9/20/2021

今日の季語 2020-02


牡蠣剥(かきむ)く
    殻放る白き軍手が牡蠣を剥く
春待つ(はるまつ)
    春待つも冷たき鳴るやけふの雨
追儺(ついな)
    父の背や追儺が列をそつと見て
立春(りっしゅん)
    立春や一粒があり座敷かな
堅雪(かたゆき)
    堅雪や昨夜が句会下駄の跡
栄螺(さざえ)
    禄剛の日差しをうけて栄螺丼
焼野(やけの)
    踏み入ればふわりと舞うや焼野かな
遅春(ちしゅん)
    偏西風へそ曲げ寒し遅春かな
凧(たこ)
    縛り忘れ糸は出てゆく凧はゆく
海苔掻き(のりかき)
    海苔掻きや手口目耳と波の息
二月(にがつ)
    餅もなくパンがおいしい二月かな
菜の花忌(なのはなき)
    ゆったりと暗闇帰る菜の花忌
鶯餅(うぐいすもち)
    白餡を鶯餅に包む母
白魚(しらうお)
    半透明白魚泳ぐガラス鉢
絵踏(えぶみ)
    壁飾る黒づむまわり絵踏かな
種芋(たねいも)
    芽を出さぬ日待つ種芋土の中
春淡し(はるあわし)
    墨香るけふから習ふ春淡し
藪椿(やぶつばき)
    古より丘に一本藪椿
雨水(うすい)
    教室の書初め外す雨水かな
田螺和(たにしあえ)
    薄曇りバケツ一杯田螺和
梅(うめ)
    いつ咲かぬ梅戸惑いし温し日々
春の鹿(はるのしか)
    足並みを揃えて奈良へ春の鹿
蜆汁(しじみじる)
    味噌の香に負けたり今朝の蜆汁
春の空(はるのそら)
    彼女去る堤が上春の空
剪定(せんてい) 
    自分流剪定鋏いれ過ぎて
春の土(はるのつち)
    やわらかく鍬を迎える春の土
白子干(しらすぼし)
    白子干いきが良いやつこぼれ出て
春炬燵(はるごたつ)
    靴下脱げ春炬燵の脚脛毛抜け
古巣(ふるす)
    電線鳴く鴉が古巣声合わし

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今日の季語 2020-01



初東雲(はつしののめ)
    列なして初東雲が坂登り
初夢(はつゆめ)
    初夢や叶わぬ体跳び廻る
雑煮祝ふ(ぞうにいわう)
    焦げ目つけ三つ葉もかをる雑煮かな
鏡餅(かがみもち)
    搗きあがる鏡餅より丸めたり
破魔弓・浜弓(はまゆみ)
    ガラス拭く破魔弓奏でオルゴール
小寒(しょうかん)
    小走りて小寒の朝ゴミ袋
松納(まつおさめ)
    今日からは元の生活松納め
寒鯉(かんごい)
    寒鯉や傾き泳ぐ狢川
手毬(てまり)
    母は巻くガラスケースへ手毬かな
重ね着(かさねぎ)
    重ね着て健やか素振り痩せ身かな
新海苔(しんのり)
    新海苔や昔が香る朝餉かな
寒風(かんぷう)
    寒風やたたく雨戸は不審者か
氷柱(つらら)
    洞窟の氷柱半分折れていて
粥施行(かゆせぎょう)
    列の先湯気立ち上る粥施行
風巻(しまき)「雪しまき」「しまき雲」
    雪しまき灯す一部屋揺れし影
湯冷(ゆざ)め
    読み終えて蒲団引っぱる湯冷めかな
寒土用(かんどよう)
    波打ち際音も聞こえぬ寒土用
凍滝(いてだき)
    凍滝や記事に誘われ山入れど
紙漉(かみすき)
    天井へ雪光さす紙漉場
大寒(だいかん)
    底冷え無し手も温かき大寒日
寒鴉(かんがらす)
    一羽だけ夕空西へ寒鴉
冬深し(ふゆふかし)
    直立し物みな硬し冬深し
狩人(かりうど)
    脱走獣狩人の銃街に出る
鎌鼬(かまいたち)
    身構えて指先念じ鎌鼬
寒蜆(かんしじみ)
    寒蜆じやりといわぬ噛み心地  
葉牡丹(はぼたん)
    葉牡丹や三年ぶりの四人組 
霜(しも)
    霜よけのプロペラ光るお茶畑
昴(すばる)
    我はゆく昴流るるレコード屋
氷湖(ひょうこ)
    お元気ですか幸せですか氷湖にて
臘梅・蠟梅(ろうばい)
    昇る陽や花弁透ける蠟梅よ
手足荒(てあしあ)る
    新妻や主婦に変わりて手足荒る

今日の季語 2019-12



火の番(ひのばん)
    上弦や遠くから響く火の番の柝
日向ぼこ(ひなたぼこ)
    愛犬と背に受け読書日向ぼこ
冬の雨(ふゆのあめ)
    温暖化激し降りでも冬の雨
屏風(びょうぶ)
    屏風美人顔を背けてあがりはな
海豚(いるか)
    水平線海豚は跳ねるシルエット
牡蠣(かき)
    羽根の味焦げた小麦粉牡蠣ソテー
大雪(たいせつ)
    一人減る大雪の日電話かな
笹鳴(ささなき)
    生垣や笹鳴わたる影ひとつ 
ならい
    ならいやむ風紋かわる中田島
    横に越すホイールカバーならい追ふ
冬景色(ふゆげしき)
    風荒るる風紋流る冬景色
水洟(みずばな)
    正常に観察出来ぬ水洟よ
冬の浜(ふゆのはま)
    ランデブー鳥舞い上がる冬の浜
鴛鴦(おしどり)
    鴛鴦や前に後ろとかごのなか
冬の服(ふゆのふく)
    いつまでもはたけば匂ふ冬の服
雪吊(ゆきつり) 
    照らし出す雪吊白き今朝の庭
葱鮪(ねぎま)
    味噌仕立て丼どんと葱鮪かな
歳暮祝(せいぼいわい)
    初めての歳暮祝は忙しくも
歳暮祝(せいぼいわい)
    初めての歳暮祝は忙しくも
冬の空(ふゆのそら)
    白き雲浮かびて流る冬の空
枯葉(かれは)
    枯葉舞う十字路真ん中人を待つ
賀状書く(がじょうかく)
    賀状書くだけの友また一人減り
潤目鰯(うるめいわし
    服へにも潤目鰯の煙染む
冬至(とうじ)
    冬至の朝鋏をいれる冷たい実
名の草枯る(なのくさかる)
    蔦枯るや変わらぬ配置寺の紅
ポインセチア
    ポインセチア在庫一掃模様替え
聖菓(せいか)
    食べてみるチョコのカード聖菓かな
年の瀬(としのせ)
    年の瀬や子年が暦土管積み
社会鍋(しゃかいなべ)
    暗闇に囲む人いる社会鍋
冬の星(ふゆのほし)
    きらめく赤梢の上に冬の星
古日記(ふるにっき)
    コーラス部声の変わりが古日記
年惜しむ(としおしむ)
    片付けの煙真っ直ぐ年惜しむ

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今日の季語 2019-11



吊し柿(つるしがき)
    吊し柿甘さますます空の青
初猟(はつりょう)
    初猟や散弾の雨屋根鳴らす
文化の日(ぶんかのひ)
    戦争放棄理念薄れる文化の日
秋寂ぶ(あきさぶ)
    秋寂ぶや廊下磨かる糠袋
雪迎へ(ゆきむかえ)
    羽風のり朝日に伸びる雪迎へ
酸橘(すだち)
    評価にはあまりの酸味酸橘かな
秋惜しむ(あきおしむ)
    屋上や緑少なし秋惜しむ
立冬(りっとう)
    目に余る食い溜め腹が今朝の冬
鯛焼(たいやき)
    行列に加わり並ぶ鯛焼屋
木の葉(このは)
    木の葉山一際紅く栞かな
雑炊(ぞうすい)
    雑炊に汁も残らぬけふの鍋
木菟(みみずく)
    木菟や今宵の居間が静かなり
冬浅し(ふゆあさし)
    冬浅し繕へどもう履けぬ足袋
縄跳(なわとび)
    輪に入れる一人縄跳大夕日
河豚(ふぐ)
    河豚提灯食べられし后ひと仕事
茶の花(ちゃのはな)
    刈り込まれ中へひっそりとお茶の花
茶の花(ちゃのはな)
    刈り込まれ中へひっそりとお茶の花
柳葉魚(ししゃも)
    七輪の火加減よろし柳葉魚焼く
鷹(たか)
    目指しゆく野原の枯木鷹は待つ
泥鰌掘(どじょうほ)る
    スコップが羊羹如き泥鰌掘る
寝酒(ねざけ)
    寝酒酌むひと時なくも眠りつき
大根(だいこん)
    大根や容易く抜きぬ太くとも
冬の影(ふゆのかげ)
    夏よりも背が高くなり冬の影
小雪(しょうせつ)
    小雪や風呂敷を抱く黒コート
冬眠(とうみん)
    睡魔襲う冬眠のごと入る蒲団
咳(せき)
    すり足で障子がむこう咳ひとつ
巻繊汁(けんちんじる)
    パワーシャベル巻繊汁や人の波
霜月(しもつき)
    雲覆う霜月の朝砂利を踏む
都鳥(みやこどり)
    汽車囲む餌付けが時間都鳥
柿落葉(かきおちば)
    先に降りふわり待ち受け柿落葉







今日の季語 2019-10



赤い羽根(あかいはね)
    おもはゆし小銭が響く赤い羽根
草の穂(くさのほ)
    草の穂の下にみつけぬ我が道よ
落鮎(おちあゆ)
    落鮎や縄張り捨てり旅支度
秋暁(しゅうぎょう・あきのあかつき)
    秋暁や動くものみな静かなり
雁渡し(かりわたし)
    幟立つ祭りの朝は雁渡し
とんぶり
    未だ知らぬとんぶり茶漬け有りや否
秋澄(あきす)む
    騎馬戦や埃おさまり秋澄みぬ
寒露(かんろ)
    目覚め床寒暖混じる寒露かな
薄紅葉(うすもみじ)
    気がつけば仄かな今朝の薄紅葉
無花果(いちじく)
    未だ温し無花果を捥ぐ門の先
身に入(し)む
    身に入むや留守電残る妻が声
鵙・百舌(もず)
    さる踊る幟の天辺鵙の声
菊膾(なます)
    すすむ箸母がおもかげ菊膾
檸檬(れもん)
    ラガー逹檸檬の山を越し次へ
烏瓜(からすうり)
    夕映えに朱き色ます烏瓜
薯蕷汁(とろろじる)
    奉行なり父があれこれ薯蕷汁
夜業(よなべ)
    位置変わる土間が明るく夜業かな
秋日和(あきびより)
    長袖が鍛冶屋の炎秋日より
水澄む(みずすむ)
    水澄みて鮒ひとまわり針の餌
残る虫(のこるむし)
    寂しくも音色正しく残る虫
海蠃廻し(ばいまわし)
    左利き紐巻覚ゆ海蠃廻し
秋深(あきふか)し
    即位の礼しずしず進む深き秋
啄木鳥(きつつき)
    おびただし啄木鳥は彫る枯大木
霜降(そうこう)
    霜降や朝日の透る白き道
鶴来る(つるきたる)
    鶴が来る湖水入れ換え底が見え
菊人形(きくにんぎょう)
    どこからも眼差しあわぬ菊人形
花畑(はなばたけ)
    新聞へ載りて存在花畑
栗飯(くりめし)栗ご飯
    おまちどう年に一度が栗ご飯
末枯(うらがれ)
    末枯や愛でしものとも別れゆく 
胡桃(くるみ)
    姫胡桃登り始めた栗鼠の頬




今日の季語 2019-9



風の盆(かぜのぼん)   
     風にも君の香偲ぶ風の盆
荻の声(おぎのこえ)「荻の風」「荻吹く」
    まがりみち追い越していく荻の風
秋(あき)めく「秋づく」「秋じむ」
    草縛る秋めく道の罠の跡
衣被(きぬかつぎ)
    笊いっぱい茹でたて捧ぐ衣被
鶺鴒(せきれい)
    鶺鴒や距離確かめ振り返り
霧(きり)
    年一度浮き立ちカメラ朝の霧
芭蕉(ばしょう)
    芭蕉が影陽射し逃れて蟻もいて
白露(はくろ)
    白々と散歩がつとめ白露踏む
葡萄(ぶどう)
    歯がしみる冷凍葡萄舌の上
女郎花(おみなえし)
    迎え待つホーム短し女郎花
秋の蝶(あきのちょう)
    余裕あり翅緩やかな秋の蝶
待宵(まつよい)
    家事かまけ待宵気分阻む壁
月見(つきみ)
    月見たり荒野の果てに昇らんと・
小鳥(ことり) 「小鳥くる・小鳥渡る」
    小鳥来る今朝の餌場囀りぬ
白粉花(おしろい・おしろいばな)
    白粉花やもめ屋敷が好みらし
秋の灯(あきのひ)
    秋の灯に記す手帖は単価のみ
馬肥(うまこ)ゆ
    馬肥ゆる道一筋草原へ
菊(きく)
    菊造り母の趣味飽き蘭育て
鳥威(とりおどし)
    鳥威背にし縄張り見張りたり
われから
    水さわぐわれから揺れるめだかかな
初鴨(はつかも)
    空映す初鴨おりし荒れ野池
鰯雲(いわしぐも) 
    トライなるポールを見せる鰯雲
秋分(しゅうぶん)
    色濃くす秋分の雨裾の色
鯊(はぜ)
    餌が前へ近眼の鯊飛びつきぬ
竜淵に潜む(りゅうふちにひそむ)
    水鎮まる竜淵に潜む丸い石
稲架(はざ・はず)
    組み上げし稲架より飛ばすグライダー
秋麗(あきうらら・しゅうれい)
    転移なし富士山見えてあきうらら
太刀魚(たちうお・たちのうお)
    銀光り振り回したし太刀魚よ
竜胆(りんどう)
    竜胆摘む草原変わる大型店
濁酒(にごりざけ)
    ゆき付けりいろいろ試飲濁酒



今日の季語 2019-7



梔子の花(くちなしのはな)
    道すがら梔子の花垣根越し
梅雨雷(つゆかみなり)
    遠くから待つ音が来る梅雨の雷
風鈴(ふうりん)「風鈴売」
    騒がしく風鈴売が田舎道
葭切(よしきり)「行々子(ぎょうぎょうし)・大葭切・小葭切」
    鳴き声や葭切一羽飛ぶ河原
アロハシャツ「アロハ」
    アロハシャツ行ったり来たり門の前
朝顔市(あさがおいち)
    朝顔市手をあげる吾子背比べ
小暑(しょうしょ)「晩夏・暑中」
    レース傘小暑の道他人なり
雨蛙(あまがえる)
    雨蛙田んぼ星降る大合唱
四万六千日(しまんろくせんにち)「鬼灯市(ほおずきいち)」
    テレビでは鬼灯市は雨知らず
蛞蝓(なめくじ)「なめくぢり・なめくぢら」
    ぬめり跡なめくじ登るガラス窓
胡瓜(きゅうり)
    書き取り帳胡瓜で覚ゆ爪に点
夏料理(なつりょうり) 
    赤青とそうめん子らに夏料理
井守・蠑螈(いもり)「赤腹」
    触られぬいもりが腹の毒々し
蟹(かに)「沢蟹・川蟹」
    沢蟹や逃げ足速し重い石
羽抜鳥(はぬけどり)
    羽抜鳥歩きその先飛び立ちて
閻魔参(えんままいり)
    閻魔参ベビーブームが出口数
海月(くらげ)
    潮満ちる海月が知らす流れかな
夏帽子(なつぼうし)「麦藁帽(むぎわらぼう)・パナマ帽」
    麦藁帽子顎紐しめて坂降りん 
時計草(とけいそう)
    ガラス靴鐘が休みと時計草
浴衣(ゆかた)
    注染が色涼しげな浴衣かな
夏燕(なつつばめ)
    道端に夏燕一羽水たまり
凌霄花(のうぜんか)「蔓」「のうぜん・のうぜんかずら」
    日曜学校迎えし門に凌霄花
大暑(たいしょ)
    フルパワー太陽発揮大暑かな 
河童忌(かっぱき)
    河童忌や赤いコウモリ大流れ 
向日葵(ひまわり)
    向日葵やむこうが見えて迷路かな
片陰(かたかげ)片かげり・夏陰
    人が来る我は右側片かげり
甲虫(かぶとむし)     甲虫マッチの車がギコギコと
滝(たき)
    滝を背に揃ひて二人水浴びぬ
灼(や)く
    石灼けてぴょんぴょん跳ねて天竜川
梅雨明(つゆあけ)「梅雨あがる」
    肌熱い梅雨明の風吹く窓辺 
涼し(すすし)
    涼しさや点滴が針打ち直し


今日の季語 2019-8




雲の峰(くものみね)
    まだ続く頂上の雲の峰
氷室(ひむろ)
    土地造成工期遅れる氷室跡
白南風(しろはえ)
    白南風や質屋の暖簾はためきて
トマト(とまと)
    完熟トマト母の教えは危険なり
夜の秋(よるのあき)
    Tシャツや首元のびた夜の秋
広島忌(ひろしまき)
    サイレンが急がぬ音色広島忌
夏の果て(なつのはて)「夏の名残」
    砂の文字夏の名残の波が消ゆ
立秋(りっしゅう)「今朝の秋」
    今朝の秋こむら返りが布団寄せ
長崎忌(ながさきき)
    流る空長しサイレン長崎忌
蜩(ひぐらし)「日暮・かなかな」
    木から木へ昼間に早しかなかなか
芙蓉(ふよう)
    涼まれず芙蓉ふくれど裏を占め
秋日傘(あきひがさ)
    紅鼻緒すそがはためく秋日傘
秋日傘(あきひがさ)
    紅鼻緒すそがはためく
迎火(むかえび)
    燃え具合火と陽のあつく迎火よ
盆の月(ぼんのつき)
    背もたれて雨が切れ間の盆の月
敗戦忌(はいせんき)
    停車場へ遺骨を嫗敗戦忌
馬追(うまおい)「すいっちょ(ん)」
    秋来たと鳴く梁の上すいっちょかな
桃(もも)
    触らずも果汁溢るか桃の肌
椋鳥(むくどり)
    椋鳥に戸袋とられ白夜かな
律の調(りちのしらべ)
    縦笛も律の調を奏でれて
芋虫(いもむし)
    落とせどもあっと云う間に芋虫は
椿の実(つばきのみ)
    椿落つ花はポタポタ実はポトリ
秋の初風(はつかぜ)「初風・秋初風」
    家路道秋の初風冷ます頬
処暑(しょしょ)
    靄消えて処暑の汽水湖汽笛聞く
猿酒(さるざけ)
    猿酒や辛さも強く腰たたず
山椒の実(さんしょうのみ)
    手が届く葉よりも強き山椒の実
秋の蚊(あきのか)
    秋の蚊や聞かせし羽音緩やかに
秋鰺(あきあじ)
    衣着て秋の小鰺がはじく泡
虫(むし)
    むしのよい話に乗りし苦虫を
蘭(らん)
    蘭載らぬテレビの上の狭さかな
螻蛄鳴く(けらなく)「地虫鳴く」
    朝露に地虫鳴く地に螻蛄がいて
秋湿(あきじめり)
    句を書かむチョーク伸びなく秋湿



今日の季語 2019-6

 今日の季語 2019-06


南風(みなみ)「大南風(おおみなみ)」「はえ」「まじ」 
    おっぽ切れクルクルと凧大南風 
甘酒(あまざけ)
    甘酒やひとまわりコップも大きくなり
蛇苺(へびいちご)
    毒々し毒見躊躇う蛇苺 
蜘蛛の糸(くものいと)
    風に乗せ何処につかん蜘蛛の糸
竹の皮脱ぐ(たけのかわぬぐ)
    一本だけ竹の皮脱ぐ素肌色
芒種(ぼうしゅ)
    紅い裾芒種の歌風に乗せ
鴫焼茄子(しぎやきなす)「鴫焼」「焼茄子」「茄子焼く」
    僕しやうが母はしやうゆ茄子を焼く
五月雨(さみだれ)
    五月雨やめだかが描く甕の波
額の花(がくのはな)「額紫陽花」
    跳ね返す小粒の雨を額の花
蝙蝠(こうもり)「かはほり」「蚊食い鳥」
    投げあげる帽子で捕らえ蝙蝠ぞ
枇杷(びわ):仲夏の植物季語
    木の上へ採れ立てを知る枇杷の味
夏帯(なつおび)「単帯(ひとえおび)」
    夏帯の色浮き立つか藍ゆかた
鴨足草(ゆきのした)「雪の下」「虎耳草」
    庭石の影からスックと鴨足草
梅雨の星(つゆのほし)
    梅雨の星牧場でさがす二人ゐて
金亀子(こがねむし)「黄金虫・かなぶん」
    あわれ大豆群れ喰い尽くす黄金虫
父の日(ちちのひ)
    父の日のらしきことなき夕餉かな
蛇衣を脱ぐ(へびきぬをぬぐ)「蛇の衣・蛇の皮」
    胸どっくん草むらにある蛇の皮
夏鴨(なつがも)「鴨涼し・軽鴨(かるがも)」
    夏鴨や潜りて冷やす毛繕い
滴(したた)り
    通学路しらず手で受く滴りよ
岩魚(いわな)
    縄のれん岩魚焼く香に飛びこまん
花菖蒲(はなしょうぶ)「野花菖蒲・菖蒲園・菖蒲池・菖蒲見」
    棚田にも雨粒撥ねる菖蒲池
夏至(げし)
    湿り気が図書館の夏至どことなく
花葵(はなあおい)
    高く向け雨が似合わぬ花葵
水鉄砲(みずでっぽう)
    盥から狙い定めて水鉄砲
烏賊(いか)「するめ烏賊・やり烏賊」
    究極の烏賊の料理やリング揚げ  
石(柘)榴の花(ざくろのはな)「花石榴」
    口紅の色より紅き石榴咲く
昼寝(ひるね)「午睡(ごすい)・三尺寝(さんじゃくね)」 
    太鼓腹大波小波昼寝かな
洗膾(あらい)「洗鯉」
    雨上がり笊をはみ出す洗い鯉
螻蛄(けら)「おけら」
    こんくらいおけら拡げる我せがれ
夏の川(なつのかわ)「夏川(河)・夏河原」
    泳ぎたし熱い石跳び夏河原



今日の季語 2019-5

 今日の季語 2019-05



風船(ふうせん)
    風船を飛び放す地へ辿り着き
春駒(はるごま・はるこま)
    春駒や駆ける牧場の草葉追う
どんたく
    どんたくの掛け声合わせ膝をうつ
苗代(なわしろ)「苗田(なえだ)」
    三人で苗田七枚作りけり 
端午(たんご)
    凧屋台練りとまるまる端午かな
立夏(りっか)「夏立つ」「夏来たる」「今朝の夏」
    雨戸開く庭の眩しく今朝の夏
筍飯(たけのこめし)
    竹じゃんか硬く噛めれぬ筍飯
水馬(あめんぼ)
    水たまり風に逆らうあめんぼう
松落葉(まつおちば)
    松落葉かぶせ完成落とし穴
草笛(くさぶえ)
    雲もない草笛聞こゆ帰り道
レース
    ラヂオ聴く母は休まずレース編み
母の日(ははのひ)
    母の日をも知らぬ嫁をさと躾
若葉(わかば)「柿若葉」「藤若葉」
    柿若葉日ごと広がる雨宿り
風薫(かぜかお)る
    風薫る曲がりて拗る田圃道
木下闇(こしたやみ)「下闇」「青葉闇」「木暮(こぐれ)」
    木下闇クマザサ覆う秘密基地
翡翠(かわせみ)「ひすい」
    翡翠や網フェンスから川面へと
虎魚(おこぜ)
    釣り上げた虎魚毒もつ背びれ切る
青蔦(あおつた)「蔦茂る」「蔦青し」
    蔦茂るぼろやにはない蔦の下
ソーダ水(すい)「曹達水」「炭酸水」
    ソーダ水クリームを染む泡の音
郭公(かっこう)「閑古鳥」
    郭公こだま返しが尾瀬ケ原
小満(しょうまん)
    小満そろそろ出番傘が待つ
冷蔵庫(れいぞうこ)
    冷蔵庫上に豊かさ何もない
目高(めだか)
    目高飼う残る三匹めざし丈
天道虫(てんとうむし)「てんとむし」
    天道虫強さ示さぬ星の数
ビール(麦酒)「生ビール」「ビヤホール」
    美味いとは一気飲み干せる生ビール
鰹(かつお)
    鰹切る素早くもぐるアニキサス
草刈(くさかり)「草刈る」「草刈鎌」「草刈機」 
    何かいる草刈はじめこわごわと
山椒魚(さんしょううお)「はんざき」
    山椒魚背中に流るる水清し
万緑(ばんりょく)
    万緑やバス停だけの吸われ音 
老鶯(おいうぐいす)
    老鶯割れ始めたり谷の底
蜜豆(みつまめ)
    蜜豆や数量限定黒い豆

 

今日の季語 2019-4

 今日の季語 2019-04


山椒(さんしょう)の芽
    たわむれに鼻つくにほひ山椒の芽
孕雀(はらみすずめ)
    庭を掃く孕雀が舞いあがり
春の山(はるのやま)
    泥まみれ草たち始め春の山
黄水仙(きずいせん)
    群れの中一株高く黄水仙
清明(せいめい)
    清明や道はじめて友の家
桜(さくら)
    桜ふれ姫様ながむ奴踊り
花篝り(はなかがり
    花篝り並べ暮れるを待つ時計
花冷(はなびえ)
    花冷と吹雪をあびる薄い茣蓙
螢烏賊(ほたるいか)
    群れ成してわが身晒すか蛍烏賊
若芝(わかしば)
    スライディング若芝に頬ボール蹴る
炉塞(ろふさぎ)
    炉塞て一本残る自在鉤
柳(やなぎ)
    順々と枝垂柳が風見える
畑打(はたうち)
    畑打や父振り上げし四本鍬
山吹(やまぶき)
    豪奢な家花は山吹抱え出て
梅若忌
    父なき子牛引っ張り出す梅若忌
蓬(よもぎ)
    頼られて杵振り上げて蓬色
春眠(しゅんみん)
    春眠や牛もつられて「モー」と鳴く
春深(はるふか)し
    春深し海老獲る帆掛け波たてず
桜餅(さくらもち)
    誰ぞくふ葉だけ一枚桜餅
穀雨(こくう)
    柔らかき草が剣先穀雨かな 
雲丹(うに)
    棚隅の雲丹のふりかけ売り切れて
菫(すみれ)
    咲いて待つ菫一輪金時山
細螺(きさご・きしゃご)「ながらみ貝」
    三本鍬細螺も光る畑おこす
望潮(しおまねき)
    ラヴレター砂に書いたは潮まねき
芝桜(しばざくら)
    芝桜咲く日いくつも晴れ続く
鯥五郎(むつごろう)
    泥撥ねる雲なし空と鯥五郎
ゴールデンウィーク「黄金週間」
    ゴールデンウィーク凧一色が他知らず 
開帳(かいちょう)
    直虎の拝す仏が御開帳
満天星の花(どうだんのはな)「満天星」「どうだんつつじ」
    天に伸ぶどうだんつつじの花の数
ボートレース「競漕(きょうそう)」
    光り浴び競漕する水しぶき



 

今日の季語 2019-3

 今日の季語 2019-03


三月(さんがつ)
    暦めくる三月の風頬撫でる
芹(せり)
    囲われて芹摘む拒む香ぞ知れず
雛祭(ひなまつり)
    もうせんの赤い記憶が雛祭
巣箱(すばこ) 
    居心地か巣箱作りが左右して
謝肉祭(しゃくにくさい)「カーニバル」
    色とりどり羽根を揺らしてカーニバル 
啓蟄(けいちつ)
    掘り進む光が見えた啓蟄日
東風(こち)
    東風吹けば匂い新たなランドセル 
流氷(りゅうひょう)「氷流る」
    流氷や布団にとどく音堅く
椿餅(つばきもち)
    盗み食い数が少なく椿餅
三月十日(さんがつとおか)
    忘るまじ三月十日震災を
海雲(もずく)
    急ぐ朝ちょこ一杯海雲吸う
眼張(めばる)
    夕飯は揚げた眼張と一夜漬け 
凍解(いてどけ)
    笹倒す凍解の水緑なり
蕨(わらび)
    はね遊ぶ美味いおかずが蕨とは
芦の角(あしのつの)「蘆は角ぐむ 」
    踏み入れぬ遠回りする芦の角
鳥雲(とりくも)に「鳥雲に入る」
     鳥雲にランドセル負う孫も行く
水温(みずぬる)む
    水温む誰ぞ突っつき水濁る
鳥交(とりさか)る「鳥交(つる)む」「鳥の恋」 
    雲去りて川の向こうの鳥交る
蓴生(ぬなわお)う
    操る魯冷たさこらえ蓴生う
木の実植(このみう)う
    草いきれ平らな畝に木の実植う
春分(しゅんぶん)「中日」「春分の日」
    春分の日傘打つ音も静かなり
卒業(そつぎょう)「卒業式」
    人生に卒業ないと父云う
雪の果(ゆきのはて)「雪の別れ」「名残の雪」
    羽根が舞う名残の雪がバス停に
遍路(へんろ) 
    海辺にも玉石つづく遍路道
摘草(つみくさ)
    草を摘む退けし枯草土手の上
鶯(うぐいす)
    鶯やいっぱい吸いて囀りぬ
接木(つぎき)
    種なくも子孫増やすや接木なり
風光(かぜひか)る
    風光る遥か見え分く家の楠
連翹(れんぎょう)
    連翹この道知らぬ人にあう
田螺(たにし)
    長靴に小さなスコップ田螺掘る
花種蒔(はなだねま)く「花種」「種(を)蒔く」
    花夢見耕作放置種を蒔く




今日の季語 2019-2

 今日の季語 2019-02




春近(はるちか)し
    春近し床暖スイッチ入れ忘れ
煮凝(にこごり)
    煮凝や箸から逃げる舌がいき
探梅(たんばい)
    探梅や行き着く先に棚田あり
立春(りっしゅん)「春立つ・春来る」
    春来る床暖房「切」として
寒明(かんあけ)「寒明く・寒過ぐ」
    背が伸びた夜明けの足も寒明ける
公魚(わかさぎ)
    ルアー選び公魚が群れ散り逃げし
春椎茸(はるしいたけ)
    ずる休み春椎茸をわたす朝
海猫渡(ごめわた)る
    雲低し礼文が浜へ海猫渡る
早春(そうしゅん)
    早春の日柳皮剥きチャンバラ
犬(いぬ)ふぐり
    踏みいれどマーキングせぬ犬ふぐり
春の雪(はるのゆき)
    春の雪終わる季節に追われ降り
蜆(しじみ)
    蜆打つ鍋の音聴く朝餉かな 
余寒(よかん)
    バスタオル水滴残る余寒かな
バレンタインの日
    バレンタインの日他人事ではすまされず
海苔(のり)「海苔干す」
    笑みかえすきみの八重歯に海苔光る
菠薐草(ほうれんそう)
    菠薐草湯がいて刻む太い腕
蕗味噌(ふきみそ)「蕗の薹(とう)」
    吾子も年蕗味噌食すさりきらひ
芝焼(しばや)く
    奈良にいて芝焼く見れぬ花火の音
雨水(うすい)
    インフルエンザ流し消したる雨水かな
椿(つばき)
    裏池や落つる椿が描く波紋
若布(わかめ)
    若布盛りトマトをそえて上に旗
春の星(はるのほし)
    ポケットから手の離れる春の星
飯蛸(いいだこ)
    飯蛸やつぶつぶつぶす味しらず
猫柳(ねこやなぎ)
    猫柳そこを基地にし歓声を
暖(あたた)か
    昼ラーメンシャツ脱ぐ程暖かく
薔薇の芽(ばらのめ)
    薔薇の芽や棘添え育つ美しく
浅蜊(あさり)「浅蜊汁・浅蜊飯」
    浅蜊汁嫌いになる毎朝で
耕(たがやし)「耕す・春耕・耕人」
    掛けてある父耕した四本鍬