四月(しぐあつ)
四月や消しゴム替えて消して過去
四月や消しゴム替えて消して過去
彌生(やよひ)
ピカピカの彌生の朝の眩しさよ
ピカピカの彌生の朝の眩しさよ
春の日(はるのひ):春日・春日・春日影・春の朝日・春の夕日・春の入日
春日や遠くに見えて輸送船
春日や遠くに見えて輸送船
日永(ひなが)永き日・遅日・暮遅し・暮かぬる
空わたる浜名バイパス暮かぬる
空わたる浜名バイパス暮かぬる
春の空(はるのそら)
北国へゴビのちりまふ春の空
北国へゴビのちりまふ春の空
麗らか(うららか)
犬欠伸麗らかにたちて茶柱
犬欠伸麗らかにたちて茶柱
長閑(のどか)
のどかさやはるかに聞こゆ草刈り機
のどかさやはるかに聞こゆ草刈り機
初桜(はつざくら)
初桜ブルーシートを日に曝し
初桜ブルーシートを日に曝し
入学(にゅうがく):入学試験・入学式
入学式小さな声で門に立つ
入学式小さな声で門に立つ
出代(でがはり):新参・御目見得
出代や振り返らずに消えにけり
出代や振り返らずに消えにけり
山葵(わさび):山葵漬
辛さ秘む山葵それぞれ産地味
辛さ秘む山葵それぞれ産地味
芥菜(からしな)
風の止み芥菜を蒔く土を撒く
風の止み芥菜を蒔く土を撒く
三月菜(さんぐわつな)
谷底の緑増す摘む三月菜
谷底の緑増す摘む三月菜
春大根(はるだいこん):三月大根・野大根
箸少し春大根の辛さかな
箸少し春大根の辛さかな
草餅(くさもち):蓬餅・母子餅
陽光に誘ふ餡子や蓬餅
陽光に誘ふ餡子や蓬餅
蕨餅(わらびもち)
旗めきて暖簾の招き蕨餅
旗めきて暖簾の招き蕨餅
鶯餅(うぐいすもち)
鶯餅きな粉に潜りいざ飛びぬ
鶯餅きな粉に潜りいざ飛びぬ
桜餅(さくらもち)
草原のケアハウスへと桜餅
草原のケアハウスへと桜餅
椿餅(つばきもち)
銘々皿蓋の緑や椿餅
銘々皿蓋の緑や椿餅
東踊(あづまをどり)
三密や東踊もひそやかに
三密や東踊もひそやかに
蘆邊踊(あしべをどり)
宵闇へ蘆邊踊の三味の音
宵闇へ蘆邊踊の三味の音
都踊(みやこをどり)
都踊姉は速足走る僕
都踊姉は速足走る僕
浪花踊(なにはをどり)
レコードや浪花踊をプツプツと
レコードや浪花踊をプツプツと
義士祭(ぎしさい)
義士祭や槍の重たい孫衣装
義士祭や槍の重たい孫衣装
種痘(しゅとう):植疱瘡
種痘日や潮吹く針の長きかな
種痘日や潮吹く針の長きかな
湯治舟(たうぢぶね)
百軒の湯場の壁画や湯治舟
百軒の湯場の壁画や湯治舟
桃の花(もものはな):白桃・緋桃・源平桃・桃畑・桃林・桃園・桃の村
ふっくらと地面に垂れて桃の花
ふっくらと地面に垂れて桃の花
梨の花(なしのはな)
特急と並びて走り梨の花
特急と並びて走り梨の花
杏の花(あんずのはな)
あばら家は杏の花の咲く隣り
あばら家は杏の花の咲く隣り
李の花(すもものはな)
柴垣向こう李の花ざかり
柴垣向こう李の花ざかり
林檎の花(りんごのはな)
ジーゼルカー林檎の花を汚し去り
ジーゼルカー林檎の花を汚し去り
郁李の花(にはうめのはな):庭梅の花
郁李へ早き流れやてふの影
郁李へ早き流れやてふの影
山櫻桃の花(ゆずらのはな):庭梅の花(ゆずらうめのはな)
ひとひらの山櫻桃の花の髪飾り
ひとひらの山櫻桃の花の髪飾り
沈丁花(ぢんちやうげ):丁字・沈丁
沈丁花にほひたどれば我が庵
沈丁花にほひたどれば我が庵
辛夷(こぶし)
彼方より屋根より高し辛夷咲く
彼方より屋根より高し辛夷咲く
木蓮(もくれん):白木蓮・紫木蓮・木蘭
ディスクジョッキーこの木蓮が由来述ぶ
ディスクジョッキーこの木蓮が由来述ぶ
連翹(れんげう)
連翹や違法駐車の列長し
連翹や違法駐車の列長し
樝の花(しどみのはな):草木瓜
見るだけと樝の花の硬き棘
見るだけと樝の花の硬き棘
木瓜の花(ぼけのはな):更紗木瓜・蜀木瓜・広東木瓜・緋木瓜・白木瓜
父植ゑし父と消えゆく木瓜の花
父植ゑし父と消えゆく木瓜の花
紫荊(はなずはう)
空黄色ふわりと薄く紫荊
空黄色ふわりと薄く紫荊
黄楊の花(つげのはな)
鶴の呼ぶ樹形崩さず黄楊の花
鶴の呼ぶ樹形崩さず黄楊の花
枸橘の花(からたちのはな)
枸橘の棘を避けつつセールスマン
枸橘の棘を避けつつセールスマン
山椒の花(さんせうのはな):花山椒
分け入れば山椒の花どっと散り
分け入れば山椒の花どっと散り
接骨木の花(にはとこのはな)
一塊接骨木の花庭にあり
一塊接骨木の花庭にあり
杉の花(すぎのはな)
杉の花陽光浴びて風に舞ふ
杉の花陽光浴びて風に舞ふ
春暁(しゆんげう):春の曙・春あかつき・春の暁
春暁や始発列車を起こしけり
春暁や始発列車を起こしけり
春晝(しゆんちう)
春晝おうどの虫や顔を出し
春晝おうどの虫や顔を出し
春の暮(はるのくれ)
なにもかも霞んで見えて春の暮
なにもかも霞んで見えて春の暮
春の宵(はるのよい):春宵・宵の春
月なくも歩調緩やか春の宵
月なくも歩調緩やか春の宵
春の夜(はるのよ):夜半の春・春夜
短冊を一枚ずつを夜半の春
短冊を一枚ずつを夜半の春
春燈(しゅんとう):春の燈・春灯
春燈や万年筆と祖母の文
春燈や万年筆と祖母の文
春の月(はるのつき):春月
気の沈む水平線の春の月
気の沈む水平線の春の月
朧月(おぼろづき):月朧
うろ覚え並べ名句や朧月
うろ覚え並べ名句や朧月
朧(おぼろ):草朧・鐘朧・朧影・朧夜は朧月夜の略
久々の吾子の小走り鐘朧
久々の吾子の小走り鐘朧
龜鳴く(かめなく)
杭の上群れ遠ざかり龜の鳴く
杭の上群れ遠ざかり龜の鳴く
蝌蚪(くわと):お玉杓子・蛙の子
孵れども藻に絡まれて蛙の子
孵れども藻に絡まれて蛙の子
柳(やなぎ):絲柳・靑柳・遠柳・川柳・門柳
風通すまばらに垂れて絲柳
風通すまばらに垂れて絲柳
花(はな):花の雲・花吹雪・落花・花屑・花埃・花の塵・花の雨・花冷・花の山・花便・花守
誘われて飛ばす車や花の夜
誘われて飛ばす車や花の夜
櫻(さくら):山櫻・八重櫻・遅櫻・朝櫻・夕櫻・夜櫻
夜櫻や提灯揺れず続きけり
夜櫻や提灯揺れず続きけり
花見(はなみ):桜狩・観桜・花巡り・花の宴・花の茶屋・花の宿・花の幕・花筵・花人・花衣・花疲れ
風流をあえて拒みて花見かな
風流をあえて拒みて花見かな
花篝(はなかがり):花雪洞
雨の夜ひと時は今花篝
雨の夜ひと時は今花篝
花曇(はなぐもり)
花曇バイクの先は咲き満ちて
花曇バイクの先は咲き満ちて
桜漬(さくらづけ):花漬
開きだす有田の湯吞桜漬
開きだす有田の湯吞桜漬
花見虱(はなみじらみ)
のそのそと花見虱と行く名所
のそのそと花見虱と行く名所
櫻鯎(さくらうぐひ)
一網に櫻鯎や掬いとり
一網に櫻鯎や掬いとり
桜鯛(さくらだひ):花見鯛
舳先から吊り糸光り桜鯛
舳先から吊り糸光り桜鯛
花烏賊(はないか):櫻烏賊
良き鮮度花烏賊が足動きけり
良き鮮度花烏賊が足動きけり
蛍烏賊(ほたるいか):まついか
きらきらと網の丸さや蛍烏賊
きらきらと網の丸さや蛍烏賊
春の海(はるのうみ)
下る坂カーブ曲がれば春の海
下る坂カーブ曲がれば春の海
春潮(しゆんてう):春の潮
春潮や帆船軋む泡はじき
春潮や帆船軋む泡はじき
観潮(かんてう)
観潮船橋の観客仰ぎ見て
観潮船橋の観客仰ぎ見て
磯遊(いそあそび):磯菜摘
汐が満つバケツ空っぽ磯遊
汐が満つバケツ空っぽ磯遊
汐干(しほひ):干潟・汐干狩・汐干潟
汐干狩浜辺の松の風すがし
汐干狩浜辺の松の風すがし
蛤(はまぐり):はまなべ・焼蛤
蛤や縄文の高き貝塚
蛤や縄文の高き貝塚
浅蜊(あさり)
月曜日酒の開いて浅蜊かな
月曜日酒の開いて浅蜊かな
馬刀(まて):馬刀突・馬刀堀
根競べしばしの時間馬刀の出て
根競べしばしの時間馬刀の出て
櫻貝(さくらがひ)
日記帳上に閉じ置く櫻貝
日記帳上に閉じ置く櫻貝
栄螺(さざえ)
灯台の向こうはソ連栄螺焼く
灯台の向こうはソ連栄螺焼く
壺焼(つぼやき)
壺焼やだみ声遠く日焼け顔
壺焼やだみ声遠く日焼け顔
鮑(あはび):鮑取
富士山や一気に潜りとる鮑
富士山や一気に潜りとる鮑
常節(とこぶし)
常節や溢れる小笊高笑ひ
常節や溢れる小笊高笑ひ
細螺(ささご):きしやご
お土産やぱちぱち細螺弾く音
お土産やぱちぱち細螺弾く音
寄居蟲(やどかり):がうな
寄居蟲や宿を抜け出て恥ずかしく
寄居蟲や宿を抜け出て恥ずかしく
汐まねき(しおまねき)
マスゲーム汐退く浜の汐まねき
マスゲーム汐退く浜の汐まねき
いそぎんちやく
噛まれぬかいそぎんちやく指遊び
噛まれぬかいそぎんちやく指遊び
海膽(うに):雲丹
透き通る裸足の拒む海膽の浜
透き通る裸足の拒む海膽の浜
搗布(かぢめ):搗布刈・搗布焚く
波静か揺らぐ搗布や鎌光り
波静か揺らぐ搗布や鎌光り
角又(つのまた)
玉砂利や角又の干す温さかな
玉砂利や角又の干す温さかな
鹿尾菜(ひじき)
耳で見る波の高さや鹿尾菜刈る
耳で見る波の高さや鹿尾菜刈る
海雲(もづく):水雲・海蘊
巣の海やパックに泳ぐ海雲かな
巣の海やパックに泳ぐ海雲かな
海髪(うご)
防波堤熱きコンクリ海髪乾き
防波堤熱きコンクリ海髪乾き
松露(しょうろ)
うねうねと松露探して中田島
うねうねと松露探して中田島
一人静(ひとりしづか)
万葉園一人静の開く晝
万葉園一人静の開く晝
金鳳華(きんぽうげ):うまのあしがた
新品の眼鏡眩しく金鳳華
新品の眼鏡眩しく金鳳華
桜草(さくらさう)
母逝きて庭をぐるりと桜草
母逝きて庭をぐるりと桜草
チューリップ:鬱金香
だんだんと短く咲けりチューリップ
だんだんと短く咲けりチューリップ
ヒヤシンス:風信子
捨てられて根っこの白きヒヤシンス
捨てられて根っこの白きヒヤシンス
シクラメン
ひと時の表舞台やシクラメン
ひと時の表舞台やシクラメン
スヰートピー
スヰートピー思い出させてあのカット
スヰートピー思い出させてあのカット
シネラリヤ:サイネリヤ
撥ね飛ばす如雨露の虹やシネラリヤ
撥ね飛ばす如雨露の虹やシネラリヤ
アネモネ
アネモネや花と名前の覚えたり
アネモネや花と名前の覚えたり
フリージア
部屋を占む鼻一杯にフリージア
部屋を占む鼻一杯にフリージア
灌佛(くわんぶつ):佛生會
灌佛の日トンビの声のありし空
灌佛の日トンビの声のありし空
甘茶(あまちや)
背中押す並ぶ楽しさ甘茶の日
背中押す並ぶ楽しさ甘茶の日
花祭(はなまつり)
熱々と缶コーヒーが花祭
熱々と缶コーヒーが花祭
釋奠(せきてん):おきまつり
この齢縁なきことよ釋奠よ
この齢縁なきことよ釋奠よ
安良居祭(やすらゐまつり)
掴まんややすらゐの花背中の子
掴まんややすらゐの花背中の子
百千鳥(ももちどり)
庄屋森入り乱れてや百千鳥
庄屋森入り乱れてや百千鳥
囀(さえづり)
囀や森林公園の句会
囀や森林公園の句会
鳥交る(とりさかる)
昼下り誰もゐぬ園鳥交る
昼下り誰もゐぬ園鳥交る
鳥の巣(とりのす):巣籠・巣鳥
秘密基地鳥の巣のてふ羽根のあり
秘密基地鳥の巣のてふ羽根のあり
古巣(ふるす)
ふわふわと羽舞い上がり古巣かな
ふわふわと羽舞い上がり古巣かな
鷲の巣(わしのす)
積年の鷲の巣太く雛の見え
積年の鷲の巣太く雛の見え
鷹の巣(たかのす)
急降下鷹の巣戻り卵抱く
急降下鷹の巣戻り卵抱く
鶴の巣(つるのす):鶴の巣籠
必殺と鶴の巣籠誘い込み
必殺と鶴の巣籠誘い込み
鷺の巣(さぎのす)
山枯らす鷺の巣の下糞まみれ
山枯らす鷺の巣の下糞まみれ
雉の巣(きじのす)
分け入れば空の雉の巣雄の飛び
分け入れば空の雉の巣雄の飛び
烏の巣(からすのす)
烏の巣今年選ばれし電柱
烏の巣今年選ばれし電柱
鵲の巣(かささぎのす)
一本道鵲の巣の見つけられ
一本道鵲の巣の見つけられ
鳩の巣(はとのす)
パーキング鳩の巣のあり空の場所
パーキング鳩の巣のあり空の場所
燕の巣(つばめのす):巣燕
幸を呼ぶ玄関の上燕の巣
幸を呼ぶ玄関の上燕の巣
千鳥の巣(ちどりのす)
丸石と見紛うばかり千鳥の巣
丸石と見紛うばかり千鳥の巣
雲雀の巣(ひばりのす)
彼方よりぴょんぴょん歩き雲雀の巣
彼方よりぴょんぴょん歩き雲雀の巣
雀の巣(すずめのす)
軒先の瓦の隙間雀の巣
軒先の瓦の隙間雀の巣
孕雀(はらみすずめ):子持雀
温き陽に孕雀の飛び立てり
温き陽に孕雀の飛び立てり
孕鹿(はらみしか)
煎餅を押し退け前へ孕鹿
煎餅を押し退け前へ孕鹿
仔馬(こうま):孕馬
いつみても仔馬の足の長さかな
いつみても仔馬の足の長さかな
春の草(はるのくさ):春草・芳草・草芳し
丸い円山羊が食み跡春の草
丸い円山羊が食み跡春の草
若草(わかくさ):嫩草・新草
若草の牧場あちこち糞のあり
若草の牧場あちこち糞のあり
古草(ふるくさ)
古草や轍の消えて古屋敷
古草や轍の消えて古屋敷
若芝(わかしば)
若芝の初々しさや若夫婦
若芝の初々しさや若夫婦
蘖(ひこばえ)
階段の蘖高く参拝者
階段の蘖高く参拝者
竹の秋(たけのあき)
ふかふかな誰も入れなく竹の秋
ふかふかな誰も入れなく竹の秋
嵯峨念佛(さがねんぶつ)
嵯峨念佛蜘蛛糸戻るすがし風
嵯峨念佛蜘蛛糸戻るすがし風
十三詣(じゅうさんまゐり):知恵貰・知恵詣
連れ立ちて十三詣今年まで
連れ立ちて十三詣今年まで
山王祭(さんわうまつり)
山王祭穴掘り進む馬のしと
山王祭穴掘り進む馬のしと
梅若忌(うめわかき):木母寺大念佛
飛び石や窓に一点梅若忌
飛び石や窓に一点梅若忌
臘名残(れふなごり)
空に打つ弾の響きや猟名残
空に打つ弾の響きや猟名残
羊の毛剪る(ひつじのけきる)
毛を刈りし羊身震い大きな目
毛を刈りし羊身震い大きな目
春光(しゅんくわう):春の色・春色
春光や潮見坂へと続く浜
春光や潮見坂へと続く浜
靑麥(あをむぎ):麥靑む
掌に靑麥やさしつんつんと
掌に靑麥やさしつんつんと
麥鶉(むぎうづら)
蛍光灯ちかちかとして麥鶉
蛍光灯ちかちかとして麥鶉
菜の花(なのはな):菜種の花・花菜
菜の花のおひたしや母の枕辺
菜の花のおひたしや母の枕辺
花菜漬(はななづけ)
おてしおや春の色増す花菜漬
おてしおや春の色増す花菜漬
菜種河豚(なたねふぐ)
古女房今宵は静か菜種河豚
古女房今宵は静か菜種河豚
大根の花(だいこんのはな):花大根・種大根
陽光に大根の花伸びにけり
陽光に大根の花伸びにけり
豆の花(まめのはな):蠶豆の花・豌豆の花
緑葉の隠れてしまう豆の花
緑葉の隠れてしまう豆の花
蝶(てふ):紋白蝶・紋黄蝶・胡蝶・蝶々・初蝶・揚羽蝶
新芽伸ぶ生垣などり蝶の舞ふ
新芽伸ぶ生垣などり蝶の舞ふ
春風(はるかぜ):春の風
スカート翻し春の風の巻く
スカート翻し春の風の巻く
凧(たこ):長崎の凧揚・紙蔦・鳳巾・いかのぼり・いか・はた・奴凧
風を追ひ息あがらして子らの凧
風を追ひ息あがらして子らの凧
風車(かざぐるま):風車賣
色紙と大豆割らずと風車
色紙と大豆割らずと風車
石鹸玉(しやぼんだま):たまや・水圏賣
ベランダへ石鹸玉の訪ね来て
ベランダへ石鹸玉の訪ね来て
鞦撰(しうせん):秋千・ふららこ・ぶらんこ・半仙戯
補助輪とれぶらんこ一人土曜午後
補助輪とれぶらんこ一人土曜午後
ボートレース:競漕
声合わせボートレースや舳先競り
声合わせボートレースや舳先競り
運動会(うんどうくわい)
母も来ぬ運動会ビリ保ち
母も来ぬ運動会ビリ保ち
遠足(ゑんそく)
遠足や鯉の御馳走咽る黄身
遠足や鯉の御馳走咽る黄身
遍路(へんろ):遍路宿
杖を置きスマホに記録遍路宿
杖を置きスマホに記録遍路宿
春日傘(はるひがさ):春の日傘
曲がる塀ゆるり近づき春日傘
曲がる塀ゆるり近づき春日傘
朝寝(あさね)
六時だよ夢の中起き朝寝かな
六時だよ夢の中起き朝寝かな
春眠(しゆんみん)
寝落ち前教科書立てて春眠
寝落ち前教科書立てて春眠
春愁(しゆんしう)
バスの無いさすらいの旅春愁
バスの無いさすらいの旅春愁
蠅生る(はえうまる)
手洗い励行蠅生る場所の無き
手洗い励行蠅生る場所の無き
春の蠅(はるのはえ)
逞しく鳴らして羽音春の蠅
逞しく鳴らして羽音春の蠅
春の蚊(はるのか):春蚊
目覚めたる網戸を攻めて春の蚊よ
目覚めたる網戸を攻めて春の蚊よ
虻(あぶ)
ぶんぶんと針の太さや虻の舞ふ
ぶんぶんと針の太さや虻の舞ふ
蜂(はち):蜜蜂・熊蜂・足長蜂・穴蜂・土蜂
ホバリング蜂の縄張り攻め姿勢
ホバリング蜂の縄張り攻め姿勢
人丸忌(ひとまるき):人麿忌
人丸忌石見の国へ行きたくて
人丸忌石見の国へ行きたくて
花供養(はなくよう)
空けぶる君いる横の花供養
空けぶる君いる横の花供養
御身拭(おみぬぐひ)
御身拭マスクの他人連なりて
御身拭マスクの他人連なりて
御忌(ぎよき):法然忌・御忌詣・御忌の鐘
緑なす法然院に御忌の音
緑なす法然院に御忌の音
蜃気楼(しんきろう):海市・喜見城
自慢げな君の話も蜃気楼
自慢げな君の話も蜃気楼
御影供(みえいく)
御影供や奏でし祖母が持鈴の音
御影供や奏でし祖母が持鈴の音
壬生念佛(みびねんぶつ):壬生狂言・壬生踊
壬生念佛電車の音も鉦リズム
壬生念佛電車の音も鉦リズム
島原太夫道中(しまばらたいふのどうちゆう)
誘われて島原太夫道中
誘われて島原太夫道中
先帝祭(せんていさい)
先帝祭朱き蛇の目が白化粧
先帝祭朱き蛇の目が白化粧
鮒膾(ふななます):山吹膾・叩き膾・子守膾
鮒膾湖北の風も贈り着く
鮒膾湖北の風も贈り着く
山吹(やまぶき):濃山吹・葉山吹
山吹や豪華な庭へ咲き乱れ
山吹や豪華な庭へ咲き乱れ
海棠(かいだう)
手入れせぬ父が海棠やせ細り
手入れせぬ父が海棠やせ細り
馬酔木の花(あせびのはな)
散り散りに馬酔木の花の白き庭
散り散りに馬酔木の花の白き庭
ライラック
ライラックにをひラーメン食べ歩き
ライラックにをひラーメン食べ歩き
小米花(こごめばな):雪柳・小米桜
サイドミラー小米花散りねむの木村
サイドミラー小米花散りねむの木村
小粉團の花(こでまりのはな)
右カーブ小粉團の花故郷よ
右カーブ小粉團の花故郷よ
楓の花(かへでのはな)
森林や楓の花のひっそりと
森林や楓の花のひっそりと
松の花(まつのはな)
年一度松の花摘む庭師真似
年一度松の花摘む庭師真似
柃の花(ひさかきのはな)
誘ひて柃の花神の域
誘ひて柃の花神の域
樒の花(しきみのはな)
この年で樒の花が見分け方
この年で樒の花が見分け方
木苺の花(きいちごのはな)
草陰に木苺の花三つ咲き
草陰に木苺の花三つ咲き
苺の花(いちごのはな)
温室の外咲き乱れ苺の花
温室の外咲き乱れ苺の花
通草の花(あけびのはな)
淡紫通草の花が通学路
淡紫通草の花が通学路
郁子の花(むべのはな)
夕空へ孫を背負いて郁子の花
夕空へ孫を背負いて郁子の花
宗因忌(そういんき)
暗闇に罅入り音や宗因忌
暗闇に罅入り音や宗因忌
天皇誕生の日(てんわうたんじやうのひ)
日の丸小さめ天皇誕生の日
日の丸小さめ天皇誕生の日
靖国祭(やすくにまつり):招魂祭
標準木祝詞を聞きて招魂祭
標準木祝詞を聞きて招魂祭
どんたく
車停めドンタク囃子見え始め
車停めドンタク囃子見え始め
葱坊主(ねぎばうず):葱の花・葱の擬寶
抜く手形一刀の切り葱坊主
抜く手形一刀の切り葱坊主
萵苣(ちさ):ちさ缺く
じゃりじゃりとはね上がり砂萵苣洗ふ
じゃりじゃりとはね上がり砂萵苣洗ふ
みづ菜(みづな):うはばみさう
はりはりと敵とおぼしきみず菜刈る
はりはりと敵とおぼしきみず菜刈る
鶯菜(うぐひすな)
緑なす畑の一隅鶯菜
緑なす畑の一隅鶯菜
茗荷竹(めうがたけ)
畏きや間隔揃え茗荷竹
畏きや間隔揃え茗荷竹
杉菜(すぎな)
築山を占めて杉菜の緑かな
築山を占めて杉菜の緑かな
東菊(あづまぎく):吾妻菊
荒れ放題一際目立ち東菊
荒れ放題一際目立ち東菊
金盞花(きんせんくわ)
大昔初見で憶え金盞花
大昔初見で憶え金盞花
勿忘草(わすれなぐさ)
勿忘草忘れないでね花束に
勿忘草忘れないでね花束に
種俵(たねだわら)
納屋の奥出番近しと種俵
納屋の奥出番近しと種俵
種井(たねゐ):種浸し
頑丈な縛りで降ろし種井かな
頑丈な縛りで降ろし種井かな
種選(たねえらみ)
心地よき水掻きまわし種選
心地よき水掻きまわし種選
種蒔(たねまき)
種蒔や嚏も出さず均等に
種蒔や嚏も出さず均等に
苗代(なはしろ):苗田・苗代田・苗代時
木綿糸ぺけの際立ち苗代田
木綿糸ぺけの際立ち苗代田
水口祭(みなくちまつり)
御幣立ち水口の祭かな
御幣立ち水口の祭かな
種案山子(たねかがし)
月も出て蛙も唄ふ種案山子
月も出て蛙も唄ふ種案山子
苗代茱萸(なはしろぐみ):胡頽子
声高し苗代茱萸にくだをまく
声高し苗代茱萸にくだをまく
朝顔蒔く(あさがほまく)
三日坊主朝顔蒔くと日記帳
三日坊主朝顔蒔くと日記帳
藍植う(あゐうう)
裸田や藍植う畝の少しずつ
裸田や藍植う畝の少しずつ
蒟蒻植う(こんにやくうう)
柔らかき蒟蒻植うや鍬の音
柔らかき蒟蒻植うや鍬の音
蓮植う(はすうう)
富士の雪蓮植う泥の生ぬるき
富士の雪蓮植う泥の生ぬるき
八十八夜(はちじゅうはちや)
漂える八十八夜茶のかをり
漂える八十八夜茶のかをり
別れ霜(わかれじも):霜の名残・忘れ霜・別れ霜
プロペラや闇夜の別れ霜
プロペラや闇夜の別れ霜
霜くすべ(しもくすべ):霜害
扇風機まわれまわれば霜くすべ
扇風機まわれまわれば霜くすべ
茶摘(ちゃつみ):茶摘女・茶摘唄・茶摘笠・茶山・茶園
やわき指一葉一葉の茶摘かな
やわき指一葉一葉の茶摘かな
製茶(せいちゃ):焙爐
蒸せかえる製茶工場の香の残り
蒸せかえる製茶工場の香の残り
鯛網(たひあみ)
揺れ筏鯛網回り切れぬ群れ
揺れ筏鯛網回り切れぬ群れ
魚島(うをじま)
魚島や松山城はビルの影
魚島や松山城はビルの影
鯥(むつ):鯥五郎
泥のけてめんくり玉や鯥五郎
泥のけてめんくり玉や鯥五郎
蠶(かひこ):蠶卵紙・蠶飼・蠶飼ふ・たねがみ・掃立・飼屋・蠶棚・捨蠶・蠶時
枕辺へ蠶休まず食むリズム
枕辺へ蠶休まず食むリズム
山繭(やままゆ)
悠然と山繭灯り求め来て
悠然と山繭灯り求め来て
桑摘(くはつみ):桑籠・桑車
小柄女や桑籠を置く大きな音
小柄女や桑籠を置く大きな音
桑(くは)
見えぬほど大きく伸びて桑畑
見えぬほど大きく伸びて桑畑
桑の花(くはのはな)
桑の花藁屋の我が家隠しけり
桑の花藁屋の我が家隠しけり
畦塗(あぜぬり)
水満ちて父ぺたぺたと畦を塗り
水満ちて父ぺたぺたと畦を塗り
蔦若葉(つたわかば)
甲子園上へ上へと蔦若葉
甲子園上へ上へと蔦若葉
萩若葉(はぎわかば)
風呂敷の習字道具や萩若葉
風呂敷の習字道具や萩若葉
草若葉(くさわかば)
ペダル踏むサナトリュームへ草若葉
ペダル踏むサナトリュームへ草若葉
葎若葉(むぐらわかば)
新築祝葎若葉の道を行く
新築祝葎若葉の道を行く
罌粟若葉(けしわかば):芥子若葉
廃屋へ外から覘き罌粟若葉
廃屋へ外から覘き罌粟若葉
菊若葉(きくわかば)
菊若葉刺して鹿沼の水含み
菊若葉刺して鹿沼の水含み
若蘆(わかあし):蘆若葉
敵陣の一時止まり蘆若葉
敵陣の一時止まり蘆若葉
荻若葉(をぎわかば)
風に揺る輪中をぐるり荻若葉
風に揺る輪中をぐるり荻若葉
若菰(わかごも)
若菰をかき分けて出で鴨家族
若菰をかき分けて出で鴨家族
髢草(かもじぐさ)
雲流る仰ぎ見にほふ髢草
雲流る仰ぎ見にほふ髢草
水芭蕉(みづばせう)
木道の靴音続き水芭蕉
木道の靴音続き水芭蕉
残花(ざんくわ)
緑おす最後の残花急ぎ散り
緑おす最後の残花急ぎ散り
春深し(はるふかし):春闌・春闌く
春深し隣りは窓を開け広げ
春深し隣りは窓を開け広げ
夏近し(なつちかし):春隣る
夏近し今年の暖簾誂えて
夏近し今年の暖簾誂えて
蛙(かはづ):初蛙・鳴蛙・遠蛙・晝蛙
初蛙飛び込む水の流れかな
初蛙飛び込む水の流れかな
躑躅(つつじ):やまつつじ・きりしま
赤染まりグリーンベルト躑躅咲く
赤染まりグリーンベルト躑躅咲く
満天星の花(どうだんのはな)
浜名湖を満天星の花隠しけり
浜名湖を満天星の花隠しけり
石南花(しやくなげ):石楠花
惑わさる石楠花の咲く昼下り
惑わさる石楠花の咲く昼下り
柳絮(りうじよ)
坂の上柳絮は行く東へと
坂の上柳絮は行く東へと
若緑(わかみどり):松の緑・緑立つ・若松・松の蕊
とげとげを優しく隠し若緑
とげとげを優しく隠し若緑
緑摘む(みどりつむ)
脚立立つ足おぼつかず緑摘む
脚立立つ足おぼつかず緑摘む
松毟鳥(まつむしり):まつくぐり
枝揺れてさかしまに食む松毟鳥
枝揺れてさかしまに食む松毟鳥
ねぢあやめ
水溜り公園の隅ねぢあやめ
水溜り公園の隅ねぢあやめ
薊の花(あざみのはな):花薊・薊
放棄地の真ん中に立つ花薊
放棄地の真ん中に立つ花薊
山歸來の花(さんきらいのはな):さるとりいばらの花・さるとりの花
採り集めリースに山歸來の花
採り集めリースに山歸來の花
藤(ふじ):藤の花・山藤・白藤・藤波・藤棚
絨毯を敷いて藤棚開門と
絨毯を敷いて藤棚開門と
行春(ゆくはる)
行春や弁当不味い日はけふ
行春や弁当不味い日はけふ
暮の春(くれのはる):暮春
暮の春家庭訪問始まりぬ
暮の春家庭訪問始まりぬ
春惜む(はるおしむ):惜春
牛の引く土を反して春惜む
牛の引く土を反して春惜む
