ 
初手水(はつてうづ)
   初手水頭も痺れそそくさと 
乗初(のりぞめ):初汽車・発電車
   乗り初めやいつもと変わらぬ駆け込み 
白朮詣(おけらまゐり):白朮火・火縄売
   くるくると白朮詣のすれ違い 
1/6 
初詣(はつまうで)
   冷えて頬記念写真が初詣 
破魔弓(はまゆみ):はま矢
   破魔弓や座らず遠く眺めけり 
歳徳神(としとくじん):歳徳・年神
   隙間風歳徳神も揺れにけり 
恵方詣(えほうまゐり):恵方
   初打も右に曲がりて恵方かな 
1/7 
七福神詣(しちふくじんまゐり):七福詣・福神詣
   七人おめかし七福神詣 
延壽祭(えんじゅさい)
   延壽祭拝受盃一献す 
四方拝(しほうはい)
   風とまり占みて青空四方拝 
朝賀(てうが):拝賀・参賀
   不自由もおして行きたし賀かな 
1/8 
年賀(ねんが):年始・年禮・廻禮
   黒お盆年賀のタオル赤刺繍 
御慶(ぎょけい)
   友達もいずまい正し御慶かな 
禮者(れいじゃ)
   細い道影を伸ばして禮者来る 
禮受(れいうけ)
    禮受や座布団もなく手をこすり 
名刺受(めいしうけ)
   丁寧に礼の相手や名刺受 
1/9 
禮帳(れいちやう)
   禮帳へ今年最初の筆で名 
年玉(としだま):年贄・お年玉 
   小遣いと変わらぬ額がお年玉 
賀状(がじやう):年賀状
   目に見えて高さが変わる年賀状 
初便(はつだより) 
   初便かなしきことの無き証 
1/10 
初暦(はつごよみ)
   新しきことがありそな初暦 
初刷(はつずり)
   初刷の未来予想図幼き日 
初竃(はつかまど):焚初
   杉の葉がかをり吹き出て初竃 
大服(おほふく):大福・福茶
   大服やかをり新し古茶碗 
屠蘇(とそ)
   あと幾つ鼻につく屠蘇味しるや 
1/11 
ごまめ:田作・小殿原
   まっすぐを探せど何処ごまめかな 
数の子(かずのこ)
   数の子や唯一食わぬ高きもの 
切山椒(きりざんせう)
   切山椒お茶とおしゃべり姉の友 
門松(かどまつ):松飾・竹飾
   松飾鼻を邪魔してマーキング 
1/12 
年酒(ねんしゅ)
   盃の波年酒に浮かぶ鶴亀よ 
雑煮(ざふに)
   大声で雑煮の餅が増えて朝 
太箸(ふとばし):柳箸・箸紙
   去年に逝く一膳余り祝い箸 
歯固(はがため)
   歯固や翁の顎に鹿の脛 
食積(くひつみ):重詰(ぢゆうづめ)
   食積や作り置く技味避けて 
1/13 
飾(かざり):お飾・輪飾・飾海老
   輪飾を焼きはせぬかと竈かな 
注連飾(しめかざり)
   締め付けて釘も新し注連飾 
飾臼(かざりうす):臼飾
   浮つかず微動だにせず飾臼 
鏡餅(かがみもち)
   大きさも父が収入鏡餅 
蓬莱(ほうらい):掛蓬莱
   蓬莱や今は聞こえぬ汽笛かな 
1/14 
歯朶(しだ):山草・穂長・裏白・諸向
   歯朶枯れて人の行き来も一休み 
楪(ゆづりは)
   楪や古希を迎えて孫に次ぐ 
野老(ところ):萆薢
   仰ぐ山髭取せはし野老掘る 
穂俵(ほだはら):なのりそ・ほんだはら
   穂俵や漂う住処小魚追ふ 
1/15 
福寿草(ふくじゆさう)
   砂利交じりぐぐと掻き分け福寿草 
福藁(ふくわら)
   福藁や乗るなさわるな福来れぬ 
春着(はるぎ)
   あげおろし春着艶やか立ち姿 
手毬(てまり):手毬つき・手毬唄
   母編みてケースに鎮座手毬かな 
1/16 
独楽(こま)
   馴染まない新しき紐独楽廻し 
追羽子(おひばね):遣羽子・揚羽子・逸羽子・懸羽子
   追羽子や数え続かず強き風 
羽子板(はごいた):胡鬼板・飾羽子板
   羽子板を母に抱かれて写しけり 
羽子(はね):つくばね・胡鬼の子
   こーんこん吾子ら続けて羽子の音 
1/17 
福引(ふくびき):寶引
   福引の紐の行く先隠す紙 
歌留多(かるた):歌かるた
   歌留多とり孫の手はやき丸覚え 
双六(すごろく)
   目が出ない終われ双六夕餉待つ 
絵双六(えすごろく):陞官双六・道中双六・役者双六
   絵双六出して従妹を迎えけり 
1/18 
十六むさし(じゅうろくむさし)
   負け続き十六むさし放り投げ 
投扇興(とうせんきょう)
   白扇や婿披露投扇興 
萬歳(まんざい):才蔵
   萬歳が言祝ぎ使ひ句を作り 
猿廻し(さるまわし):猿引
   猿廻し年々段の高さかな 
獅子舞(ししまひ):獅子頭・太神楽
   獅子舞や御幣追ひて見得を切り 
1/19 
傀儡師(くわいらいし):くぐつ廻し・でく廻し・夷廻し・傀儡女
   傀儡師ぞろりと出でて隣村 
笑初(わらひぞめ)
   忘れ物記憶発見笑初 
泣初(なきぞめ):初泣
   泣初や硬貨欲しいと札を見せ 
嫁が君(よめがきみ)
   膳揃ふうつばねの上嫁が君 
1/20 
二日(ふつか)
   鴨揺れて二日の伊目の強き風 
掃初(はきぞめ):初箒
   掃初門から玄関下駄の跡 
書初(かきぞめ):筆初・吉書
   書初めや去年より太き筆握り 
読初(よみぞめ)
   読初や行きつ戻りつ一頁 
1/21 
仕事始(しごとはじめ):事務始・鞴始・農始
   けふからと仕事始のパチンコ屋へ 
山始(やまはじめ):初山
   山始山は静かに迎えけり 
鍬始(くわはじめ):鋤始・農始
   乾ききり土固まりて鍬始 
織始(おりはじめ):機始・初機
   一礼のぱたんとひとつ織始 
1/22 
縫初(ぬひぞめ):初針
   縫い初めや立ててくけ台生地の艶 
初商(はつあきない)
   初商や算盤が気合入れ 
売初(うりぞめ):初売
   売初やシャッター街の下駄の音 
買初(かいぞめ):初買
   買初や赤い色したタッチペン 
1/23 
初荷(はつに):初荷馬・初荷船
   立てて旗墨痕太く初荷かな 
飾馬(かざりうま)
   風すさぶ幟が揺らし飾馬 
初湯(はつゆ):初風呂
   眠り落つ赤子浮かべて初湯かな 
梳初(すきぞめ)
   梳初や今宵の枕柔らかき 
結ひ初(ゆひぞめ):初結
   結ひ初し短き母のほつれ髪 
初髪(はつがみ)
   初髪を結うたばかりの風強し 
初鏡(はつかがみ)
   当たり年皺を数えて初鏡 
稽古始(けいこはじめ):初稽古
   身震いて稽古始が太鼓鳴り 
1/24 
謡初(うたひぞめ)
   息揃え障子のびびり謡初 
弾初(ひきぞめ):初弾・琴始
   宵闇へもれて弾初垣根越し 
舞初(まひぞめ)
   舞初のぱちんと白き扇かな 
初句会(はつくくわい)
   練りに練り初句会へ披露せど 
初芝居(はつしばゐ)
   紙吹雪めでためでたの初芝居 
宝船(たからぶね)
   吾子望むケーキのかをり宝船 
初夢(はつゆめ)
   初夢や追ひて届かず待つつづき 
三日(みっか)
   後家暮らしゲートボールへ三日かな 
松囃子(まつばやし)
   眠気除け祢宜が手拍子松囃子 
1/25 
福沸(ふくわかし)
   わが夫の歩みゆるやか福沸 
三ヶ日(さんがにち)
   新品のセーターを着て三ヶ日 
御用始(ごようはじめ)
   鍵開けて御用始へどっと来て 
帳綴(ちやうとぢ):帳書・帳始
   筆に墨開けば白し御帳綴 
女礼者(をんなれいじや)
   凪ぎて午後女礼者田んぼ道 
騎初(のりぞめ):騎馬始・馬場始・初騎
   騎初やまずは一勝馬場もよし 
弓始(ゆみはじめ):初弓・的始・射場始・弓矢始・射初
   弓始風おさまりて射場の音 
出初(でぞめ)
   街道の兄の顔あり出初式 
1/26 
寒の入(かんのいり):寒固
   閉め忘れ窓に隙あり寒の入り 
小寒(せうかん)
   小寒や雲一面の冷たさよ 
寒の内(かんのうち)
   日も差さず歩く速さや寒の内 
寒の水(かんのみづ)
   ごくごくと喉痛き程寒の水 
寒造(かんづくり) 
   寒造唄の響きや仕込み樽 
寒餅(かんもち)
   寒餅や父帰るや否や杵を上げ 
寒紅(かんべに):丑紅
   寒紅をひきて女の老けて様 
寒詣(かんまいり):裸参
   寒詣マスクに隠し紅省き 
寒垢離(かんごり):寒行
   寒垢離や槍の滝水肌に刺す 
寒念佛(かんねぶつ)
   細き道続きて長き寒念佛 
1/27 
寒施行(かんせぎょう):穴施行・野施行
   過疎化村猪も来るとは寒施行 
寒灸(かんきう)
   ロンドンへ寒灸をうつパックなり 
寒稽古(かんげいこ)
   滑る足水に打ち込み寒稽古 
寒復習(かんざらひ)
   鼓打つ姿勢凛々しや寒復習 
寒弾(かんびき)
   寒弾や肘から冷えて撥持つ手 
寒聲(かんごえ)
   寒聲や薬局にあり喉の飴 
寒見舞(かんみまひ)
   元気だと答えてみせる寒見舞 
寒卵(かんたまご)
   藁の蔭まだあた寒卵
 寒鯉(かんごひ)
   寒鯉や日長一日煮崩れて 
1/28 
寒鮒(かんぶな):寒鮒釣
   寒鮒や針避け舐めて温し底 
寒釣(かんづり)
   寒釣や日向にゐては釣れもせず 
七種(ななくさ)
   七種やフリーズドライ味付けて 
若菜(わかな):若菜摘
   風すさぶ堤防の影若菜摘 
薺(なづな):薺摘
   天竜川法面温き薺摘 
薺打つ(なづなうつ):七種打つ・七種はやす
   薺打つ唯一唄う母の聲 
人日(じんじつ)
   人日の襞スカートの寝押しかな 
七種粥(ななくさがゆ):薺粥
   朝寝坊七種粥の餅もとけ 
粥柱(かゆばしら)
   横カバン朝は行き舞ふ粥柱 
1/29 
寝正月(ねしやうがつ)
   おさんどん寝正月と決めつつも 
鷽替(うそかへ)
   鷽替や煙か湯気か人の波 
小松引(こまつびき):子の日の遊・初子の日
   息切らし富士を眺めて小松引 
初寅(はつとら):福寅・畚下し
   初寅や花は未だかと御社へ
 初卯(はつう):卯の札
   御神木青々として初卯かな 
初薬師(はつやくし)
   仁王様またくぐらせて初薬師 
初金毘羅(はつこんぴら)
   初金毘羅籠に揺られて海の色 
十日戎(とをかえびす):初恵比須・複笹・戎笹・吉兆
   十日戎前へ後ろへ二度拝み 
寶恵籠(ほゑかご):戎籠
   寶恵籠片袖垂れて踊る雪 
春場所(はるばしょ):一月場所・正月場所
   春場所や肩をすかして翠富士 
餅花(もちばな):繭玉
   餅花や街道に見せ色眩し 
土龍打(もぐらうち)
   風に揺れ声張り上げて土龍打 
綱曳(つなひき)
   月真上挑む綱曳街動く 
松の内(まつのうち)
   納期ある急かず焦らず松の内 
松納(まつをさめ)松取る・門松取る
   残業の日々の始まり松納 
飾納(かざりをさめ)飾取る・注連取る
   八幡様飾納の人まばら 
1/30 
注連貰(しめもらひ)
   家々へ吾子も声して注連貰 
左義長(さぎちやう)とんど・どんと・吉書揚・飾り焚く
   左義長や書初めの火は梢越し 
鳥總松(とぶさまつ)
   武蔵野や昔の住処鳥總松 
松過(まつすぎ)
   松過ぬ嫁ぐ日近し夜の琴 
小豆粥(あづきがゆ)
   窓の雪鍋ほんのりと小豆粥 
藪入(やぶいり)養父入り・里下り・宿下り
   藪入や下駄の音高しアーケード 
凍る(こほる)冱てる・凍土(いてつち)
   吐く息の鶴の嘴凍る夜 
冴ゆる(さゆる)風冴ゆる・鐘冴ゆる・月冴ゆる
   残る芯冴ゆる港の赤テープ 
三寒四温(さんかんしをん)
   蒲団剥ぐ三寒四温の温い日 
悴かむ(かじかむ)
   ハンドルを悴かむ片手ポケットへ 
胼(ひび)胼薬
   胼割れて白き指先紅滲み 
皸(あかぎれ)
   皸やかいがらむしの熱さかな 
霜焼(しもやけ)凍傷・霜腫
   色白な耳の霜焼け紅の色 
霰(あられ)玉霰
   ばらばらとトタンに霰奏でけり 
風花(かざはな)
   風花や吾子手をかざしポチの如 
雪見(ゆきみ)
   天気図や雪見誘ふスタッドレス 
雪掻き(ゆきかき)排雪車・ラッセル車・除雪夫
   音も無く左右へどかしラッセル車 
雪卸(ゆきおろし)
   後積もり降ろしても降ろし雪降ろし 
雪踏(ゆきふみ)
   雪踏みて母の迎えの帰り道 
雪まろげ(ゆきまろげ)
   大きくなれ共に転がり雪まろげ 
雪合戦(ゆきがつせん)雪遊
   校庭へ陣地造りも雪合戦 
雪礫(ゆきつぶて)
   陣地影お尻も出さじ雪礫 
雪達磨(ゆきだるま)雪兎・雪佛
   母ひ弱小さき頭雪達磨 
竹馬(たけうま)
   庇より高き竹馬のし歩き 
スキー
   操れぬスキー飛び込むリフト待ち 
雪車(そり)橇・雪舟・犬橇(のそ)・手橇
   しゃんしゃんと鈴ぶら下げて雪車の来て 
雪沓(ゆきぐつ)藁沓・深沓・爪籠
   夕焼けや雪沓きしむ帰り道 
かんじき 樏・橇(かんじき)
   かんじきや股上げ登り胸の丈 
しまき 雪しまき
   雪しまき赤いランプが消防車 
凍死(とうし)吹雪倒れ
   口々に凍死はおんな邨の口 
雪眼(ゆきめ)雪眼鏡
   雪眼鏡歯元美し指導員 
雪女郎(ゆきぢよらう)雪女
   雪女郎誰を待つやら邨の口 
雪折(ゆきをれ) 
   雪折の届き枕辺ひとり閨 
雪晴(ゆきばれ) 
   雪晴や棚田の畦に空の青 
氷(こほり)厚氷・氷面鏡(ひもかがみ)
   揺れもせず浮かぶ氷の行く流れ 
氷柱(つらら)垂氷(たるひ)
   尖がりし下の恐さや伸ぶ氷柱 
採氷(さいひよう)
   採氷や村の名前の懐かしき 
砕氷船(さいひようせん)
   昭和基地旗は日の丸砕氷船 
氷下魚(こまい)氷下魚釣る
   叩く数氷下魚炙るや男子寮 
スケート 氷滑り
   人流れスケート場のワルツかな 
避寒(ひかん)避寒宿
   開く窓鯨潮吹く避寒宿 
寒月(かんげつ)
   寒月や谺返してビルの谷 
寒の雨(かんのあめ)
   夕灯隙間拡げて寒の雨 
寒燈(かんとう)冬灯し
   揺れも無き村外れ建ち冬灯 
水餅(みづもち)
   顔写す水餅の甕皺もなく 
煮凝(にこごり)凝鮒
   プルプルと煮凝溶けて昼の飯 
氷豆腐(こほりどうふ)高野豆腐・寒豆腐
   鰹だし氷豆腐の滲み出で 
氷蒟蒻(こほりごんにやく)
   天に月氷蒟蒻照り返し 
寒天造る(かんてんつくる)
   つるつると寒天造るかじかむ手 
寒曝(がんざらし)寒晒
   高く撒く赤くて広く寒曝 
凍鶴(いてづる)
   天に啼き凍鶴が息いと白き 
寒鴉(かんがらす)
   空にゐて愉快コメント寒鴉 
寒雀(かんすすずめ)
   寒雀丸く膨らむ屋根の上 
1/31 
凍蝶(いててふ)
   凍蝶やしばらく見えて難治かな 
初観音(はつくわんおん)
   連れ立ちて初観音櫓の軋み 
千両(せんりやう)
   千両の溢して粒の水に映え 
萬両(まんりやう)
   築山や萬両が孫そこここに 
藪柑子(やぶかうじ)
   盆栽や実の二つ三つ藪柑子 
青木の實(あをきのみ)
   荒れる風靑葉隠して青木の實 
寒牡丹(かんぼたん)
   温きときこもから覘く寒牡丹 
葉牡丹(はぼたん)
   店じまい残る葉牡丹我を待つ 
寒菊(かんぎく)冬菊
   ふくむ筆寒菊囲む海静か 
冬薔薇(ふゆさうび)寒薔薇・冬ばら
   触れずとも凛と冷たき冬薔薇 
水仙(すゐせん)
   かぜ緩む水仙の咲く土手温し 
冬の草(ふゆのくさ)冬草
   無残なりフェンス工事が冬の草 
龍の玉(りゆうのたま)龍の髭の實
   細葉下冷たく光る龍の玉 
寒竹の子(かんちくのこ)
   寒竹の子出陣式が銃の先 
冬苺(ふゆいちご)
   陽光の一枚脱ぎて冬苺 
麥の芽(むぎのめ)
   麥の芽や一陣越して畝の列 
寒肥(かんごえ)
   身を縮め寒肥も舞ふ西の風 
石蓴(あをさ)あをさ汁
   朝餉には潮のかをりやあをさ汁 
初大師(はつだいし)初弘法
   初大師小走り渡り吾子の頬 
大寒(だいかん)
   しみじみと大寒の道小銭なる 
厳寒(げんかん)酷寒
   厳寒やフロントガラスお湯かけて 
初天神(はつてんじん)天神花・天神旗
   初天神凧もお面も並び待ち 
日脚伸びる(ひあすのびる)
   まめしなべ転がり止まり日脚伸ぶ 
早梅(さうばい)
   あの家の早梅未だか閨の妻 
臘梅(らふばい)唐梅
   臘梅とアルツハイマー教えし師 
寒梅(かんばい)冬の梅・寒紅梅
   寒梅を写してカメラこわばる手 
探梅(たんばい)探梅行
   探梅や愛でる暇なき風の冷え 
冬桜(ふゆざくら)寒桜
   咲き続け忘れて季節冬桜 
寒椿(かんつばき)
   空っ風早く太れと寒椿 
侘助(わびすけ)
   侘助や竹の切り口開く白 
寒木瓜(かんぼけ)
   寒木瓜や指で弾くや幼稚園 
室咲(むろざき)室の花・室の梅
   喫茶店ドアー開ければ室の花 
春待つ(はるまつ)
   さいはての春待つ岬風やまず 
春隣(はるとなり)
   反り返り犬の背伸びや春隣 
節分(せつぶん)
   節分の一日早き今年かな 
柊挿す(ひひらぎさす)
   柊挿す硬くて母や鬼の顔 
追儺(つゐな)なやらひ・鬼やらひ
   父先頭紋付き袴追儺かな 
豆撒(まめまき)年男・年の豆
   豆撒や畳打つ豆みかん飛ぶ 
厄落(やくおとし)
   饒舌なあにき素通り厄落 
厄拂(やくはらひ)
   煌々と上弦の月約拂 
厄塚(やくづか)
   積み上げて雪の厄塚白けむり 
和布刈神事(めかりしんじ)和布刈禰宜・和布刈桶
   海に入る奥歯ガチガチ和布刈禰宜

虚子編新歳時記より各季語で一句詠んでみました。